マグノリアを代表する魔導師ギルド、フェアリーテイル。その威風堂々たる本部の1階に、陰に隠れるようにして設置された部屋がある。そこは通称"反省部屋"と呼ばれており、仕事で依頼人をはじめ、無関係な人々をも巻き込んで大きな迷惑をかけたメンバーへ"お仕置き"を与える場所だ。
薄明りの光源がたった一つ、天井からぶら下がっているだけの殺風景な閉鎖空間。そこに今、3人の男性魔導師が一列に並んで正座している。"サラマンダー"の通り名を持つ桜色の髪の青年、ナツ・ドラグニル。裾の長い白い衣装に身を包んだ氷の造形魔術師、グレイ・フルバスター。そして、逆立った銀髪に筋骨隆々の巨躯を誇る
この3名の目の前には、威圧的な仁王立ちで彼らを見下す、美しい緋色の髪をした女性がいる。フェアリーテイルが誇るS級魔導師、"
エルザが、普段に増して鋭い眼光で3人の男を睥睨すると、深く嘆息。次いで、低めに抑えた重い声音で言葉をぶつける。
「お前たち、何故この場所に呼ばれたのか、分かっているか」
対して3人の男達は、床に視線を落としたまま、じっと無言を貫く。しばし続いた沈黙の後、再びエルザの唇が動き、今度は威圧感たっぷりの怒声を紡ぎ出す。
「言うまでもないことだが、先日の仕事の件だ! 無様にも程がある!
今、マスターはこの件で評議会に呼び出しを受け、出頭している! お前たちの失態の尻拭いをするためだ!
毎度毎度、お前らときたら、マスターに迷惑ばかりかけて! 申し訳ないとは思わないのか!
…この件について、何か言い訳があるのなら、申し開きしてみろ!」
エルザの怒声の後、反省部屋に再び沈黙が訪れる。この重い静寂を破ったのが…並んだ3人の男のうち、中央に座るグレイである。
「…俺は、正面突破には反対したんだ。今までの経験から、ロクなことにならないことは分かりきってたからな。だから、忍び込んで一網打尽した方が良いって、再三提案したんだ…!
それなのに…このバカどもは…っ!」
グレイが瞳に怒りの炎を灯し、左右に座す男二人に視線を走らす。すると、グレイの左隣に座るエルフマンが、抗議の声を上げる。
「裏からコソコソ闇討ちしようなんて、漢らしくねぇ! 相手が卑劣な盗賊団だからこそ、正々堂々と正面から叩き伏せるのが、漢というものだ!」
「そうだぜ、グレイ!」エルフマンに同調して、ナツも反論の炎を吐く、「ああ言うヤツらは、思いっきりブッ飛ばしてやらねーと、絶対に懲りねーんだよ! お前のやり方じゃ、ヌルすぎるっつーの!」
「だからって、見境なく暴れまわって、アジトごと壊滅させる必要なんてねーだろ! 盗賊団のヤツらをシメるだけで良かったんだよ!
町に被害を出したのは、お前らの所為だっつーの! こちとら、飛んだとばっちりだ!」
「なんだよ、グレイ! お前だって、ノリノリでそこら中氷漬けにしてただろーが!? 自分だけ責任ないような言い方してんじゃねぇよ!」
「そうだぜ、グレイ! 自分の行為を顧みずに、他人にばかり責任を押し付けるなんて、漢らしくねーぞ!」
「あれはなっ! お前たちが暴れまくって、盗賊団のヤツらが騒ぎ出したから、仕方なく対処しただけだ! やりたくてやったワケじゃねぇ! お前らみたいな直上バカと一緒にすんなっ!」
「なんだと、この野郎っ! 言わせておけば…っ!」
ぎゃあぎゃあと始まった騒ぎは徐々にエスカレートし、ついには乱闘まで発展しようかと言う、その時。
「やめんか、バカどもっ!」
エルザが、反省部屋を震わせる大声を3人にぶつける。男達は即座に畏怖で体をすくめると、各々姿勢を正し、行儀よく正座し直す。
この行動を見届けたエルザは、再び深く嘆息。そして、以前にも増して眼光鋭く3人を睨め付けながら、嘆かわしさと憤りを交えて語り出す。
「仲間同士でフォローし合うどころか、責任を押し付け合い、いがみ合うとは…! 性根が全く腐っているとしか言いようがない! やはり、叩き直す必要があるな!」
言うが早いか、エルザは"
「お前たちには、私が直々に空手を教え込んでやる!」
両拳を固めて迫力満点の構えを取り、鋭い口調で言い放つ、エルザ。
「空手だって!?」ナツが驚きに目を丸くして声を上げる…が、「…って、一体なんだ?」とすぐに疑問符を頭上に浮かべる。どうやら、エルザの気迫に対して、ノリで反応しただけのようだ。
そこへ、エルフマンが説明を口にする。
「聞いたことがある…確か、大陸の東方に伝わる、魔法を使わない武術のことだ。その鍛錬では、身体のみならず心までも強靭に鍛え上げることで出来るって話だ。まさに漢のための武術だ!」
