人間に日々の調子や体調があり、それによって同じ人物の同じ行動でも違う結果が出る事は珍しくない。それはセックスにおいても同じである。
ゴロドクとノンナの身体の相性はかなり良く、またノンナ自身がかなり感じやすい体質という事もあり噛み合わないセックスというのはあまり無いが、逆に普段より激しいセックスになる時がある。それはノンナが強い緊張や精神的なストレス、あるいは強い動揺を受けた時などだ。
日頃から鉄面皮めいた無表情で過ごしているように見えるノンナだが、大人びていてもまだ彼女は18歳の少女なのだ。自身の感情や衝動を完全にコントロールできている訳ではない(それでも、同世代の少女に比べれば遥かに自律できているのは事実なのだが)。
具体的には戦車道の重要な試合の前後や、先日のカチューシャに関係がバレかけた時などだ。そうなった時の彼女は、まるで動揺や緊張で自身の心に生まれたヒビを快楽で埋めようとするかのように激しくゴロドクを求めてくる。
その経験が、ゴロドクに悟らせた。
「お願いします。ゴロドク……ここで、していただけませんか?」
──今のノンナは完全に“スイッチ”が入っている。それも、今まで見た事が無いほどに。
「その、それなら今から家に……」
「………」
無言のまま、ノンナの潤んだ瞳がゴロドクを切なそうに見つめる。
今の自分の言葉で彼女が止まらないであろう事は、掌に伝わる乳房の熱さと弾力が何より物語っていた。既に相当に身体を火照らせている。おそらく料理店で自分とカチューシャが話をしていたより更に前、ひょっとすればカチューシャから留学の話をされた時点から身体を疼かせていたのかもしれない。
ゴロドクは周囲に視線を巡らせた。公園の入り口は二ヵ所だが、奥のベンチを選んだため直接視界が通る事はない。雪は少しちらつく程度だが降っており、午後8時の冬の公園に自分たち以外の人の姿は見えない。年末という事で一部生徒有志による「火の用心!」の夜回りが行われており遠くで拍子木の音が聞こえるが、あれは住宅地周辺のみで公園には来ないはずだ。
「(大丈夫か?) ノン……うっ!?」
股間に柔らかな刺激。視線をノンナに戻すと、ゴロドクに視線を向けたままその手はゴロドクの股間をジーンズ越しに撫で擦ってきている。
「ノ、ノンナ、落ち着いて……!」
「すみません、ゴロドク……今の自分が少しおかしくなっている自覚はあります。ですが……抑え切れないんです」
囁きと共にゴロドクの顔に届く彼女の息は焼けるように熱い。ゴロドクは思わず喉を鳴らした。ノンナの手は股下からジッパーをなぞるように下から上に動き、時折布地の上から優しく揉む。むくむくと固さを増してゆく肉棒が窮屈そうに開放を求めている。
ゴロドクは自身の中からも強い欲情が湧き上がるのを感じていた。不安や動揺を覚えていたのはノンナだけではない。ゴロドクにしても、先ほどのカチューシャの告白で少なからず動揺し、またこの先の事についての不安を抱いていた。それをノンナを抱く事で一時的にでも忘れたいという気持ちはあった。ただそれが、まだ我慢できていたというだけだ。
カチューシャの留学という事実、それによってノンナとも別れる事になるという現実。それらを何ら変える事のない、ただ心を慰めるためだけのセックス。
しかし──そんな逃避的な“慰め”が必要な時がある。その“慰め”が無ければ前に進めなくなる時がある。
「んっ……!」
「はぁっ……ンッ、ンンッ……!」
ゴロドクはノンナに顔を寄せ、唇を押し当てた。冷えた唇を重ね、舌を差し入れると口腔内の熱いぬめりが出迎えてきた。ノンナも吐息を荒くしつつゴロドクの舌に自身の舌を絡めてくる。
「ふぅ……あ、はぁ……」
「あぁ……ゴロ、ドク……ああんっ!」
