BALDR SKY Another World /世界X+Ω 作:デスイーター
イヴの協力と真の接続者としての力で甲達3人の機体を一つにしたシュミクラム、カゲロウ・朧が光体翼を展開し、レヴィアタンに向かって飛翔する。
レヴィアタンはカゲロウ・朧をその単眼で凝視し、女神像が憤怒の表情に切り替わる。
『嗚呼、そんな忌まわしい姿になるなんて……っ! 早くその塵共を引き剥がしてあげるわ、甲……っ!』
レヴィアタンの咆哮と共に上空に無数の光点が生成され、戦場を覆い尽くすような規模のサテライトレーザーが乱射される。
それと同時に9つの
「この程度……!」
『──カゲロウ・朧相手には、通じません……っ!』
カゲロウ・朧は脚部のブースターを起動し、光体翼をより鋭利な形に凝縮する。
そして、ブースターとチェーンソーウイングで姿勢制御をしながら直角移動を繰り返し、雨の如く降り注ぐレーザーと龍触腕から発射された九条のレーザーを見事に掻い潜った。
「さあ……」
『──行きなさい……っ!』
甲とクリスの掛け声と共にカゲロウ・朧からチェーンソーウイングが分離して空中で合体し両刃のブレードとなり、更に中央から二本のレーザーブレードが展開される。
そして、十字の刃となったチェーンソーウイングは高速回転しながらレヴィアタンに向かって滑空して行く。
『そんなものっ、すぐ撃ち落としてあげるわ……っ!』
無論、レヴィアタンも黙って見ているワケがない。
再び龍触腕からレーザーを発射し、背後の甲諸共チェーンソーウイングを迎撃しようとする。
「それは────────」
『────────下策ですよ』
『な……っ!?』
──チェーンソーウイングはレーザーに迎撃される前に十字の刃から両刃のチェーンソーウイングとレーザーウイングに分離し、二つの回転する刃が二本の
『グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……ッ!!』
首を斬り落とされた龍触腕の切断面からは緑色の粘液が流れ落ち、傷が修復される気配はない。
特異点の助力によって処理能力が爆発的に上昇したAI相手では、その巨大容量を以てしてもAIの処理速度を超えるには至らず、今までのような負荷フィールドによる無敵性は最早無い。
これでようやく、今まで触れる事すら出来なかったレヴィアタンに傷を付ける事が出来たのだ。
その事が、甲の心を昂らせる。
最早、勝利を阻む絶対の壁は存在しないのだから……っ!
『舐め、るナァァァァァァァァァ……ッ!!』
だが、レヴィアタンはこのままやられる程甘い存在ではない。
レヴィアタンの周囲に膨大な数の赤い光弾が生成され、それらが四方八方に撃ちだされる。
更に再び上空から無数のサテライトレーザーが照射され、レーザーの雨と赤い弾幕が戦場を埋め尽くす。
「なら……っ!」
『──これでどうですか……っ!』
甲はレーザーウイングを手元に引き寄せ、刃を巨大化し前方に展開。
赤い光弾を斬り裂いてカゲロウ・朧が通る道筋を作り出し、サテライトレーザーを掻い潜りながらレヴィアタンに接近する。
「さあ……」
『──喰らいなさい』
『ギッ、グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……ッ!!』
──そして腕に展開したレーザーブレードの一閃とレーザーウイングの追撃により、三本目、四本目の龍触腕を斬り落とした。
『あの龍の頭が、攻撃ユニットなのは分かってます……っ! あの頭を全部落とせば、レヴィアタンの攻撃能力は激減する筈です……っ!』
「あと5つか……なら、このまま順番に斬り落とすぞ……っ!」
レヴィアタンの機体から伸びる無数の龍触腕は以前のレヴィアタンのそれとは違い、龍触腕本体からのレーザー発射だけでなく、サテライトレーザー等の遠隔攻撃の照準も行っている。
つまり、あの龍触腕はレヴィアタンの文字通り
それらを全て潰せば、レヴィアタンは攻撃能力が著しく減衰する。
甲達はそれを理解していたからこそ、レヴィアタン本体ではなく龍触腕を優先して攻撃していたのだ。
レヴィアタン本体に致命打を叩き込む為には、まずは龍触腕を破壊しなければならないのだから。
『させ、るかァァァァァァァァァァァァァ……ッ!!』
──だが、それはレヴィアタンも当然承知している。
レヴィアタンの上空に巨大な光のリングが形成され、レヴィアタンの残った5つの龍触腕が上方を向く。
そしてその触腕全てがそのリングに照準を合わせ、莫大なエネルギーを口内に収束させる。
