「えーと……いただきます」
「いただきます」
「よく味わいなさい、ゴロドク!」
一応は部屋の主ということでスウェット姿の部屋着のゴロドクが食膳の合掌を行うと、ノンナは丁寧に頭を下げ、カチューシャは合掌しつつゴロドクに向かって言った。二人ともプラウダの制服のままだ。
改めて眼前に用意された夕食を見る。ほかほかと湯気を立てる、赤いスープ。中には大きめに切られたじゃがいもやニンジン、レッドビートなどが転がっている。その横に添えられているのが白米とお新香というのが、何とも日本食だ。
「……カチューシャ」
「え? あ! そ、そうだったわ! ゴロドク、まだ食べちゃ駄目!」
ふと、ノンナがカチューシャに顔を向ける。思い出したようにカチューシャは突然慌てると、スプーンを手にしたゴロドクを急に制止した。
「え?」
「そ、その……ささっ、最初のひとくちはカチューシャが食べさせてあげる! ほら、口を開きなさい!」
戸惑うゴロドクに、カチューシャは顔を紅潮させつつ言った。
横に視線を向けると、ノンナが“従え”というメッセージを目配せで送ってきていた。なるほど、おそらくは料理中に「彼女なのですから、『あーん』くらいはしてあげては?」的なアドバイスを彼女にしたのだろう。
「分かったよ、カチューシャ。ほら、あーん」
ゴロドクは微笑むと、大きく口を開けて目を閉じた。カチューシャが息を呑む気配が伝わってくる。相当に緊張しているのだろう。
「カチューシャ、緊張しすぎていますよ」
「わ、分かってるわ! そそ、それじゃいくわよ! それっ!」
「熱ーっ!?」
突然口内に飛び込んできた熱いスープに、思わずゴロドクは悲鳴を上げて悶絶した。吐き出す事もできず、そのまま呑み込もうとするが今度は咽が熱くなり更に悶える。
「ええっ!? だ、大丈夫、ゴロドク!?」
「カチューシャ、スープを冷ます手順が抜けています」
「ちょ、先に言いなさいよノンナ! ほらゴロドク、お茶!」
「ンッ、ンッ……はあぁぁ、死ぬかと思った」
氷入りの麦茶を飲み、ようやくゴロドクは一息ついた。口の中を火傷したようで、少しヒリヒリする。
「ご、ごめんなさい……」
珍しくカチューシャは素直に謝り、申し訳なさそうに頭を下げた。普段からプラウダ戦車道の隊長として強気な態度を崩さない彼女だが、こういう時にちゃんと相手に頭を下げられる素直さを持っているのだ。
「……ほら、あーん」
落ち込むカチューシャの様子を見て、ゴロドクは改めて大きく口を開けた。
「え?」
「もう一回。今度はちゃんと冷ましてくれよ?」
きょとんとするカチューシャに、ゴロドクは言った。
「………」
「カチューシャ」
「わ、分かってるわ! ゴロドク、ちょっと待ちなさい!」
動きを止めたカチューシャに、ノンナが水を向ける。気付いたようにカチューシャはいつもの強気な態度に戻ると、改めて自身の手前の皿にスプーンを差した。湯気を立てるスープに息を吹きかける。
「ふーっ、ふーっ……はい」
「……うん、美味い!」
先ほどは熱さで味も何も分からなかったが、今度はちゃんと味わう事ができた。炒めた牛肉の旨みに様々な野菜の風味が混ざり合った、濃厚な味わいが口の中に広がる。ゴロドクは素直に味を褒めた。
「そ、そう。それじゃ、もう一口、食べさせてあげるわ。感謝しなさい!」
「あーい」
口を広げたまま返事を返し、ゴロドクは横から自分たちを眺めているであろうノンナを見た。
ノンナの視線は顔を赤くしつつスープを冷ますカチューシャに向けられ、その口元には優しげな微笑みが浮かんでいた。
他愛ない話を交わしつつ、ゆっくりした食事を終えた頃には時刻は20時を回っていた。
ゴロドクは腰を上げ、窓越しに外を見た。
「うわ……」
昼過ぎから降り始めた雪は夕方からその勢いを増し、外は吹雪になっていた。道路に目をやると、ライトを点けた除雪車が動いている。東北からロシア付近までを主な行動範囲とするプラウダ学園艦において雪は珍しくないが、今晩は強い降りになりそうだ。
「こりゃすぐには止まないな。ゆっくりしていって、何だったら泊まっていくか?」
「その方が良さそうですね。カチューシャ、貴女も……」
他意はなくゴロドクが言う。ノンナはそれに同意し、皿をまとめつつカチューシャに声をかけた。
「う……うん、そうね……ふぁぁ……」
