独占欲だよノンナさん
涼し気な日差しがそそぐ昼下がりのカフェ。長身のウェイトレスが慣れた手つきで二人の少女の間にケーキと紅茶、そして小さなボウルに入ったジャムを置いてゆく。
「ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます」
ウェイトレスの一礼に二人の片方、クラーラはにこやかに答えると彼女を見送り、完全に去ったのを確認すると前に座る少女を見た。
「……それにしても珍しいですね。貴女の方から私にご相談とは」
「こういう内容を話せるのは貴女くらいですから、クラーラ」
そう言いつつもう一人の少女、ノンナはスプーンにジャムを掬うと口に含み、カップを手にすると紅茶を少し飲んだ。
現在、クラーラはノンナらと常に行動を共にしている訳ではない。モスクワの大学で戦車道を修めるノンナやカチューシャ達と異なり、クラーラは父の諜報関連の仕事を補助する形でロシアの各地を転々としている。伍堂六郎ことゴロドクはそれに時折随行しつつ、やはりモスクワでロシア語の勉強をしながら暮らしている(なお、父親の目が光っているためゴロドクと交わる回数が大幅に減っているのがクラーラとしては若干不満ではある)。
「つまり、カチューシャ様にはお話できない事……という訳ですか」
「まあ、そういう事です」
短いやりとりでクラーラはノンナの相談内容を察し、ケーキにフォークを入れた。頷くノンナ。
「ゴロドクと上手くいってないのですか?」
「!?」
カチャンと皿に置かれたカップが鳴った。丁度戻すところでなければ、ノンナはカップを取り落としていたかもしれない。クラーラはそう思いつつ言葉を続けた。
「そう驚かれなくても結構です、ノンナ様。貴女がカチューシャ様に相談できない事があるとしたら、ゴロドクの事以外にはそう無いだろうと思っただけです」
「……本当に話が早くて助かります。クラーラ」
深く息を吸い、ノンナは再び落ち着いた口調で答えた。
「何があったのですか? 少なくとも、私と一緒に居るときのゴロドクはノンナ様の事で何か言ったりはしていませんでしたが……」
クラーラのその言葉に嘘は無かった。ロシア語の勉強や『仕事』絡みで共にいる時、ゴロドクがノンナやカチューシャの事で不満を言っているのをクラーラは見たことがない。むしろ、自分の知らないカチューシャやノンナの姿を嬉しそうに語る彼が羨ましく思える程だ。
一方、ノンナは少し顔をうつむかせ、自分の考えや思いをどう言ったものか考えているようだった。
やがて、ノンナは顔を上げると言った。
「『上手くいっていない』というのは適切な表現ではないのかもしれませんが……その、最近のゴロドクがどうにも“淡泊”なんです」
「……“淡泊”?」
ノンナの言葉をクラーラは一旦受け止めて吟味した。男女関係においての“淡泊”の意味が理解できないほど、彼女は
クラーラは声を気持ち小さくしつつ尋ねた。
「つまり……あまり夜の相手をしてくれなくなったと?」
「ええ。以前は互いが満足し切るまで相手をしてくれたのですが、最近はこちらが物足りない状態でも普通に寝てしまったり、あるいは『そういう事』も無く食事の後でそのまま寝てしまったりで……」
何やら相談内容が若妻の愚痴めいてきた。
とはいえ、ここで安易に彼女の意見に同意しては相談相手としては不十分だ。クラーラは更に聞いた。
「ゴロドクが面倒そうな素振りをしたりとかはされましたか?」
「いいえ、申し訳なさそうにはしてくれるのですが……それが何回も続き、正直なところ私への興味が薄れているのではないかと」
「……?」
そう言うノンナは一見するといつもの無表情のままに思えるが、その瞳の奥には言いようのない不安感と切なさが浮かんでいる。
