※この作品はR-18です。

BALDR SKY Another World /世界X+Ω   作:デスイーター

86 / 95
 スポーツ描写書くのは初めてなので、細かい事は気にしない方向で。大分簡潔に書きましたので。


After Story Ⅱ/渚千夏・桐島レイン~少女達の挑戦・承~

 

 ──結論から言って、千夏達はクリスの運動能力を軽く見ていたと言わざる負えなかった。

 

 いや、クリスの運動能力がズバ抜けている事は察していたのだが……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()為に、その()()を見誤っていたのだ。

 

「さあ、行くわよ」

 

 クリスはニヤリと笑いながらドリブルを開始し、千夏側のゴールに向かって走り始める。

 

 その動きは予想以上に俊敏で、並の選手であれば反応する事すら不可能だろう。

 

 だが、千夏は全身義体でありその身体能力は常人とは一線を画している。

 

 クリスの動きに反応し、その手からボールを奪おうと駆け寄りながら手を伸ばす。

 

「──無駄よ」

 

 ……その手がボールに届く事は、なかった。

 

 クリスは思い切りボールを地面に叩きつけ、バウンドして空高く浮き上がったボールをすさま跳躍して空中でキャッチし、そのままゴール目掛けて放り投げた。

 

「させません……っ!」

 

 しかし負けじとゴール前に控えていたレインが飛び上がり、ボールを叩き落とす。

 

 無論、叩き落されたボールを拾おうと千夏が駆け出すが……。

 

「──遅いわ」

 

 ──次の瞬間、再び飛び上がったクリスがボールを再度空中で掴み取り、そのままゴールにダンクシュートを決めて見せた。

 

 ボールが地面に落ちる音と同時にクリスは軽やかに着地し、不敵な笑みを浮かべて見せた。

 

 その姿を見て、千夏は唇を噛む。

 

(チッ、大口を叩くだけはあるね。まさか、こんなに一方的に翻弄されるなんて……)

 

 正直、千夏は全身義体である自分であればクリスに対抗出来るだろうと思っていた。

 

 幾ら被造子とはいえ、パワーであれば自分の方が上だし身体能力も負けてはいない……ゲームを開始する前は、そう考えていた。

 

 ──だが、実際の結果はこれだ。

 

 クリスはその人並外れた瞬発力も然ることながら、とにかく()()のだ。

 

 クリスはバスケットは過去に何度かやった程度で、決して熟練したプレイヤーではない。

 

 だが、その反射神経と天性の技巧を駆使して立ち回る事で、千夏達を寄せ付ける隙を、一切与えなかった。

 

 最初は二人がかりでボールを奪おうとしていたのだが、千夏と比べて身体能力が劣るレインの隙を突かれる形で安々と突破されてしまった。

 

 その結果を踏まえて千夏がボールを奪いに行き、レインはゴール前で防御に専念する布陣にシフトしたのだ。

 

 だが、千夏と1対1の状況になってもクリスは圧倒的だった。

 

 確かにパワーでは千夏が上だが、スピードはクリスに分があり、反射神経はそれこそ化け物じみている。

 

 結果として何処から攻めようがクリスは難なくそれを躱し、これまで一度として千夏はボールに触れる事が出来ていない。

 

 しかも、既にクリスは50点以上を得点している為千夏達は5つもの腕輪型の重りを装着させられている。

 

 千夏は義体故まだ余裕があるが、レインは若干辛そうだ。

 

 このままでは、レインの限界が来てギブアップせざる負えなくなってしまう。

 

 そうなる事だけは、なんとしてでも避けたかった。

 

(かと言って、レインを退場させればこれまで以上のスピードで得点されるのは眼に見えてる……50点()()で済んでいるのは、レインが防御に専念してくれてるからだ。そうでなきゃ、もう100点以上取られててもおかしくない)

 

 既に千夏は、クリスの運動センスが全ての面に置いて自分を上回っている事を認めざる負えなかった。

 