情熱的にノンナは身を寄せ、肉棒を撫でる動きを止めないままゴロドクに密着してくる。それに応えるようにゴロドクは彼女のジャケットのボタンをもう一つ外して手を動きやすくさせると、汗ばむ乳房を強く揉んだ。思わず大きな嬌声を漏らすノンナに、ゴロドクは囁く。
「ノンナ、もうちょっと声を抑えて……ふっ、んはっ……!」
「は、はい、ゴロドク……ン、んふぅ……!」
唇を再び重ねて彼女の声が漏れないように注意しつつ、ゴロドクは更に深いキスを続ける。舌でノンナの歯茎を撫で、口腔内を舐め、彼女の舌を息苦しくなるまで愛撫する。
その間に、ゴロドクの股間を撫でていたノンナの手はジッパーを引き下ろしジーンズの中に差し込まれていた。下着を押し分け彼女の指が直接肉棒に触れると、それだけで肉棒はびくりと震えて更に固さを増してゆく。
「ゴ、ゴロドクの、こんなに苦しそうに、なっています……」
「ああ……俺も、興奮して……くうっ!」
ノンナの指が肉棒を引き出した。亀頭の粘膜が冷たい外気に触れ一瞬だけ萎えようとするが、ノンナの手に包まれると再び滾り始める。
そのままノンナはキスをしつつ肉棒を手で扱き始めた。ジーンズの留め金を外して根元まで握りやすくすると、反り返る竿全体を強すぎない程度に握り上下させてくる。時折指先で亀頭を撫でられると、粘りある先走りが滲み彼女の指を濡らした。
「痛くないですか? ゴロドク……」
「ああ……ノンナ、堪らないっ……!」
ノンナの乳房を揉む手を止めず、ゴロドクは言った。次第にノンナの手の動きが早くなってゆく。粘り気を帯びた手の感触が痛みとの境界線上ギリギリのところまで快感を探り、与えてくる。
「ぐうっ……駄目だ、ノンナ、このままだと……」
「……お待ちください」
こみ上げる射精感にゴロドクが呻くと、ノンナは扱いていた手を止めてゴロドクの肩に手を置き一旦距離を取った。はだけた胸元を直すこともせずにベンチから立ち上がり、座ったままのゴロドクの正面に周り腰を落とす。
「ゴロドク、足を……」
「あ、ああ……」
ノンナの求めるままにゴロドクは脚を広げた。既に半脱ぎ状態のジーンズはずり下がっており、トランクスの隙間から反り返る肉棒をノンナの眼前に突き付ける格好になる。
「素敵です。こんな、大きく……はむっ……ンッ、んふっ……」
「うお……っ!?」
広げられたゴロドクの腿に手を置き、ノンナは大きく口を開けると凶悪なまでに怒張した肉棒を愛おしそうに呑み込んだ。思わず大きな声が出そうになり、ゴロドクは慌てて口を押さえる。
そのままノンナは頭を前後に動かし始めた。かき上げる黒髪にちらつく雪が降りかかり、小さな雫となってゆく。整った口元には赤黒い亀頭が出入りし、ぐちゅぐちゅと唾液と先走りの混じった粘液が口の端から滴り落ちる。
「ふぅっ……ふぁ、ンンッ……ちゅうぅ……」
「(くあっ!?)」
強烈なバキュームフェラ。頬をすぼめ、竿ごと吸い上げる。ゴロドクは強烈な快感で声が出そうになるのを歯を噛み締めて堪えた。
「だっ、駄目だっ、出る……っ!」
「ンッ、ンンッ……っぱ……だ、出してください、ゴロドク……全部、私の、口に……」
口を離して懇願するノンナ。その間も肉棒には彼女の指が絡みつき唾液塗れの竿を扱いている。
「ノ、ノンナ……!」
「んっ……」
「くうっ!」
ノンナはひくつく亀頭に柔らかくキスをすると、再び咥えこんだ。ゴロドクの背筋にぞくぞくと快感が這い上がり、耐えがたい射精感が腰の奥から湧き上がる。ゴロドクは無意識にノンナの頭を押さえると腰を突き出した。
「ああっ! 出る、出るっ!」
「ンッ!?」
急に頭を押さえられ反射的に身体を固くするものの、ノンナは抵抗する事無くゴロドクに身体を合わせた。どくどくと濃い精液が駆け上がり、ノンナの口腔内を満たしてゆく。