カチューシャは弱々しく答えた。瞼を重そうにしつつ、小さくあくびをする。
食べ終わり直前くらいから、彼女はこんな感じだった。食べたらすぐ眠くなる体質のようで、体型も相まって本当に幼い子供のように見えてしまう。
「ゴロドク、毛布をお借り出来ますか?」
「え? あ、ああ。押し入れに……」
その様子にノンナは素早く察したのだろう。皿を置いてゴロドクに尋ねると、押し入れから毛布を取り出しカチューシャの側に寄った。彼女の小さな身体を抱きかかえ、食卓から少し離れた所で彼女の身体を置く。
「ノンナ……?」
「ご夕食を食べて眠くなられたのですね。片づけは私がやりますから、カチューシャはお休みください」
「うぅん……ありがとう、ノンナ……」
「はい、ゆっくりお眠りを」
座布団を二つ折りにして簡素な枕を作り、カチューシャの頭の下に敷く。
よほど眠かったのだろう。仮眠の状態が整うと早くも寝息を立て始めた。
「Спи, младенец мой прекрасный……」
ノンナの口から聞き慣れない子守歌が流れる。
ゴロドクは何か言おうとしたが、ノンナが静かに指を一本立てて沈黙を求めたため言葉を止める。
「Баюшки-баю……」
彼女が流行りの歌を含めて、何かを歌っているのは初めて見る。
カチューシャの身体を毛布の上から優しく撫でつつ、子守歌を聞かせて眠りにつかせるその姿はとても母性的で、ゴロドクはノンナの今まで知らなかった一面を見たような気がした。
考えてみれば、自分はノンナと何度か身体を重ねこそしているが──ノンナの事を知っているとはとても言えない。
学校で普通に会えるから不便に思った事は無かったが、彼女の携帯の番号も、趣味も、普段の姿も知らない。
それを自分は知りたいのだろうか、また、聞けば彼女は何時もの無表情で教えてくれるのだろうか。
「スゥ……スゥ……」
やがて、カチューシャは完全に眠りについたようだった。音も立てずノンナは身体を起こすとエプロンを身に着け、卓上の食器を持って洗い場に向かう。
ゴロドクはそっと窓から離れると、足音を立てずにカチューシャの側を横切りキッチンのノンナへと近づいた。腰くらいまでの高さの仕切りで区切られたキッチンに、静かな水音と皿を洗う音が小さく響く。
「……子守歌なのか? 今の」
「『コサックの子守歌』……やがてコサックの戦士となる、幼い息子を寝かしつける母親の歌です。授業で習いませんでしたか?」
「選択科目、音楽は取ってなかったんだ」
「そうですか……」
小声でゴロドクはノンナに声をかけた。洗い物をしつつノンナが答える。
「歌、上手かったんだな」
「……思った以上に恥ずかしいものですね。カチューシャ以外に聞かれるのは」
「いつも、ノンナが寝かせてるのか?」
「はい。カチューシャはお食事の後は必ず眠くなります。そうなると、しばらくは起きません」
そう言うノンナの表情は、困った風の言葉とは裏腹に穏やかなものだった。
「……本当に、カチューシャの事が大事なんだな」
「勿論です。カチューシャは私の全てを賭して支えるに足りる方ですから」
即答だった。
正直なところ、カチューシャが戦車道の隊長としてどの程度優秀なのかは門外漢のゴロドクには分からない。それでも、このノンナがそこまで言って敬愛するという事は相当なのだろう。
ゴロドクは感心すると共に、少しの嫉妬を覚えた。
「俺は……どうなのかな?」
出来るだけ何気ないふりで聞く。
「………」
ノンナは答えず、洗い物をしつつ指を素早く振った。跳ねた水がゴロドクの顔を打つ。
「わっ!?」
「下らない事を言っていないで、洗った皿の水切りや片づけを手伝ってください」
慌てるゴロドクに、ノンナはあくまで淡々と言った。どうやら答えを返すつもりは無いらしい。
「わ、分かったよ」
とりあえずの返事を返すが、その表情は納得には程遠い。
一応はゴロドクも男の端くれである。夕方の来訪から一方的にペースを持ってゆくノンナに、何かしらお返しをしたい気持ちが湧き上がってきた。
仕切り越しに眠るカチューシャを見る。完全に熟睡しているようだ。
「(……流石に怒るか?)」
こちらに背を向け、食器の水を切るノンナの姿を見る。プラウダの制服の上からエプロンを着けたその身体は、豊かな胸から引き締まった腰回りを経て肉付きよい尻へと艶やかなラインを形作っている。
