DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
そこに明人自身の意志は関係なかった。
ヴァイスゼロは無感情に無力な白藤隆一を殺そうとしている。
自身が滅びるかもわからぬ窮地であるにも関わらず、白藤の笑みは消えない。
(この力っ…‼シレーヌが求めていたのは、この獣の力かっ…‼素晴らしいぃ…‼)
苦しみながらも念じて次元の狭間を切り開けば、巨大な地獄の番犬ケルベロスが出現する。
<グルゥァアアアアアアア‼>
主の危機を前に怒り狂い、ヴァイスゼロに襲いかかろうとするケルベロス。
雄叫びをあげる番犬を前にし、白藤を解放すれば羽根は無数の短剣に形状を変えてケルベロスを攻撃する。
<ガゥリァアアアアア‼‼>
全方位からの一斉斬撃によってケルベロスは苦しみ、ヴァイスゼロに近づくことすらもままならぬに倒れてしまう。
しかし、ケルベロスは抵抗として3つの口から火炎を放射する。
それはヴァイスゼロに直撃する前に羽根の盾が3方向から完全防御する。
<ク・・・ラ・・・ウ>
ケルベロスを指させば、羽根が集まっては獣の巨大な頭の形になり、口を開いては床を削りながらケルベロスに接近してはその鋭利な牙で番犬の身体に噛みつく。
<ビグァアアアアア‼‼ガゥ‼ガワラァアア‼>
徐々に噛み砕きながら口の中に集約されていき、ヴァイスゼロが歩みよって後ろから獣の頭に触れれば羽根が主の元に戻ってはケルベロスの姿は無かった。
地獄の番犬ですらも、ヴァイスゼロの前えは餌も同然なのだ。
『レクス‼』
次元の狭間から出てきた戦士が遅れてもう1人。
デビルマン・ゴッドだ。
彼は明人に敗れたふりをし、次元の狭間からワープしてきたのだ。
ゴッドは傷ついた白藤と変わり果てたゼロの姿を見ては瞬時に状況を理解し、彼に歩み寄ろうとするヴァイスゼロに襲いかかった。
『レクスに近づくな‼‼』
ヴァイスゼロの背中に回って両腕を回して固定し、全身から光線を放つ。
『ゴッドビーム‼』
至近距離からの攻撃を受けてもなお、ヴァイスゼロは微動だにせずに頭を横に向ける。
<ジャ・・・マ・・・ダ>
両翼を広げてゴッドを吹き飛ばせば、羽根が飛んで集まれば10本の巨大な杭になる。
そして、うつ伏せに倒れたゴッドの両手と両足、背中などに差し込まれる。
『ぐはぇぁああああああ‼』
あまりの激痛に叫んでしまい、身もだえするが動くことは叶わない。
ゆっくりと歩み寄り、ヴァイスゼロはゴッドの頭の前に立つ。
無感情に見下ろす獣を前に、ゴッドはマスクの下で恐怖で顔が歪んでしまう。
(あ、ありえない……。内海明人は、ここまで強くなかったはずだ。さっきまでとは……別の何かになっている!?)
身を震わせながら、ヴァイスゼロを見上げて懇願するゴッド。
『や、止めてくれ……許してくれっ…‼お、おお、俺たちが悪かった…‼だから…‼』
未練がましく命乞いをするゴッドを見下ろし、その頭を床に踏んずけて圧をかける。
<キ・・・コ・・・エ・・・ナ・・・イ>
バギブギュリっ‼
その言葉がゴッドに絶望を与え、まるで道端を歩いている虫に対するようにゴッドの頭を兜ごと踏み潰した。
ゴッドの身体から鎧が消えては、頭のない死体が露出する。
右足を中心に血塗れになったことも気にせず、改めて白藤に迫るヴァイスゼロ。
ケルベロスとデビルマン・ゴッド、2つの戦力を失ってもなお、白藤の引きつった笑みは消えない。
「素晴らしい力だ、ヴァイスゼロ‼おまえの力があれば、我らデビルマン軍団は強大なものとなる‼さぁ、俺と共に世界を―――」
<ダ・・・マ・・・レ‼>
翼をはためかせれば羽根が飛び散って紫色の光子に変化し、光線が白藤を襲う。
「止めろ、明人‼それ以上はまずい‼」
カイザースクランダーを最大出力で飛ばし、ヴァイスゼロにタックルするマジンカイザー。
「うぉおおおおおおお‼‼」
魔神パワーを解放した状態でベルトに手をかけては大量の光子力を流して変身を強制解除させた。
ヴァイスゼロの力は分散し、羽根と光線は消える。
そして、ヴァイスゼロを構成していた青紫のオーラがヴァイスロックの中に集約していった。
「っ‼…あがっ……はぁ……はぁ……」
全身から汗が吹き出しながら、俺は前屈みに倒れそうになったところをマジンカイザーに支えてもらった。
互いにボロボロの状態でありながら、敵を見据える俺と白藤。
白藤は笑いながら立ち上がる。
「アーッハッハッハッハ‼我、悪魔の正体を見たり‼……内海明人、おまえに1つ予言を残してやろう」
