DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
聖域と外道どもの集落の中間地点には荒野が広がっている。
狭間の地とは、そこのことだろう。
樹で作られた簡易の正門から聖域を出て、1人森の中を進む。
空を見上げれば青から赤に変わり始め、徐々に日が山の方に向かっていく。
「日が沈み始めたな……。急がなくては」
『どこに急ぐつもりだ?』
どこからか声が聞こえ、辺りを見渡す。
後ろを振り返れば、腕を組んで木に背中を預けている紅蓮の鎧を纏った者が居た。
その兜はコウモリの翼を広げた状態に似ている。
「……おまえは……何者だ?」
伝わってくるのは、この者が人知を超えた強さを持っていると言うこと。
その覇気は俺を圧倒し、それ以上進むことを許さない。
戦わなくてもわかる。
この鎧の者は俺よりも……強い。
フルフェイスのマスクが俺に顔を向けてくる。
『この俺を見ても動じないか……。だが、本来の力はまだ目覚めていないようだな。確認するだけのつもりだったが、まさか、このようなことが起こるとは……』
「何の話だ?俺の質問に答えろ!!」
何故だ、この鎧と対面しているだけで内に秘めた力がさらに湧き上がってくる。
まるで、この者と戦うことを身体が望んでいるようだ。
鎧は俺に敵意を向けることはなく、ただマスクの向こうからじっと見つめてくる。
『おまえ、名前は?』
「……ダンテ。悪いが、名前以外のことは何もわからないぞ。記憶がないからな」
これまで、自分が何者なのかを聞かれることが多かった。
奇妙な存在はその意義を問われることを学んだ。
しかし、鎧は俺の予想を裏切る言葉を返した。
『名前以外に記憶が無い……か。クッフッフッフ……それもそのはずだ。ダンテ……おまえの存在は、まだ始まったばかりなのだからな』
俺を指さす鎧は肩を震わせている。
そして、歩み寄っては肩にその大きな手を置いてきた。
『おまえは、まだ自分の力に目覚めていない。目覚めさせるかどうかは、おまえが決めろ、ダンテ』
「待て!!おまえは、俺のことを知っているのか!?」
鬼気迫る表情で迫れば、鎧はフフっと笑って答えた。
『おまえのことは知らん。しかし、おまえの力のことは知っている。記憶が無いと言う事は、自分の中にある力のことも知らないと言う事だな?』
「聞かれるまでもない……」
鎧は俺の胸の中心に人差し指を当て、答える。
『俺は悪魔だ、名はアモン。そして、おまえの中に宿る力もまた悪魔の力なのだ』
「悪魔の……力……?」
『そうだ。信じるかどうかは勝手だが、その力を振るえば、おまえは人間に戻れるかどうかわからん』
「俺は……悪魔……なのか?」
『ただの悪魔ではない。悪魔の中でも最高位の存在、魔王になる素質を持っている』
「魔王……」
アモンの告げる真実は、俺が最も知りたかったことだ。
魔王、それが俺のこの溢れる力の正体。
『おまえは今、選択を迫られている。覇の道か、王の道か。その答えを決めるのは、今のおまえ自身なのだ』
「覇の道……王の道……。俺がおまえの言う魔王になれば、どうなる?みんなを……守ることはできるのか?」
『それはおまえ次第だ。魔王とは恐れ敬われる存在。その力を振るう者は、大抵は孤独を抱える』
孤独……。それが王となる代償。
「それでも、俺は……この力を使って戦わなければならない存在が居る。あの男もまた、俺と同じ何かを感じた。俺が戦わなければ、サンクチュアリは崩壊するかもしれない」
アモンはフンっと鼻で笑えば、俺の背後に指をさす。
『おまえの覚悟が本物かどうかは、この道の先でわかるだろう。おまえがその力を使い、何を得、何を失うのか。しかと自分の目と身体で確かめるが良い』
指をさされた方向には、先ほどまで見えなかった荒野が広がっていた。
目標の狭間の地だ。
おかしい、先ほどまでは森がまだ広がっていたはずだ。
「これはどういうことだ、アモン!」
後ろを振り返れば、アモンの姿はもう無かった。
この先に、俺の覚悟が試される。
「望むところだ」
歩を進めて森を出れば、荒野に近づくにつれて外道の集団の姿が見えてくる。
それは10や20ではなく、その中心に居る男を囲むように立ち並んでいる。
外道の首領、ケイ。
上半身にマントを羽織っており、腰には奇妙な四つ目の獣の顔が彫られたベルトを着けている。
その目は俺を一点に見つめ、獣の目を向けている。
「逃げずに来たか。ダンテ」
「おまえ如きに逃げる俺ではない」
1体多数。
多勢に無勢。
この男は俺を何としても殺すつもりだと直感した。
「俺と戦うのは、おまえではないのか?ケイ」
「そうさ。おまえの相手は俺だ。しかし、観客が居ないと盛り上がらないだろう?これは俺なりのサービスだ」
「おまえの気づかいなど知らん。サンクチュアリに手を出すつもりなら、俺が相手をするだけだ」
俺の言葉を聞き、外野がうるさく下品な笑いをする。
ケイも腹を抱えて笑い、前髪をかき上げて顎を突き出す。
「カッコいいねぇ。しかし、その威勢は何時まで続くかなぁ?」
俺に歩みより、指を鳴らしながら戦意を示すケイ。
2人対面し、互いの目を睨みつける。