人間の三大欲と言えば食欲・性欲・睡眠欲だが、「ひとつが満たされれば他の欲求が強まる」というのは本当なのだろう。旨いボルシチで食欲が満たされ、さほど眠くもない今のゴロドクは自分の中の性欲がむらむらと強まってゆくのを感じていた。
「(ええい、ままよ!)」
殴られたらその時はその時だ。
ゴロドクは腹を決めると息を止めて気持ち気配を殺しつつノンナの背後に近づき、おもむろに彼女の尻を鷲掴んだ。
「ンッ!?」
びくんとノンナの身体が驚きで跳ねる。そのままゴロドクは身体を寄せ、背後からノンナに密着した。
「っ!? 何を、ゴロドク……んくっ!?」
「ふうっ……ちゅ……はぁっ……」
「ゴロ、ドクッ!? あっ! ああっ!」
危うく手にしていた皿を落としそうになりつつ、ノンナが尋ねてくる。
ゴロドクはそれに答えず、彼女の滑らかな首筋に唇を押し当てた。
もともと感じやすいノンナではあるが、幾度か身体を重ねる内、ゴロドクにも彼女の特に感じやすいところが分かってきた。例えばこの、首筋から鎖骨のあたりにかけてのラインだ。ここに舌を這わせると───
「……っ!」
それだけでノンナは全身が痺れたように震え、力が入らなくなってしまう。
取り落としかけた皿をどうにか洗い場に戻し、ノンナが背中越しにゴロドクを睨んでくる。しかしその肌は早くも火照り始めており、頬の赤みも怒りだけではない事がゴロドクにも見て取れた。
「い、いい加減に……!」
「あんまり大声出すと、カチューシャが起きるぞ」
「っ!?」
ゴロドクの小声に、ノンナは慌てて自分の口に手をやり、声を抑えた。
「ん……ノ、ノンナ……」
寝返りを打ちつつ、カチューシャが寝言を言う。
声を殺しつつ、ノンナが言った。
「……ゴロドク、何のつもりですか?」
「今日の夕方のお返し。まだ、ノンナを気持ちよくさせてないからな」
「それならここまでにして下さい。これ以上は、本当にカチューシャが起きてしまいます……!」
「ノンナが声を抑えていられれば、大丈夫だって……んっ」
「ンンッ……! あ、はぁっ……!」
もう一度、首筋へのキス。同時に尻を揉んでいた手をスカートの裾に移し、捲り上げてタイツの中に手を差し入れる。
「ンッ……!」
ノンナの瞳が潤み始めていた。口に手を当て、漏れそうな喘ぎを懸命に抑えつつ身をよじる。しかし身体に力が入らないのか、その抵抗は弱い。
ゴロドクも自身の荒くなる吐息を抑えつつ、熟睡するカチューシャに目を向けた。ノンナを抑える材料に使ってしまったが、実際にこの状況で彼女が目覚めれば、窮地に陥るのはゴロドクも同じである。
しかし、その緊張感のある状況ゆえにだろうか。いつもの人気の無い場所でノンナと交わる時以上の興奮が湧き上がる。
「ふぁ……ゴロドク……そ、そこは……っ!」
「熱くなってる、ノンナの、ここ……!」
「い、言わないで、くださ……っ!」
強い喘ぎが漏れそうになり、ノンナは口に当てた手の力を強めた。
豊満な尻肉が作り上げる谷間を越え、ゴロドクの指はノンナの女陰近くにたどり着いた。ひくつく尻穴のすぼみに親指を添えると、恥じらいからかノンナの体温が更に上がってゆくのを感じる。
親指をそのままに陰唇に指を添え、外周を丁寧になぞる。流石にまだ濡れてはいないが、ノンナの反応からも感じているのは明らかだ。次第に秘所は熱を増し、奥からとろみのある愛液が滲んでくる。
「はあっ……ゴ、ゴロドク……ほ、本当に、これ以上は……」
今にも泣きそうな表情で、ノンナの視線はカチューシャに向けられている。何時自分の喘ぎで起きるか気が気でないのだろう。
「………」
思わず秘所を弄る手を止め、ゴロドクは少し悩んだ。彼女のここまで弱々しい態度は初めて見る。
「それじゃ……さっきの答え、教えてくれるか?」
耳元に口を寄せ、囁くように言う。
ノンナはこくりと頷き、ゴロドク以上の小声で言った。
「し、心配……しないでください、ゴロドク」
「……心配?」
「貴方が……私がどう思っているかなどで、不安を抱えているのは、わ、分かります……」
潤んだ瞳のまま、ノンナはゴロドクに顔を向けた。
「私の此処は……もう、貴方のモノの形になっています。貴方と交わった後、器具などでも試してはみましたが……満足、できませんでした」
「……!」
「私も身体はもう、貴方専用、なんです……だ、だから、安心して、ください……」
