戦車道連盟、北海道演習場。
この演習場で今年の夏、大洗女子学園を中心とした高校戦車道連合チームと大学選抜チームがプロリーグを意識した特別演習──実際は一言では語りつくせぬ事情があった事は当事者たちだけが知っている──を行った事は戦車道に関わる者の間では有名な話である。西住流家元の二人の娘と島田流の天才少女の激突は、当時の戦車道新聞を大きく賑わせた。
そして今、その場所で無限軌道杯の決勝戦が行われていた。
「………」
T-34/85の砲塔から小さな半身を出しつつ、前方を見据えるカチューシャ。
「………」
Ⅳ号戦車の砲塔から身を出し、静かに目を閉じる栗色の髪の少女。西住みほ。
「……どっちだ?」
彼女らを映すプロジェクターから目を離せないまま、観客席のゴロドクは膝に置いた手を強く握った。
小銃めいた射出音が二つ響く。戦車の走行不能を示す白旗が噴き出る音。
僅か、ほんの僅か、T-34/85の白旗が遅かった。
「ふぅ……おっととっ!?」
そこでカチューシャは緊張の糸が切れたのか、大きく息をつくと危うく下に落ちかけた。慌ててハッチを掴み、身体を支える。
「……ありがとうございました、カチューシャさん」
一瞬先に白旗が上がったⅣ号戦車から、みほが頭を下げる。
姿勢を立て直し、カチューシャは不敵に笑った。
「良い勝負だったわ、ミホーシャ」
『──映像確認完了。大洗女子学園フラッグ車の走行不能判定が先に発生した事を認めます。よって、プラウダ高校の勝利!』
審判長の蝶野亜美一尉の声がフィールドに響く。同時に粉雪降る観客席は熱い歓声に包まれた。
「
観客席の一角、試合中に走行不能になった選手が待機する観戦席からノンナは立ち上がり、プロジェクター上でアップになるカチューシャに拍手を送った。周囲のプラウダ戦車道メンバーもある者は歓声をあげ、またある者はノンアルコールウォッカの瓶を高々と掲げる。そんな中、別の席に座っていたクラーラは拍手をしながらノンナの傍へと寄った。周囲の歓声が二人の会話を隠す。
「お疲れ様でした、ノンナ様……さて、“ここからが”本番ですね」
「……ええ、分かっています」
カチューシャへと視線を向けたまま、ノンナは静かに答えた。
かくして、プラウダ高校の“小さな暴君”“地吹雪”の異名を持つカチューシャと“ブリザード”の異名を持つノンナは高校戦車道卒業を前に新たな伝説を残す事となった。
真冬に開催される大会だけに、無限軌道杯におけるプラウダの活躍は下馬評の時点である程度は予測されていた。それでいて尚、見る者を驚かせたのはプラウダ戦車道メンバーの戦意の高さであり、同時に隊長であるカチューシャの大きな変化だった。
他の強豪校の隊長格に比べカチューシャは行動力と決断力はあるものの相手を侮るところがあり、その慢心が大きな弱点というのが大方の評価だった。しかし、今大会のカチューシャは何かが違っていた。勝負ひとつひとつと丁寧に向き合い、勝利を妥協なく追求し、格下の相手であろうと慢心する事無く全力で押し潰す。それは今までのカチューシャを知る者に大きな驚きを与えた。
また、そのカチューシャを補佐するノンナやクラーラ等の個々の踏ん張りも大きな助けとなった。特に準決勝の聖グロリアーナ戦において、敵将ダージリンの策に嵌ったカチューシャを身を挺して守り切ったノンナのIS-2とクラーラのT-34/76の健闘には戦車道関係者からも賞賛の声が挙がった。
───しかし、そんな彼女たちの戦いの原動力が、一人の平凡な男子生徒に依るものである事を知っていたのは当事者だけであろう。
「……さて、これで『第二段階』もクリアしました」
プラウダ高校優勝が決定して、一通りのセレモニーが終わった翌々日。その“当事者”たちはゴロドクの部屋でテーブルを囲みつつ今後の打ち合わせを行っていた。コーヒーの入ったマグカップに口を寄せつつクラーラが言う。
「次が『最終段階』……俺がカチューシャを抱いて、彼女に心残りなくロシアに行ってもらう、か。そう上手くいくのかな?」