『降り注げっ、
────────瞬間、音が消えた。
5つの龍触腕から放たれたレーザーがリングに吸い込まれると同時に、天空から凄まじい規模の5つの極光が降り注ぎ、戦場を光で覆い尽くす。
「く……っ!」
甲は間一髪でその5つの極光を回避したのも束の間、凄まじいエネルギーの収束を感知し振り向く。
するとそこには、女神像の胸部の単眼を中心に莫大なエネルギーをチャージしたレヴィアタンの姿があった。
「……っ!?」
『捉えた……っ! 焼き払え、
──オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン──
そして、レヴィアタンの主砲────────【
今まで幾人もの者達を飲み込んだその緑色の極光が、甲に向けて避けようのない状況で撃ち放たれた。
この一撃は、避けられない。
────────それが、
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……っ!」
甲はカゲロウ・朧の脚部のブースターを起動し、光体翼を全開で起動させる。
そして、文字通り目にも止まらないスピードで飛翔した。
甲の機体は瞬く間に【終焔剣】の効果範囲を抜け、そのままの勢いでレヴィアタン目掛けて滑空する。
『……っ!?』
レヴィアタンは主砲発射後の硬直により、今は動けない。
甲はその隙を突き、両刃のレーザーウイングとチェーンソーウイング、そして手に携えたレーザーブレードを振るう。
刃が振り抜かれ、甲は一気に3つの龍触腕を斬り落とした。
『──かかったわね。もう、逃がさないわ……っ!』
「……っ!?」
──だが、レヴィアタンの中央の女神像の顔には凄絶な笑みが浮かんでいた。
いつの間にかレヴィアタンの女神像の真下に亀裂が生まれており、その亀裂はまるで生物の口のように開く。
それと同時に凄まじい重力が発生し、甲の機体が引き寄せられる。
『甲、来て……っ! 今度こそ、一つになりましょう……っ!』
レヴィアタンから発生した重力は加速度的にその力を増して行き、甲の機体を強引に引き寄せようと凄まじい圧力を生み出している。
甲は全力で光体翼を展開し上空へ逃れようとしているが、重力が強過ぎて徐々にレヴィアタンに引き込まれつつあった。
「くぅぅぅぅぅぅぅぅ……っ!」
『このっ……っ! これでも喰らいなさい……っ!』
このままでは、再びレヴィアタンに取り込まれてしまう。
そう判断したクリスは即座にギガマインを投下させ、レヴィアタンの頭上で爆破。
凄まじい爆発がレヴィアタンを襲い、甲はその爆発の余波を受ける形で上空に吹き飛ばされレヴィアタンの吸収から逃れ切った。
『アァァァァァァァァァァァァァァァァ……ッ!! 何で、何でナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ……ッ! 何故ワタシを拒ムの、甲……っ! 私は貴方を愛シテイルノニ……ッ! 他の誰ヨリモ愛イテイルノニ……ッ! 何故、ドウシテ……ッ!? 貴方ハ、ワタシヲ受ケ入レテクレナイノ……ッ!?』
レヴィアタンから、痛々しい絶叫が響き渡る。
あの恐ろしい攻撃も、今のレヴィアタンにとっては一つの
それを拒み続ける甲に対し、どうして自分を受け入れてくれないのと叫ぶレヴィアタンの狂気が、黒い情念となって溢れ出している。
今の彼女には、何を言っても届きはしない。
彼女にとっては、自分の
「…………」
今のギガマインの爆発により、残る2つの
だが同時に、レヴィアタンの主砲の冷却期間も過ぎ去っている。
女神像を中心に、周囲に過負荷を生み出す程のエネルギーが収束されているのが見える。
レヴィアタンは残るエネルギーを主砲に集め、次の一撃で決着を着けるつもりのようだ。
『先輩、こちらのエネルギーも限界が近付いています……っ!』
『次で決めるわ。いいわね?』
「……ああ、決着を着けよう……っ!」
────────甲達の絆を結集させた三位一体のシュミクラム、カゲロウ・朧は真とクリスを甲の脳内チップの内部に侵入させ、真が接続者としての能力をフルに活用する事で3人同時に一つのシュミクラムへ移行させたものだ。
疑似光体翼を作り出した技術の応用ではあるが、ノイから得た技術だけではこの姿へ変じる事は不可能だった。
だが、真は幸か不幸か接続者システムを利用した兵器であるレヴィアタンの内部を探り、その心臓部となっていたオリジナルのトランキライザーも見る事が出来た。
そして、接続者システムはAIを
