「はぁ…」
どうも今年の夏の始まりは早いようで、六月ともなれば十分暑い。そんな厳しい夏の始まりを感じながら、俺…七影天音は今日も憂鬱げにため息をつく。今日は土曜日、趣味でやってるアコースティックギターの練習をして、今は古本屋でバンド雑誌を読み漁っている。まあ俺友達いないからバンド組めないんだけど。まあそんなことは置いといて、何でこの古本屋かって言ったら、家に近くて涼しいから。それで何も買わずに帰るんだから店にとっては営業妨害でしかない。それは分かってる。でもね、エアコン使うと電気代がえらいことになるからそう頻繁に使えないし。そんなこんなで、この古本屋にはお世話になっている。
…でもそろそろ何か買った方がいいよね。何か悪い気がしてきたし。
「あの、これお願いします」
そういう訳で、立ち読みしてたバンド雑誌をカウンターに出す。
「あ、はい…」
なかなか控えめな返事が帰ってきた。…よく見たらこの人なかなか綺麗だなぁなんてことを思ってたら店員さんの方から話しかけられる。
「あっ…あの」
「はい?」
「その…音楽、好きなんですか?」
あぁ、ギターのことか。
「ええまあ、趣味でやってるだけですけど」
「そ、そうですか…あの、では、バンドとか、組んでらっしゃるんですか?」
「そんな友達がいれば良かったんですけどね…生憎友達がいないもので」
「え…」
うわ、今絶対引かれた。悪かったなボッチで。
「あ、こ、こちら…どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
本を受け取る。
「あ、あの…!」
帰ろうと踵を返すと店員さんから再び呼び止められる。何だろ、忘れ物かな?
「どうかしました?」
「あっ…あの、私、あなたとさっき話しただけですけど…あなたともっと話してみたいって思って…ですから…」
「は、はい」
「…あの、連絡先、交換しません…か?」
そういって上目遣いで、しかも泣きそうな顔で尋ねてくる店員さん。いやいやただでさえ美人なのにそんな顔されて断れるわけないでしょ。
「ええ、まあ、連絡先くらいなら」
「…!あ、ありがとうございますっ!」
今度はパアアッと顔が明るくなる。可愛い。
そんな訳でLINEを交換する。名前のところに「ふみか」と書かれている。
「七影…天音さん」
「はい。七影天音です」
「あの…鷺沢文香と言います。よろしくお願いします」
「あ、ああ…よろしくお願いします、鷺沢さん」
二人揃ってお辞儀する。まぁこんな綺麗な人と連絡先を交換したからといってそのまま関係を進展させて…とかいう陽キャみたいな考えはない。俺みたいな友達も出来たことがなく、ギターにしか打ち込んでこなかったボッチなら尚更。俺が小学校中学校と受けてきたいじめは、ある意味で俺にいいものを与えてくれた。あのいじめがあったから今の俺があると思えるくらい。話が飛躍しすぎてるけど、つまり何が言いたいかって言ったら、こんなボッチを好きになる人なんていないってこと。
「…曲、作ってみるか」
今ならいい曲が作れそうな気がする。俺はいつになく早足で家に帰った。
主人公は独りぼっちの人の気持ちを歌ったような曲を歌うこと、作ることが好きです。
タイトルは適当です。詐欺です。