普段見慣れない彼女の姿にクラーラは同情を覚えつつも、ふとある事に気付きノンナに尋ねた。
「ノンナ様、一つお聞きしたいのですが……ゴロドクと『される時』は、カチューシャ様はどうされているのですか?」
「勿論、カチューシャとも一緒です。彼女の前で交わる事が出来るようになったとはいえ、私とゴロドクの関係はあくまで伏せられたものですから」
「……毎回、そうなのですか?」
「そうですね……ほぼ、毎回だと思います」
「………」
クラーラはどう返したものか迷い、少しぬるくなった紅茶をひとくち飲んだ。
大凡の状況は分かった。この問題の原因はシンプルだ。要はゴロドクへの過剰な負担と、ノンナ本人は自覚していないようだが彼女のゴロドクへの独占欲が組み合わさり、強い欲求不満を引き起こしている。
如何に精力旺盛な男子(今は浪人中だが)とはいえ、ゴロドクは運動系の部活をやっていた訳でもない普通の学生である。日々フィジカルトレーニングを欠かさない戦車道の活動を何年も続けているカチューシャやノンナとでは基礎体力が違う。3Pによるセックスは確かに強い刺激にはなるだろうが、それが毎回続き常に両者から求められれば、当然応えられる限界もあるだろう。
では、どうするか──
「……ノンナ様、そちらの学校の戦車道の今後の活動予定は分かりますか?」
「え? ええ、手帳に……」
ノンナは頷くと、傍らのポーチから手帳を取り出して広げクラーラに渡した。
几帳面なノンナの性格を示すように、流麗な文字で丁寧にその日の予定が書きこまれている。クラーラはそれを翌月分まで読み進め、ある所で目を留めた。
「ノンナ様、ここの『遠征試合/残留』というのは……?」
「それは……」
ノンナが詳細を説明すると、クラーラは頷いた。
「……では、ここの一週間が良いかもしれませんね。ゴロドクの予定がフリーになるようこちらも調整しておきます」
そう言うとクラーラは微笑んだ。これでノンナの鬱積したものも発散されるだろう。
──実際のところこの時、クラーラはひとつ「誤算」していたのだが。
カフェでノンナとクラーラが話をしてから二週間後。
大勢の人々で賑わうモスクワ駅、戦車が搭載された貨物列車を背にパンツァージャケット姿の少女達が向かい合うように並んでいる。
「それではこれより、ノヴォシビルスク大学戦車道との交流戦へ出発する!」
「出立するチームへ、歓送の礼!」
『お気をつけて!』
列車を背にする隊長の言葉に応えるように、それに向かい合う副隊長が号令を放つ。副隊長の後ろに並ぶノンナを含めた少女たちが礼をすると、列車側の少女たちがそれに返し、頭を上げてから列車へ乗り込んでゆく。
ノンナはその少女達の中で頭ふたつほど小柄なカチューシャの姿を認め、声をかけた。
「頑張ってきてください、カチューシャ」
「任せなさい! このカチューシャの強さをノヴォシビルスクの連中にも見せつけてやるんだから!」
ノンナと暫く離れ離れになる事への不安は当然あるだろうに、カチューシャは強気な表情で答え、手を振った。
ロシアの大学戦車道においても、日本の戦車道と同様に他校との交流戦は積極的に行われている。
とはいえ、何事も日本と同じようにとはいかない。一番の問題は距離である。ノヴォシビルスクはロシアにおいて大都市のひとつであるが、モスクワとの距離は実に2000㎞を超える。今回の交流戦は行きに二日、現地で三日、戻りに二日と一週間を要する長旅となる。無論、それにモスクワ戦車道のメンバー全員を連れてゆくのは難しい。現地には向かうのは選考されたメンバーと随行の整備班だけだ。