「それは貴男次第ですよ、ゴロドク。しっかりカチューシャを気持ちよくさせて、最高の喪失を与えてあげてください」
「……努力します」
自信なさげにゴロドクが言うと横に座るノンナが大真面目に答えた。正直なところ、まだゴロドクにはカチューシャとセックスするというイメージがピンと来ていない。
「カチューシャの様子は?」
「やはり気持ちの揺れはあるようですが、それでも覚悟を決められていると思われます。あとは最後の一歩を踏み出す勇気といったところでしょうか。そこで少し気おくれしてくれた方が、こちらとしては都合が良いのですけど」
クラーラはそう言うとノンナの方をちらりと見た。ノンナもそれに目配せを返すが、その意図はゴロドクには読めない。
「で、その……俺は、カチューシャから誘ってくるのを待てばいいのか?」
ゴロドクの問いかけにクラーラは首を横に振った。
「いいえ。それでは何時になるか分かりません」
「それじゃ、俺からカチューシャを?」
「それもそれで問題があります。カチューシャ様からすれば、ゴロドクは別れ話を持ち出してそれきりの相手になっています。その相手が自分から『抱きたい』と言ってくれば流石におかしいと思いますし、最悪の場合、カチューシャ様の洞察力ならこの一連の仕掛けに気付くかもしれません」
「???」
ゴロドクの顔に幾つもの疑問符が浮かぶ。それでは、どうやって自分とカチューシャの接点を作るのだろうか。
その疑問に答えるように、クラーラは懐から封筒のようなものを取り出した。のしの巻かれたご祝儀袋である。
「それは?」
「プラウダ学園艦町内会の方からの祝い金です。これを使って、戦車道メンバーの慰安をするようにと。これも優勝を目指す理由のひとつでした」
「既に候補地は決まっています。青森の山奥の温泉宿です。年末年始を過ぎたオフシーズンなので、貸し切りも大歓迎だそうで」
「温泉宿……でも待ってくれ。それは戦車道メンバーの慰安旅行だろ? 幾らカチューシャの元彼だからって、女子ばっかりのところに俺が一緒にいくのか?」
ノンナの補足に対してゴロドクは尋ねた。こと戦車道に関してはゴロドクは門外漢である。いくら何でも、当たり前のような顔で戦車道メンバーの慰安旅行に参加していては奇異の目は避けられまい。
当然ともいえる疑問に、クラーラは動揺することなく答えた。
「勿論、それにゴロドクを来させることはできません。一緒に来ていただくのは……」
数日後。
青森港に寄港するプラウダ学園艦から降船する三人の男女の姿があった。
「……なるほどね」
大きなリュックサックを背負いつつ、誰とはなしにゴロドクは呟いた。
「ほ、ほら、ゴロドク! バスが来るわよ!」
「一本逃がせば一時間は来ません。遅れないようお願いします」
そんな彼にどこかぎこちない口調で指示を出すカチューシャと、いつもと変わらぬ口調で声をかけるノンナ。二人とも軽装だ。
「分かってるって。よっこら……しょっと」
二人に答えつつ、ゴロドクはリュックを背負い直した。
現在、ゴロドク達は慰安旅行の予定地である温泉宿に下見に向かおうとしていた。下見役がカチューシャとノンナ。ゴロドクは荷物持ちとしての同行だ。
バスに乗り込みつつ、ゴロドクは打ち合わせの時のクラーラの話を思い出した。
『戦車道メンバー全員参加の大所帯での旅行となります。周辺に危険な場所はないか、温泉はどの程度の人数が一度に入れるか、レクリエーション施設はどんなものがあるか。それらを実地で下見しなければなりません』
『その下見に、俺が?』
『カチューシャ様も切っ掛けを探っています。貴男を荷物役として同行させるよう誘導するのは難しくないでしょう』
『温泉宿で、カチューシャと……か』
『こういうものはシチュエーションが重要です。雪降る宿で、互いの事を忘れないために交わる二人。ストーリー性としては十分かと』
自分自身が学校の、牢獄めいた自己批判室で処女を失った件についてはどう思っているのだろうか。涼しい顔で説明するクラーラに聞いてみたかったが、流石にそれは我慢した。