その言葉に、ナツはやる気の炎をギラリと瞳に灯すと、掌と拳を強かに打ち合わせる。
「つまり、強くなれるってワケか! なんか面白そうだな、その空手ってヤツ!」
「…そうかぁ? 面倒くせーだけだろ…」
ナツとは逆に、グレイは全く乗り気になれずに文句を呟く。
そんなグレイの反応を気に全く留めず、エルザは換装の魔法を応用し、3人分の空手道着を室内に出現させる。そして、道着を縛っている白帯を掴むと、一人一人の目の前にひょいひょいと放り投げた。
「よし、すぐに稽古を始めるぞ。早くその道着に着替えるんだ」
男達はエルザの言葉に素直に従う。正座から立ち上がると、きびきびとした動作で上着を脱ぎ、恥ずかしげもなく引き締まった体を曝け出す。その光景は、神話世界の英雄像が立ち並んでいるかのような、壮観なものだ。これを目にして、エルザの眼にうっすらと恍惚の色が帯びる。
しかし、勇壮なる上半身は、すぐに純白の道着に包まれてしまう。すると、エルザは残念そうに眉根を寄せるが、3人の男達は全く気付いていない。
次いで男達は、ズボンの履き替えに取り掛かる。てきぱきとパンツ一丁になり、道着のズボンに足を通した…その瞬間。エルザの口から諌めの言葉が放たれる。
「おい、待て! おまえたち、なぜパンツを
これに驚き戸惑ったナツが、エルフマンに視線を向けて尋ねる。
「パンツを脱がなきゃならないって、ホントなのか、エルフマン!?」
「いや…オレも、話を聞きかじった程度だから、詳しくは分からないんだ…。
だが、経験者のエルザがそう言うなら、それが正しいんだと思う…」
エルフマンはエルザの言葉を肯定しつつも、納得しきっていないようで首を傾げる。
そこへ、エルザが畳み掛けるように男達を急かす。
「パンツを脱ぐのは、空手の常識だ! そんなことも分からんのか、お前たちは! いいから、さっさと脱げ!」
「…知るワケあるかよ…第一、空手って言葉すら、今日初めて聞いたんだぞ…」
グレイはブツブツと文句は言うものの、エルザの言に従い、穿きかけのズボンを下ろす。そして、ためらいもせずパンツを脱ぐと、股間を露わにする。流石は普段から脱ぎ癖のあるグレイ、女性の前だろうと下半身を曝け出すことに抵抗はないようだ。
一方、ナツもグレイと同様、手早くパンツを脱いで股間を露わにしている。彼にはグレイのような脱ぎ癖はないものの、普段の大雑把な言動を鑑みるに、羞恥の感情は薄いようだ。
二人の男の股間が露わになると、エルザはすかさず鋭い眼光で、品定めするように彼らのイチモツに視線をねっとりと這わせる。
(…流石はナツだな。勃起していない状態で、あの大きさ…以前見た時よりも、またデカくなっているではないか。あの剛直は、何度見ても胸が高まるな。あれが雄々しくそそり立ったならば、どれほど勇壮だろうか…。
それに、グレイのモノもなかなかだな…。初めて見たが、流石は造形魔術師、サイズではナツには適わないが、形の美しさや陰毛のつややかさは、ナツより上だ。
どちらのモノも…フフフ…是非、味わってみたいものだな…)
次いでエルザは、残るエルフマンの股間に視線を走らせる…が。その途端、彼女は眉根を寄せる。
エルフマンの挙動は、他の二人と明らかに異なる。丸太のような太腿を内股にしながら前屈みになり、道着の上着の裾で必死に股間のイチモツを隠している。その状態でオタオタと道着のズボンを穿こうと奮闘していた。
この女々しい姿に、エルザは瞳を怒らせて催促をぶつける。
「何をモタモタしてるんだ、エルフマン! さっさと着替えろ! ナツもグレイも、もうとっくに着替えを終えているぞ!」
「そ…そんなこと言われてもよ…! ちょ、ちょっと待ってくれ…!」
「早くしろと言っている! いつまで経っても稽古が始められん!」
「だから…! ちょっと待ってくれって言ってるだろ…!」
エルザがいくら急かそうとも、エルフマンは股間を隠し続ける。結局、エルザはエルフマンのイチモツを目にすることが出来なかった。
(…まぁいい。あの程度の隠し方で、一部すら見えないということは…サイズのたかが知れるというものだ)
エルザは3人に悟られない程度に、小さな小さな嘲笑を口の端に浮かべる。
エルフマンも着替え終わったところで、エルザは早速、空手の稽古を始める。
「ではまず、空手の基本の技、正拳突きを教える!」
そしてエルザは、実践しながらの伝授を始める。
「まずはしっかり腰を落とす。そして、握った拳は脇に引きつける。この時、拳の甲が下向きになるようにするんだ。
そして、拳の甲が上向きになるよう回転させながら、真っ直ぐに拳を突き出す!