 幾ら全身義体とはいえ、速力まで劇的に上げているワケではない。

 

 千夏の義体はどちらかといえばパワーを重視しており、スピードでは明らかにクリスに上を行かれている。

 

 それに現在は生身で活動する事が多いクリスと違い、千夏達は仮想を主な仕事場としている。

 

 その為その動きはどうしても戦闘用電子体(シュミクラム)を纏っている時のものに近くなってしまい、生身の身体で動くと多少の違和感を感じてしまうのだ。

 

 シュミクラムの時の動きと実体との動きでは、どうしても違いが出て来てしまう。

 

 仮想での戦闘に慣れ切った千夏が、生身での活動に慣れていたクリスに劣るのは無理からぬ事だった。

 

「ふふ、どうかしたのかしら? ギブアップならいつでも受け付けるわよ」

「……ハッ、誰がそんな事するか……っ! 絶対に、勝ってやるからな……っ!」

「ええ、私達はまだ……諦めてません……っ!」

 

 クリスの挑発に、千夏とレインは精一杯の意地で応えた。

 

 そんな二人を見て、クリスは不敵な笑みを浮かべる。

 

 ……このフィールドに、ギャラリーはいない。

 

 唯一、真だけがクリスの視界を通してこのゲームを観戦しているが……甲でさえ、今日のゲームの事は知り得ていない。

 

 あくまでこれはクリスと千夏達の勝負であり、余人を交える必要はないと考えた為だ。

 

 甲は思いっきり当事者であるが、この場合はクリス達の意志が優先される為必然的に蚊帳の外だ。

 

 自分達は、スポ魂勝負をしたいのではない。

 

 甲という一人の男の愛を勝ち取る為、クリスという彼の寵愛を受ける女から勝利をもぎ取りたいのだ。

 

 最初からハンデを貰っている身の上であり、尋常な試合であればとうの昔に勝負はついているが……クリスが()()()()()()()()()()()()()()と宣言した以上、ギブアップしない限り自分達に負けはない。

 

 例えどれだけ惨めに足掻いてでも、自分達は何が何でもこの女から勝利を勝ち取りたいのだ。

 

(ハンデを貰ってる時点でもうプライドも何もない……どんな手段を使っても、必ず勝利をもぎ取ってやる……っ! 女の戦いってのは、そういうもんだろ……っ!)

 

 千夏はクリスに目を向けたまま、直接通話を使ってレインに作戦を指示する。

 

 レインは一瞬驚いた様子だったが、すぐに表情を元に戻した。

 

 その様子を見てクリスは二人が直接通話で会話した事を察した様子だったが、元よりこのゲームに明確な反則規定は定めていない。

 

 精々、相手に故意に攻撃した場合は退場というくらいだ。直接通話で会話する程度、見逃さない理由はない。

 

(さあ、どうするのかしら? 意地を見せてみなさい)

 

 元々、クリスはこのゲームの勝敗よりも千夏とレインの女としての執念を見極める気でいた。

 

 正々堂々としたスポーツ勝負に拘って諦めるようならそれまでの相手だったと見切りを付けるつもりだったが、この気配から察するにこの勝負の()()を思い出したようだ。

 

(元々、私にスポーツ勝負に対する興味なんてない。私が見極めたいのは、貴方達の想いの()()よ。私相手にあそこまで啖呵を切ったんだから、泥を被る覚悟くらい出来ないと話にならないわ)

 

 千夏が学生時代、スポーツ選手を志していた事は知っている。だからこそ、このスポーツ勝負を受けたのだ。

 

 彼女が最も神聖視するスポーツの勝負で、男の為に手段を選ばない修羅になれるか……それが、クリスの見極めたいポイントだった。

 

 クリスは、己の性能を正確に理解している。

 

 故に正攻法でやる限り、千夏達に勝機はない事も分かっていた。

 

 この状況下で千夏達が勝利をもぎ取る為には、()()()()()()()()()()()()()という幻想を捨てるしかない。

 