「あっ……ああっ……ノンナっ……!」
「ふうっ……ン、んふっ……」
少し息苦しそうにしながらも、ノンナの喉が鳴った。ゴロドクの精液を呑み込んでいるのだ。
「はあっ……あ、はぁ……!」
「……ふぅ」
たっぷり数十秒は続いたであろう射精が止まり、脱力したゴロドクはベンチに身を預けた。肉棒を口から開放したノンナは口元の精液と唾液を拭い、ゴロドクの股の間に身を置いたまま身体をずり上げると寄りかかってきた。
「こ、今度は私にお願いします、ゴロドク……」
「……!」
ノンナは自らスカートをずり上げ、タイツを下ろすと脱力感から抜けきっていないゴロドクの手を自身の下半身に導いた。にちゃりとした感触と熱い湿気が伝わってくる。
そのままノンナは座るゴロドクの身体に跨るような格好になった。彼女の身体から立ち上る淫臭に当てられたかのように、射精直後だというのに肉棒が再び固さを取り戻してゆく。
「はあっ……ゴロドク、ゴロドク……! 早く、早くください……っ!」
「ちょ、ちょっとノンナ、まだ……!」
フェラの最中も相当に興奮していたのだろう。熱っぽくノンナは言うと、秘所をゴロドクの肉棒に押し当てると腰を揺すって擦り始めた。濡れそぼった陰唇が挿入をもとめてひくついているのが、亀頭から伝わる快感で分かる。
ここまででも十分にアウトではあるのだが、流石に街灯に照らされたベンチの上で挿入は危険なのでは。射精で僅かに取り戻した判断力でゴロドクはそう言おうとしたが、その口はノンナの唇で塞がれた。咽るようなノンナの匂いと先ほどのゴロドクの放った精臭が混じり、頭が痺れてくるようだ。
「んっ……あ、はぁぁっ!」
「うぐっ! ノンナっ、凄いっ!」
ゴロドクの背中に手を回し強く抱きつきつつノンナは空いた手をゴロドクの肉棒に添え、ひと息に腰を落とした。焼けてしまうのではと錯覚する程に熱く滾るノンナの膣内がゴロドクの肉棒を締め付けると、そのまま彼女は腰を激しく振り始めた。ベンチがギシギシと音を上げ、街灯の灯りが紅潮したノンナの首筋を照らす。
「ああっ! もっと、もっと下さいっ! ゴロドクの、熱くてっ、太いのを、全部っ……!」
「うあぁっ! ノンナ、ノンナっ!」
最早声を抑える事も忘れてしまったのか、ノンナは両手をゴロドクの身体に回し強く密着させつつ悶え、更なる快感を求めるように肉棒を強く締め付けた。ゴロドクもそれに応えるように腰を使い、下からノンナの秘唇を激しく突き上げる。引き抜かれた肉棒が再び奥まで届くたび、ノンナは荒い吐息と共に膣内の襞を蠢かせ射精を求めてくる。
「ふあっ! あっ、ああんっ! 凄いっ、ゴロドクッ! こんな、あひぃっ!」
「ああもう、知らねえぞっ! くっ、ぐうっ!」
もし周辺に誰か居たならば、とっくに気付かれているだろう。ここに来てゴロドクも声を抑えるのを諦めた。雪の冷たさも公園に吹く冬の風も、既に感じない。ノンナと身体を重ねる事で感じる熱さだけが全てだった。
抱き着いてくるノンナを自分からも抱きしめ、更に腰を動かす。テクニックなどの考えは何も無かった。ただノンナの膣内が与えてくる快感を貪ろうとする本能的な、彼女の全てを貪ろうという情動に任せた動き。しかしその荒々しい行為をノンナは全て受け止め、更に自らも快感を求めて肉棒を締め付け、愛液を溢れさせ、腰を夢中で打ち付けてくる。
「ひいっ! イクッ、イキます、ゴロ……ドクッ!」
「ああっ! 俺も、俺も出るっ!」
「おっ、お願いしますっ! 全部っ! ゴロドクの、精液っ! 全部注いで下さいっ!」
「うあぁっ! だ、出すぞ、出すぞ、ノンナッ!」
「ふひぃっ! イクッ、イクゥッ!」
獣のような声と共に、ノンナが絶頂に達する。同時にゴロドクの肉棒は膣内で膨れ上がり、彼女の子宮に精液を吐き出した。
