DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
試練のことは一時頭の片隅に置きながら、俺たちは宮殿内で透明な長テーブルを囲みながら食事をすることになった。
給仕の女性は俺たちには良い顔はしなかったが、アイラの命令で渋々食事を用意してくれたが、それが終わるとすぐに部屋を後にしてしまった。
部屋に居るのは、俺と甲牙、アイラのみ。
沙織は別の部屋でダンテの看病をしている。
テーブルには干し肉やパン、添え野菜が並べられていた。
「申し訳ありません、島を救ってくださった恩人にこのような食事しか提供できず」
「いや、大丈夫だ。俺たちはあんたたちにもてなされる客としてこの島に来たわけじゃないからな」
俺がアイラの謝罪に対してそう返すが、甲牙としてはもうちょっと欲しいな~っという意志が伝わってきたので、干し肉を分けてやることで黙らせた。
「明人様、甲牙様、あなた方はこの島とダンテを救ってくださいました。しかし、それだけで全てが終わったわけではありません。そのことは……おわかりいただけていますか?」
「ああ、わかっている。どうして、ダンテが暴走したのかはわからないが、そうなる前のことは沙織から聞いた」
ダンテが倒れた時、その側には悪魔の姿をした人間が居たらしい。
そして、沙織は人間と虎が合わさった悪魔を見ている。
これは由々しき事態だ。
この島には、悪の心を持ったデビルマンとデーモンが居る。
「今、この島で起きていることは、ここだけでは済まない問題だ。最悪の場合、世界を巻き込む恐れがある」
「この島の悪しき魂を持つ者、ケイの力は強大です。彼がこの島から先に手を出せば、甚大な被害が出ることになるでしょう」
「そういうことか……。できれば、長居するつもりはなかったけど、こればっかりはしょうがないよな」
そのケイというデビルマンを止めなければ、俺たちは帰れないってことか。
脅威がある以上は、ここに留まるしかないのだろう。
何故なら、この島には俺たちだけが入ることがある孤島らしいからな。
応援を呼ぶこともできない。
特異点のみが入ることを許された、魔の島なのだから。
しかし、俺たちの本来の目的は魔戒島内での防衛ではない。
この島に居ると言う、新たなる特異点を見つけ出すことが、俺たちが来た目的なんだ。
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時は1週間前に遡る。
俺は了さんに呼ばれ、三者連合軍のアジトに通された。
三者連合軍とは、運命の日の後に了さんが組織した同じ志を持った人間、デーモン、デビルマンの連合軍である。
その代表である了さんを戦うことで影で支える存在として、デビルマン・ゼロは居る。
表舞台では動けない俺が呼び出されると言う事は、また陰で暗躍しているどこかの種族の討伐と言う事になるのか。
そう思っていたが、代表室に通された時に居たのは了さんだけではなかった。
「アキト、待っていたよ。君の相棒もお待ちかねだ」
相棒と呼ばれて良い気はしなかったのか、そのもう1人の男はハンッと言って顔を逸らす。
「兜甲牙…?了さん、どうしてこいつもここに?」
俺が影で動く存在なら、甲牙ことマジンカイザーは表部隊で動くべき希望の象徴だ。
俺とこいつが居るってことは、並大抵のことじゃないってことだろ。
了さんは背後にスクリーンを用意して目の前のPCを操作すれば、ネットに接続して地図を開いた。
そして、1つの孤島にズームして止まる。
「今、事態は深刻な状況にあるのは君たちもわかっているはずだ。世界では様々な紛争や戦争が起き、今も人間やデーモン、デビルマンの戦いは続いている。これを止めるのが我々の使命ではあるが、それでも力が足りないのは事実だ」
「そんなのはわかりきっていることだろ?それでも俺たちがやらなきゃならない。だから、おまえは三者連合を組織したんじゃないのか?」
「その通りだ、甲牙くん。そして、その鍵を握っているのは君たちであると私は考えている」
了さんは孤島を指さし、俺たちを見る。
「君たちには、この島……魔戒島に向かい、ある者を見つけてきてほしい」
「ある者?まさか、スカウトでもして来いってか?何で俺たちが。ただでさえ日々治安維持で忙しいってのに」
甲牙が不満をぶつけるように言えば、了さんは溜め息をついてしまう。
おそらく、現場で動く俺たちよりも心身ともにストレス溜まってるんだろうなぁ。
俺としては、この人の苦労を甲牙よりも前から知っているために何も言えない。
「そのある者って言うのは、俺たちじゃないといけない理由があるってことですよね。了さん」
「あ、ああ。アキト、話が早くて助かる」
話に入るために、咳払いをして話を聞く体制を作らせた。
「魔戒島に、新たなる特異点の反応を感じ取った」
特異点と言う言葉を聞き、俺と甲牙は目を見開いた。
その言葉を聞いて、衝撃を受けないわけがない。
世界の運命とは隔絶された存在が、もう1人生まれたと言う事なのだから。
「その特異点の能力は、わかっているんですか?了さん」
「いいや。しかし、君たちと同等、世界の運命に影響を与える存在であることは確かだ」
「そんな存在がどうして、その……魔戒島?って所に居るんだよ?」