 今までは元スポーツ選手というプライドを捨てきれなかったようだが、どうやら此処に至って覚悟を決めた様子だった。

 

 その事を明確に感じ取り、クリスは一人高揚する。

 

「行くよ……っ!」

 

 千夏は鋭い目つきでこちらを睨みつけながら、クリスの下へ駆け出して来る。

 

 クリスはドリブルしながら千夏を迎え撃つつもりで、千夏の到達を待ち構えた。

 

(さあ、何をして来る……? 目潰し? 投石? それとも退場覚悟の直接攻撃かしら? さあ、何でもやって来なさい……っ! 生半可な策じゃ、私は越えられないわよ……っ!)

 

 クリスは駆け出す事もせず、その場で千夏が仕掛けて来るのをひたすらに待った。

 

 そして千夏が遂にクリスの至近距離に近付き、手からボールを叩き落そうと腕を振るって来る。

 

(……? 何もして来ない……? さっきの表情はハッタリだったのかしら……? けど、それなら理解出来るまで叩きのめしてあげるわ……っ!)

 

 若干の失望と共にクリスは難なく千夏の腕を避け、そのままゴールまで駆けだそうとする。

 

 しかし、ボールをドリブルしていた右手が、突如空を切った。

 

「え……っ!?」

 

 ──驚くべき事に、千夏はその足を振るってクリスのドリブルしていたボールを蹴り上げていた。

 

 まさかそんな手で来るとは考えもしていなかったクリスは一瞬呆然となり、反応が遅れる。

 

 それは千夏にとって、決定的なチャンスを意味していた。

 

「──公式試合ならともかく、このゲームの中じゃ足を使っちゃダメなんてルールはなかったからね……っ! 貰った……っ!」

 

 そして動きの止まったクリスを置き去りにし、千夏は蹴り上げたボールに向かって跳躍し、オーバーヘッドキックを決めた。

 

 ボールはそのままクリス側のゴールに向かい……ガコン、という音と共にゴールの中へと叩き込まれた。

 

 ゴールポストを通過したボールはそのまま地面へと落下し、バウンドしながらクリスの足元へと転がり落ちた。

 

 そのボールを見て、クリスは溜め息を吐く。

 

「……完敗ね。ダーティーな手段を使うと思い込んだ私の負けよ」

「ま、最初はそういう手段も考えたけど……そんなの、格好良くないだろう? そもそも普通のバスケの試合じゃこんな真似出来ないけど、これならアンタの度肝も抜けるし卑怯な手段とも言えないからアタシが負い目を感じる事もない。確かに女の戦いに卑怯も何もないが、それでもスマートに勝った方が見栄えはいいだろう?」

 

 勝ち誇った千夏の言葉を聞き、クリスは再度溜め息を吐いた。

 

「……確かにね。まったく、いつの間にか傭兵時代の考え方で判断していたみたいね。これからは日常を謳歌するんだから、注意しないといけないわ」

 

 クリスはやれやれといった様子で溜め息を吐き、千夏とレインを見据える。

 

 その視線を受け、千夏とレインは自然と背筋を正した。

 

「──約束通り、甲との結婚を認めるわ。式の手続きは聖良社長に頼んでおくから、いつでもやれるように用意しときなさい。私達の時と違って身内しか呼ばないけど、形だけは整えて貰うわ」

「ありがとう。これからよろしくな、クリス」

「六条さん、よろしくお願いします」

 

 こうして、後日千夏とレインによる甲との結婚式が催され、仲間から盛大に祝福されながら二人は甲の妻の座を得る事となった。

 

 甲は新たな妻の誕生に困惑しながらも、二人の愛に応えるべく、より一層の精進を誓うのだった。




 これをスポーツ描写と言えるのかは分かりませんが、主目的ではないので大目に見て貰えれば。
 後はお待ちかねの濡れ場回になります。そういえば、巨乳キャラのエロを書くのは今作では初めてだなぁ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。