DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
暴走したダンテの力によって被害を受けた魔戒島。
その惨状は彼の暴走が治まったからと言って消えるわけではない。
気を失っているダンテを担ぎ、俺と甲牙は沙織の案内によってある場所に辿りついた。
女のみの国、聖域だ。
その周辺は草木が枯れており、獰猛な動物の焦げた死体も転がっている。
島全体が燃え盛っていた中で、この国の中の被害は比較にならない程少ないものだった。
甲牙が辺りを見渡し、頭の後ろをかいてぼやく。
「どうなってるんだ?ここだけ、被害が無いに等しいってもんだぜ」
「アイラ様の力のおかげよ。あの方は人間を超えた能力をお持ちだから、それによって聖域も守られたに違いないわ」
「人間を超えた力……か」
アイラ。
もしかしたら、その女も俺たちに関係する力を持っているのかもしれない。
聖域の中を進めば、人の姿が見当たらない。
「人の気配がしないな……」
「あれだけの自然災害が起きたから、宮殿に避難しているはず。あそこはアイラ様の守護の力が一番大きい場所だから」
宮殿の前まで連れて来られれば、中から槍を持った長身の女が2人現れては見慣れない俺と甲牙に対して敵意を向けて槍の先を突き立てる。
「おまえたち、何者だ!?」
「男の分際で……ここが宮殿とわかっていての愚行ならば、殺される覚悟はできているのだろうな!?」
槍の刃を向けられようとも、俺たちは怯まない。
甲牙は溜め息をついて刃の先端を掴めば、血が出るのも構わずに槍を奪い取って後ろに捨てる。
「んなっ!?」
「そんな震えた手で武器を握っていたら、脅しにもならねぇよ」
俺も槍を少し払う動作をしただけで先端が折れてしまい、女は「ひぃ!?」と怯える。
いくつもの死線を潜り抜けてきた俺たちの前には、威勢だけ強い形だけの戦士の脅しはおままごとのようなものだ。
「別にあんたたちに何かをしようってわけじゃない。この国の長に会わせてほしい。話がしたいだけだ」
冷静に諭すように言うが、女たちは怯えながらも敵意が消えない。
沙織が説得に入ろうと前に出る。
「この人たちを信じて。悪い人たちじゃないわ。ダンテを……そして、島の危機を救ってくれた人たちよ?」
「そんな言葉、信じられるか!?男に魂を売った女がっ…‼」
沙織は押し倒されそうになり、それを俺が後ろで支えた。
道中で彼女から話は聞いていたが、ここの女は本当に心の底から男を憎んでいるらしい。
男と見れば、どのような存在であろうと敵でしかないのだろう。
苦悩の表情を浮かべる沙織と、彼女さえも敵と思っている女たち。
気づけば、宮殿の中から多くの女が流れ出てきては俺たちを囲む。
数で押せば勝てるとでも思っているのだろうか。
今にも襲いかかろうとしてくる女たちを、宮殿の中から「お止めなさい!」と力強くも静かな声が響き渡った。
それは女たちの動きを止め、宮殿の方に視線を向かわせる。
俺たちもつられて宮殿に視線を移せば、中から優しくも強いオーラを放つ黒髪で長身の女が現れれば、人の波が裂けてこちらに近づいてくる。
そして、俺と甲牙、そしてダンテを交互に見れば、1度目を閉じた後に言葉を発した。
「お待ちしておりました、白き悪魔、蒼き魔神。よくぞ、黒き魔王……ダンテと沙織を救ってくださいました。この国を治める者として、深く感謝いたします」
女が優雅にお辞儀をしては、女たちに動揺が走る。
「あんたが……沙織の言っていたアイラか?」
「はい、アイラ・ムーと申します。この聖域の長をしている者です。白き悪魔様、蒼き魔神様、あなた方のお名前を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」
「内海明人」
「兜甲牙だ」
名乗れば、アイラは「明人様、甲牙様ですね」と復唱しては俺たちと目を合わせる。
「今日、あなた方が来ることは必然。運命が、あなた方をこの島に導いてくれたのでしょうね」
運命……嫌いな言葉だ。
「あんたは俺たちを待っていたと言ったな。まるで俺と甲牙がこの魔戒島に来ることがわかっていたかのような口振りだ」
「わかっていた……と言う言葉は適切ではありませんね。私はこの世界から伝えられる意志を知ることしかできません。私があなた方の来訪を知るに至ったのは、それが天の志であったがために他なりません」
「つまり、風の噂でそうなるかもしれないって思っただけってことか?」
「その認識で構いません」
運命の次は天の志……選ぶ言葉が一々癪に障る。
「あんたが運命だの天だのを崇めるのは勝手だ。だけど、俺の前でその言葉を出すなら用心した方が良い。生憎、俺は運命って奴からはじき出された存在らしいからな」
皮肉交じりにそう言えば、アイラはフフっと笑っては振り返った後で顔を横に向ける。
「ならば、これより始まるであろう試練を前に、あなた方がどう乗り越えていくのか。この魂に刻ませていただきましょう」
「試練……?何の話だ?」
甲牙も怪訝な顔を浮かべており俺と見合わせるが、それを気にせずにアイラが宮殿の中に入って行く。
「ダンテを背負ったまま、私についてきてください。沙織、あなたも共に」
沙織は一瞬戸惑ったが「はい」と返事をしてはアイラの後ろについていく。
甲牙も訳が分からず「やれやれ」と言いながら宮殿の中に入って行く。