甲牙の問いに対して、了さんが答えを持っているとは思えない。
この人も全知全能じゃない。
しかし、心辺りがあるのか、了さんは唸りながら答えた。
「導かれた……のかもしれない。特異点のみが地を踏むことを許される、あの島に」
「特異点のみ……?」
俺が目を細めて聞くと、了さんはあるデータを提示した。
「これは島の内側の存在との特別な通信手段によって得られたメッセージだ」
俺と甲牙は、そのメッセージに目を通す。
『世界に選ばれし者のみ、あるいは島の守り人の導きを得た者以外、この神聖なる地に足を踏み入れること能わず』
世界に選ばれしもの……それが特異点ということか。
「今まで、多くの考古学研究者が神話を探る手掛かりとして、あらゆる方法で魔戒島に足を踏み入れようとした。船や飛行機、潜水艦を使う者も存在した。しかし、無理だった。天候や波の状況などで、誰1人として島に入ることはできなかったという。まるで魔戒島自体が意志を持って拒んでいるかのようにね」
しかし、と了さんは俺たちを見て言葉を続ける。
「デビルマン・ゼロの力とマジンカイザーの力があれば、島の意志に関係なく入ることができるかもしれない」
「だから、俺たちなんですね」
「特異点同士は引かれ合う性質がある。その点でも、君たちに頼みたいと思ったんだ」
特異点同士の引力。
それは俺も感じていた。
甲牙やアモン……そして、美佐樹。
この3人との繋がりは、近くに居ればすぐに感じとることができる。
「これは予期されていなかったことだろう。この世界自身の意志なのかもしれない。神の支配から解放されるための、新たな力を生み出したと見ても良いのかもしれない。もしくは……」
了さんは何かを口にしようとしたが、哀しい表情をすれば口をつぐんだ。
「とにかく、君たちの力を貸して欲しい。ここで特異点の力を持つ者が多ければ、来るべき戦いに備えることができるはずだ」
甲牙も今の話に納得はできたようで、強く頷いた。
「わかったぜ、サタン。そういうことなら、俺たちに任せろ」
「必ず、新たな特異点の力を借りられるようにしてみせます」
新たなる目標を胸に俺たちの意志を伝える。
「わかった、ありがとう。君たちならできると、私も信じているよ」
薄く微笑み、了さんはそれを受け止めてくれた。
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時間は1週間後、現在。
アイラとの話と食事を終えた後、俺と甲牙はそれぞれ別の部屋に通されては1人の時間になった。
部屋の中は質素であり、宿舎の客室よりも質素なものになっている。
しばらくは、ここで寝泊まりをすることになるのか。
窓の外を見れば、枯れはてた森が広がっている。
それはダンテの力の強大さを物語っているようだった。
その力を正しく使えば誰かを救う力になり、使い方を間違えれば崩壊を招くことになる。
俺は1度、その使い方を間違えた。
「ダンテ……あいつも俺と同じなんだろうな」
ベッドに横になれば、1人で広々と使えることに嬉しさを感じると共に、今まで1日も欠かさずに感じていた愛しい女の温もりを得られないことに寂しさを覚えている。
「美佐樹……。今、何をしているかな」
もちろん、彼女にも魔戒島に向かわなければならないことは伝えた。
最初は反対するかと思ったが、すぐに受け入れてくれた。
信じてくれているんだ、俺が必ず戻ってくると。
だから、俺は何があろうとも美佐樹の元に戻ってみせる。
美佐樹のことを想っていると、白藤のことが頭を過ぎる。
マテリア内での最後の白藤の顔と言葉。
もしかして、奴もこの島に来ると言うのだろうか。
そうなれば、この魔戒島は……今までにない程の被害を生む戦争になるだろう。
このままダンテが目覚めなければ、俺と甲牙だけで戦うことになるかもしれない。
しかし、あの魔王の力があれば心強い。
「デビルマン・ゼロ、マジンカイザー……そして、魔王ダンテ。これだけの力があれば、俺たちでも勝てるかもしれない……」
全ては仮定の話だ。
しかし、そうならないとは限らない。
いや、そうなってほしいと思っている自分が居る。
白藤との戦いを望んでいる、確かな闘争心を持っている自分が……。
『暴れたいだろう……なぁ?内海明人ぉ』
突然、頭の中に声が響いた。
この声は、美佐樹と居た時に聞こえたものだ。
俺の意識を奪った声だった。
「誰だ!?どこに居る!?あの時美佐樹を襲ったのも、おまえなのか!?」
あの後のことは、本当に何も覚えていない。
しかし、俺の意志ではなく、彼女を滅茶苦茶に犯したのは事実だ。
あれ以来聞こえなかった声が、今聞こえた。
まるで俺の闘争心に反応するように。
「俺自身の闇……か」
アイラの言っていた試練。
あながち、笑い話にはできそうにない。
向き合わなければならないのか、俺自身も知らないもう1人の自分……悪魔の自分に。
そうでなければ、俺はまた……。
フラッシュバックするように、黒い獣に襲われている美佐樹の姿が頭に浮かんだ。
集まりし3人の特異点。
そして、明人が向き合うべき闇とその先に起こるであろう戦い。
聖域編は、役者がそろったことによって加速していく。
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