DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
宮殿に向かって足を進めていた時のこと、どこからかパーンッパーンっパーンッと大きく甲高い音が響いてきた。
それを聞いた途端、沙織は目を見開いて血相を変えて走り出した。
「まさか、あいつらが……!?」
俺は彼女の後ろを追いかけながら、森を抜けて町に入る。
広場に人だかりができており、女たちの表情は険しくなっている。
それは俺に向けていた敵対視するものとは比べ物にならないほど、怒りを感じさせた。
その注目の的になっているのは、無造作に乱れた髪をしているつり目の男を筆頭とした集団だった。
彼の前にユリアが立ち、いつでも剣を抜けるように鞘と柄を握る。
いや、柄を握る手が震えているところから、抜刀しないように耐えているのだろう。
「ケイ!!貴様、この聖域に何をしに来た!?」
ケイと呼ばれた男は、周囲の女を一瞥した後にニヒっと笑みを浮かべる。
「なぁ~に、ただの散歩がてら挨拶に来ただけだぁ。なぁ、おまえらぁ!!」
後ろの男たちはケイの掛け声に呼応し、周囲の店を、その拳と足、果ては手にしている棍棒などで壊し始めた。
「きゃぁああ!!」
「やめてぇええ!!」
男どもを止めようとする女たちだが、武器もなく非力な彼女たちの抵抗は無意味なものであった。
逆に捕らえられ、身包みを剥がされる者も出てくる始末だ。
ユリアが剣を抜いては憤怒の表情でケイを睨みつける。
「貴様、このようなことをしてただで済むと――――!!」
「思っているけど、それがどうしたぁ~?」
剣先を握り、不気味な笑いをしながら彼女に近づいて首を掴む。
「んぐっ!!」
「俺はこの島の支配者になる男だぁ。舐めた態度を取っていると、今すぐに殺すぜぇ?」
苦しむユリアを見捨てることができず、沙織は剣を抜いてケイに斬りかかっては2人の間に割って入る。
「うぉっと!……これはこれは、沙織じゃねぇか。久しぶりだなぁ、元気してたかぁ?」
「黙れ!!おまえと交わす言葉など、ない!!」
身体を震わせている沙織の内に秘めている感情は、怒りか恐怖か。
ケイは彼女に頭から足先まで舐めまわすような目を向けては、舌なめずりをする。
「おまえに剣は似合わねぇよ、沙織ぃ。虚勢を張っているみたいだが、足が震えているぜぇ?あの夜のことを、まだ忘れられないとみえたぁ」
「うるさい!!おまえはっ……おまえだけはぁ!!」
剣を構えて突撃しようとする沙織の後ろから、「双方、止まりなさい」と静かだが力強い声が響いてきた。
その言葉だけで、その場に居た全員の動きが止まった。
人の群れが割れ、その後ろからアイラが沙織たちに向かって歩み寄る。
「沙織、剣を下ろしなさい」
「しかし、アイラ様!!」
「争ってはなりません。争いは、新たなる悲しみと憎しみを生みます」
アイラの命令で渋々剣を鞘に収め、沙織は後ろに下がる。
対面するアイラとケイに、自然と周りの注目が集まる。
「ケイ、私との約束を忘れたのですか?」
「クックック。約束ぅ?覚えてねぇなぁ~」
「私たちの住む聖域には、もう近づかないという約束です」
「あぁ~あ、その話か。しかしよぉ、あれはおまえたちが一方的に押し付けてきた要求だぁ。俺たちはそれにYESと答えた覚えはねぇぜ」
ケイはアイラに歩みより、その頬に触れては不敵な笑みをする。
「いい加減おまえも、ここに居る女たちも、俺という支配者を認めたらどうだぁ?」
「私たちに、あなたのような支配者など必要ありません」
冷静に真っ直ぐな目を向けるアイラに物怖じすることなく、彼は1度離れる。
「やっぱり、おまえはそうじゃねぇと面白くねぇぜ。おまえを屈服させる日が楽しみだ」