「あっ! あはぁっ! イクッ、また、イクッ……!」
射精で肉棒が震えるたび、ノンナが身をよじらせる。精液が吐き出される度に軽い絶頂を迎えているようだ。
「はぁっ……く、くうっ……!」
その感覚が少しでも続くように、ゴロドクは腰に力を込めた。精液の奔流が次第に弱まり、結合部から溢れてくる。
「うぅ……はぁ……」
「ハァ、ハァ……」
ノンナを身体の上に載せたままゴロドクは大きく息をついた。ノンナもようやく絶頂が治まったのかゴロドクに身体を預けてくる。
「ノ、ノンナ……」
「……!」
「うっ!」
挿入したままの肉棒を包む襞が撫でるように優しい刺激を与えてきた。射精直後だというのに再びむくむくとノンナの膣内で勃起してゆくのが分かる。
ノンナはゴロドクの反応を待たず、再び腰を動かし始めた。愛液と精液が混じり、より滑らかになった結合部から水音が響く。
「ううっ……!」
「まだ……まだ、足りないんです」
ノンナは知らないとはいえクラーラとの二度のセックスを経て既に本日4回目、更に射精直後で敏感になっている肉棒を刺激されゴロドクが呻く。
背中に回した手の力を緩めないまま、ノンナはゴロドクの耳元に囁いた。
「……刻みつけてください。私が何処に行っても、ゴロドクの事を忘れない、ように……ああんっ!」
「………!」
そう言いつつ、再びゴロドクの肉棒が与えてくる快感にノンナは再び耽溺してゆく。ゴロドクの目が見開かれた。
ノンナの理性と判断力は既に決めている。カチューシャと共に行く事を。それは彼女の未来にとっても、カチューシャの未来にとっても正しい判断だ。
しかし彼女の感情は──それを認められていない。だからこそここまでゴロドクを求めてきたのだ。自分が居ない場所でも、自分を覚えていられるように。理性が感情から自分の記憶を奪わないように。
「……分かった」
「あ、ありがとうございます、ゴロド……」
「好きだ、ノンナ」
「っ!?」
ノンナの膣が一際強く肉棒を締め付けた。
それはゴロドクが今まで言うのを避けていた言葉だった。そして、おそらくはノンナも。互いに幾度となく体を重ねてきたが、「好き」だけは口に出来なかった。
あくまで身体を求めあうだけの関係でなければならない。そうでなければ、心までもカチューシャを裏切るだけになってしまう。そう思っていた。
だが、ゴロドクの腹は決まった。彼女がカチューシャへの想いとの板挟みで苦しみながらも自分を求めるならば、それに応えたいと思った。
「ゴロドク……ゴロドク……っ!」
「くうっ……ああ、相手してやる……このまま二回でも、三回でもっ!」
「ンッ! んあぁっ!」
泣きそうな顔で悶えるノンナにゴロドクは言うと、彼女の尻を掴んで結合をより深くさせた。既に下着は愛液と精液でぐしょぐしょだ。
ノンナはジャケットのボタンを完全に外すと、前を露出させた。ブラのホックを自分で外すと、重そうな乳房が揺れつつ露わになる。既に乳首は固く尖り、ゴロドクの愛撫を求めるように震えている。
堪らずゴロドクはその豊かな乳房に顔を埋めると、舌を乳首に這わせた。それだけで敏感なノンナの身体は反応し、背中を震わせている。
「好きっ! 好きですっ、ゴロドク! もっと、もっとぉっ!」
「ああっ! 俺もっ、好きだ、ノンナっ! ノンナぁっ!」
再び強い射精感がこみ上げてくる。ゴロドクはノンナの身体を強く抱きしめた。
「うあっ! また、まだ出るっ!」
「下さいっ! 私の、身体にっ! 貴方の精液を染み込ませて、くださ……いひぃっ!」
「ああっ、ノンナぁっ!」
体がびくびくと震え、ノンナの膣に再び精液が注ぎ込まれる。
「あはぁ……ゴロ、ドク……!」
快楽に蕩けた表情で、ノンナは喜々としてゴロドクの精液を受け止めた。
