DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
天使と悪魔の力を同時に発動させたサタンの力は圧倒的だった。
12個の光の球は剣に変化し、ミカエルを襲う。
魔法陣からは光の盾が出現して剣を防ごうとするが、それをすり抜けてミカエルを貫通する。
「ぐはぁあ!!……何故だ!?」
「次元が違う物を使えば、すり抜けるのはおまえも知っているだろう。おまえができることを、俺ができないはずがない。そして、微調整すれば痛覚だけを刺激することができる。そして!!」
サタンが突撃を仕掛け、光球を白銀の長剣に装填して斬りかかる。
黄金の杖で防ぐミカエルだが、徐々に押されてしまう。
「その剣……天使と悪魔の力を掛け合わせて生成した剣か!?」
「魔剣サタン。我が意志に呼応し、力を調整することができる。今は力の3割も出してはいない」
「調子に乗るな!!神の力を汚れた身体に刻んでやる!!
周りに光の柱を展開し、地面から巨大な光線が発射される。
それが直撃してしまうサタンだが、苦しむ様子もなくミカエルに近づく。
「天使と悪魔の性質を兼ね備えている者には、聖なる光は蚊に刺された程度のものだ。今の冷静さを欠いたおまえの力など、恐れるまでもない」
宙に浮いてミカエルを見下ろすサタン。
見上げるミカエルの表情は屈辱による怒りで歪む。
「おまえが、私を見下ろすな……この裏切者がぁああ!!!」
周囲に無数の魔法陣を展開し、ミカエルの姿をした虚像が両手に剣を持って出現する。
「
兄を否定しながらも、兄をその名で呼ぶミカエル。
そこから伝わるのは、弟の悲痛な叫び。
裏切られたことに対する――――悲しみ。
「今、おまえを解放してやる。愛すべき弟よ」
サタンは自身の足元に巨大な蒼い魔法陣を展開する。
両手で魔剣サタンを構え、天に刃を向けては周囲に光の衝撃波を放った。
「
虚像が一瞬で消えていき、ミカエル自身にも相当なダメージを受ける。
「ぐはぁああああ!!!」
ミカエルの顔に火傷ができ、それは自動的に消えない。
黄金の鎧も黒く焦げる。
「俺の定める範囲外の者には、俺自身も含めて裁きを受ける」
サタンの鎧にも焦げ跡があり、ダメージを受けているのがわかる。
「今回俺が決めた範囲は、人間以外の全てだ。おまえだけが苦しむ必要はない……おまえの痛みは、俺の痛みだ」
「偽善者がっ…!!私は負けていない!!このままでは終わらん……終わらせるわけにはっ…!!」
圧倒的な差を持つ双子の天使。
もはや勝負は決していた。
倒れるミカエルの前に降り立ち、魔剣の刃の先を彼の目の前に突きつけるサタン。
「もう終わりだ……バカ弟が」
「……私が負けるわけにはいかない……。この私が、神のシナリオに反してはっ…!!」
1つの戦いが終わると思われた。
しかし、その時――――。
「神のシナリオはもう終わりだ、ミカエル」
空間に亀裂が入り、割れる。
割れた空間の先を見て、サタンは目を見開いては言葉を失った。
「……おまえはっ……!!」
3つの巨大な頭を持つ地獄の番犬。
その上に乗っているのは、今の地獄の支配者。
しかし、その姿は前とは大きく異なる。
「どうした?何を動揺している。……サタン」
その姿はサタンの親友、不動明と酷似していた。
しかし、それはおかしい。
何故なら、明の精神体であったバイオレンスジャックは既に消滅している。
ならば、目の前に居る男は……。
ミカエルは奴を見上げて名を呟く。
「白藤……隆一……!!」
「この時を待っていた。おまえの力が弱まる、この時をな」
サタンとミカエルを断絶するように炎の壁が広がる。