それを利用し、特級AIであるイヴの協力と特異点から流れ込んだ処理能力を用いて、不可能と思われた三位一体の特殊な移行、
完全同調状態では3人の演算能力を同調させる事により、精密且つハイスピードの機動を可能とし、通常のシュミクラムの数倍から十数倍の速度を得る事が出来る。
武装の攻撃力も格段に上がっており、その戦闘力は元々の3機のシュミクラムを合わせたものよりも更に上だ。
レヴィアタンという頑強な敵を倒す為には、最適の形態と言える。
しかし当然、リスクもある。 三人分の演算力を同調させた結果として、精神の疲弊が著しく、長期間の戦闘は行えない。
更にエネルギー消費も激しい為、今は特異点からの助力によって処理能力の増したイヴから供給を受けて、何とか動いている状態だ。
故にこれ以上、戦闘を引き延ばす事は出来ない。
次の一撃で、決着を着ける必要がある。
『全部……全部、そいつらが悪いのね……っ! いいわ、貴方ごとそいつらを取り込んであげる……っ! でも、私の中に残るのは貴方だけよ……っ! 今度は何かをする暇は与えない……っ! その二人は取り込み次第、すぐに私の半身ごと
レヴィアタンは歪んだ愛を叫びながら、主砲のエネルギーを溜め込んでいく。
そのエネルギー総量は周囲に過負荷を生む程で、自身の集めたエネルギーに耐え切れず、レヴィアタンの外殻が罅割れて行く。
しかしレヴィアタンは構わずエネルギーを増大させ続け、上空の甲に狙いを定めている。
「真ちゃん、頼む……っ!」
『はい、先輩……っ! 光体翼、
真の言葉と共に光体翼が機体を覆うようなサイズまで巨大化し、レーザーウイングが光体翼の先端に接合する。
そして、カゲロウ・朧そのものが光を纏う鏃のような姿へと変じていく。
チェーンソーウイングは光体翼の一部となり、チェーンソーの回転により光の翼全体に振動が広がっていく。
『ブースター
機体の脚部が変形し、計四機のブースターへと切り替わる。
それと同時に機体全体が光のシールドに包み込まれ、カゲロウ・朧の特攻形態へのシフトが完了した。
『さあ────────』
「────────行くぞ……っ!」
甲はブースターを全力で解放し、凄まじいスピードでレヴィアタンに向け滑空する。
その滑空は音を置き去りにし、レヴィアタンに向け一条の流星が降り注ぐ。
『
──オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン──
そして、遂に最大出力のレヴィアタンの主砲、
空を覆い尽くすその極光に逃げ場などなく、甲の機体も成す術なく飲み込まれ────────。
『……な……っ!? バカ、ナ……ッ!?』
────────次の瞬間、
細かく振動する光の翼が死の光を掻き分け、甲の機体を前へと進ませている。
──────このカゲロウ・朧の最終特攻形態は、機体のエネルギーの全てを光体翼に注ぎ込む事で、莫大なエネルギーを凝縮した光の翼をチェーンソーウイングの回転で振動させ、機体そのものをあらゆるものを貫く光の槍へと変じさせる。
実弾兵器は近付く前に蒸発し、あらゆる光学兵器すら斬り裂き進む光の槍。
それが遂に、レヴィアタンに到達する。
「届、けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……っ!!!」
──オォォォォォォォォォオォォォォオォォォォォォオォォォォォォォン──
『ぁあアアあぁアアァアあああぁあァああアぁあアアあぁアアァアあああぁあァああアアアァアあああぁあァああぁあァああアぁあアアあぁアアァああぁあァああアっ……!』
────そして、光の槍はレヴィアタンに着弾し、その中央に大穴を開けレヴィアタンは断末魔の如き咆哮をあげる。
粉々に砕け散った女神像を中心に外殻に罅割れが広がって行き、やがてレヴィアタンの外殻が音を立てて砕け散った。
地上にレヴィアタンの残骸が落下していき、轟音と共に黒い巨体が墜落する。
『レヴィアタン、抑圧停止……AIネットワークは機能を完全に回復します』
レヴィアタンの墜落と共にイヴの声が響き渡り、そこで甲の限界が訪れる。
光の槍と化していた甲の機体の姿がブレていき、やがて元のカゲロウの姿に切り替わる。
甲はゆっくりと降下しながら、地面に散らばるレヴィアタンの残骸を眺めていた。
これで、仮想世界に蘇った悪魔────────レヴィアタンの脅威は、終わったのだ。
最終決戦、決着……! オリジナルの武装満載でお送りしましたが、最後のレヴィアタンの攻撃はほぼ全画面攻撃なので、こうでもしないと突破出来なかったり。