今回、これまで常に一緒に行動していたノンナとカチューシャを意図的に引き離してメンバー分けしたのは隊長の意向である。広大な雪原が試合場となりやすいロシア戦車道において、通信が乱れ友と引き離された中で単騎での強さを求められる場面は少なくない。プラウダ出身の彼女らの1年生とは思えぬ連携は隊長格も認めるところであったが、だからこそ個々の強さをより磨きたいという狙いもあった。
──つまりこの一週間、ロシアに来てから常にカチューシャと一緒だったノンナは初めて独りになるのだ。
やがて、大きく音を立てつつ幾両もの戦車を載せた列車が動き始める。窓から手を振るパンツァージャケット姿の少女達を手を振って見送る、やはりジャケット姿の少女たち。
列車がホームから完全に姿を消し、その姿が小さくなってゆく頃に副隊長が空気を切り替えるように手を叩いた。
「……皆、お疲れ様! 本日はこれで解散! 明日からは配布したメソード通りに演習を行うわ。今日の上りが早いからって、飲み過ぎないようにね!」
「副隊長こそ、前みたいに赤ら顔で来ないでくださいね!」
「あ、あれはもう忘れてよ……それじゃ、解散!」
『はい! お疲れ様でした!』
メンバーの切り替えしに苦笑しつつ副隊長が言うと、一礼の後に彼女らは三々五々に散っていった。その流れに合わせ、ノンナも駅の改札口へと向かってゆく。
「お疲れ様」
「……お待たせしました」
改札の外で待っていたパーカーにジャケット姿のゴロドクが声をかける。ノンナは頷くと、ゴロドクへ近づいた。
「今日は戦車道の方は、もういいのか?」
「ええ。もう今日はこれで解散だそうです」
「そっか」
「……?」
ゴロドクはどこか落ち着かなげに言った。ノンナは小首を傾げ、ゴロドクに尋ねた。
「どうしました、ゴロドク?」
「え!? あ、いや、その……こういうの、久しぶりだなって、思って」
「……そうですね」
ノンナは口元に僅かな笑みを浮かべると、ゴロドクの傍らに寄って言った。
「ゴロドク……手を、握っていいですか?」
「あ……あ、ああ」
柔らかくノンナの手がゴロドクの手を握る。ロシアの澄んだ冷たい空気の中でも、温もりが伝わってくる。
「家に帰る前に、買い物に寄ってもいいですか?」
「……勿論。ゆっくり帰ろう」
ゴロドクの手が握り返してくる。
ノンナは少し楽しそうに、手を繋いだまま通りへと踏み出した。
──四日後。
「……ふぅ」
モスクワから離れた、とある都市のホテルの一室。
“仕事”の報告書作成をひと段落させたクラーラはノートパソコンから手を離し、大きく伸びをした。
最近はゴロドクのアシストに助けられていた所もあっただけに、改めて一人で細かいところまで全てやるのは一苦労だ。
クラーラは壁の時計を見つつモスクワとの時差を計算する。今ならば丁度昼下がりくらいだろうか。
カチューシャが不在のタイミングでゴロドクをフリーにし、ノンナと一緒に過ごせるようにしてから既に数日。特に向こうからの連絡はない。
(上手くいっているでしょうか……?)
クラーラはふと気になり、携帯を取り出すと履歴から番号を選んで発進した。何となくではあったがノンナではなく、ゴロドクへ。
数度の発信音の後、聞き慣れた声がクラーラの耳に届いた。
『はい、伍堂です。クラーラ?』
「ええ。お元気ですか、ゴロド……」
『丁度良かった。俺からも電話しようと思ってたんだ』
「?」
クラーラの言葉の途中で返ってきたゴロドクの声には明らかな戸惑いが混じっていた。社交辞令の挨拶を打ち切り、クラーラは彼に尋ねた。
「どうしたのですか、ゴロドク?」
『その……秘密の話だったら悪いんだけど、ノンナ、俺の事で何か言ってなかったか?』
「……と言いますと?」
小声で尋ねてくるゴロドクの問いかけにすぐには答えず、クラーラはその意味を伺う。
