MassEffect Romanceの始まり 作:木桜 春雨
新しい乗組員が来ることになったからと言われた時、そうですかと返事をしたギャレスは自分を見るシェパードの目がいつつもと違うことに気づいた。
どうかしましたかと聞くと、質問はないのと聞かれて反対にギャレスの方が困った。
「地球生まれの女性だけど、こういう仕事は初めてらしいから、もし、困っていたりしたら助け、いえ、そう、サポートしてあげて」
それはどういう意味だろうと思ったが、あえて聞かなかったのは、どうせ後になればわかるだろうと思ったからだ。
話は終わりかと思ったが立ち去らずに自分を見ている視線に、まだ何かと尋ねると。
「あなた、振られたんですってね」
その一言は、あまりにも強烈だった、上司である彼女が知っているということはクルーの皆、いや、全員はとっくに知っているのだろう、道理で、ここ最近の皆の視線はと思いだしながらギャレスは背を向けた。
同じトゥーリアン族の女性にパブで声をかけられたまではよかったのだ、自分としてはうまく相手をリードできたと思ったていた。
次に会う約束をして、二度目はベッドの中にまでいけた、そのときもまずくはないと思ったのだ。
だが、それは自分が思っていただけかもしれないと後になって思うのだ。
うまくいかなかったのは相手が経験豊富だったから、それとも二人の波長というか、体の相性がよくなかったということだろうか。
「難しい顔しないで、じゃ」
自分の顔色が上司といえど、人間のシェパードにわかるのだろうかと思いながら、ええとギャレスは頷いた。
この宇宙には様々な種族の生物と人種がいて同族との婚姻を許す種族もいれば、純血故に起こる障害、弊害を恐れて厳しく禁止している種族もいる。
その為、異種族同士の恋愛婚姻関係は決して珍しいことではない、ギャレスが今まで付き合ったのは皆、同族のトゥーリアン族の女性ばかりだった、だから、これから先も恋愛の相手は、そうだろうと思っていたのだ、だが。
その日、彼は異種族、人間の女性を見て恋に落ちた。
髪の色は少佐と同じ黒、いや、少し明るい感じの色だ、光の当たる角度でそう見えるのかもしれない、肌の色は少し白すぎるように見えるが、それは室内の光のせいだ。
少佐と一緒に自分のところに来たとき、紹介された瞬間、ほんの少し緊張したが、自分は決して、おかしなことを口にしたつもりはなかった。
相手は自分に向かって深々と頭を下げ、自己紹介をした、それに対して自分も名前と部署を名乗り、なのに、そばにいた少佐は。
モニターの確認に余念がなかったので、ドアが開く音に気づいたが振り返ることはしなかった、だが、ギャレスさんと名前を呼ばれ、慌てて振り返った。
「よかったら、お茶にしませんか、アサリさん、タリさんもいるんです」
すぐには返事ができなかったことに、女は忙しいですかと言葉を続けた。
「いや、今は」
少しだけならとつぶやいた声は低く聞き取りにくいものだったが、それは伝わったようだ、女がよかったと笑ったからだ
「お茶菓子、食べきれないくらいあるんです、たくさん」
ここ最近、女性たちが仕事の合間、暇な時を見計らってお茶を飲んでいる、今までそういう習慣がなかった訳ではない、それは、ここ最近だ。
部屋を出ようとした瞬間、ギャレスは相手を呼び止めた。
「その、呼び方だが、ギャレスでいい、敬称というか、さんをつけなくても」
ほんの少し相手は押し黙った。
「皆、階級も年も上で、もちろん年上でも、親しい相手なら」
ギャレスは、わずかに首を振った、確かに、親しければ相手の階級や年に関係なく、名前で呼び合うものだろう、だが。
「いいんだ、そのもう少し、その、お互いが理解できたら」
自分の言葉が意味不明に聞こえたかもしれない、いや、理解できなかったのかもしれない、正直、ギャレス自身でさえ、内心慌てた、言葉を訂正しようにも、もう部屋のドアは目の前だった、いつの間にと思いながら、ギャレスは自分の言葉に、いや、態度にひどく自信をなくしていた。