DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
今回から新章に入ります。
今回からしばらく、視点は新キャラです。
『目覚めよ…』
どこからか、声が聞こえてくる。
その声は低く、耳に届く声が少しずつ大きくなる。
繰り返し語りかけてくる。
目覚めろ、と。
『目覚めよ。我らの戦いは、終わっていない……』
我らの……戦い、だと?
我ら、とは、誰のことだ。
我……俺は……。
『目覚めよ……真の王よ』
王。
俺は……一体…。
ーーーーー
日本から離れた孤島。
その日は海が荒れ、雷雲が空を多い、強風が吹き荒れていた。
まるで地球が何かに怯えているようにも、何かに喜んでいるようにも感じ取れる天気だった。
その中で、1つのピラミッド状の祭壇の上でローブを身にまとっている長身の女性が立っていた。
「大地が震えている…。これもまた、新たなる変化の予兆なのでしょうか」
女性は両手を広げては天に問いかける。
「天よ!何に怯えているのですか!?私たちに、新たなる試練が訪れると言うのですか!?」
その問いに答えるように、雷が光っては雷雲が模様を変える。
これは天命。
彼女は天からの預言を受け、未来のことを予知することができる。
彼女の名はアイラ・ムー。
預言者の異名を持つ美女。
彼女が雷光によって照らされた雲を見たとき、全身に衝撃が走った。
白い悪魔と鎧の騎士、そして巨大な黒い異形の影。
その3つの影は、アイラに言葉にならないほどの恐怖を与えたのだ。
「これは……これが、我らへの試練とおっしゃるのですか、天よ」
これより、この孤島で始まるのは再臨の物語。
聖域と呼ばれる場所を舞台に繰り広げられる、王復活への道である。
ーーーーー
前日の荒れた天気が嘘のように、晴天に恵まれた日。
その都市では、多くの女性が働いていた。
ある者は畑を耕して種を植え、ある者は森の中で獣を狩りに向かう。
その服装は古代ギリシャのキトンのようであり、時代と逆行していた。
大人も子どもも、男は1人も居ない。
都市の名は『聖域』。
アイラ・ムーが治める、女性のみの国である。
「ふぅ、昨日の天気が嘘みたいよね。今の内に食料を確保しておこうか」
崖の上で緑色で肩で揃えられた髪をなびかせ、キトンを脱いでは全裸になる美少女。
彼女の名は沙織。
腰に剣を携え、聖域を守る女戦士の1人である。
小さな槍を手に持ち、崖から飛び降りては海に飛び込む沙織。
そして、両足を動かしては海の底に進んでいき、周りに居る全長1mの魚を見つけては追いかける。
集中力を生かし、狙いを一点に集中させては槍を構える。
魚が方向転換する瞬間を見逃さず、槍の刃を上に突き刺しては海面から浮上させて自身も顔を出す。
「ぶはぁ!!……これは良いわね。あと4、5匹捕まえてアイラ様に献上しないと」
前髪をかき上げ、もう1度潜ろうとすると砂浜の方に視線を向けては何かを見つける沙織。
「あれは……人?」
目を細めて見れば、人の形をしている何かが倒れているのを認識する。
沙織はクロールで砂浜に向かって泳ぎ、近づいてみれば倒れているものが何なのかを確認して身体が固まってしまった。
倒れていたのは『男』だった。
男という存在が彼女に与える衝撃は大きい。
沙織は砂浜に上がり、警戒して近づきながらも男を観察してみる。
目が隠れるくらいの長い青髪をしており、全身に刺青が入っている中肉中背の全裸の男。
彼はうつ伏せで倒れており、意識を失っているようだ。
「この聖域に男が流れてくるなんて…。まさか、奴らの手先!?」
この孤島に居るのは、女性だけではない。
男性も確かに存在する。
しかし、聖域には存在しない。