古めかしいバスに乗り、ゴトゴトと揺られながら宿へと向かう。周囲の景色は港町から市街地へ、市街地から山の方へ。空は晴天だが、木々に被った残り雪が緑に白の彩りを添えている。
やがて、古めかしいバスはそれ以上に古めかしい和式の旅館の前で止まった。クラーラの言うとおり、今はオフシーズンなのだろう。降りるのは自分たちだけのようだ。
「おー……」
改めてその建物を前にしてゴロドクは声を漏らした。建造物の歴史などは分からないが、しっかりした門構えと丁寧に掃除が行き届いた玄関口だけでも、その旅館が相応の伝統を持つものである事が理解できた。
「感心している場合ではありませんよ、ゴロドク」
「あ、ああ」
エントランスにチェックインに向かうノンナに声をかけられ、ゴロドクは我に返るとその後を追った。
「部屋は三人部屋ひとつよ。ゴ、ゴロドク! 変な事を考えないようにね!」
顔を赤くしつつカチューシャが言った。カチューシャは二部屋に分けて泊まるプランで考えていたようだが、それをノンナとクラーラが部屋代を理由に相部屋としたのだ。当然ながら、これも『作戦』の一環である。
チェックインのサインを書く時、ゴロドクは何となくその宿帳の名前に目を留めた。僅かだが自分たち以外の宿泊客もいるようだ。
「……ん?」
流麗なキリル文字で書かれた名前が「カチューシャ」とカタカナで書かれた上にある。外国人の宿泊客。日本に観光に来たのだろうか。
そんな事を思いつつゴロドクは名前を書き、カチューシャらと共にエレベーターで部屋へと向かった。
「わぁ……!」
先頭でドアを開けたカチューシャが声をあげ、眼を輝かせた。
家族用の部屋なのだろう。内部は二部屋に分かれており、落ち着きある居間には大きなテーブルに幾つもの座椅子、大型テレビが備え付けられている。壁際には小さな冷蔵庫にポットに急須に茶葉の筒。窓からは雪積もる山の景色が一望でき、なかなかの絶景である。
奥の寝室には布団が敷かれ、浴衣なども用意されているようだ。
「個室の風呂、トイレはありません。ここは天然の温泉が沸き、サウナ、岩風呂、露天風呂もあるようですね」
旅館のパンフレットを見つつノンナが言う。ゴロドクは部屋に上がると、背負ったリュックを下ろし肩を回した。
「ふぅ……」
「わ……悪かったわね、ゴロドク。重かった?」
おずおずとカチューシャが聞いてくる。最初にゴロドクに荷物役を頼みに電話をしてきた時から、彼女の態度はどこかぎこちない。ここに自分を誘った時点で覚悟はできているのだろうが、それでもいつも通り接するというのは難しいのだろう。彼女の気持ちを推し量りつつ、ゴロドクは笑って答えた。
「大丈夫、大丈夫。こんな大荷物、実際カチューシャには持たせられないしな」
「そ、そう? ありがとう……ええっと、ノンナ。この後の予定は?」
「まずは明るい内に周囲の施設や名所とされる場所、あと危険とされている場所の確認を行います。旅館内の確認はそれからで良いでしょう」
カチューシャの問いかけにノンナは手帳を広げつつ答えた。既にプランは固まっているようだ。
「結構かかりそうね……それじゃ、早速回るとしましょうか! ゴロドク、キーは預けるから貴男はしばらく寛いでなさい。ゲームコーナーでお金を使いすぎないようにね!」
「子供かよ!?」
「温泉にでも入って疲れを癒してください」
そう言うとカチューシャらはリュックからデジカメや測量用のメジャーなどを取り出した。カチューシャの処女喪失という裏の目的もあるとはいえ、ちゃんと下見もするようだ。
彼女らを見送り、ゴロドクは改めて身体を伸ばして横になった。このままゴロゴロとするのも悪くはないが、折角の旅館と温泉である。学園艦での一人暮らしで旅などろくにした事も無い。ここは貴重な機会を堪能すべきだろう。
「……よし」
身を起こし、寝室に用意された浴衣にゴロドクは着替えた。外の寒そうな光景とは裏腹に、屋内は暖房が効いている。下着に浴衣だけで十分な程だ。