決して、肩に体重をかけて、拳を突き出そうとするな。常に脇を締めることを意識することが大切だ。
何度かやってみせるので、よく見ておくように!」
エルザは数度、鋭く心地良い風切り音を響かせながら、正拳突きを繰り返してみせる。その力強く凛々しい姿は、神話世界の勇壮なる戦女神そのものだ。その活力に満ちた美しさに、ナツ達一同は我が身の上を忘れ、茫然と見惚れてしまう。
そんな彼らの夢見心地は、しかし、エルザの一喝によって破れる。
「ただぼーっと見ていないで、しっかりと覚えろ!
次は、お前たちがやってみせるんだ! 立て!」
刃のような一喝に突き動かされ、ナツ達は跳ね上がるように立ち上がると、先ほどまで見入っていた動作を真似て、正拳突きの訓練を始める。とは言え、普段から厳しい戦いの中に身を投じ、戦闘技術をしっかりと体に叩き込んでいる彼のこと。素人とは思えぬ、見事なフォームと迫力で、力強く正拳突きを繰り出して見せる。この様子を空手の師範が見たならば、必ずや舌を巻くことであろう。
しかし、百選練磨のS級魔導師エルザの眼光は、この程度では満足しない。彼女の眼は非常に厳しく彼らの一挙一動を監視し、ほんの小さな欠陥も見逃さない。3人の間をゆっくりと歩き回りながら、度々鋭い指摘を飛ばす。
「もっとしっかり腰を落せ!
膝に力が入り過ぎだ、無駄な力は抜いて、重力をうまくとらえろ!
そのブレた腕の動きは何だ! そんな気の抜けた動きでは、虫も殺せんぞ!」
(くっそ…だから初めてだってのに、エルザの奴、細かすぎるだろ…!)
グレイが内心で毒づいていると、その感情が表情に出てしまったらしい。エルザは目敏くそれを見つけ、叱りつける。
「グレイ! 何だ、その眼は! 仕置きされている身の上で、不満を抱くとはふてぶてしいぞ!」
「…はいはいっ、悪うございましたよっ!」
舌打ちしながらグレイは自棄気味に叫ぶと、思いきり歯噛みして表情を殺し、正拳突きに集中することにした。
3人の拳が風を切る音ばかりが響くこと、しばしの後。エルザはナツの背後でピタリと足を止める。そして、ナツの臀部に手を延ばす。
「ナツ、腰が上がってるぞ! もっときちんと、腰を落せ!」
指摘しながらエルザは、ナツの引き締まった大臀筋を道着越しに撫でる。厳しい口調に反し、その手つきは力強さよりも、匂い立つような妖艶さを想起させる、妖しいものだ。そのねっとりとした感触は、ナツの脊椎にぞわりと冷たい快感を走らせる。
(ケツ触られるのって…変な感じするなぁ…)
そう内心で呟きながらもナツは、快楽に身を委ねることなく、正拳突きの訓練に集中。エルザの言のみを全身に吸収すると、真摯に指摘を反映させることに努める。
「えっと…こんな感じで良いか、エルザ?」
「ダメだ、今度は膝に力が入り過ぎている。リラックスした上で、重力をうまくとらえて、腰を落とすんだ」
「結構難しいな…こんな感じか?」
「膝が浮いてきてるぞ。もっと膝を内側に曲げろ。
…ダメだ、今度は力が入り過ぎだ。もっと力を抜くんだ」
「くっそ…面倒だな…これぐらいか?」
「大分良くなって来たぞ。だが、もう少しだ。もっとしっかり重心を捕らえて…」
やりとりの最中、エルザは常にサワサワとナツの尻を撫で回し続ける。
(逞しいな、ナツ…。肥大化し過ぎず、バランスのとれた筋肉と脂肪…しっかりと楽しませてもらうぞ)
…結局、彼女は正拳突きの訓練が終わるまで、たっぷりとナツの引き締まった臀部を堪能したのであった。
正拳突きの訓練が終了すると、エルザはナツ達を再び正座させ、次の技の伝授に取り掛かる。
「よし、それでは次に、受け技を教える!」
宣言の後、エルザは並んだ男達に視線を這わせると…エルフマンの巨躯に目を留める。
「よしっ、エルフマン! 立て!」
「オレか? どっこいしょ…」
呼び出されたエルフマンは、おじさん臭い掛け声を漏らしながら、筋骨隆々の巨躯を重そうに身を起こす。
するとエルザは、構えも取らない完全に無防備な状態で、自身の凛々しく美しい顔面を指さす。
「それでは、エルフマン。さっき教えた正拳突きで、私の顔を好きなように殴りつけてみろ」
この申し出に、エルフマンが露骨に戸惑う。
「そ、それは…漢として、無防備な女性を殴るのは…その…非常に気が引けるのだが…」
「何言ってンだよ、エルフマン!」
外野から、ナツが呆れた風に口を挟む。
「相手はエルザなんだぜ? 手加減なんて必要ねーだろ。やれっていうんだから、思いっきりやりゃいいんだよ」
「そ、そうか…それも、そうだな…」
エルフマンは納得いかぬ自身の心に言い聞かせるように口ずさんだ後、瞼を閉じて一つ大きく深呼吸。そして眼を開いた時には、その瞳からは揺れる迷いは消えている。