島の反対方向に存在する、男と堕落した女のみが築いた国があるのだ。
聖域はその国と敵対関係にあり、その侵入を防ぐために沙織たちは戦う術を身に着けたのである。
沙織は槍を構えて男の横顔の前に刃を突き立てる。
「ここで殺した方がっ…!!」
確かな殺意があった。
男を見るだけで思い出す、悲惨な経験。
それが彼女の中の憎しみを駆り立てる。
意識を失っている間に槍を刺そうとした瞬間、男は意識が覚醒したのか唸り声を発する。
「うっ…うぅ……」
それを聞き、沙織は大きく一歩後ずさっては警戒心を強める。
そして、1度声をかけてみた。
「あなた……一体、何者?」
問いかけられた男は薄く両目を開ける。
その時、彼の目は一瞬だけ黄色に光ったがすぐに黒い瞳になった。
「お、俺……はっ……」
低い小さな弱弱しい声を発しては、意識が今にも切れそうになる。
状態としては、このまま放置していれば死に至る可能性すらある。
敵かもしれないと警戒しながらも、沙織は男に駆け寄っては仰向けにさせて上半身を抱えては頬を軽く叩く。
「寝ちゃダメ!起きて!!あなた、死ぬわよ!?」
「うぅ……あぁ……ぐっ…!!」
声を発しようとしているが、男の喉は乾燥していて出てこない。
沙織はすぐに携帯していた水袋を持ってきては水を含み、口移しで男の口に水を流した。
それを躊躇いなく飲み干し、男は咳き込んでは息を整えた。
「もう1度聞くわ。あなた、一体何者なの?あの男たちの仲間?」
男は身体に力が入らず、肯定も否定もしない。
ただ、弱弱しい目で沙織の顔を一点に見つめる。
そして、はっきりとした声でこう呟いた。
「……ダ……ン……テ……」
「え…?」
沙織が聞き返せば、男は苦痛の表情を浮かべながら再度呟いた。
「………、ダン……テっ!!」
呟いたと同時に事切れたように、男は意識を失った。
胸に手を当てて心臓の鼓動を確認すれば、死んではいないみたいだ。
殺そうとしていたが、救ってしまった命。
沙織は頭の後ろをかいては深い溜め息をつき、崖に脱ぎ捨てたキトンを取ってきては男に巻き、彼の肩に腕を回して聖域に運んだ。
(彼女にこの男の処遇を預けよう。何か、この男はあいつらとは違う気がする……)
沙織によって救われた男。
彼がもたらすのは、希望か絶望か。
-----
黒い空間の中。
目の前に映るのは、黒い巨大な怪物の虚像。
言葉は発さず、後悔だけが伝わってくる。
「おまえは……誰だ?」
問いかけると、怪物は俺を見下ろしてくる。
<我に存在を問うか。ならば、貴様は自分が何者なのかを知っているのか?>
俺……。
俺は……誰だ?
わからない。
俺は自分のことが何一つわからない。
「俺は……誰なんだ?」
<貴様は我に準ずる者なれど、我に在らず。我は我、貴様は貴様なり>
「何を、言っているんだ……?」
怪物は俺に指をさして語る。
<我ではなく、今の貴様に世界がどう映るのか。それを我は確かめたい。変化していく運命の中、貴様がなおも滅びを選ぶのであれば、それもまた1つの結論である。しかし、滅び以外の最善の選択を、『あの男』と共に見つけられたのならば……>
怪物の言葉の意味が理解できず、俺は再度問いかける。
「教えてくれ!!俺は誰なんだ!?おまえは一体っ…!!」
怪物は両腕を広げ、高らかに告げる。
<さぁ、我の見えざる世界を刮目せよ、新しい我よ。我は貴様の内で、その結果を見せてもらおう……真の王の器を持つ者、『ダンテ』よ>
「……ダ……ン……テ」
名を復唱し、自身に刻む。
「俺の名は、ダンテ」
名を持ちし青年は、自身の意識を目覚めさせる。
怪物はその姿を見て、満足げな笑みを浮かべていた。
3人目の主人公『ダンテ』。
彼の正体や、今後の3人の主人公の絡みに期待してほしいと思います。