DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
欲望の試練
黙示録の分岐点となる運命の日から3か月が経過した。
悪魔特捜隊が崩壊した後でも、人間とデーモンの不毛な争いは続いていた。
世界では、デビルマンが人間か悪魔であるかの議論が毎夜のように続いている。
日常の中に住むデーモンやデビルマンを受け入れる所もあれば、人間のみを受け入れる街やデーモンのみの理想郷を作り出そうとする動きも見られてきた。
デビルマン軍団の動きが鳴りを潜めている間も、世界は刻一刻とあらゆる意味で状況を変えつつある。
その中でも、一筋の希望はあった。
飛鳥了が自身がデーモンの長であった魔神サタンであることを全世界に明かし、人類の希望であるマジンカイザーこと、兜甲牙と協力関係を築いた。
人類とデーモンが共存して生きていくために、彼らは共に世界で起きている問題に対処する意志を示したのだ。
その中で、内海明人は自身に与えられた役割を遂行し、決して表舞台には出ずに影で戦うことで彼らを支え続けた。
今夜も彼の戦いは起こなわれる。
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1人の小柄な少女が、息を切らしながら路地裏を走り回っている。
それは元気に呑気に走っているわけではない。
「はぁ……はぁ……いやだ……いやぁ~~!!!」
焦りと命の危険を感じながら、後ろから聞こえてくる奇声を振り切ろうとしている。
<待てぇええ、このクソガキァアアア>
狂った目をした中年の男だった。
しかし、その手と口の周りには血がべっとりと付いていた。
逃げ回る少女であるが、地理のわからない路地裏を進み続けていると行き止まりに追い詰められてしまった。
その後ろを、首をいろんな方向に回しながら男が近づいてくる。
<久しぶりに柔らかい肉が食えそうだぜぇええ>
男の顔が左右に分かれ、クワガタの頭にムカデの身体をした悪魔となる。
「ひぃい!!……こ、来ないでぇ……きゃぁあああ!!!!」
身体をうねらせながら迫ってくるデーモンに悲鳴をあげる少女。
デーモンの桑が少女を挟もうとしたその時、上空から白い光を放って落下した者が1人。
「デビルっ!!」
着地すると同時に変身は完了し、俺は純白の鎧を装着していた。
俺の姿を見て、デーモンは血の気が引いた表情をする。
<おまえは……デビルマン・ゼロ!?>
硬直している悪魔に近づきながら、右手の拳にオーラを集中させる。
「おまえたち、人間の肉を食わなくても生きていけるだろ?もう止めろよ……」
<そんなことができるはずがない!!人間は俺たちの餌なのさ!!>
悪魔は俺に迫り、桑を左右に広げる。
<噂に名高いデビルマン・ゼロを殺せば、名が売れるってもんだぜ!!きゃっはぁああ!!>
「こちとら、おまえに殺されるようにはできてねぇんだよ!!」
タイミング良く拳を振るえば、悪魔の頭が消滅した。
拳で殴ったのではなく、破壊のオーラで頭を削ったのだ。
地面に倒れたムカデの身体は動かなくなり、それを白い光のオーラで消滅させた。
ゼロの能力も使い勝手がわかってきた。
下級デーモン相手なら、オーラだけで消滅させることができる。
しかし、デビルマンとなると話は別だ。
直接拳を叩きこみ、技を使わなければ倒せない。
少女を見ると恐ろしさのあまり気絶していた。
「良かった……次に起きたら、悪夢だったと思ってくれるだろう」
夜空を見上げれば、今日は満月が浮かんでいた。
それに手をかざせば、その影がフルフェイスのマスクに落ちる。
俺が戦わなければならない相手は、一体誰なのか。
白藤隆一率いるデビルマン軍団。
彼らを止めることが、俺に与えられた使命なのだとしたら……。
「もっと……力をっ……!!」
悪を倒すための力が、そして大切な者を守るための力が欲しい。
