DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
マンションの最上階にて、加藤美佐樹と飛鳥了は重苦しい空気の中向かい合う。
美佐樹は真剣な表情をしており、彼女から発せられる気に押されそうになっている了。
彼がテーブルの上に置いてあるコーヒーを一口含んだと同時に、美佐樹は前のめりになって言った。
「了さん……あたし、明人との子どもが欲しいんです!!」
了はギャグマンガのようなリアクションで含んでいたコーヒーをブフゥーっと噴水のように吐き出してしまい、それをサイコジェニーが無表情で拭いた。
咳き込みながらも、了は美佐樹を見る。
「ケホッゲホッ……んぅんっ。真剣な顔をして何を言うかと思えば、そう言う話は2人でしないさい。もう君たちは子どもじゃないだろう」
呆れながら言う了は、美佐樹の言葉の真意が理解できていない。
彼女は溜め息をつきながら言った。
「最近、明人があたしに遠慮している気がして……。その、デビルマンと人間の間で子どもってできるんですか?」
「一応、できないことは無いだろうな。前例は今のところは無いが、デーモンと人間の間で生殖行為をしても異種混同の子どもが生まれるはずだ。しかし……アキトが君に遠慮……か。具体的にどういう風に見えているのかを聞かせてくれないかな?」
美佐樹はここ3ヶ月間の明人の違和感を了に全てオブラートに包んで話した。
加藤の家が燃えてしまってからは、加藤家は美佐樹を残しては田舎の避難区域に身元を隠して住むことになったので、美佐樹は明人と2人でマンションで本格的に同棲生活をすることになった。
美佐樹としてはこれで思う存分に彼に甘えることができ、愛を育みながらのラブラブな生活ができると思っていたのだが、現実は予想を裏切った。
性行為を迫っても週1回程度で1回だけで終わってしまう始末だし、部屋で一緒に居る時間も短い。
朝起きた時には部屋を出ているし、夜だって一緒に寝ることは少ない。
明人は深夜に外出していることが多いのだ。
明人が戦闘力の高いデビルマンであり、みんなに頼られるのは理解している美佐樹だけど、それにしても彼女のことを避けているようなきらいがあるのである。
もっと一緒に居たい、もっと自分を求めてほしいと思っても、それが明人には伝わっていない。
「我慢……させてるような気がするんです。明人、やっぱりあたしの身体のことを気にしてるんだと思って……」
「明人がそんなことで君を避けるとは天地がひっくり返っても無いと思うが、君としては不満があるといった感じか」
「そ、それはそうなんですけど…。はぁ、あたし、一体どうしたら……」
落ち込みそうになっている美佐樹を見て、ソファーの肘掛けに肘をついて頬杖をつく了。
「子どもが欲しいが、明人の方が乗り気じゃない。と言うよりも、君のその意志は明人には伝えたのかい?」
「言うタイミングも見つからないくらい、すぐに居なくなっちゃうんです」
「それは明人が悪いな。2人のことに口出しをするつもりはないが、俺としては君たちの関係に亀裂が入るのは好ましくないとは思っている。さて、どうするかなぁ……」
2人して悩んでいると、後ろで聞いていた人間状態のサイコジェニーが小さく挙手をして話に入る。
<私に1つ提案がございます>
「どうした?サイコジェニー」
ジェニーは懐から1つの錠剤の薬を取り出してテーブルの上に置く。
<明人様が我慢しているというのなら、我慢できない状態にしてやれば良いのです>
「これは?」
<私が密かに研究して作り出しておいた、精力増強剤です。デーモンにもデビルマンにも効果は絶大化と思います。もはや理性が吹き飛ぶほどに>
無表情で言うサイコジェニーに対して、了は半眼を向ける。
「何故、そんな研究を?」
<ただの興味本位でございます。深い意味はありません>
了は信頼できるはずの部下に対して疑いの目を離すことができなかったが、今は気にしないようにしていた。
美佐樹は精力増強剤を手に取り、使うべきかどうかを悩んでいる様子。
「う~ん……これを使ったら、明人も……」
「まぁ、デビルマンである時点で欲に対する本能は強いものになっているはずだが、それを使うとなると明人は獣に変わるかもしれないな。ジェニー、これの副作用は?」
もはや、怪しさ全開で副作用がある前提である。
<特にないとは思いますが、効果が切れた頃には明人様は相当パワーアップしていると思います。身体的にも精神的にも、いろんな意味で>
「「いろんな意味ってどんな意味!?」」
美佐樹と了の追及に対しても、サイコジェニーは涼しい顔を崩さない。
<そのままの意味ですよ。私にもわかりません。悪魔の力を持つ者は欲望に忠実になればなるほど、大きな力を手に入れますからね>
使うかどうかはともかく美佐樹はバッグの中に薬を入れておいた。
「とりあえず、明人と話せる機会を作りたいとは思っています。今日あたりでも」
「その方が良いな。時間を開ければ開けるだけ、話しづらくなるだろう。……それにしても、急に子どもが欲しいと言って驚いた。何か理由があるのか?」
興味本位で聞いた了に、美佐樹は少しためらいながら言った。
「明人とあたしは恋人同士ですけど、家族でもあります。でも、本当の家族じゃないです。だから、あたしを通して彼の家族を作れたら、本当の意味であたしも明人の家族になれると思ったんです。……変ですか?」
目を見開いて聞いている了に苦笑いしながら聞けば、彼は薄く笑って首を横に振った。
「いいや。とてもいい考えだと思ってね。ありがとう。とても満足のいく回答だった」
明人がジンメンを通して両親を殺したことを美佐樹は知っている。
だからこそ、血の繋がった家族を作ってあげたいと思ったのだろう。
(本当に健気で一途な愛を持っている子だ……。前世界の美樹ちゃんもそうだったのだろうな。この世界での彼女には、明人と幸せになってほしいものだが……)
美佐樹が自分なりの答えを見出して帰って行くと、2人だけになった部屋で了がサイコジェニーに聞く。
「ところでジェニー。最近、俺の身体がおかしいのだが、君は関係ないよな?」
<……何のことでしょう?>
了はここ数日の夜のことを思い出す。
ジュンと夜の営みを迎えることが前よりも多くなり、彼女がそれを喜んで受け入れてくれている。
しかし、彼は本来そこまで性欲が強い方ではない。
それが急に強くなったのだ。
デビルマンとして悪魔の力を手に入れたこともあるのだろうが、それにしても急激な変化だ。
「俺に隠れてあの薬を何かに盛っていなかっただろうね?」
<まさかぁ。そんなはずないではありませんか>
後に知ることになるが、サイコジェニーにその精力増強剤を作るように依頼したのは不動ジュンであった。
今回は完全なる日常のちょっとしたギャグ回でしたね。
コーヒー噴き出す了さんとか、アニメとかじゃ想像できねぇ……。
次は明人と美佐樹の甘々?話になります。