「おまえの存在を知った時から気にくわなかった。今、そのすまし顔を崩してやる」
「気に入らないのは俺も同じだ。そして、おまえの力を試させてもらうぞ。俺のことを知るために」
ケイからはやはり、人ならざる何かを感じる。
その正体を、今、確かめる。
俺たちは臨戦態勢を取り、同時に拳を突き出して衝突させた。
「うらぁ‼」
「はぁあ‼」
拳が合わさった瞬間、周囲に地響きが起きては余波で周りの外道どもが倒れる。
「「ぐぁああああ!!」」
立っているのは俺とケイのみ。
俺は空かさず第2撃として左手の拳を相手の腹部にめり込ませる。
「んぐっ‼……いいねぇ、そのパンチ。だけど、まだ足りねぇぞ‼」
ケイは耐えきり、怯みもせずに俺の頭を掴んでは頭突きを食らわせる。
「がはっ‼」
「まだだ‼倒れんじゃねぇぞ‼」
一瞬目眩が起きて隙を作ってしまい、ケイの蹴りを顔面に受けてしまう。
蹴りは脚や腹部、肩などにも連続で繰り出され、その速さに追いつけず防戦一方になる。
「おらおら、どうした!?この程度じゃないだろ、ダンテ‼」
「ああ、その通りだ‼」
顔面に迫った右足を掴み、振り回しては後ろに投げ下ろす。
「ぐぁはぁああ‼‼」
普通なら、これで倒れる。
しかし、ケイは立ち上がっては首を鳴らして不敵な笑みを浮かべる。
「楽しいねぇ。俺と同等の力を持ってる奴との喧嘩は血が騒ぐってもんだ」
「おまえは何故、そこまで戦いを求める?」
俺の問いに対し、ケイは両手を広げて答える。
「戦うことでしか、生きている悦びを得られないからさ‼戦い、奪い、壊す‼それこそが俺たち外道の生き甲斐だからなぁ‼」
感じるのは狂気。
吐き気を催すほどの破壊衝動。
「おまえは生きているべきではない……。今、ここでおまえを止める‼」
「やれる者なら、やってみろ‼ダンテ‼」
ケイの全身の筋肉が増加していき、腰に巻いているベルトの4つ目が光だした。
「おまえと俺の力は互角だぁ……。だが、それは人間ならばの話‼俺は違う‼この島を支配する王となるため、人間など当にやめておるわ‼」
全身から禍々しいオーラを放ち、ベルトに手をかける。
俺はこの時理解した。
ケイから感じた人外の何かは、あのベルトから感じていた物だと。
ベルトの4つ目が輝きを増し、獣の口が開いてはケイが叫んだ。
「デビルっ‼」
ベルトから発せられる光が彼を包み、それが沈まれば彼は既に人間の姿をしていなかった。
身体は2回りほど大きくなり、胸部に4つの目がある異形の怪人の鎧を装着している。
これが……悪魔の姿なのか。
外道どもは悪魔と成ったケイの姿を見ては、目をギラギラさせる。
「あ、兄貴が本気を出したぞー‼」
「これで勝負は決まったようなもんだぜ‼」
ケイは俺を見下ろし、その腕を振るう。
「喰らえ、ダンテぇ‼」
素早い動きに反応が遅れた。
紙一重の所で回避したと思ったが、服が爪で切り裂かれては胸に大きな引っかき傷ができる。
「ぎぁはぁあ‼」
「こんなものではない‼魔将軍ザンの力を得た、この俺、デビルマン・ザンの力を思い知るが良い‼」
両手を広げて俺にかざせば、掌から青い稲妻が放たれては俺を襲う。
「うわぁあああああ‼‼」
今まで感じたことのない雷の痛みに絶叫してしまい、立っていることができずに倒れてしまう。
「おいおい、こんなものかぁ?もっと、頑張れよぉ……俺を楽しませろって‼」
その大きな手で俺を掴み、握り潰そうとするデビルマン・ザン。
「ぐぅぁああああ‼」
「どうだ、苦しいか!?もっと、その声を聞かせてくれよぉ‼」
苦しみを感じる度に、身体の刺青の黒が全身に広がっていく。
それと比例して、力が湧き上がってくるのを感じる。
「はぁあああああ‼‼」
自力でザンの手を押し広げて拓かせ、脱出しては地面に着地する。
「何故だ!?貴様、ただの人間ではないな!?」
「はぁ…はぁ……そんなこと、俺が知るか‼」
地面を蹴って高く跳躍すれば、ザンの腹部に蹴りを入れて怯ませる。
「ぐふぇあ‼……あ、ありえない……。俺が……魔将軍の力を持った俺が押されるなど‼」
自分でも何が起きているのかはわからない。
しかし、はっきりとした事実がある。
今の俺は、悪魔にも匹敵する力があるということだ。
右手に力を集中させれば、黒いオーラが拳から漏れ出す。
そして、それをザンの顔面にめり込ませれば、相手は仰向けに倒れては地面を滑って離れていく。
「まさか……これが、魔王の力なのか…?」
今の好機を逃すわけにはいかない。
俺は跳躍し、ザンに渾身の蹴りを喰らわせようとする。
しかし、その時――――。
『待てぇえええい‼‼』
低く野太い声が荒野に響き、振り返れば目を見開いてしまう。
「そんな……何故!?」
その者は、ケイと同じく異形の姿をしていた。
人間の身体が上半身にあり、その下は虎になっている戦士。
その姿も確かに驚愕を覚えた。
だが、俺がそれ以上に衝撃を受けたのは、その手に抱えられている意識のない女の姿だ。
「沙織っ…‼」
ダンテ様、凄いよね。
まだ生身で魔将軍クラスのデビルマンと互角なんだぜ?
さてさて、沙織ちゃんが敵に捕まっているこの状況。
ダンテ様は、そして沙織ちゃんの運命や如何に!?