『力を求めるか……内海明人』
聞き覚えのある声が聞こえ、頭上を見上げる。
そこに居たのは、紅蓮の鎧を装着している翼を広げた悪魔だった。
「おまえは、アモン!?どうして……いや、今まで何を――――」
『問答無用ぉおお!!!』
アモンは急降下しては俺の首を掴み、上空に上がりながら握る力を強めていく。
ゼロの鎧を着けていなければ、今頃首の骨が折れていただろう。
「何を……するんだ!?」
両手で力づくでアモンの手を引きはがし、こちらも漆黒の翼を広げる。
満月をバックにアモンと対面する。
話し合いに持ち込もうとするが、アモンが両拳で怒涛の連続攻撃を仕掛けてくる。
それをこちらもガードしているが、やはり奴の拳はどの悪魔よりも重い。
『前に会った時よりも格段に力を上げたようだな、内海明人』
「品定めしに来たのか?勇者様は暇なんだな」
『デーモンの本能は欲望が全てだ。欲望が悪魔の力を強くする。俺は今、おまえの欲望を試したい!!』
アモンは本気だ。
本気で俺を殺しに来ている。
最初に戦った時とは違い、こっちも力の使い方はわかっている。
オーラを両手に集中させ、アモンの右拳の渾身の一撃を受け止める。
「さぁ……次はこっちの番だ!!」
掴んだ拳を軸に回転し、上に向かって放り投げる。
翼をはためかせて一瞬で上空に移動し、落下する勢いで腹部に蹴りを入れる。
『ぶぐぅ!!……ぐぁははははっ!!まだだろう?もっと来い!!』
挑発に乗り、その後もラッシュ攻撃を繰り出すがまるで効いていない。
両手首を掴まれ、腕を握り潰されそうになる。
「うぁあああ!!」
『どうした?おまえの力はそんなものか!?全力でかかってこい!!』
全力……今の俺の全力なら、決まっている。
ベルトの中央が螺旋状に回転し、鎧の形状が進化する。
「ゼロ……フォームっ……!!」
『そうだ、それで良い。もっとおまえの力を見せろ!!』
場所は上空だ。全力を出しても街に被害はない。
「はぁ~~~……」
周りに黒い光のオーラを展開し、それを両手の平に集中させる。
そして、アモンに向かって放射した。
「ディストラクション・ビーム!!!!」
光線が直撃し、アモンも唸る声を出す。
『ぐぅううう……面白いっ…!!しかし、まだ足りんぞぉおおお!!!』
光線を振り切って接近し、目の前に迫るアモン。
そして、掌を紅く光らせては顔面を殴ってきた。
「んぐぁああ!!!」
山の森の方角に飛ばされ、背中が地面を削りながら着地する。
俺を見下ろし、アモンは一言呟いた。
『まだ足りない。おまえの欲望の根源は何だ?それを思い出せ、内海明人』
俺の欲望……。
頭に浮かぶのは、守りたい人々の笑顔だ。
「もっと力を……俺の力は、こんなものじゃない!!!」
銀色のオーラを放ち、アモンを見上げる。
「本当の戦いはここからだ……アモン!!」
闘志をむき出しにして言えば、アモンはフッと笑って背を向ける。
『片鱗はあるようだな。後は獣の欲望に飲まれぬことだ。……さらばだ、内海明人』
アモンは月夜に消えていき、唐突の危機は脱することができたみたいだ。
しかし、奴は一体何を……試すとは何だったんだ……。
相も変わらず、あいつの行動はわからない。
変身を解除し、息を整える。
「一瞬だけ……力が今までに無いほど上がった。一体、何が起きているんだ……俺の身体に」
その問いに答える者は誰も居ない。
しかし、身体から力が湧き上がった感覚は残っている。
今までに……前世の不動明の時も感じなかったものだった。
運命の日を超えてから、身体に変化が起きている。
身体があらゆる欲望に忠実に答えようとしている。
それを抑えるために、美佐樹との性行為も最近は控えている。
衝動を全て、戦いで発散している感じだ。
俺は一体、どうなってしまうんだ……。
久しぶりのアモンとの一戦でしたが、彼は何かを試していた様子。
この先、明人に何が待ち受けているのだろうか。