エルフマンが、どっしりとした威圧感を漂わせながら、構えを取る。甲を地に向けた拳を固く握り、脇にしっかりと縮めると、尖った眼差しでエルザの顔面を貫く。そして、一つ大きく深く息を吐くと…転瞬、部屋自体を吸い込むかのように鋭く吸気。次いで、「せいっ!」と気合一閃、拳を疾風に代えて打ち出す。
巨岩のようなエルフマンの拳が、高速でエルザの頬に吸い込まれてゆく…その最中。
エルザが、動く。稲妻の如き反応速度で半歩、エルフマンに向けて踏み出すと。速度の乗り切っていない巨拳へと掌底を打ち当て、そのまま掴み取る。
「!?」
己の攻撃を微動だにせず受け止めたエルザに対し、エルフマンは驚きを隠せない。この動揺が、彼に致命的な隙を与えてしまう。これを見逃すエルザではない。更に半歩踏み出すと、巨拳を強かに突き返す。エルフマンの巨躯は大きくバランスを崩して腰が砕け、無様に床に尻餅をついてしまう。
臀部に走る鈍痛に顔を歪めるエルフマンを、エルザは厳しい目つきで見下し、見せしめとでも言うように声を大きく張り上げる。
「これが、腰抜けだ!
腰を落とす体勢をしっかり身に着けていないから、ちょっとした予想外の動作にも対応できず、転ばされてしまうんだ!
相手を無駄に気遣うよりも、相手が一体どのように対応するつもりなのか、よく予測し覚悟を決めてから、行動しろ!」
炎が湧き立つようなエルザの叱りを眼の前にして、グレイがこっそりと苦笑いを浮かべる。
(おいおい、腰抜けって…受け技を教えるんじゃなかったのかよ…)
彼の内心の突っ込みが、エルザに届いたのだろうか。彼女は一つ咳払いをすると、冷静さを取り戻し、技の解説を口にする。
「まぁ、腰抜けはともかくとして、だ。
今見せたのが、押し受けだ。
相手の攻撃の速度や威力が最大限に発揮される前に、自ら踏み込んで動きを阻み、少ない負担で攻撃を受け止める。
この行動は、相手の予測を大きく裏切ることで、さっきのエルフマンのように隙を誘うこともできる、非常に有効な受け技だ。
…それでは、エルフマン。さっさと立ち上がって、もう何度か私に殴り掛かってこい。エルフマンは自分の体で、ナツやグレイは私の動きを見て、しっかりとこの技を身に刻むんだ」
エルフマンは臀部の衝撃を引きずりながら、のっそりと立ち上がると、今度は一片の遠慮もなく険しく構えを取り、エルザの顔面めがけて正拳突きを放つ。その度にエルザは半歩踏み込んで拳を難なく受け止め、エルフマンの身体ごと軽く押し返す。この繰り返しが何度か続いた…その時。
突如、エルザが受け止めた拳をしっかりと掴み、離さなくなった。
「!?」
突然の変化に、戸惑うエルフマン。そんな彼の様子を余所に、エルザはつかつかとエルフマンの間近まで歩み寄る。そして、彼の上着の
「体格の割には細い腕だな」
「そ、そうか…? これでもしっかり、鍛えているつもりなんだがよ…」
「それに、毛もほとんど生えてなくて、ツルツルじゃないか」
「毛が薄いのは、生まれつきだから…」
エルフマンはエルザに言葉に対応しつつも、困惑を更に深める。――今は、空手の稽古のはずだ。なのになぜ、腕の太さや体毛について評価されねばならないのか? エルザの意図が理解できない。
そのうちにエルザは、エルフマンの道着の上着を開くと、鍛え抜かれた胸筋を露わにする。そして、愛おしいものを包むような優しく、そして艶やかな手つきで筋肉の隆起の合間を撫で回す。
「胸毛も全くなくて、ツルツルじゃないか。漢、漢と普段から騒いでいる割には、雄々しさのない身体だな」
「体毛で漢らしさが決まるものじゃない…」
「そうは言っても、この玉のような皮膚の感触…まるでウェンディの肌のようだぞ」
ウェンディ――フェアリーテイルのマスコット的存在である少女魔導師を引き合いに出されると、流石に漢の追及者たるエルフマンの頭に血が上る。
「そんなんじゃねぇ! 大きなお世話だ! 俺はれっきとした漢だ!」
激情に突き動かされるまま、エルフマンは胸を触り続けるエルザの腕を強かに振り払う。しかしエルザは、
「口答えするな!」
と、ぴしゃりと言い返しながら、エルフマンの腕を却って煙たそうに払い返す。
するとエルザは今度は、自由になった腕を胸ではなく、エルフマンの股間に伸ばす。そして、ニヤニヤと嘲笑を浮かべながら、揉み上げるように掴む。
「エルフマン、お前、本当にふぐりがしっかりとついているのか?」
「!!」
道着の上からとは言え、女性の手で陰嚢を弄ばれる恥辱の感覚に、エルフマンが電撃的に息を飲む。そして、変に興奮した吐息が漏れそうになるのを必死でこらえながら、抗議を訴える。
「俺は漢だぞ、付いてるに決まっているだろ!
