DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
場所は地獄にあるデビルマン軍団のアジト、髑髏城。
白藤隆一は玉座の間で頭を押さえ、青筋を立てて怒りの表情を浮かべている。
内海明人の精神は前よりも強固になっており、その心を折るには至らなかった。
それは加藤美佐樹との絆が強くなっていることを示唆している。
そのことが何よりも腹立たしい。
彼が欲しているものを手にしている者は、例え残りカスだとしても許せない。
牧村美樹の転生者であり、特異点の力を持つ存在。
白藤としては、彼女は自身の手元に置きたいと思っているのだ。
「こうなれば、魔戒島に攻め込むしかないか……。あの島の力の前では、その防衛力によって許された者以外は入れない。あの女の力を借り、多勢に無勢で戦えば……ゼロの力があれど、内海明人を潰すことはできる」
実力行使に動こうとする白藤ではあるが、それに対して「少し落ち着きなさい」と玉座の間に女の声が響いた。
「誰だ?誰もここを通すなと伝えていたはずだ」
「そんなことは知らないわ。私のことを止められない、あなたの部下たちが悪いのよ」
その女を見た瞬間、白藤は溜め息をつくと同時に興味が湧いた。
デビルマン・シレーヌ、柊木ツバサ。
今は鎧を装着し、デビルマンの姿をしている。
「シレーヌか……」
「お久しぶりね、レクス。遊びに来てあげたわ」
白藤とツバサは以前から面識があり、その力を互いに認め合っている同士とも言える。
強者として、引かれ合う存在なのだ。
「えらく不機嫌のようだけど、何かあったのかしら?」
「おまえには関係のないことだ。おまえこそ、最近は地上でウロチョロと何をしている?」
白藤は秘密裏にツバサの動向を探っており、彼女の目的を探っていた。
ツバサは頻繁に地上に赴いては、誰かと頻繁にやり取りを繰り返していた。
その誰かというのは、白藤でも把握はできていない。
ツバサは答える気が無いようで、妖艶な笑みを浮かべるだけだった。
「私は確かめているだけよ。人間と悪魔、双方の悪意にどんな違いがあるのか、何が同じなのか」
「悪意と欲望は直結している。だからこそ、人間も悪魔も道を間違える」
「それは……あなたもじゃないの?」
「俺が間違える?ありえないな。……例え、それが万人から見た謝りだったとしても、その正当性を俺は力でねじ伏せる。それが……悪魔の力を持った人間のやり方だ」
手元に置いてあった果実を右手に掴み、それを握り潰す白藤。
「素敵な考え方ね。あなたのそう言う所、好きよ」
「……そんなことを言うためだけに、ここに着たのか?」
退屈そうな顔をして聞けば、ツバサは首を横に振って1つの南京錠のような物を出して見せる。
「あなたに協力して欲しいことがあるのよ。これを内海明人に渡してもらえる?」
「それは?」
「ヴァイスロック。彼が自分の正体に気づくのを手助けするための力よ」
ツバサから受け取り、ヴァイスロックを確認する白藤。
手で触れただけでわかる。
この錠前の中には、とてつもなく邪悪な力が宿っていることが。
「ヴァイス……悪か。おまえはそうまでして、あの残りカスを自分と同じ存在にしたいようだな。シレーヌ」
「それが本来のあるべき姿だから。私、とても優しいと思わない?」
「……どうだろうな」
不敵な笑みを浮かべながら、ヴァイスロックを見つめる。
(これは使えるかもしれないな……)
明人が悪魔として目覚めれば、そのことに追い詰められることは明白。
ツバサとしても、彼が悪魔として自覚すれば自身の手元に置くことができる。
「今回はおまえに協力しよう……。しかし、おまえは一体何がしたいんだ?何を目的に動いている、シレーヌ?」
シレーヌは黒い笑みを浮かべてはこう呟いた。
「この世界を、あるべき姿に戻す……。ただ、それだけよ」
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『ダンテ……ダンテ……』
どこからか、俺を呼ぶ声が聞こえてくる。
『目覚めよ……ダンテ』
その声に導かれるようにして目を開ければ、そこはいつもの白い空間の中だった。
しかし、いつもとは違い、目の前にはあの巨大な怪物の姿は無かった。
それでも、声は聞こえてくる。
『目覚める時が来たのだ。ダンテよ……その力を、解放する時が来た』
「俺の力を解放する……だと?あれが……あんなものが、俺の力だって言うのか!?」
今でも覚えている。
意識ははっきりとあった。
それでも、身体は俺の意志に反して荒れ狂い、暴れていた。
そして、そのまま沙織を殺してしまいそうだった。
あの時、あの2人の戦士が現れなければ、俺は島を破滅させていたかもしれない。
「あんな力が俺の中に……あれが俺の……正体だったなんて…‼」
知りたくなかった。
何が王だ。
何が覇道だ。
何が……魔王の力だ‼
俺はあんなことをするために、力を欲したわけじゃない‼
『怖いか?己の中の魔王の力が』
怖い?
恐怖?
俺は自分の力を恐れているというのか?