揃えたスニーカーを靴箱にしまい、スリッパを引っかけて廊下に出る。再び階下に戻り、フロントに場所を確認して温泉へ。
やがて、やはり年季を感じさせる暖簾のかかった浴場前までゴロドクはたどり着いた。壁には「入浴上の注意」と書かれたプレートが貼られており、「タオルの浴槽内での使用禁止」「洗濯禁止」「入れ墨の方はご遠慮ください」などのお決まりの文言が書かれている。
「……あれ」
『混浴風呂の利用について』という見慣れない箇所にゴロドクは気付いた。どうやら露天風呂には男女別に分けられたものとは別に、混浴もあるようだ。
「混浴……か」
まあ、こんな山奥の温泉宿では自分ら以外では湯治に来た老人くらいしか居ないだろう。あるいはノンナやカチューシャを誘えば、水着でなら一緒に入れるだろうか。
そんな事を考えつつゴロドクは暖簾をくぐり脱衣所の戸を滑らせた。浴衣と下着を手早く脱いでロッカーに入れ、備え付けのタオルを取って浴場へ。
「おお……」
果たして大浴場にゴロドク以外の入浴者はおらず、貸し切り状態のようになっていた。先の方にガラス戸があり、そこから露天に行けるようだ。
自宅の風呂では味わえない開放感を覚えつつ、ゴロドクはかけ湯をするときょろきょろと辺りを見た。屋内の浴槽で思い切り手足を伸ばして入るのも気持ちよさそうだが、やはり露天が気にかかる。
カラカラとガラス戸を開け、ゴロドクは屋外へと出た。
「うおっ!?」
今までの暖かな空気から一転して、身を切るような冷たさの外気がゴロドクの肌を刺激する。
「うぅ、寒い寒い!」
身を縮めつつゴロドクは足早に岩風呂に向かった。つるつるする石畳に注意しながらも、駆け込むように湯船に飛び込む。
「きゃ……!?」
「え!?」
急いでいて気付かなかったが、どうやら先客がいたらしい。飛沫が跳ねたのか、湯気の向こうから女性の驚く声が届く。
「(って、女性?)す、すみません……」
間違って混浴の方に来てしまったのだろうか? 動揺しつつもゴロドクが謝罪すると、湯気の向こうの人影は聞き慣れた声で答えた。
「ほぼ貸し切りで気分が昂ぶるのは分かりますが……気をつけてくださいね、ゴロドク」
「クラーラ!?」
果たして、それは金髪を上でまとめて入浴するクラーラだった。バスタオルは着けておらず、乳房や秘所を隠すことも無く温泉に身を委ねている。
均整の取れた白く美しい身体が湯船で火照る様は何とも艶めかし──
「って、そうじゃなくて! 何でここにクラーラが!?」
「今回の私はバックアップ要員です。万一の事態でカチューシャ様とゴロドクが結ばれる事が阻害されないよう、先行してこちらに来させていただきました」
そう語るクラーラはどこか楽しそうだ。彼女の父は諜報関連の仕事をロシアでしているそうだが、彼女もその血を受け継いでいるのだろう。
「それなら、普通にカチューシャ達と一緒に来れば……」
「残念ながら、私はノンナ様ほどカチューシャ様からの信頼を得てはいません。表立って同行を志願すれば、カチューシャ様は第三者の私を意識してゴロドクへのアプローチを諦めたでしょう」
「『第三者』って……それじゃ、ノンナは?」
「ノンナ様は既にカチューシャ様にとって家族も同然……いいえ、家族以上に素直な自分を出せる相手です。正直なところ、あの合間に入るのが私の目的なのですが達成できる気がしません」
「……そこまでなのか」
ゴロドクは以前、カチューシャが自分とノンナを仲良くさせようと自宅に食事を作りに来た日の事を思い出した。今思えば、あれはゴロドクに自分の家族を紹介するような感覚だったのだろう。
確かにあの二人の間に入り、ノンナより優先順位を上げるのは不可能に近い試みだ。クラーラなりに悩むところはあるのかもしれない。
湯船に浮かぶ白い乳房に吸い寄せられる視線を意識して逸らしつつ、ゴロドクはクラーラに言った。
「それじゃあ、二人からは隠れたままクラーラは動くのか?」
「ノンナ様とは携帯で連絡を取っていますが、カチューシャ様には内緒です。偽名でチェックインは行っていますし、動きが重ならないように立ち回ります」