何すんだ、エルザ! 手を放してくれ!」
しかし、エルザはエルフマンの懇願を聞き入れない。むしろ、彼女の指の動きは更にエスカレートする。睾丸をジャグリングするように揉みしだいたり、小さく縮んだ陰茎の先を摘まんでこねくり回したりする。その淫猥な刺激に、エルフマンの陽物は熱を帯び、陰嚢がだらしなく垂れ下がってしまう。
こうしてエルフマンの中心を弄びながら、エルザは心中で嘲りの呟きを漏らす。
(やはり、予想通りだ。エルフマンのヤツ、サイズは小さい…短小だ。それに、陰茎の先のあの感覚…間違いなく、包茎だ。立派にズルムケなナツやグレイに比べて、何と貧相なことか。憐れみさえ覚えてくるぞ)
股間を揉み続けるエルザの腕を止めるべく、エルフマンが再三にわたって抵抗を試みる。しかしエルザはその悉くを振り払い、道着越しの男性弄りを続ける。
「いいから、抵抗するな、エルフマン。
…ホントは気持ちいいのだろう? こんな風に、女の手に弄ばれて。素直に気持ちいいと言ってみろ」
「気持ちいいワケがないだろっ!!」
エルフマンが部屋を揺るがすような叫びを上げるが、顔は興奮で紅潮しきっており、吐く息には湿った熱がこもっている。彼の理性の砦は、エルザの行為によって瓦解に向かっているのだ。
更に、エルザはエルフマンの理性を追い立てるかのように、股間に加えて尻にも手を延ばして撫で回し始める。ただでさえ全身の神経が敏感になっているところに、別の性感帯にまで攻撃を加えられたのだ。エルフマンの苦悶が破裂しそうなくらいに膨らむ。
「良い尻をしているな。筋肉の引き締まり具合が最高だぞ。そこだけは、エルフマン、褒めてやるぞ」
「や、やめてくれ、エルザ…!」
口では抗議するものの、エルフマンは身体を使った抵抗を行わない。自分の落ち度を罰する立場にあるエルザに対して、引け目を感じているのか? それとも、下半身を絶え間なく刺激する淫猥な興奮に、身が固くなってしまっているのか?
エルフマンの無抵抗に漬け込み、エルザは存分に彼の身体を愉しむ。絡み合いが発する気配が、淫靡な桃色を濃くしてゆく。
この様子を不愉快そうに睨めつけている者がいる。グレイだ。眉間にしわを寄せて、じっと耐え続けてきたが、遂に限界が来たようだ。隣に座るナツに耳打ちし、不満への同調を得ようとする。
「なぁ…エルザのあの行動、どう見てもおかしいぜ。一体、何のつもりなんだろうな」
対してナツは、グレイの言葉にきょとんとした表情を見せると、小さく呟く。
「何って…これも、空手の訓練じゃねーの? エルフマンが言ってたじゃんか、心も鍛えるって。これがその、心の鍛錬じゃねーのか?」
この答えに、グレイは肩をガクリと落し、思わず苦笑いを浮かべる。
「そんなワケねーだろ…どこの世界に、チンコ揉み回すような武術があるってんだよ?」
「ん~…俺は大陸東方の事はよく分かンねーからなぁ…実際にあるかも知れねーし、何とも言えねえなぁ…」
グレイは大きくため息をつき瞼を伏せると、呆れ果てた様子でナツにブチブチと告げる。
「…お前みたいなバカに同意を求めたオレが、本当にバカだったよ…」
「なんだよ、そりゃ!」
ナツが抗議の声を上げるが、グレイはもう反応しない。独りでふてくされ、エルザとエルフマンの痴態を黙って睨みつけるのだった。
一方、エルザの猥褻行為は留まることなく、エルフマンを弄び続けている。
「ホントに…やめてくれよ…」
「いいから、私に身体を委ねろ」
「だから、やめてくれって…!」
「黙ってろ」
エルザが意地の悪い笑みを浮かべると、エルフマンの反抗を封じに手荒な真似にでる。道着のズボンの上からエルフマンの亀頭をギュッとつまむと、その先端にグイッと爪を立ててみせたのだ。
しかし、この行動が裏目に出る。エルフマンは反抗する力を失うどころか、興奮や羞恥をかなぐり捨てるほどの怒気を全身にみなぎらせたのだ。彼の上気していた頬からは熱が引き、その代わりに瞳の奥に爛々と激情の炎が灯る。全身の筋肉に剛力が宿り、エルザの猥褻行為を拒絶するように、弾ける勢いで隆起する。
「こんなの、空手じゃねぇっ!」
山を震わすような、轟然たる絶叫。同時に、山崩れの勢いで身を震わせ腕を振り、エルザの妖しい手つきを身体ごと振り払って吹き飛ばす。
この様子を傍から見ていたナツが、ぼんやりと呟く。
「やっぱり、あれって空手の稽古じゃなかったのか」
「どう見てもそうだろうが…」
グレイが呆れ半分、苦々しさ半分でナツに言い返した。
一方、エルザとエルフマンの間には険悪なムードが漂い始めた。
特に厳つい気迫をまとっているのは、エルフマンだ。大きく肩を上下させながら呼吸する様は、全身を駆け巡る激情の激しさを物語っているようだ。
対するエルザは、表情に余裕とも揶揄とも取れる、見下した笑みを張り付けている。その悪意に満ちた表情は、人の神経をジクジクと逆撫でする。
エルザが朱い唇を邪に吊り上げながら、ねっとりした口調でエルフマンを煽る。
「何を怒っているのだ、エルフマン?
