DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
加藤家でも、やはり2つの放送は流れていた。
明人がデビルマンであることを知り、美佐樹の父、母、弟の孝太郎は絶句していた。
しかし、彼の正体を事前に知っていた美佐樹は家族を必死に説得した。
明人の心は人間だと、悪魔の能力を持っていても彼は自分たちの知る明人のままなのだと。
彼女の熱意と明人に対する愛を受け止め、家族は彼の存在を受け止めた。
「・・・————しかし、我々が明人のことを信じたとしても、どうもしてやれない。時期に悪魔特捜隊がここに来るだろう」
「悪魔特捜隊が後の方の放送を見ていると良いんですけどねぇ……」
加藤夫妻の小さな希望は、すぐに打ち砕かれることになる。
放送終了後の数十分後には悪魔特捜隊が到着し、家に大勢で押し入ってきた。
「デビルマン、内海明人はどこに居る!?」
「我々は知らない。彼は戻ってきていませんよ、今後ここに戻ってくることもないでしょう」
父が毅然とした態度で軍人と相対する。
母は特捜隊が来る前に美佐樹と孝ちゃんを2階に上げさせ、2人の元には行かせないと言うように階段の前に立つ。
軍人は狂った笑みを浮かべ、腰にさしていた鞘から刀を抜いて父に向ける。
「貴様ら、悪魔を庇っているのではあるまいな?」
「明人は悪魔の身体を持っていても人間の心が残っている。あなた方も報道を見ただろう?デビルマンは人間と同じだと言っていたではないか」
「あのような情報に便乗するとは、やはり貴様らにも悪魔の疑いをかけなければならないな。兜博士と兜甲牙については、あの飛鳥教授の偽物の悪魔に洗脳されたと我々悪魔特捜隊は判断した。あれこそ、悪魔が我々人間を惑わすために流した偽情報だ」
悪魔特捜隊の真意は、あくまでも悪魔の能力を持った者は全て抹殺対象とするという見解のようだ。
「何が嘘で何が真実なのかは、私たちには判断できない。しかし、私たちは内海明人を信じる。我々の家族である彼を、信じているのだ」
「悪魔を信じるとは愚の骨頂だな……。このような愚者どもに貸す耳はない!!この2人を連行しろ!!」
悪魔特捜隊は有無を言わさず加藤夫妻を連行していった。
軍人は1度2階を睨みつけたが、確認せずに加藤家を出て行った。
部下の1人が敬礼しながら問いただす。
「隊長。この家には子どもが2人居たはずですが、いかがいたしましょうか?」
「『あの方』からは子どもは放っておけとのご命令だ。今は内海明人を引きずり出すことが先決と言う事だろう。我々は、あの方の正義の下に悪魔を狩れば良い」
装甲車内で通信端末のラジオを聴いていると、先ほどの了の報道が耳に入る。
それが不愉快に感じ、軍人は通信端末を外に投げ捨てては車のタイヤで踏みつぶした。
「人間の心を持った悪魔だと……?くだらん、悪魔は悪魔だ。人間が生き残るためには、悪魔は全て殺さなければならないのだ」
了の言葉は多くの民間人の暴動の意志を鎮静化させた。
しかし、全ての人間の心には響いていない。
これより、運命の修正が始まる。
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おじさんとおばさんが悪魔特捜隊に捕まった。
このまま野放しにしていれば、加藤夫妻の迎える未来は……。
突然激しい頭痛を感じた。
久しぶりのフラッシュバックだ。
下半身が刺々しい歯車によって潰されてしまったおじさん。
逆さに吊るされ、身体を左右に引きちぎられたおばさん。
前世界で2人の死体を見たからこそ、この世界では死なせたくないと思う。
しかし、前世界の記憶を持っているからこそ俺は後に起こることに予想がつく。
牧村美樹が醜く惨殺されてしまったように、美佐樹にもあの未来が待っているかもしれない。
悪魔特捜隊に乗り込むか、加藤家に戻るか。
了さんの言葉は悪魔特捜隊には届かなかったのだろう。
今の悪魔特捜隊を野放しにしておけば、この後も数々の疑心暗鬼ゆえの悪魔狩りの犠牲者が多く生まれることだろう。
叩くならば、被害が少ない今しかない。
だけど、俺には……。
『明人、信じてるからね』
美佐樹を守ると誓った。
彼女本人にも、死んでいった母さんにも父さんにも。
俺はその誓いを破ることができない。
今目の前の脅威を叩くことを優先するか、大切な者を守るという誓いを優先するか。
俺は……。
「明人……共に悪魔特捜隊の本部を叩きましょう。あなたが戦うと宣言すれば、私はあなたと共に戦うわ。今の悪魔特捜隊は危険、我々が潰すしかない!!」
ツバサの言葉を聴き、心が揺れようとしている。
それが正しいことのように聞こえてくる。
不動明の記憶が、デビルマンとしての正義の心が、悪魔特捜隊を叩けと言っている。
「……」
「何を迷っている!?前のあなたなら、人類の敵である悪魔特捜隊を叩き潰すと宣言していたはず!!」
そうだ、それが不動明だった。
そして、俺はその転生者だ。
悪を叩きたい、倒したいという想いが無いわけがない。
しかし、俺には守るべきものがある。
俺をデビルマンとして保つための大切な存在が。
前の世界の結末を知るからこそ、俺は選択しなければならない。
世界の命運と1人の恋人の命を。
「俺は……」
選択に苦悩していると、頭の中にある光景が浮かぶ。
それは、いつも見ていた天使の夢だった。
あの時、不動明は声にならない声で言っていた。
そして、サタン……了さんはそれを理解していたはずだ。
「俺は内海明人だ。不動明の意志も後悔も知っている」
ツバサを力強く見つめて指さす。
「悪魔特捜隊は人類の悪だ。その暴走は止めなければならない、必ず叩き潰さなければならない!!だから、俺はっ……!!」
内海明人としての俺の選択は決まった。
それと同時に、上空を紅い小型の飛行機が横切った。
内海明人の選択は世界の命運を変えるのか!?
……最近、この言葉の言い回しで後書きを引っ張ってる気がするのは気のせいです。
次回、遂に加藤家に惨劇が起こる。