『いや、その、ノンナの様子が変って言うか……』
「相手をしてくれない、という事ですか?」
『そう言う訳でもなくって……一緒に遊びに行ったり、料理を作ってくれたりはしているんだけど……』
「しているのだけど?」
クラーラが問い返すと、ゴロドクは少し言葉に詰まってから言った。
『その……夜、全く相手をしてくれないんだ。身に覚えが無くって……何か、心当たりはないか?』
「……ゴロドク。そのお話ですが、もう少し詳しく聞かせていただいても良いですか?」
肩に携帯を挟むと、クラーラは手早くメモとペンを用意して机の上に置き、ゴロドクの言葉を書き写し始めた。
最初の夜はゴロドクも違和感を覚えなかった。実際のところ急に駆けつけたゴロドクには疲労が残っていたし、ノンナも「課題が残っていますので、先に寝ていてください」と夕食後に睡眠を促してくれたからだ。
奇妙に感じ始めたのは、二日目からだ。大学の授業を終えたノンナはゴロドクを連れ出すと公園やカフェなどを共に散策し、久方ぶりのデートを楽しんだ。夜はそのまま彼女の部屋で手作りの料理を堪能した。いつもならばここで、なし崩しにノンナとゴロドクはセックスにもつれ込む流れである。
しかしノンナはゴロドクが風呂を終えて出てくると、既に自身のベッドで横になって寝息を立てていた。仮眠だったのかもしれないが、もし本当に眠っていたならば起こすのは躊躇われたのでゴロドクもそのまま横になった。
そして三日目。やはり大学から帰ってきたノンナは香草を効かせた精の付く肉料理を振る舞ってくれたが、最早理由付けすらせず彼女は「おやすみなさい、ゴロドク」と言うと先に寝てしまったのだ。
「………」
クラーラはメモを眺めつつ、ノンナの意図を探った。「ゴロドクが淡泊だ」という悩みからの、カチューシャが居ない一週間という絶好の状況においての彼を突き放すような行動。それは単なる嫌がらせとかではなく、必ず意味がある筈だ。
このまま彼女はゴロドクと交わらないまま一週間を終えるつもりだろうか? それだけは無いとクラーラは確信していた。では何故──
「……ひょっとすると」
『え?』
クラーラは小さく呟き、ゴロドクに言った。
「ゴロドク、失礼ですがこの4日間で自慰行為はしましたか?」
『へ!? い、いや、してないけど?』
「本当に?」
『こんな事で嘘つかないって! それに……ノンナが横で寝てるところでそういうの、流石に情けないだろ?』
「なるほど……それであれば結構です。ゴロドク、おそらくノンナ様は何かしらのサプライズを用意している筈です。今晩も何もない可能性が高いですが、我慢してくださいね」
『サ、サプライズ?』
「ええ。ですから安心してください」
そう言いつつも、クラーラの額には汗が滲んでいる。
やがて、電話を終えるとクラーラは大きく息を吐いた。
「……迂闊でしたね。ノンナ様の“溜まり具合”を見誤るとは」
ノンナの欲求不満の度合いが、自身の見立てよりも大幅に強まっていた事をクラーラは理解した。
彼女は今、ゴロドクを『熟成』させようとしている。当然、彼が間近に居る中でノンナ自身も我慢しているのだろう。それを互いが最高に昂った状態で一気に解放して発散させるつもりなのだ。
その時、果たしてゴロドクはどこまで搾り取られるか。
「無事だと良いのですが……」
おそらく、無事では済まないだろう。そう予想しつつもクラーラは呟いた。
──五日目。
「(サプライズ、ねえ……)」
「……どうしました、ゴロドク? 口に合いませんでしたか?」
「ふぇっ! いや、美味いよ、美味い!」