なるほど、あの宿帳に書かれていた外国人の名前はクラーラの偽名だったか。ゴロドクは頷き、ふとある事に気付いて言った。
「あー、って事は悪い事したな。二人が外を見て回っている間に温泉に浸かろうとしてたんだろ?」
ノンナと連携を取っているという事は、彼女らが旅館から離れている事も把握している筈だ。
カチューシャが気まぐれで「温泉に入ろう」とか言い出した場合、温泉に浸かっている状態から咄嗟に隠れるのは難しくなる。だから今の内にクラーラは温泉を利用していたのだ。ゴロドクはそう判断した。
「悪い。俺は中の風呂に行くから、クラーラはゆっくり浸かっててくれ」
そう言ってゴロドクは湯船から立ち上がろうとした。
だが、その手がきゅっと掴まれた。
「違います、ゴロドク」
「違う?」
クラーラがその身を寄せてくる。ゴロドクは少したじろぎつつも尋ねた。
「……
温まっている筈のゴロドクの身体に震えが走った。
腰を落としたゴロドクに、クラーラは更に身を寄せてくる。湯に濡れた彼女の艶やかな肌が直接ゴロドクの肌に触れ、乳房の豊かな弾力が伝わってくる。
「ク、クラーラ?」
「ノンナ様から『ゴロドクは温泉に向かうでしょう』とメールをいただきましたので、ちょっと先回りしていました」
「それって……ど、どういう、事だ?」
いや、「どういう事」かは既に気付いていた。自分が温泉に入ると知っておきながら、タオルひとつ身に着けずに湯船で待ち構えていた。これで「ただお話をしたかっただけ」という訳はあるまい。
クラーラは微笑んだ。少し顔が上気しているのは、温泉にの熱さに因るものだけだろうか。
「ゴロドク……こうして貴男に触れるのも、暫くぶりですね。先日の打ち合わせの時も、本当に打ち合わせだけで終わってしまいましたし」
実際、無限軌道杯に突入してからはノンナやクラーラと個人的に接する機会は大幅に減っていた。
連日の仕合と演習に加え、二人ともカチューシャの下でNo.2、No.3としてメンバーの指導や管理も行わなければならない立場である。それでいてちゃんと学生として授業も受けねばならないのだ(戦車道の大会中、学校側も多少の融通は利かせてくれはするが)。必然、朝は早く、夜は遅くまで戦車道漬けとなり、ゴロドクからすればセックスはおろか普通に話をする事も難しい状態が続いていたのだ。
また、優勝した事で大会後も彼女らは多忙な状況だった。戦車道関連メディアの取材を受け、支援者へのお礼回りを行い、ここに来てようやく慰安旅行のプランを固められる余裕ができた感じだ。
「うっ……!」
お湯の中、クラーラの指がゴロドクの太腿に触れた。そのまま付け根まで這い上がり、既に半勃ち状態だった肉棒に触れる。それだけでびくりとゴロドクの肉棒は跳ね、クラーラの指の中で膨らみ始める。
「ちょ、クラーラ、まずいって……!」
「大丈夫です。今は私たち以外のこの宿の利用者は居ませんし、ここは古くから著名人の逢引き宿としても使われていたそうで」
「ふおっ!」
きゅっと肉棒を柔らかく握られ、ゴロドクは思わず声をあげた。
クラーラの瞳が潤み始めていた。温泉の湯気の独特な香りに、彼女の身体から放たれる妖艶な気配が加わりゴロドクの脳髄を刺激する。
「恥ずかしながら、私も少し“溜まって”しまっていまして……カチューシャ様たちが戻って来られるまで3、4時間かかるそうですので、それまでの間、ゴロドクを独り占めさせていただこうかと」
「な、なあ、クラーラ。ひょっとしてこの旅行、カチューシャを
「……さて、どうでしょう?」
「(否定しないのかよ!)」
お湯の中でクラーラの手がゴロドクの肉棒を滑らかに扱く。ちゃぷちゃぷと水面に波が立ち、その波は次第に激しさを増してゆく。
ゴロドクからしても、クラーラから手淫をしてもらうのは久しぶりである。新鮮な刺激に肉棒はびくびくと震え、今にも射精してしまいそうだ。
「ク、クラーラ、ヤバい、出るっ……!」