「答えろ、白藤隆一!!おまえが……おまえがジャックを……明を消したのか!?」
サタンの問いには答えず、白藤は瀕死のミカエルに近づいては右手を向ける。
「思い出すな、ミカエル。おまえが俺に転生の機会を与えた時、俺は確かにおまえに感謝した。あの時、未来を変えるために、大いなる力も手に入れた」
「白藤…隆一……。貴様、何故この世界に――――‼」
胴体を踏みつけ、指を鳴らせば黒い炎がミカエルを襲う。
「はぐぁああああ!!!!」
「だからこそ、おまえが前世界の出来事が全て神のシナリオ通りだったことを話した時に怒りを覚えたぁ」
変身していない白藤の背中から、黒い翼が生える。
「あの人間どもの残酷さも、愚かしさも、美紀の死も……全てが予定調和だとぉ?ふざけるな!!」
「ぐぁはぶっ!!」
頭を強く踏み、ミカエルの翼と鎧を燃やして灰にする。
もはや、その姿は人間と変わらない。
しかし、地獄の炎でも燃やせない物があった。
それを手に取り、白藤は黒い笑みを浮かべる。
「これが欲しかった。これさえあれば……」
全身に火傷を負ったミカエルは、焦点の合っていない目を白藤に向けては彼の足を掴む。
「や…めろ……!!それはっ……神の……意志を……!!」
「そう、これが全ての始まりだった。これを使えば、世界を救うことができる」
それは1冊の分厚い本だった。
神のシナリオ。
そこに書かれていることは現実となって起こる。
あるページを開き、白藤は笑みを浮かべる。
「これで運命は変わった。あとは新世界を作りだすだけだ……」
白藤はサタンに目を向け、不敵に笑う。
「サタン……」
「白藤隆一。おまえは一体……」
白藤は本を持ったままサタンに近づいては横を通り過ぎた。
「俺は不動明ではない……。白藤隆一。世界を真に導く者だ」
その時、その場に居た甲牙もマスクの下で驚愕の表情を浮かべる。
「不動明だと……?それは明人の前世のはずだ。どういうことだ、サタン!?」
「わからない……。しかし、今俺たちの目の前に居たのは、紛れもなく明の姿をしていた。その事実は受け入れなければならない」
サタンも動揺が隠せないのだ。
目の前に居るのは、確かに不動明の姿をしている青年だ。
それならば……。
「サタン、俺は世界を変えるぞ。今日この日より、黙示録とは違う未来が来る。新しい時代では、人間もデーモンも関係ない。圧倒的な力の時代だ」
「……おまえは一体何をしようとしているんだ、白藤隆一!?」
サタンに薄い笑みを向け、白藤隆一は空間の亀裂に戻って行く。
彼を追いかけようとするが、今の戦いで力を使い果たしてしまったサタンは膝をついてしまう。
「この世界は滅んだりしない。俺が全てを救うからな」
彼の叫びも届かず、空間の亀裂は修復されてしまった。
「明ではなく……白藤隆一。まさか、明は……」
甲牙はサタンの隣に立ち、変身を解除する。
「とりあえずは、目的を達成できただけで良しとしようぜ。悪魔特捜隊はもう壊滅したも同然だ。明人も上手いことやっただろう……」
「そうだな……人質は皆救出した。あとは、この砦を破壊するだけだ」
その後、デーモン・デビルマン連合軍は悪魔特捜隊本部を徹底的に破壊し、人類の歪んだ思想の砦は陥落した。
これで1つの重大な戦いは終わった。
しかし、サタン……飛鳥了は一抹の不安を抱えることとなる。
神のシナリオを手にした白藤隆一。
彼の目的はいかに……。
飛鳥了と不動明。
黙示録を回避しようとも、この2人の衝突は避けられないのか。
ちょっと速足になりましたが、これで悪魔特捜隊本部攻略戦は終了です。
次は明人編に戻ります。