否定できない。
「ああ、恐いさ。できることなら、こんな力……今からでも消えてなくなれば良い‼」
『貴様を構成しているのは、その力なのだぞ?』
声は俺の想いを試している。
どうしたいのか、どうするべきなのか。
俺の向かうべき道とは、何なのか……。
沈黙していると、声はそのための手がかりを指し示す。
『白い悪魔と蒼き魔神に会うが良い。さすれば、貴様の進むべきも見えてくるはずだ』
「白い悪魔……蒼き魔神?」
『彼らの覚悟は、今の貴様よりも強い……。探求するが良い、ダンテよ。貴様の進むべき道を……』
その言葉を最後に、意識は現実に戻り始めた。
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意識が戻って目が覚めると、最初に感じたのは温もりだった。
身体を起こして周りを見ればシーツがかけられており、沙織が俺が横になっているベッドに自身の腕を枕にして眠っていた。
「沙織……っ!?」
フラッシュバックするのは、自身が沙織を握り潰そうとした記憶。
身体の震えを抑え、彼女を起こさないようにベッドから降りれば、そのまま部屋を出る。
「ここは宮殿の中……だな」
誰も巻き込むわけにはいかない。
今の自分は危険すぎる。
俺は走って宮殿を出て、聖域を出ようとする。
外は夜で、今の時間なら誰にも気づかれない。
誰にも見つからない場所で、1人で居なければならない。
そして、できることなら……。
正門までたどり着けば、そこには1人の男が立っていた。
見覚えのない男だ。
しかし、風格からして外道どもとは違う者だと思った。
「おまえ、目が覚めたのか?もう動いて大丈夫なのかよ?」
男は怪訝な表情を浮かべて聞いてくるが、俺は思ったように言葉が出てこなかった。
「俺は……ここを出る。そして、誰にも関わることなく……生きていくつもりだ」
「……は?」
男は眉間にしわを寄せては、俺に迫って目を合わせてくる。
「おい……おまえ、自分のしたことがわかってねぇのか?」
「わかっている‼……だからこそ、俺は……みんなの目の届かない所に行かなければならないんだ。誰も巻き込まないために……もう、誰も傷つけないために‼」
俺が感情に任せて決意を口にすれば、男は「バカ野郎!」と言って左頬を殴ってきた。
「んぐっ‼」
ケイのようなデビルマンの一撃ではなく、人間の男の鉄拳だ。
しかし、それは何にも増して痛みを感じた。
男は怒りの表情を向け、胸倉を掴んでくる。
「俺はなぁ……おまえみたいな男は気に入らねぇ‼自分のしたことから目を逸らして逃げる奴なんて、俺は絶対に認めねぇぞ‼」
気迫あふれるその言葉に圧され、目を見開いて男の瞳を覗く。
それに映っているのは、怯えた表情をした俺自身だった。
「俺が……逃げる……?俺は……みんなを傷つけたくないだけだ‼」
そんな自分を受け入れることができず、男を押し倒しては拳を握って殴り返そうとするが、それは容易に受け止められては再度殴られてしまう。
「ぐふぁ‼」
男は立ち上がり、首を回して鳴らしては俺を見下ろす。
「いいや、おまえは理由をつけて逃げてるだけだぜ……ダンテ。それは今、おまえが一番やっちゃいけねぇことだ」
この男には勝てない。
そう本能が言っている。
力の意味でも、心の意味でもだ。
「おまえが逃げるっつーなら、俺はそれを全力で止める。自分のしたことくらい、受け止めて乗り越えろ‼俺たちだって……そうやって生きて、戦ってきたんだ」
「俺……たち……?」
男は荒くなった息を整え、落ち着きを取り戻して手を差し伸べる。
「俺は兜甲牙。マジンカイザーとして、世界の平和のために戦う者だ」
マジンカイザー……マジン……魔神?
夢の中で告げられた言葉を思いだす。
「蒼き魔神……」
「あ?あぁ~、確かアイラも俺のことをそんな風に呼んでたな」
頭の後ろをかきながら言う甲牙の両肩を掴み、必死な目になってしまう。
「おまえが蒼き魔神なら……教えてくれ‼俺は……俺は、一体どうすれば良い!?」
「お、おいおい、一体、どうした!?」
動揺する甲牙だが、俺を振り払おうとはせず、肩を掴んで「落ち着け」と言う。
「おまえがどうすれば良いのか。そんなのは俺にはわからねぇ。だけど、逆にしちゃいけねぇことだけはわかるぜ。……自分から逃げるな。どんなに強い奴だとしても、自分からは絶対に逃げられねぇんだから」
自分からは逃げられない。
その言葉が、深く胸に突き刺さった。
「俺は……逃げられない。自分からは……魔王の力からは、逃げられない……のか」
「逃げられない。だったら、どうするべきかは……もう、わかるな?」
逃げられないなら、乗り越えるしかないと甲牙は言った。
しかし、俺にできるだろうか……。
「怖いんだ……自分の全てが……恐ろしい‼俺は……どうしたら、乗り越えることができるんだ!?」
錯乱しそうになったその時、別の男の声が聞こえてきた。
「だったら、強くなるしかないだろ。力の意味でも、精神の意味でもな」
遠くから歩み寄ってきたのは、甲牙と似たような雰囲気の男だった。
しかし、何故だろうか。
俺はどこかで、彼のことを見た気がする。
「おまえは……」
「内海明人、デビルマン・ゼロとも呼ばれている」
内海明人……デビルマン・ゼロ。
デビルマンということは、ケイと同じ存在なのか?
しかし、彼からは禍々しいオーラを感じない。
明人は俺に近づき、まっすぐに視線を合わせる。
「ダンテ、俺たちがこの島に来た目的はおまえにある」
「……どういうことだ?まさか、おまえたちは俺のことを知っているのか!?」
首を横に振り、否定する明人と甲牙。
「だけど、おまえの力が必要なことだけは知っている」
明人、甲牙。
2人の目からは強い意志を感じる。
数々の戦いを乗り越えてきた戦士の出で立ちを。
「俺たちはおまえを迎えに来たんだ。この世界を救うための仲間として」
明人、甲牙、ダンテ。
3人の邂逅によって、数々の運命が変動することになることを、この時は誰も知る由もなかったのだ。
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