窓の外の薄暗くなりつつある夕暮れの街並みをぼんやりと見ていたゴロドクは、ノンナの声に我に返ると手元のビーフストロガノフを掬って口に入れた。濃厚な牛肉の旨みとサワークリームの爽やかな風味が良い感じで組み合わさっており、食い応えがありながらしつこさは無い。カチューシャが食べる分もノンナが作っているそうだが、彼女なら家庭料理の店を出せるかもしれない。
ゴロドクから見えるノンナは、何時も通りの落ち着いた表情で食事を進めている。そこにはゴロドクへの思惑めいたものは感じられない。まあ、彼女の内面を読み取る事は今のゴロドクでも難しいのだが。
「……ごちそうさまでした」
「おそまつさまでした」
やがて、食べ終えたゴロドクは手を合わせて一礼した。ロシア料理を食べたにしては何とも日本的ではあるが、幼少時から仕込まれたマナーというのは忘れないものだ。
「お風呂も沸いています。ゴロドク、良ければ先にどうぞ」
「あ、ああ……」
皿を片付けつつ言うノンナの促しに、ゴロドクは彼女の様子を伺いつつ答えた。
クラーラは「サプライズがある」と言ったが、今晩も同じではないだろうか? 別に無理矢理ノンナに求めるつもりは無かったが、男としてどうにも物足りなさを覚えてしまう。
浴室前で服を脱ぎ、近くの洗濯籠に入れるとゴロドクは浴室へ入った。シャワーの蛇口をひねり、頭から湯を浴びる。
「ううん……」
「鬼の居ぬ間に」と言えばカチューシャに失礼になってしまうが、クラーラから説明を受けた時に期待しなかったと言えば嘘になる。カチューシャの事を愛おしいと思う気持ちはあるし、ノンナを交えてのセックスこそ出来るようになったが、それでもカチューシャの前では「カチューシャの補助」という扱いをノンナにせねばならない事への引っかかりはあった。
「……あ」
二人との3Pを思い返しただけで、ゴロドクの肉棒は早くも充血して反り返った。
正直なところ、ノンナが滋養豊富な料理を作ってくれる上に自由もあり、それでいて自慰行為もしていないため精力が結構溜まっている。
クラーラはああ言ったが、その言葉が確実という保証もない。1回くらい抜いても良いのではないだろうか。
そう思いつつゴロドクが肉棒に手を添えた時、浴室の戸が開いた。
「な……!?」
「失礼します」
薄い湯気越しに見えるノンナは、浴室に入るならば当然と言えば当然なのだが全裸であった。隠す風もなくゴロドクに近づいてくる彼女に、ゴロドクは思わず勃起した肉棒を隠して背を向けた。
「ノンナ!? ちょ、ちょっと待った!」
幾度も身体を交えてきた仲とはいえ、不用意に勃起してしまっている姿を見せるのは流石に恥ずかしいものがある。しかしノンナはそんなゴロドクの焦りに全く遠慮することなく更に身を寄せてきた。シャワーの飛沫が彼女の肩や黒髪を濡らし、その姿はより艶めかしさを増してゆく。
どう反応したものか分からず、思考が停止したままのゴロドクの背中にノンナは身体を密着させた。
「(うおぉ……!)」
「……ゴロドク。この数日間、我慢をさせたかと思います」
背中に当たる豊かな乳房の弾力。それだけで肉棒がビクンと反応を示す。
体を密着させたままノンナはゴロドクの耳元に口を寄せ、囁くように言った。同時にその手がゴロドクの股間へと伸び、隠していた手の隙間をするりと抜けると肉棒を優しく握ってきた。
「うあっ!? ノ、ノンナ!?」
「でも……私も、我慢して、いたんですよ?」
シャワーの湯がかかっているというのに、ノンナの吐息の熱さがはっきりと分かる。背中に当たる弾力の中に感じる、少し固い突起の感触。既に乳首が固くなっているのだ。
「い、いや、ノンナ。ちょっと落ち着い……ううっ!」
ゴロドクの言葉も聞かず、ノンナは肉棒に添えた手を動かし始めた。血管の浮き上がった竿を痛くない程度に握ったまま緩急をつけつつ前後させ、快感を引き出してゆく。