「……すみません、ゴロドク」
ノンナが冷静さを取り戻したのは、それから更に二度の射精をゴロドクが行った後だった。
流石にちょっと腰にきたようだ。疲れを訴える腰骨を軽く叩きつつゴロドクはベンチを立ち、周辺に残った性交の残渣を拭きとってゆく。
「大丈夫、気にするなよ」
「………」
「……さて、どうしたもんだかな」
ゴロドクはため息をついた。
ノンナとの関係を正面から受け止める事は決めた。では、カチューシャとの関係をどうするべきなのか。このまま行けば自然消滅するとはいえ、流石にそれは無責任すぎるとも思えた。
その様子に、ノンナはゴロドクが何を考えているのか察したのだろう。ジャケットを締め直しつつ彼女は言った。
「……私が全てお話します、ゴロドク。もともとは私が勝手に起こした事です」
「今更それも無いだろ? それに、この関係を引きずってしまったのは俺の責任だ」
「そんな事はありません。ゴロドクは私が誘わなければ……」
「いや、だからそれを言ったら……」
「確かに、お二人ともに責任があるとは言えます。しかし……そう悲観的になるものでもないかと」
突然の横からの声。
「え?」
ゴロドクは言葉を止め、声の方向を見た。
「
「ク、クラーラ!?」
「クラーラ、どうしてここに?」
果たしてベンチの裏の茂みから、黒いコート姿のクラーラが顔を出していた。
ノンナにも彼女の存在は予想外だったようで、無表情に僅かな驚きを乗せて彼女に尋ねる。
クラーラはさも当然のように答えた。
「はい。本日ゴロドクにお付けした発信機が長時間に渡って公園から動かなくなったので……これは何かあったなと思いまして」
「は、発信機!?」
「はい、カチューシャ様との大事なお話のようでしたし、そうであれば私にとっても重要な話ですので。しかし……思った以上の難件だったようですね」
彼女の言う“発信機”が何を示すのかをゴロドクが連想するのは難しくなかった。出掛けの前にクラーラから「コーヒーのお礼」と渡されたあのピンズだ。
「ああ、もちろん他の方が公園に入ってこないように手は打っておきましたので」
「な、なあ、クラーラ、聞きたい事は色々とあるんだけど……何時から居たんだ?」
「そうですね……ゴロドクがノンナ様に『好きだ』と言われた時あたりでしょうか」
「……!?」
ゴロドクは思わず言葉を失った。ノンナも羞恥心からか、ジャケットの襟を立てて顔を俯かせている。
こちらの動揺をあえて無視するように、クラーラは言葉を続けた。
「ともかく、時間の余裕はありません。このままカチューシャ様もノンナ様もゴロドクも各々が心残りをしたまま離れ離れになってしまっては、行く先でも苦しい思いをするだけです」
「今日言っていた、カチューシャを篭絡させるって方法か?」
「あれは今後もカチューシャ様とゴロドクの交際が続くという前提での作戦です。この場合は……」
クラーラは指を一本立てた。
「カチューシャ様がゴロドクとの関係に『思い出』を作った上で決着をつけられて、ノンナ様もカチューシャ様に隠れ立てなくゴロドクとセックスできるようになる。それが最良でしょう」
「いや、それは流石に無理じゃ……」
思わず素直な感想が漏れたゴロドクに対し、ノンナは再び落ち着きを取り戻した表情で尋ねた。
「……何か算段があるのですか、クラーラ?」
「はい。ただその為にはお二人のご協力は当然として、次の無限軌道杯でのそれなりの成果が必要となります」
そこまで言うと、クラーラはノンナを正面から見据えて言った。
「最低でも準優勝を目指します。如何ですか、ノンナ様?」
「……言われずとも優勝を目指すつもりです。クラーラ」
そう答えるノンナの表情は、元の“ブリザードのノンナ”のそれに戻っていた。
【最終エピソードに続く】