俺はダンテを抱えたまま、警戒心は解かずに3人の後ろを歩いた。
宮殿の中は全体的に白く神秘的であり、通路の壁には見覚えのある絵が絵が描かれていた。
「何だ……これ!?」
俺がデビルマンになった場所である、あの教会の地下に描かれていたものと似ている。
しかし、根本的に異なる物を感じる。
悪魔も人間も描かれている。
しかし、描かれていない存在がある。
デビルマンだ。
アイラは足を止め、壁画に触れる。
「これは、この島の歴史です。ここに描かれていることは、実際にこの島で起きたことなのです」
アイラが人差し指を壁になぞり、俺たちの視線を誘導する。
「御覧ください。あなたたちはそれぞれ、この2体の存在を知っているはず‼」
俺と甲牙は、それぞれ違う存在を見て驚愕する。
「悪魔王ゼノン!?」
「魔神カイザ!?」
俺が戦った魔王と、甲牙が装着する力の根源。
その2つが争う絵。
時代は古代を連想させ、その服装からギリシア時代を連想させる。
魔王の背後には禍々しい姿をしたデーモンの群れ。
魔神カイザの背後には、黄金の鎧の巨神を筆頭に人間の戦士の軍団が続く。
これは、俺の知らない戦いの歴史だ。
「あぁ……あぁぁ……あぁああああああ‼‼」
甲牙が頭を両手で押さえ、膝を付いて苦しみ始める。
「甲牙!?おい、どうした!?」
駆け寄って肩を触れば、頭の中に大量の情報が流れてくる。
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聞こえてくるのは悲鳴。
人間、悪魔、天使の苦しむ声。
その中で、強大な力を振るう2つの存在。
魔神カイザと悪魔王ゼノンが激突する。
互いの誇りを、守るべき者のために戦い続ける。
『神も悪魔も関係ない‼俺が戦うのは、我が誇りを守るためだ‼』
『我とて貴様と想いは同じ‼しかし、貴様が我らの悲願を邪魔する障害になるというのであればぁああ‼』
悪魔、人間が戦う中で、天から1人の赤黒い鋼鉄の魔人が舞い降りる。
その姿は魔神カイザを禍々しくしたような異質のもの。
『来たか……サーガ‼』
『審判の時だ……カイザよ』
ゼノンの相手は黄金の巨神に代わり、カイザはサーガと呼んだ魔神と激突する。
『ゼウス、ゼノンを頼む‼』
『任されたぞ、カイザ‼』
互いに剣を携え、衝突する蒼紅の魔神。
『力だけでは何も変わらないのだぞ、兄者‼』
『愛など脆弱なものに過ぎん事を何故わからない、カイザ‼』
この神話の戦いの中で、1人の少女の声が響く。
『戦いを止めて‼……カイザァアアアアア‼‼』
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少女の声を最後に俺の意識は現実に戻り、息が荒くなる。
「今のは……一体!?」
「はぁ…はぁ……わからねぇけど、1つだけはっきりした…。前よりも『はっきり見えた』。あれが……あの魔神は……」
アイラが俺たちに駆け寄り、膝をついて左右の肩に触れる。
「あなた方には大いなる試練が待ち構えています。今の現象は甲牙様の試練に繋がるもの。明人様、あなたの試練はこの奥に」
「俺の試練?……アイラ、あんたは一体、俺たちの何を知っているって言うんだ!?」
手を払い、睨みつけるようにアイラを見れば、それを受け止めて彼女は目を閉じる。
「私はただの案内人。あなた方のことは何も知りません。しかし、この世界の意志は告げています。あなた方は、この試練を乗り越えなければならないと言う事を」
「……その試練を超えた先に、何があるって言うんだ?」
アイラは俺の問いに対し、一呼吸置いてから開眼して答えた。
「手に入れることができるはずです……この世界の救世主となるための力を。あなたと甲牙様、あるいは……」
彼女の視線は、俺が背中に抱えているダンテへと移った。
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甲牙を少し休ませた後、俺たちは宮殿の中央部分にある巨大な水晶体の前に到着する。
「これは?」
「古くから存在する遺物『マテリア』。これを通して、私はあなた方とダンテの戦いを見させていただきました。そして、これが見せるのは現在だけではありません」
「あ?他に何を映してくれるって言うんだよ?」
甲牙が突っかかるように言えば、沙織が不機嫌な顔で脇腹を軽く殴ったので「悪ぃ悪ぃ」と返す。
アイラはそれを気にせず、真剣な目を向けた。
「心の中の闇……あなた方も認識していない、自身の心の底にある深淵を見ることができるのです」
彼女は俺に歩みより、マテリアに触れるように手首を優しく握って促す。
「強大な悪魔の力をその身に宿すあなたには、自身の闇と向き合う責任があるはずです」
「それが、試練って奴に繋がるってことだな?」
「はい」
俺はダンテを甲牙に預け、アイラの言葉に一松の不安を覚えながらもマテリアに触れた。
絶望の次は内なる闇か。
俺が向き合わなければならない深淵。
それが何なのかを知らなければ、試練とやらに打ち勝つこともできないのだろう。
マテリアに触れて意識を集中させれば、心臓の鼓動が一瞬強く高鳴った。
試練とか言われてもなぁ……作者だったら『興味ないね』って言って逃げると思う(今、FF7Rにハマっている途中)
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