「何事も自分の思い通りに進むとは思わないことです。我々の運命を決めることができるのは、神だけなのですから」
「神?……クックック。俺は神をもねじ伏せる力を手に入れた。誰も俺の欲望を邪魔できる者は居ねぇのさ」
絶対的な自信を見せるケイから、おぞましいまでのオーラを感じる。
この覇気を、俺は知っている気がする。
ケイのことを見ていると、外道どもの1人が俺の存在に気づいた。
「おいおい、兄貴~。そこに男が居ますぜ?」
「……そのようだなぁ。アイラよぉ、聖域は男子禁制じゃあなかったのかぁ?」
「彼は私の大事な客人です。あなたたちとは事情が異なります」
「それは差別じゃねぇのか?」
「いいえ、区別です」
鋭い眼光をぶつけ合う2人には、ほとんどの者が近づけなかった。
その中で、俺は男どもの行動を1つ1つ目で見て確認して溜め息を漏らした。
「……いい迷惑だな」
小さく呟いたつもりだったが、2人の耳に届いてしまった。
ケイは俺に近づいては威圧する目を向けてくる。
「おまえ、何者だ?」
「悪いが、その答えを俺も捜している。しかし、こんな俺でもわかることはある。おまえたちのやっていることは、嫌悪に値する。力を振るうことでしか自身を示すことのできない、醜い行為だ」
腕を組んで屈しない態度を取っていると、先程のように不敵な笑みを浮かべている。
「んらぁ!!」
一瞬の出来事だった。不意打ちだった。
声をあげると同時に回し蹴りをしてきたが、それを左腕で受け止める。
それを見て、男も女も目を見開いた。
「あ、兄貴の蹴りを受け止めやがったぁ!?」
「どうなってんだ、あの野郎!?」
ケイは足を下ろし、俺と視線を合わせる。
「聞き方を変えてやる。おまえ、名前はぁ?」
「ダンテ、今はそう名乗っている。それ以外の記憶はない」
「記憶が無いねぇ……。そんなことはどうでも良い」
軽く両手を広げ、下から顔を覗いてくる。
「ダンテ、俺の下に来い。俺たちと楽しく、自由に生きようじゃねぇか?」
「断る。おまえたちと生きていたら、俺の品位に関わるからな」
しばらく、無言で互いを睨み合っていると鼻で笑いながらケイは視線をそらして背中を向けた。
「おまえら、帰るぞ」
「えぇ~!?でも、兄貴ぃ、今日こそ女どもを全員手に入れるって言ってたじゃないですかい!!」
「事情が変わった、延期だ。まぁ、束の間の猶予は与えてやるよ。俺は懐が広いからなぁ。ちゃんと考え、そして決めろ。俺の女になるか、惨めに死ぬかをな」
最後に俺を指さし、獣の目をして言った。
「おまえは俺が潰す。今度会う時を楽しみに待つんだなぁ、ダンテ」
外道の集団が聖域から退いていく。
それを見ながら、沙織が隣に並び立つ。
「とんでもない奴に目をつけられたわね、ダンテ」
「問題ない。あの程度の俗物のままならば、この俺の敵ではないだろうからな」
しかし、その程度では終わらない男だと、俺の中の何かが訴えかけてくる。
沙織は何か気になるような目を向けてきては、恐る恐る聞いてきた。
「あなた、言葉遣いが変になってるわよ?」
「……変?」
「何て言うか、昨日とは違ってちょっと偉そうって感じ」
「そうなのか?」
無意識に言葉遣いが変化していたのか。
自分の変化には気づきにくいものだ。
周りからも、俺に対して不信感を抱いた目を向けられる。
「以後、気を付けよう。しかし……あんな外道と一緒に見られるのは、不愉快でしかないな」
ケイと彼の率いる外道の集団。
奴らに対して、言葉にならない憤りを覚え始めていた。
そして、この時の俺は気づかずにいたのだ。
自身の中の脅威が目覚める瞬間が、この時から加速して近づいてきていることを。
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