ゴロドクは息を呑んだ。ズボンの下で萎え始めていた肉棒に急激に血液が集まり、苦しそうに膨張してゆく。
一方、ノンナはゴロドクの様子の変化に気付かないのか懇願するように言った。
「ゴロドク……言いましたから、これで、もう……」
「……ごめん、ノンナ」
「え?」
「それ、反則だわ」
ノンナの手を押さえ、ゴロドクは彼女の唇に自分の唇を押し当てると荒々しく舌を差し込んだ。吐息を交換し、ノンナの舌を吸うように絡ませつつ彼女の口腔内を蹂躙する。
突然の激しいキスに、ノンナは戸惑いつつも抵抗しない。今にも力が抜けそうな身体を洗い場の縁に手を置いて支え、断続的な刺激に身を震わせている。
「んっ、はっ、ノンナ、ノンナっ……!」
「あっ、あはぁっ、ゴロ、ドク……っ!?」
同時にゴロドクはノンナの女陰を弄っていた手を引き抜き、乱暴に自身のスウェットをパンツごと引き下げた。下に引っ張られた肉棒が弾けるように外気に晒され、むわっとする雄の匂いが立ち昇る。
そのままゴロドクは怒張した肉棒をノンナの尻に擦り付けつつ、キスを続けた。
「ちゅ、ふっ、ふうっ……!」
「じゅるっ、くっ、んんっ……あ、熱い……っ!」
ノンナの声に甘いものが混じり始めた。肉棒の熱と滾りが彼女にも伝わってきているのだろう。無意識にかその腰は淫猥にくねり、自分から尻を肉棒に押し当ててくる。
もっと自分のものにしたい。自分を刻み付けたい。抑えようもない支配欲がゴロドクの理性を呑み込んでゆく。
「ああ、お前は俺のものだ。ノンナ……この胸も、尻も、全部……っ!」
「ああっ……!」
エプロンの上からノンナの弾力有る乳房を強く揉む。掌に伝わる強い弾力と重み。ノンナは背を反らして悶え、咄嗟に唇を噛み締めて声を抑えた。
更にゴロドクはエプロンの裾から手を差し込み、制服のボタンを二つほど外してノンナの胸に触れた。厚手の制服は解放された隙間から焼けるような熱量を指先に伝えてくる。
手探りでブラの隙間から乳房を直に揉みしだくと、汗の滲むノンナの巨乳は更に張りを増し、心地よい弾力をゴロドクに与える。
「はあっ、はあっ……!」
「……っ! ンッ、ンンッ……!」
必死にノンナは声を抑える。
手をゴロドクに抑えられ、潤んでいた瞳からはついに涙が流れ始め、腰を震わせながらも懸命に嬌声をあげる事を耐える。
だが、それは逆にノンナの快感を更に強めているようであった。荒々しいゴロドクの乳房を揉む手の動きも快感に既に変わっているのか、強く揉む度にびくんと身体を反応させる。
「うぅん……」
毛布に包まれたカチューシャが声を漏らす。
ノンナは辛そうにしながらも、最早ゴロドクに制止を求めようとしない。
ゴロドクはノンナのタイツに指をかけ、太腿までそれを捲った。白いショーツに窮屈そうに包まれた肌の火照りが直接亀頭に伝わってくる。更にショーツに手をかけてずり下ろす。
「はぁっ……!」
ノンナの口元から熱い吐息が漏れる。ショーツのステッチの部分には既に染みが出来ていた。亀頭を後ろから近づけて女陰へと押し当てると、熱い潤みが亀頭を濡らし、挿入に期待するように陰唇がひくつく。
「……いいか?」
荒い吐息の中、ゴロドクはあえてノンナに尋ねた。
「………」
ノンナの唇が動く。ゴロドクが聞き取れないほどの小声。
「いいか?」
もう一度聞く。先程よりは大きい、かろうじて聞こえる程の小声。
「い、言わせないで、ください……!」
「言ってくれ」
有無を言わせない、短い言葉。
「ふぁ……!」
ゴロドクは反り返る肉棒を前後させ、亀頭を女陰に擦り付けた。それだけでノンナの身体は跳ね、更に愛液を溢れさせる。
「……言ってくれ」
ごく僅かな時間、ノンナとゴロドクの視線が交錯した。
観念したように、彼女の瞳が閉じる。
「お、お願い、します……挿れて、ください……っ!」
「ああ。ノンナ……っ!」
「ああぁっ!」
奥まで一気に突き入れられたゴロドクの肉棒を、ノンナの膣内は待ち侘びたように強く締め付けてくる。
「ノンナッ、ノンナッ!」
「あっ! はあっ! ああんっ! 熱っ、熱いぃ……っ!」
ぐちゅぐちゅと結合部から淫らな水音が鳴り始め、溢れた愛液と先走りがキッチンマットに滴り落ちる。
ノンナは遂に堪えられなくなり、甘い嬌声をキッチンに響かせた。
「うぅん……ノンナ……?」
未だ深い眠りの中のカチューシャが、また寝言を言った。