※この作品はR-18です。

DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~   作:カナト

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信じる根拠

 アイラに促される形で、俺は聖域の中を回ることになった。

 彼女は国の長として忙しいらしく、案内人は世話役の沙織になる。

 外に出れば、俺が眠っていたのはこの都市でも巨大な部類に入る宮殿であることがわかった。

 遠くに見える風景は、古代ギリシャのようであった。

 

 日差しが眩しく、右手で顔に当たる光を遮っていると沙織が歩き出しながら話かけてきた。

 

「町を案内するわ。ついてきて」

「助かる…」

 

 彼女の後ろを歩きながら町へと進み、途切れ途切れで会話をする。

 

「あなた、記憶喪失って本当なんでしょうね?」

「残念ながらな」

「それなのに、自分の名前は憶えているんだ?」

「おそらく、俺の名前と言うくらいだ。記憶に残っている言葉が、それだけだったからな」

「なら、本当はダンテって名前じゃないかもしれないってこと?」

「……どうなんだろうな」

 

 警戒されて詮索されようとも、俺には望みの返答を用意することはできない。

 せめて、あの夢の中の怪物を現実に具現化できれば、少しは自分のことを知れたのかもしれないが。

 

「沙織。今更だが、俺を救ってくれたことに感謝する」

「礼儀は記憶に残っているみたいね。でも、勘違いしないで。好きで男を助けたかったわけじゃないから」

 

 沙織もそうだが、アイラ以外の女は男である俺に警戒心を向けていた。

 敵対心と言っても過言ではなく、さらに大きく言えば憎悪のよう。

 

「何故、男を敵視する?おまえたちに一体、何があった?」

「……あなたには関係ないわ。だけど、覚えておいて」

 

 沙織は後ろを振り返り、腰に刺している鞘から刀を抜いては刃を俺に向ける。

 

「私は男を信用していない。もちろん、あなたのこともね」

 

 その目からは怒りを感じ、刃を向ける手は震えている。

 彼女の姿を10秒ほど観察し、思ったことを口にしてみる。

 

「怖いのか?」

「っ!?」

 

 沙織は肩が震え、目を見開く。

 

「おまえに何があったのかはわからない。そして、それについて必要以上に詮索するつもりもない。俺が信用できないなら、それでも構わない。しかし、おまえの言葉を借りるなら、俺はこう言う事ができる」

 

 刃を恐れずに一歩近づき、沙織と目と目を合わせる。

 

「覚えておけ、俺は命の恩人であるおまえを傷つけるようなことはしない」

 

 動揺してか、目を泳がせる沙織は視線をそらし、刀を収めては前を向く。

 

「こ、言葉では何とでも言えるわよ。何を根拠にそんなことを言えるのかしら」

「根拠……か」

 

 青い空を見上げ、大きな白い雲と飛び交う鳥を見れば自然と夢の中で聞いた言葉を思い出した。

 

「真の王の言葉……と言えば、根拠になるか?」

「……はぁ、余計に意味が分からないわよ」

 

 呆れ顔を向けてくる沙織に、俺は「そうだろうな」と言って自嘲した笑みを向ける。

 

「俺が王に相応しい者なのかどうか。おまえたちが、これから確かめていってくれ」

「王ねぇ……。っぷ、真剣な顔でそんな冗談を言う人、初めて見たわ」

 

 沙織は声を押し殺して笑う。

 

 冗談……か。俺としては、それなりに本気で言ったつもりだったのだがな。

 

 その後、少し柔らかくなった雰囲気の中で俺と沙織は町を回った。

 

 

 -----

 

 

 宮殿では、アイラが水晶に映るダンテと沙織を見下ろしては目を細める。

 

「ダンテ……。彼もまた、試練に関係する者なのか。あるいは、この島に訪れる新たなる災いの前触れか」

 

 身に着けているシンクのベールを脱ぎ、彼女は全裸で室内にあるプールに静かに潜る。

 水面下の中で、白い光が視界に広がっては複数のイメージが頭の中に流れてくる。

 深く沈めば、それだけ強いイメージがはっきりと視界に浮かび上がる。

 

 最初に浮かんだのは白い悪魔。

 異形の怪物をその力を振るい倒していく。

 その光は魔の者のみを傷つけ、善なる者の盾となる。

 光は様々な悲しみを乗り越える度に強くなる。

 

 魔人の内に宿るは、1人の人間に対する強い想い。

 

「これは……悪魔の愛。かの者が戦う理由には、大切な者を守るための覚悟が宿っている!?」

 

 魔人のイメージは薄れていき、次に現れるのは青い魔神。

 その力は人々に希望を与え、正しい心を持つ者を救っていく。

 剣を振るい、邪悪な魂を浄化していく姿は救世主と呼ぶにふさわしい。

 恐怖を抱えながら戦う中でも、自身の正義を貫いていく。

 

「強い決意……。ゆるぎない想いを胸に秘めた者。しかし、その力は救世することもできるが、終焉を招く危険もある」

 

 白い悪魔と青い魔神は1度ぶつかり合うも、互いを認め合う。

 2つの大いなる存在が、世界の命運を切り開いた。

 

 切り開かれた世界において、新たなる暗雲が広がり始める。

 

 暗闇の中心に居るのは、黒い巨大な悪魔。

 

 その覇気は、2人の大いなる力と同等である。

 

「3つ目の大いなる力……。禍々しくも猛りを感じる存在っ……!!まさか、あれは……!!」

 

 暗闇のように見えていたのは、悪魔の群れだった。

 

 魔の者を統べる者。

 それは魔の王と呼ぶに相応しい。

 

「白い悪魔、青き魔神、漆黒の魔王。世界の命運を握る大いなる力……」

 

 暗闇が晴れていき、それぞれの姿が人の姿に変わっていく。

 

 2人の男は見慣れない青年だった。

 

 しかし、魔王の姿をしていた青年には見覚えがあった。

 

 ダンテだ。

 

 

 ---そこで意識は現実に戻り、水面から顔を出すアイラ。

 

 驚愕の真実で息を切らしている。

 

「ダンテが……あの大いなる力2つと同等の存在?では、彼の力は……!!」

 

 恐怖を覚えながらも、その力には引きつけられる何かを感じざる負えない。

 

 プールから上がり、側近の少女からタオルを受け取れば身体に巻いて訝し気な表情をする。

 

「彼が本当にあの魔王なのであれば、その力は世界を崩壊させる……ダンテ、危惧すべき存在だわ」

 

 アイラは再度水晶に映るダンテを見る。

 その瞳は彼に向けた温かいものではなく、凍るような冷たい視線だった。

 

「注意する必要がありますね。これもまた、神から与えられし試練なのですから」

 

 




ダンテは一体何者なのか。

その謎に振り回されながら、聖域の人々の中で数々の思いが交錯していく。
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