お前は今、お仕置きを受けている身だぞ? 仕置き人に対して反抗するということは、マスターに逆らうことにも等しい、言語道断の行為だぞ」
この言葉に、エルフマンの身体の怒気が更に膨れ上がる。隆起した筋肉がフルフルと震え、岩を握りつぶすような力で拳を固める。
「…仕置き人だからって、セクハラしていいと思ってンのか…」
感情を抑え込み、エルフマンがポツリと漏らす。決して聞こえないほどの小さな声ではなかったが、エルザは敢えて彼の感情を逆撫ですべく、ニヤニヤと問い返す。
「何だ? よく聞こえなかったぞ、もう一回言ってみろ」
「S級魔導師だからって、俺達にセクハラしていいと思ってンのかよっ!」
噴火のごとき怒号を発する、エルフマン。感情の爆発は言葉に留まらず、行動にまで伝播する。エルザの道着をグイッと掴み上げて振るい、彼女の体勢を崩すことを試みながら、固めた拳を美しい顔面目がけて叩き込む。
しかし、相手は百選練磨の"妖精女王"エルザ・スカーレット。この急変を前にしても、一片も狼狽する様子を見せない。それどころか、浮かべた笑みを更に大きくしてみせる。
「当たり前だ!」
エルザの身体が、疾風のようにしなやかに、素早く動く。エルフマンの攻撃の勢いをうまく利用し、彼の体勢を大きく崩すと、そのまま床に投げ落とす。
「ぐっ!」
背中に走る衝撃に息を詰まらす、エルフマン。しかし、エルザの攻撃の手は緩まない。追い打ちとばかりに手刀を胸に叩き込み、更には腹部に蹴りを叩き込む。流れるような連続技に、エルフマンは対応しきれず、木偶のように喰らうしかない。
しかし、頑強なエルフマンの身体は、音を上げない。衝撃が抜けきらぬものの、素早く身を起こし、背を向けているエルザに対峙。そして、先に教わった正拳突きのフォームなどかなぐり捨て、肩を使って大きく拳を振りかぶり、エルザに向かって突撃する。
「くそっ…これでどうだあああぁぁぁっ!」
気合一閃、剛拳がゴウッと風を切ってエルザの後頭部に肉薄する…が。突如、エルザの姿がエルフマンの視界から消える。身を沈めて攻撃をかわしたのだ、と彼が理解した時には…エルザはエルフマンの懐深くに潜り込んでいる。
(ヤバッ…)
慌てて距離を取ろうとするも、間に合わない。エルザはエルフマンの道着の袖と襟を掴んでひねり込みながら、おぼつかない足元を払って刈る。エルフマンの巨体がフワリと宙に浮くと、転瞬、彼は再び背中から床に叩きつけられた。
それでも、エルフマンは止まらない。身を転がして体勢を立て直し、素早く起き上がる…しかし、その間にもエルザの攻撃は続き、蹴りを二発も叩き込まれてしまう。鋼鉄のように重く、烈風のように速い一撃一撃に、エルフマンの筋肉が苦痛の悲鳴を上げる。だが、今のエルフマンにとって痛みは、彼の内にある激情の炎の燃料としかならない。
「なめんじゃねぇぇぇぇっ!」
猛獣の咆哮と共に、エルフマンを遂に"
対して、エルザはエルフマン目がけて真っ向から肉薄。凶悪なる『黒牛』の巨腕が肩口を掠めるものの、表情一つ動かさず、再びエルフマンの懐に潜り込む。同時に、しっかりと腰を落し、脇を締めた正拳突きの体勢を取ると、竜巻のような回転運動を加えた拳を鳩尾深くに抉り込ませる。
「おぶぇっ!?」
エルフマンの肺から、潰れた呼気が漏れる。内臓深くに刻み込まれる強烈に打撃に、硬く緊張していた筋肉が弛緩。彼の巨体は力なく床にくずおれ、転がる。
