DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
魔戒島の西側、聖域とは正反対の場所にある外道のアジト。
そこでケイは死んでいった部下たちの墓を簡易的に作りながら、暴走したダンテへの恐怖が頭から離れない。
しかし、それよりにも勝る感情がある。
憎しみ。
自分の命に代えても、ダンテを倒すという決意がある。
「おまえら……あの世から見ていてくれ。俺が必ず、おまえたちの仇を取ってやる。ダンテと戦えば、俺も死ぬことになるだろう……それでも、道連れにしてでも奴は俺が……殺す‼」
爪が食い込むほどに拳を握って言葉を口にすれば、後ろからゴーゴン大公が笑いながら近づいてきた。
『あれほどの力を目の前にしながら、なおも魔王に挑もうとするか。それが無謀か勇気か、その答えはすぐにわかるであろう』
「……どういう意味だ?ゴーゴン大公」
『今少しの間を待つが良い。現在、ヒミコが地獄と現世を繋ぐ道を作っておる。この島の守り人の力があれば、増援を呼ぶのは造作もないこと』
「デビルマン軍団か。おまえたちが何をする気かは知らねぇが、ダンテは俺が殺す。邪魔だけはするな」
強気なケイに対して、ゴーゴン大公は澄まし顔を浮かべながら胸中が騒ぐ。
(この地を戦場とするのであれば、必ずあの方が出撃するに違いない。魔王ダンテを止められる程の力があるとすれば、それは大魔神サタンかマジンカイザー、あるいはレクス様と因縁浅からぬ魔人デビルマン・ゼロか。どちらにしても、熾烈を極める戦いになることは間違いない)
ケイはゴーゴン大公に背名を向け、その場を後にする。
『どこに行く気だ?』
「……俺はもっと力を付けなければならない。あの怪物を殺すために……俺は完全なる悪魔となる」
そう言って姿を消した彼の背には、多くの霊魂が集まっているのが視認できる。
そして、霊魂はケイの中に入っては消えていく。
『あの力……ヒミコがあの男をこの島に招いた意味が、よくわかった』
ケイもまた覚醒しようとしている。
魔王の力が着火剤となったか、彼にもまた目覚めようとしている力があるようだ。
『あの力が魔王に匹敵するかどうか。それもまた見物であるな』
ヒミコの話では、2つの世界を繋ぐゲートが完成するまでの期間は3日。
3日後には、この島の全てが戦場となるであろう。
「レクス様がこの地にいらっしゃるとは……そして、暗黒大将軍様もいらっしゃることだろう。この戦い、人知を超える者になるのは間違いない。その時、生き残るのは……」
ゴーゴン大公は不敵な笑みを浮かべ、3日後の地獄絵図をイメージしては高らかに笑った。
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ダンテの暴走が起きた翌日。
彼が起こした被害のことは、まだ聖域には魔王の力が原因であることは知らされていない。
アイラが自然災害であるとしたからである。
それがダンテを庇うための最善の策だった。
ただでさえ、この国では男に対する風当たりが強い。
そこに島全土を巻き込む災厄を起こしたとなれば、彼に対する不満は爆発するに違いない。
真実を知っているのは、俺と甲牙、アイラ、沙織だけだ。
この4人の内誰かが話さない限り、皆に知られることはない……はずだ。
「俺は……これで良いのか?ここに居ても……」
今もなお不満を抱えているダンテの気持ちは、俺には痛いほどわかる。
俺自身、ゼロの力が暴走したことによって日本に絶大な被害を与えてしまった。
それを知った時の絶望感は、すぐに拭いきれるものではない。
「ここに居ても良い。……そう思ってもらえるくらいに、強くなるしかないだろ」
「明人……」
隣に立って助言を送れば、ダンテの瞳に少しだけ光が戻った。
そして、俺と甲牙が彼を預かり、聖域から少し離れた場所に向かった。
アイラから許可はもらっており、彼を強くするために鍛えることにしたんだ。
俺が了さんやジュンさん、ガーラさんに協力してもらったように、今度は俺がダンテが力を制御できるように協力する番だと思ったからだ。
枯れはてた森を見て、ダンテの胸が痛んでいるのがわかる。
「明人、甲牙……おまえたちは、どうやって自身の力を制御したんだ?」
単刀直入に聞いてくる。
俺たちはダンテに、自分たちの力も暴走したら危険なものであることを話した。
だからこそ、誰よりも彼の気持ちがわかる。
その力を振るう恐怖も、その責任も。痛いほどに。
「心を強く持つんだ、ダンテ。力と精神は直結している。心が弱くなれば、力に自分を支配されることになる」
「心……か」
自身の胸に手を当て、思考する顔になる。
そして、甲牙も助言した。
「単純に身体を強くすれば良いんだよ。強くなれば、自分の中の力を自由に使いこなせるようになる。要は特訓だ‼」
「身体を強く……特訓?」
首を傾げるダンテだったが、甲牙はそれを気にせずに彼と対面して肩を回す。
何だか嫌な予感がするんだが……。
「おい、甲牙。ことはそう単純じゃないだろ?」
「んなのやってみなきゃわかんねぇだろ!?考えてても仕方がねぇ。こういう時は、身体を動かすのが一番だぜ‼」
甲牙はボクシングのフォームを構え、殴る動作をしてはダンテに語り掛ける。
「勝負だ、ダンテ‼おまえの抱えている不安や苦しみ、それを全部吐き出しちまえ‼そうすりゃ、見えてくるもんもあるだろ」
何て短絡的……とも思ったが、今はその方が良いかもしれない。
要するに荒療治だ。
しかし、当の本人は気が引けている模様。
「しかし……甲牙は俺の恩人だ。それがわかった今、おまえを殴るなど……」
「うじうじとうっせぇぞ、ダンテ‼殴られてぇなら、そう言いやがれ‼」
甲牙は及び腰のダンテに火を付けようと思ったのか、問答無用で拳を腹にめり込ませた。
「ぶぐふっ!?」
腹を抱えてうずくまるダンテ。
しかし、すぐに目付きが変わった。
「これが……殴られる痛み……。しかし、あの戦いとは違う……。これは、意味のある痛みだ。俺は……この痛みを知っている…‼」
俯きながら呟いた後、甲牙に掴みかかっては彼の額に頭突きを食らわせた。
「くぅうう‼……良い一撃だぜ。その調子だ……その調子で、語り合おうぜ‼」
殴り合いの勝負を始めるダンテと甲牙。
ダンテの頬を殴る甲牙。
甲牙の腹部の殴るダンテ。
互いに殴られることで痛みを感じながらも、相手に対しての敵意も殺意も感じない。
殺し合いではない、純粋な喧嘩だ。
殴り殴られを繰り返しながら、2人は目の前の相手を見ては楽しそうに笑っていた。
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不思議な気分だ。
甲牙の拳は痛い。
ケイの拳よりも強く、衝撃が身体に響く。
しかし、悪い気分ではない。
むしろ、心地いい。
俺はその拳を避けることなく、身体で受け止め続ける。
甲牙も、俺の拳を受け止めてくれている。
この胸の高鳴りは何だ?