「ぐ、くうっ!」
「……この一週間を終えれば、カチューシャが帰って来られます。それからでもゴロドク、貴男とは交わる事ができますが……こうして、二人だけで交わる事が出来るのは、んっ、んんっ! つ、次は何時になるか、分かりません……っ!」
ゴロドクの肉棒に添えられていない方の肩が動いているのが分かる。おそらく、肉棒を扱きながら自身の秘所も弄っているのだ。ノンナの吐息が荒くなってゆく。
「だ、だから……『いつも通り』でなく、互いに、最も昂るような……ああっ! か、形で、して、欲しかったんです……!」
「ノンナ……!」
ゴロドクは肩越しにノンナを見た。
整った顔を紅潮させ、快感に喘ぐノンナ。幾度となく見た。淫らながらも美しい顔。
しかし──ゴロドクに向けられる潤んだ瞳に映る強烈な肉欲は、今までに見た事がない程に強いものだった。
かつて、ノンナが激しく自分を求めてきた学園艦の冬の公園でのセックスを思い出す。だが、あの時のはカチューシャの留学に起因する激しい動揺から求めてきた、言わば感情の振り幅を戻すためのセックスであった。今回のはそれとは明らかに違う。
何と言うか──今のノンナの内面は相当に
「……分かった、ノ、ノンナ……しよう。思い切り、あと二日、寝る暇も、無いほどに……ぐっ、や、ヤバ……っ!」
「っ!」
「痛ーっ!」
ゴロドクの腰が小さく震えた。射精の兆候を察したノンナが咄嗟に強く竿の根元を握る。
「す、すみません、ゴロドク! その、さ、最初の射精は……」
痛がるゴロドクに詫びつつ、ノンナは竿から手を離すと今度はゴロドクの前に背を向けるように立ち、壁のタイルに手を置くと肉付き豊かな尻を肉棒に押し当ててきた。
「わ、私の中に、注いで、ください……!」
「………!」
ごくりとゴロドクの喉が鳴る。上半身を傾けた事で、濡れた大きな乳房が釣り鐘のように更に存在感を増しつつ揺れている。数秒前の痛みも忘れ、再びゴロドクの肉棒は固く反り返った。
今すぐに挿入したいという気持ちを懸命に抑えつつ、ゴロドクはノンナの尻肉の谷間から覗く秘所に指をやった。陰毛の感触を抜けると、お湯とは異なる粘り気のある熱い液体が指に絡みついてゆく。そのまま陰唇をなぞり、膣口に指を差し入れると膣壁が待ち望んだように指を包み、締め付けてくる。
「ンッ! ゴ、ゴロドクっ!」
「この濡れ方……ノンナ、これ、入ってきてから弄っただけじゃ、ないよな?」
「!?」
ゴロドクの言葉にノンナは顔を更に紅潮させると、ゆっくりと頷いた。
「は、はい……さっき、食事の最中から、疼いていて……ゴロドクが浴室に入った後に、自分で……」
「ノンナ……今日のノンナ、本当に、エロいな」
「す、すみません……」
「謝らなくていいよ。そんなノンナも、大好きだ」
「んっ、んんっ! そんな、胸、強くっ!」
片手で秘所を弄る手を止めないまま、ゴロドクはノンナの乳房を強く揉んだ。片手では収まらないボリュームある豊満な乳房はその大きさを持ちながら確かな弾力を持ち合わせており、ゴロドクの指を押し返してくる。
胸と秘所の両方からの刺激に、ノンナは身を震わせ、泣きそうな顔で懇願してきた。
「ゴ、ゴロドクっ、早く、早くください……! ゴロドクの、熱くて、堅いそれを、奥まで……お願い、します……!」
「ああ……俺も、そろそろ限界だ……」
秘所を弄っていた手を離し、ゴロドクは自分の肉棒に添えると臍に当たりそうな程に反り返ったそれを押し下げた。ノンナに覆い被さるように体を重ねると、亀頭を秘唇に押し当てる。くちゅりと愛液が亀頭に触れただけで、その熱さにゴロドクは思わず射精してしまいそうになった。
「いくぜ、ノンナ……く、ううっ!」