そこへ更に、エルザから容赦のない攻撃が加えられる。
「オラァッ! オラァッ!」
斬撃のような鋭い蹴りが、エルフマンの身体を何度も何度も襲う。苦悶に脱力した体を鞭打ち、なんとか攻撃を防ごうとするエルフマンであるが、全く対応できていない。全身のあらゆる部分に、残酷な蹴撃が凶悪に叩き込まれる。
「素直に気持ちいいって言えば良いんだ、オラァッ!」
これまで以上の速度と力でもって、転がるエルフマンの腹部を蹴り込む、エルザ。そのあまりの烈しさにエルフマンの巨躯が浮き上がり、台風によって転がされる大木のように吹き飛び、壁に激突。そのまま意識を失ってしまったのか、完全に脱力した状態でうつ伏せに倒れる。
この状態に至っても、エルザの苛烈な仕打ちは止まらない。エルフマンの尻を踏みつけると、険しく吊り上げた目つきで見下し、唾棄の暴言を吐き捨てる。
「ギルドのクズが、このバカ者…私に楯突くとはな…!」
その直後、エルザの背後に、新たに激情に身を包んだ者が迫る。先ほどまで再三に渡り、エルザの所業に不満を抱いていたグレイだ。
「おい、エルザ! あんまり調子に乗るんじゃねェぞっ!」
エルフマンの無念をも己が怒りに上乗せした彼は、すでに道着の上着を脱ぎ捨て、肘と腕には魔法で作り上げた氷刃を装着している。万全の臨戦態勢だ。この状態でエルザの無防備な背後に肉薄すると、その身を旋風に変え、氷刃による連続攻撃を開始する。
「なんだ、グレイ! お前も楯突くのか!」
エルザは神業懸った反応速度で振り返ると、ブリザードの如き連続攻撃を軽やかな動きで悉くかわす。
(くそっ! 流石はS級魔導師! オレの氷刃・七連舞をあっさりかわしやがった!)
グレイの連続攻撃が終わりを迎えると、エルザに鋭い眼光が灯る。大技の直後に出来る隙を沈着冷静に見据え、手痛い反撃を食らわらすべく蹴りを放ってきたのだ。
(…だがな、そんなことは、想定内なんだよっ!)
グレイが、ほくそ笑む。彼は、エルザの間近で多くの修羅場を潜り抜けて来た魔導師だ。その氷のように冴える思考で、彼女の行動を予測していたのである。
グレイは体勢を立て直しつつ、両手で魔法発動の構えを取り、一声を張り上げる。
「コールドエクスカリバーッ!」
直後、彼の両手には身の丈を超える氷の巨剣が出現。エルザの蹴りが彼の身体を抉るより早く、凍てつく刃を彼女にぶつけ、袈裟切りに振り下ろす。
(これなら、いくらエルザでも、相当のダメージを受けたはず!)
勝利を確信し、笑みを大きくするグレイ…直後、その笑顔が凍りつく。
振り下ろした氷の巨剣が激突の衝撃で霧散した、その向こう側に…凍えもせずに健在なエルザの姿を見たからだ。
(なんだと…!? オレの全力を込めたんだぞ!?)
驚愕に襲われるグレイを、エルザは不敵な笑みで嘲る。
「カスが…効かないんだよっ!」
そしてエルザは、抵抗する気力すら湧かぬグレイの身体を掴むと、自らの背を床に沈め、巴投げで吹き飛ばす。
「がはぁっ!」
砲弾の勢いで宙を飛び、強かに壁に激突した、グレイ。全身を走り回る激痛に、運動神経が自由を奪われてしまっている。彼はそのまま、轢かれたカエルのように床に伏す…が、彼の苦難は更に続く。
エルザがすかさず、追い打ちをかけてきたのだ。エルフマンの時と同様、激烈な蹴りの連続が彼の身体に何度も何度も突き刺さる。
「オラァッ! オラァッ! オラァッ!