今までに感じたことのない高揚感は一体。
熱い。
拳を振るう度に、拳を受ける度に。
身体が……心が熱くなる‼
「どうだ、ダンテ!?こういう喧嘩も、悪くねぇだろ!?」
右頬を勢いよく殴りながら、甲牙が聞いてくる。
「喧嘩……?喧嘩とは、何だ!?」
聞き返しながら、俺も甲牙の左頬を殴った。
「今している、この勝負のことだ‼殺し合うための戦いじゃねぇ。互いに理解し合うための戦い……だぁ‼」
甲牙は腹部に頭突きをしながら俺を持ち上げ、そのまま後ろに投げた。
「ぐぶふぁあ‼……はぁ……。あぁ……悪くない‼‼」
今、この瞬間、俺の頭は空っぽだった。
何の不安もなく、迷いもない。
ただ純粋に、甲牙との喧嘩を楽しんでいた。
自分が何者なのか。
どうすれば力を制御できるようになるのか。
何をすれば強くなれるのか。
全てのことが、この喧嘩の先に見つかるような気がした。
「嬉しいぞ……甲牙‼」
「あぁ!?何がだよ!?」
「俺は今……満ち足りている‼今、この瞬間の俺は何者でもない‼ただの……ダンテだぁあああ‼」
そうだ、王だとかそんなことは関係ない。
ただ、今持てる自分の全てをぶつけることができる喜び。
それをぶつけられる相手が目の前にいることの喜び。
その全てを、今、身体と心で感じている。
力がみなぎる。
「そうかよ!?そりゃぁ良かったな‼だけどなぁ……俺はまだ足りてねぇぞ、ゴラァア‼」
今まで本気ではなかったのか、甲牙はダンテの拳を受けた後で微動だにせず、蒼いオーラを身体から発しては自身の拳を顔面にめり込ませて後ろに吹っ飛ばした。
この拳を受けては、間違いなく倒れる。
「んぐふぁあ‼‼」
踏ん張ることもできずに倒れた。
しかし、その時の俺は悪い気分ではなかったのだ。
地面に仰向けで倒れることによって見えた空が、どこまでも青く美しいと思えたからだ。
「これが……空……か」
思えば、俺は今まで空をしっかりとこの目に焼き付けたことが無かったかもしれない。
ずっと、自身のことで悩み、苦しみ、生きていくことで精いっぱいだった。
前と下ばかりを見て、上を見ようとはしなかった。
俺の呟きを聞き、甲牙は怪訝な顔を浮かべながら同じく空を仰ぎ見る。
「おぉ……今日もお天道様が眩しいったらねぇな」
空を見上げて笑う甲牙が、今の俺には太陽と同じように眩しく感じた。
明人が歩みよってきては、俺に手を差し伸べてくれた。
「立てるか?ダンテ」
「ああ。……ありがとう、明人」
彼の手を握って立ち上がろうとした瞬間、握った右手を通じて頭に電気が流れたような衝撃が走った。
「っ…!?」
俺はすぐに手を離し、痺れを覚える頭を両手で押さえては刺青の黒が全身に広がった。
「こ、これは……」
肌が黒一色になったことを視認した時、また暴走するかもしれないと思った。
しかし……何も起こらない。
「ダンテ……おまえ……」
「大……丈夫だ。今は……何ともない」
しかし、何故だ。
明人に触れた瞬間、電気が流れたと同時に知らない記憶が頭に流れてくるのを感じた。
その中で頭に印象に残っている映像がある。
巨大なコウモリのような悪魔が、多くの怪物を引き連れながら空に挑む姿。
『皆、続け‼魔王ダンテと共に‼』
悪魔は確かに名乗った、魔王ダンテと。
まさか、あれが……記憶を失う前の俺なのか?
その後、黒は刺青の形に戻っていき、俺の肌は元に戻った。
奇妙な感覚を残しながら。
拳と拳で語り合う男の描写。
書いてるこっちも感動する~。
そして、遂に出てきたダンテの記憶の断片。
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