「は、は……ひぃっ! あ、熱い、ですっ! ゴロドク、ゴロドクっ!」
「ノ、ノンナの中も、凄い……こんな、熱いのは、初めてだ……!」
ずぶずぶと奥まで挿入され、ノンナは身を悶えさせる。一方のゴロドクも焼けるようなノンナの膣内に腰を震わせ、歯を食いしばり腰からこみ上げる射精感を堪えた。
「うぉっ! ふうっ、くうっ!」
「ああんっ! ゴ、ゴロ、ドクっ! いいっ! いいっ!」
ゴロドクは荒々しく腰を動かし始めた。肉の打ちつけ合う音が浴室に響くと同時に、平時のクールな面持ちを投げ捨て、ノンナは大声で善がりつつ快感を貪る。
後ろから突かれる度に乳房はゆさゆさと重そうに揺れ、ノンナの秘唇から溢れる愛液はゴロドクの肉棒を包み、それを潤滑油として膣内の無数の襞が亀頭を、竿を、鈴口を刺激する。
「ひいっ! い、イクッ、イキます、ゴロドクっ!」
「ああっ! 何度でもイってくれ、何度でも、相手、してやる、からっ!」
「んあぁっ! い、イクッ! ああぁぁっ!」
ノンナの全身が震え、肉棒が強く締め付けられる。軽い絶頂に達したようだ。しかしそれに構わずゴロドクは更に腰を振る。
「ふぁぁっ! ま、また、また、来ますっ!」
「ううっ! お、俺も、そろそろ……っ!」
「だ、出してくださいっ! 私の、一番、奥っ! 全部っ!」
「ぐっ、ぐうぅっ!」
「いっ、いいっ! 凄く、出て……ン、ンンッ!」
強烈な射精感に今度こそゴロドクは我慢できなくなり、一番奥まで肉棒を突き入れると我慢を解いた。どくどくとここ数日溜め込んでいた精液が、ノンナの子宮口に容赦なく吐き出されてゆく。
「あ、ああ……搾り、取られる……ノンナ……!」
「あはぁ……で、出ています、ゴロドク、のが……!」
数十秒間、ゴロドクの射精が終わるまで二人は身体を止めたまま絶頂の余韻を味わった。秘所から溢れてきた精液がシャワーの湯と混じり、流れてゆく。
「はあぁ……」
「んっ……」
大きく息をついたゴロドクの所作を合図に、ノンナは腰を揺すると肉棒を抜いた。射精を終えたというのに、ゴロドクの肉棒はまだ固さを保ったままだ。
その肉棒を潤んだ瞳で見つめると、ノンナは今度はゴロドクの前に跪いた。
「まだ堅いまま……素敵です、ゴロドク……」
「あ、ああ……ノンナのも、凄かっ……うおっ!」
「ンッ、あむっ、んふぅ……」
精液と愛液に塗れた肉棒を迷わずノンナは咥えこんだ。
「ちょ、ノ、ノンナ! 今出したばっかりで、まだ、敏感……ううっ!」
「んちゅ、ふうっ……か、構いません、ゴロドク……何度でも、射精して、ください……貴男の匂いが取れなくなるほど、私に、ください……!」
「………!」
舌で肉棒全体を舐め回してからノンナは口を離し、上目遣いにゴロドクに言った。その淫らな姿は、ゴロドクの中に残っていた射精後の余韻を更なる興奮で忘れさせた。
赤黒く先走りが溢れる亀頭に、愛おしそうにノンナは頬ずりまでしてくる。それは堪らない征服感を否応なく湧き上がらせる。
「ノンナ、その、今度は、胸で……」
「……はい、ゴロドク」
ゴロドクの指示にノンナは従順に従うと、自分の乳房を下から掬うように持ち、膝立ちのままゴロドクの肉棒を挟み込んだ。口や膣内とはまた異なる弾力ある両の乳房に挟まれる感触にゴロドクの肉棒は震え、僅かに乳肉の谷間から覗く亀頭からは先走りが溢れている。
そのままノンナはゴロドクの肉棒をすっぽりと包んだまま身体を上下させ、肉棒を乳房で扱き始めた。時折乳房を挟む力に強弱をつけて刺激に緩急を与えつつ、顔を俯かせると時折舌が届く鈴口をつつくように舐める。
以前よりも更に胸が大きくなったのでは、ゴロドクは快感に痺れる頭でそんな事を思った。
