「はぁぁ......やっと...終わった...な......」
「うん......ほんと...諦めないんだから...」
二人が侍女たちの質問責めから解放されたのはすでに日が落ちた頃だった。
普段から同年代の男の子と関わる機会などほとんどなく、ましてや侍女である自分たちが恋をするなど恐れ多いと考えている子たちだが年齢的には恋する乙女なのだ。
同年代の妹紅の恋話はとても気になるのだろう。
妹紅本人は恥ずかしくて黙り込んでしまったのでおれが助け舟を出すことで乗り切った。
お陰でおれは物理的に、妹紅は精神的に疲れ果てた。
「ごめんね巻き込んじゃって」
「いやいや、おれも当事者だからな、仕方ないよ。それよりも問題は不比等なんだよなぁ」
「侍女たちは言わないって言ってるから私たちからちゃんと言わないとね」
「どうする?」
妹紅がうーんとうなだれる。
流石におれとしてもあまりバラしたくないことではある。
あいつの性格上いろいろ言われるだろう。
嫌がらせで。
「とりあえずもう少し黙ってようか」
「そうだね、...(じゃあお父様が帰ってきたら添い寝とかできないかぁ)」
「なんか言ったか?」
「ううん?なんでもないから、ね?ね?」
「あ、あぁ」
最後に何か言ってた気がするが良いことにする。
「それよりも飯にしないか?」
「そろそろだね、食堂行こっか」
その日は侍女たちが赤飯を用意していた。
目をキラッキラさせながらこちらを見つめて来る。
おれの後ろにいた侍女が妹紅になにやらジェスチャーで伝えようとしていた。
二人で食べさせてあげるようなジェスチャーをする。
理解した妹紅が顔を赤らめるがおれが口を開けてやると渋々お箸を差し出してくる。
「あ、あーん?」
「あーん、もぐもぐ、美味しいよ妹紅」
満足したのかパァと顔を輝かせて次へ次へと食べさせてくれる。
後ろの侍女たちがまあとでも言いたげな顔をする。
ーここは少し妹紅もそうだがこいつらもからかってやるか
「なあ、そろそろ喉が渇いたからお茶を飲ませてくれないか?でもこのままだと熱いから冷ましてくれるとありがたい」
「ふーふーすればいいの?」
「ああ」
湯飲みにお茶を入れて必死にふーふーする妹紅を見て侍女たちも顔が緩む。
簡単に言うと可愛すぎる
おれもかなり危なかった。
ある程度冷めたと思ったのだろう、はいと言って湯飲みを差し出す。
「ありがとう」
「どういたしまし...んんん???」
受け取ったお茶を口に含ませ喋る妹紅の口に流し込んでやる。
最近は驚いて口の端からお茶が溢れるがすぐに理解してお茶を飲み干す。
「も、もう!いきなりでびっくりしたでしょ!みんな見てるのに...ぁぁ」
みんなが見ていることを改めて確認したのかおれの胸に飛び込み顔を埋めて唸る。
侍女たちは手を顔に当てチラチラのぞいてくる。
妹紅は恥ずかしそうにしているがどこか幸せそうだった。
何はともあれ侍女たちの前では隠す必要はなくなったので日中は思いっきりイチャイチャできる。
今なら夜も一緒にいれる。
ー数日前まではこんなこと考えられなかったなぁ
3日たった。
あれからずっと妹紅と一緒にいる、もちろん夜も。
すっかり淫乱な娘になってしまった妹紅はいろいろな誘い方で誘惑してくる。
おれもおれで毎日してるのに疲れを知らず、結局毎日してしまう。
今は布団に入って一緒に寝るとこだ。
これから夜の営みが行われるのだろう。
「ねぇ詠くん」
「ん?どうした?その、したいのか?」
「う、まあ、そうなんだけどそろそろお父様が帰ってくるじゃない?だからこういうこともできなくなっちゃうなだと思って」
「まあ、日中にするわけにもいかないしなぁ、不比等に伝えたとしてもあいつがいるとこでしたくないなぁ」
「そうなの、大体からかってくるんだから」
不比等は基本的にはいいやつなのだがそこだけが目につく。
なんであんな性格になったんだろう。
現代だったらカメラ構えて襖から覗きそうだ。
そんなことしたらまあ、不比等とはいえ酷い目にあわされるだろう。
主に妹紅に...
「だから、今のうちにたくさんしたいの、だめ、かな、」
「あぁそんなことか、もちろんいいよ」
明かりをけす。
自然と二人の唇が近づき触れる。
最初は浅く軽めに、だんだん深く激しくなっていく。
「うたぁ、好きだよぉ...じゅるる...れろ...んんぁ...」
妹紅が布団をどけておれにまたがい、身を低くしてキスをしてくる。
おれは妹紅の背中に手を回して抱き寄せる。
妹紅はおれの上で、おれは妹紅の下でお互い抱き合いながら濃厚なキスをする。
「「ちゅぶ...じゅるる...れらぁ...ちゅう、」」
静かな部屋にキスの音が鳴り響く。
その状況におれの息子も少しずつ大きくなり始め、妹紅もそれに気づいたのか少し身を持ち上げる。
そんな時だった、襖の陰からこっちを見るやつの存在に気づいたのは。
おまけ
私はとんでもないものを見てしまった。
見てはいけないものを。
私は数日間の疲れを引きずりながら夜道を家に向かって帰っていた。
帰りつく頃には妹紅が寝ている時間になってしまった。
私の帰りに気づいた侍女たちが走らないが急ぎ足ですたすたとやってくる。
「「おかえりなさいませ、不比等様」」
「ああ、今戻った。妹紅と詠くんは元気にしているかい?もう寝てしまったかな?」
「お二人ともお元気にされています。多分まだ起きていられると思いますよ。」
侍女たちは顔を見合わせてクスクスと笑う。
「そうか、それならいいんだ。よし、顔だけ合わせておこう、荷物は任せたよ」
「今は会わない方がよろしいかと存じますが、特に妹紅様が嫌がるかと」
「妹紅が?何か嫌われることでもしてしまったかな」
そういうと侍女たちは散り散りに仕事に戻っていった。
意味がわからなかったので帰ったことだけ伝えることにした。
藤原亭はとても広く玄関から妹紅の部屋までもかなり入り組んでいるため5分ほどかかってしまう。
迷ったらまずたどり着けないだろう。
「今帰ったよ、、、妹紅?」
部屋は明かりが消されていて、もぬけの殻だった。
布団すら敷いてなかった。
ーはて、風呂でも入ってるのかな?それで今は会わない方がいいってことか、侍女に布団敷かせとかなくてはな、
「詠くんは部屋にいるかな」
来た廊下を引き返し、詠が使ってる部屋の方へ向かう。
歌の部屋のある廊下まで来るが明かりはついていない。
ー詠くんもいないのかな、私が帰って来たというのに
しかし詠の部屋から物音がきこえた。
ーなんだいるのか、寝るとこだったんだな、なら挨拶だけしておこう
廊下を進むにつれて物音が明確になって来る。
静かな廊下に響いて来るのは明らかにキスの音。
まさかと思いつつ静かにのぞいてみる。
そこにあったのは詠にまたがりキスをする妹紅の姿だった。
ーまさかここまで進展しているとは、それにしてもあの妹紅があそこまでするようになるとは、
そんなことを考えていたのが間違いだった。
詠と目が合ってしまった。
「不比等か?」
「え?お父様?」
「あ、や、やあ、二人とも、元気そうで何より、今帰ったところだ、、、」