「ふふっ、まだ我慢してください」
そう言うとクラーラは手の動きを止めると縁の岩に手を置き、そのまま腰をゴロドクに向けた。
「どうぞ……私の一番奥に、ゴロドクの、一番濃いのを下さい……」
「(うおお……!)」
湯に濡れた肉付きよいクラーラの尻がゴロドクの眼前に突き出される。秘所はおろか、ひくつく尻穴まで丸見えだ。臍に貼り付く勢いで勃起している肉棒に自身の手を添えつつ、ゴロドクは立ち上がった。
「分かった。いくぜ」
「は、はい……んっ……!」
赤黒い亀頭がクラーラの女陰へ押し当てられる。波立つ湯が時折肉棒にかかり、心地よい温みを与えてくれる。外気の寒さは相変わらずだが、それが気にならない程に今のゴロドクは昂っていた。おそらくはクラーラもそうなのだろう。挿入を待ち侘びるようにその腰をくねらせ、亀頭だけではなく全体を迎え入れようと自分から肉棒に秘唇を擦りつけてくる。
「……本当、エロくなったよな。クラーラ」
「お嫌い……ですか?」
「いや……大好きだ」
「あ、ありがとう、ござ……ンンッ!」
ずぶずぶとゴロドクの肉棒がクラーラの秘所に挿入されてゆく。クラーラは強まった快感に嬌声を漏らしつつも、ゴロドクの肉棒全体を無数の襞で舐めまわすように刺激してゆく。相変わらずの名器に、ゴロドクの腰が震え危うく射精しそうになる。
「ぐううっ!」
「い、いいですっ! ゴロドク、奥、来て……っ!」
それを何とか堪え、ゴロドクは腰を動かし始めた。温泉で十分に温まったクラーラの身体は何時も以上に暖かく、具合がいい。
「(こりゃ、まずいな……)クラーラ、一気にいくぞ!」
「え? んっ! あっ、ふあぁっ!」
強まる射精感が限界に達する前にクラーラを絶頂に導こうと、ゴロドクは荒々しく腰を振った。じゅぷじゅぷと水音が結合部から響き、腰を突き入れると時折亀頭がクラーラの子宮口に触れる。クラーラは激しく悶え、結ばれていた髪が解けて背に貼り付く。濡れた金髪が白い肌に美しい光沢を与え、湯と汗で更に濡れてゆく。
「ぐっ、うっ、うおぉっ!」
「はっ、はひっ、ゴロ、ドクッ! いいっ! 私の中、一杯にっ! ああぁっ!」
獣めいた声をゴロドクが漏らすと、クラーラも雌そのものの嬌声で応える。クラーラの膣内の動きが激しくなり、強く肉棒を締め付け始めた。彼女も絶頂が近い。
「出すぞ、出すぞっ、クラーラっ!」
「来て、来てくださいっ! 全部、奥に、出して……あんっ! ああんっ!」
「うっ、うあぁっ!」
「………っ!」
どくどくとゴロドクの奥から溢れた精液がクラーラの膣内へと迸った。精液の熱い奔流が容赦なくクラーラの子宮へと叩き付けられる。
「うぉっ、ま、まだ、出るっ……!」
「あっ、ひいっ! ゴ、ゴロ、ドクぅ! はぁぁっ!」
それを受け、クラーラも絶頂に達した。一際強く肉棒を締め付けたかと思うと、一滴残らず搾り取ろうと襞がより奥まで導こうとする。
「あ、は、はぁっ……!」
幾度かの射精感を経て、硬度を弱めた肉棒がクラーラの秘所から抜き出された。
「あ……」
クラーラは身体を回し、ゴロドクに正面を向けると温泉の縁に腰かけ、そのまま身体を引いた。
「クラーラ?」
「湯船に、ゴロドクのを零す訳にはいきませんから……んっ……」
ごぽりとクラーラの秘所から精液が溢れてくる。手近にあった洗面器を手に取り、クラーラは自分の身体に湯をかけた。
まだ力が入らないのだろう。投げ出された脚の間から覗く秘所からは、ゴロドクが大量に吐き出した精液が更に零れてゆく。
「うっ……」
その様に、射精したばかりというのにゴロドクの肉棒は早くも固さを取り戻し始める。
「………♪」
クラーラは艶やかに微笑むと、ゴロドクに言う。
「ゴロドク、その……私も一度では物足りないので、もう一度、よろしいですか?」
カチューシャ達が戻ってくるまで、あと3時間ほど。
「あ、ああ……その、こっちこそ、頼む」
果たして、この旅行が終わるまでに自分の身体は持つだろうか。
そんな事を頭のどこかで考えつつも、ゴロドクは頷いていた。