「ハァ、ふぅ……如何ですか、ゴロドク?」
「ああ……ノンナの胸、最高だ……っ!」
「こ、光栄です……いつでも、射精してください……このまま、私の胸に……」
「うおぉっ! ノンナ、ノンナぁっ!」
甘く射精を促され、ゴロドクの奥から早くも次の射精感がこみ上げてきた。ノンナの張りのある乳房を自分の肉棒が蹂躙しているという実感と快感が、ゴロドクの絶頂をより早めさせてゆく。
それからさほどの間も置かず、ゴロドクは絶頂に達した。
「で、出るっ! ぐっ、うあぁっ!」
「んっ! 凄い、二度目なのに、こんな、出て……ンンッ!」
噴水のように吐き出される精液がノンナの乳房を、整った顔を容赦なく汚してゆく。しかしノンナはうっとりとゴロドクの精液を受け止めつつ、乳房の挟み込みを更に強めて最後の一滴まで絞り出さんと捏ねるように手を動かす。
何度もの射精を終え、ゴロドクが身を離すとノンナは立ち上がった。顔にかかっていた精液をシャワーが洗い流してゆく。その肌は紅潮し、瞳にはまだ熱情が消えていない。
ノンナがまだ満たされていない事は分かっていた。ゴロドクは身体に力を込めると、再び肉棒を勃起させた。
「ノンナ、続きはベッドで……」
「……はい」
嬉しそうにノンナは微笑むとシャワーを止め、ゴロドクに寄り添った。
「ンッ……」
「んんっ……」
唇を重ね、身体を密着させたまま濡れた身体で浴室を出る。
ノンナの手はゴロドクの肉棒に、ゴロドクの手はノンナの秘所に置かれたまま、互いを弄りつつベッドに向かい、倒れ込むように身を預ける。
「……カチューシャが帰ってくるまで、あと50時間くらいか」
「んはっ……そ、そのくらいだと、思います……」
壁の時計を見つつゴロドクが言う。ノンナが同意すると、ゴロドクは言った。
「それなら……そこまでずっとやろう。ノンナ、寝るのと、飯と、トイレ以外の、全部の時間を使って……二人きりで、何回でも」
「ゴロドク……!」
「まずは……もう一回……!」
「んあぁぁっ!」
ノンナの太腿を抱え、いきなり秘所へと肉棒を突き入れる。
「は、はいっ! してください、ゴロドクっ! 何回でもっ、何十回でもっ!」
恍惚とした表情に汗を浮かべつつ、ノンナは嬌声と共に腰を振り始めた。
───七日目。
「……ふぅ」
とある都市のホテルの一室。報告書の記入を終えたクラーラはキーボードから手を離して背を伸ばした。
時計に目を向け、モスクワとの時差を測る。今頃は昼過ぎくらいだろうか。
「………」
クラーラは無言で携帯を取り出すと、履歴から「ノンナ」を探し電話をかけた。数度の発信音の後、携帯の向こうからノンナの落ち着いた声が聞こえてくる。
『クラーラ……ですか?』
「はい、ノンナ様。その……先日の相談の件がどうなったか、気になったもので」
『ええ、お陰様ですっかり解消されました。ゴロドクも……ん、んあぁっ!』
突然、そこに嬌声が混じる。
「……ノンナ様?」
『い、今も、下、からぁ! ゴ、ゴロドクっ! 揉みながら、そんなっ! んはぁっ!』
よく聞けば、声の合間に水音も聞こえてくる。クラーラはノンナに尋ねた。
「ノンナ様、結局ゴロドクとは、何回くらいされたのですか?」
『お、覚えて、ああっ! いません……50回くらいまでは、数えて、いたの、ですが……んひぃっ!』
クラーラは更に耳を澄ます。焦燥した獣のような、男の荒い吐息が僅かに聞こえる。
「……そうですか、それは何よりです」
『ゴ、ゴロドクは、明日には、復帰させ、い、いいっ! イクッ、イクッ! ま、ます、からぁっ! ゴロドクっ! イキ、ますっ、ああぁぁっ!』
「………」
情報部の父は、
そんな事を思いつつ、クラーラは無言で電話を切った。
【独占欲だよノンナさん 終わり】