何様だと思ってるんだ、グレイッ! オラァッ!」
蹴りだけでなく、背中や頭の踏みつけにまで及ぶ、エルザの暴力。道着を脱いだことが仇になったグレイは、皮膚に直に叩き込まれる過酷な打撃を耐えるので精一杯だ。
「…やめろぉ…」
そう力なく呟くだけでも、今の彼には大変な労力である。しかし、この必死の懇願はエルザの耳に届かない。残酷な虐待は留まることを知らず、彼を苛み続ける。
「…エルザァッ!」
最後に残ったナツは、二人の仲間の悲劇を目の当たりにして、怒り心頭で立ち上がる。両手両足に滅龍魔法の業火を灯すと、その爆発的な勢いを利用して急加速。大気に焦熱を振り撒きながら、エルザに肉薄する。
「何しやがるんだっ! みんな、仲間だろうがっ! それを、こんな目に遭わせるなんてっ! どういうつもりなんだ、エルザァッ!」
荒々しい乱流の動きで、ナツは滅龍魔法の攻撃を絶え間なく繰り出す。火龍の鉄拳、鉤爪、翼撃…破壊的な紅蓮の輝線が空を彩り、間断なくエルザに襲い掛かる。
対するエルザの動きは、さながら激流に身を任せ、岩々の合間をスルスルと潜り抜ける木の葉のよう…空手の真髄、"流水"だ。回避動作は最小限に、そして視界には常にナツの姿を捉えている。いつでもナツの動きに合わせて、手厳しい反撃が出来る体勢だ。
しかし、エルザは敢えて、ナツへ加撃することはない。愉悦の笑みを浮かべて、ナツの空振りを誘う様は、傍目からは舞踏のように見える。
「ほら、もっと打って来い、打って来い!」
回避行動に留まらず、挑発をも口にする、エルザ。ナツの怒りの炎は更に煽り立てられ、動きが加速する。紅蓮の輝線の乱舞は竜巻となり、エルザの五体を巻き込まんと獅子奮迅するが…よく洗練されたエルザの流水の前に、有効な効果を上げられない。
「全く効かんぞっ! オラァッ!」
ついにエルザが、反撃行動に出る。大振りな火竜の鉄拳を身を沈めてやり過ごすと、雷光が立ち上る動きで体勢を戻しつつ、掌底をナツの顎に直撃させる。
「ぐぅっ!」
身体ごと浮き上がるナツは、脳天を突き抜ける衝撃に片目を
エルザがダンッと轟然たる踏込みを行うと、ナツの成りかけの防御を弾き飛ばしつつ、肘を鳩尾に抉り込む。内臓深くに浸透する過酷な一撃に、ナツの意識は一瞬寸断し、無残に脱力して落下する。
強かに全身を打って着地した瞬間、ナツは意識を取り戻す。しかし、時はすでに遅し。エルザの蹴りの毒牙が乱舞し、ナツの全身を激しく責め立てる。彼もまた、他の二人と同様の末路を辿ってしまうのだろうか?
…いや、ナツは彼らと違う。これまでも、自信の実力以上の敵と戦い、勝利を収めてきた彼の打たれ強さは、ギルドでもトップクラスだ。エルザな強烈な猛攻の中でも、闘志の炎は決して消えない。むしろ、痛みが彼の憤怒を鼓舞する。
「こんのォ…ッ!」
引き締まった腕の筋肉を総動員し、苦悶に震える体に鞭打ちながら、ナツが立ち上がろうとする。ついには片膝をつくまでに至ると、憤った竜そのものの表情でエルザを見据えるその姿から、今にも己が敵の喉笛に食らいつきそうな鬼気が渦巻く。
エルザは表情には出さぬものの、このナツの様子に密かに危機感を抱いた。それゆえに、彼女は更なる強硬手段を用いて、ナツの意識を寸断することを試みる。固めた拳から中指の関節を突き立てると、重力を利用して全体重をかけながら、その尖端をナツのこめかみに直撃させる。
「あっ…がぁっ!」
ナツの身体が激しい勢いで横倒しになり、ビダンッ! と横顔が床に叩きつけられる。その勢いに鼓膜がキィンと唸り、三半規管が困惑の悲鳴をあげる。ただでさえ平衡感覚に難のあるナツにとって、このダメージは深刻だ。
それでもまだ、持ち前のタフさで、全身全霊をかけてナツは立ち上がろうと足掻く。自らの爪を剥ぐような力みで指を床に突き立て、消えぬ闘争への意志を露わにする。
エルザは何としてでもナツを屈服させるようと、尖端を持つ拳で何度も何度も何度も、彼のこめかみを殴打する。
「オラァッ! オラァッ! オラァッ! オラァッ!」
人体の急所への執拗な攻撃は、ついに功を奏する。ずっと猛獣の表情で痛みに耐え続けてきたナツが、突如、グルリと白目を向いて脱力。全身の筋肉を弛緩させ、五体を冷たい床に投げ打った。
ようやくナツを沈めたエルザは、荒くなった息を整えながら、自らが倒した3人の男達を睥睨。そして、満足げに歪んだ笑みをニヤリと浮かべ、傲慢に吐き捨てる
「お前たちは、私のオモチャで良いんだ! 上等だろ!
オラ、返事してみせろ、オラァッ!」
反省部屋に響き渡る、勝利の咆哮。しかし、その声に反応を返す者は、いない。咆哮は空しく部屋に反響し、静かに消えてゆく。
「…クズどもが」
エルザは小さく唾棄すると、何やらゴソゴソと作業を始める――。