ヴァイスロックのはまったゼロのベルトを見て指さし、不敵な笑みを浮かべる。
「そのままデビルマンへの変身を続ければ、おまえの自我は悪魔に飲まれる‼デーモンを超えた完全なる悪魔となり、欲望のままに破壊する獣となるだろう‼」
不吉な予言を残し、白藤は次元の狭間の中に消えていく。
俺たちは、それを見ていることしかできなかったんだ。
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デビルマン軍団の襲撃を退け、俺たちは聖域を守り抜いた―――わけじゃなかった。
俺たちは多くの犠牲を出してしまった。
その中でも、アイラを失ったのは大きい。
終戦の夕方。
聖域の近くにある丘に、今回の襲撃で死んでいった者たちの墓を作り死者を弔う。
宮殿の外で戦っていた沙織や途中から参戦した他の女戦士たちはもちろんだが、宮殿の火災の中でも奇跡的に生き残った女たちも居た。
彼女たちからは、俺たちを責める目を感じる。
俺たちが災いを振りまいたと思っている者も居るだろう。
「……ありがとう。守ってくれて」
沙織が俺に言ってくる。
「それはダンテに言うべき言葉だろ。俺は……誰も守れなかった。守れなかったんだ」
白藤の手の上で踊らされていたに過ぎない。
今回も俺は、あいつに負けたんだ。
「ダンテには後で言うつもり。だけど、最初にあなたに言わなきゃいけないと思ったから。……彼女の仇を、討とうとしてくれたんでしょ?」
沙織の言葉が胸に刺さって痛みを感じる。
責められた方がマシだったかもしれない。
どうして、助けられなかったんだと殴られた方が楽だった。
しかし、それは俺が楽になるだけだ。
悲しんでいる者たちの元に、アイラは戻ってこないんだ。
「これから……おまえたちは、どうするんだ?」
「さぁね、どうすればいいのかしら……。考えてみたら、この島に来てから私たちは彼女に全てを委ねて生活していたわ。考えることを放棄していたって言っても過言じゃない。だから、少し時間が必要なのかも……」
空を仰ぎ見ながら、沙織は遠い目をする。
聖域は崩壊し、彼女だけで修復させるのは困難だ。
この魔戒島で生活するのは難しいだろう。
「そういうあなたは、本島に戻るんでしょ?」
「……そのつもりだ。俺たちの帰りを待ってくれている人たちがいるから」
「そう……羨ましいわね」
そう言う沙織に対して、気休めになるかはわからないが1つ言葉を送った。
「居場所だったら、いつでも作ることができる。作ろうと思えばな。……って、その居場所を守り切れなかった俺が言っても説得力はないか」
俺がここに居ても、怒りが勝って悲しみに浸ることはできないだろう。
その場から離れ、森の中に入っては1人になろうとする。
「……さっきのは、一体何だったんだ?明人」
先客が居たのか、甲牙が俺を見つけて問いかけてきた。
闇に飲まれたゼロのことを言っているのはすぐにわかった。
「あれは……俺の中に居る悪魔だ。ゼロじゃない。俺の……本当の姿なのかもしれないな」
「そんなわけあるかよ。おまえは今まで、多くの命を救ってきただろ!?そんなおまえが、悪魔であるはずが……いや、例え悪魔だとしても‼おまえは、内海明人……デビルマン・ゼロだろ?」
「……そう言ってくれて嬉しいぜ、甲牙」
あの時の感覚は、今でも覚えている。
絶望とは違うものが俺を飲み込んだ。
闇。
光が届かない闇の底に引きずり込まれ、身動きが取れなかった。
そして、戦っていたのはもう1人の俺……悪魔の自分だ。
「……甲牙、俺もおまえに聞きたいことがあったんだ」
「あ?何だよ、改まって」
「どうして、俺が白藤を殺そうとしたのを止めてくれたんだ?」
あの戦いで、身体を動かしていたのは欲望だ。
白藤を……敵を殺したいという確かな欲。
それだけで、欲望に身を任せただけであれほどの力を出せるものなのか。
「あのまま、おまえが白藤隆一を殺せば……もう戻ってこれないような気がしたんだ。俺の知っている内海明人にはな」
「甲牙……」
「全く、手間取らせやがって。しっかりしてくれよ、おまえには大切な者があるだろぉが。それを守るために戦ってるんだったら……悪魔だろうと人間だろうと、やることは変わらねぇ」
甲牙は俺の胸に拳を押し当て、視線を合わせる。
「強くなるしかねぇだろ、今よりも。おまえの中の悪魔よりも。俺ももしもの時に、おまえを止められるくらいに強くなってやる」
「……そうだな。おまえの言う通りだ、甲牙」
腰に巻いているゼロのベルトにはヴァイスロックが着けられたままの状態だ。
甲牙の言葉が頭の中で何度も復唱されながら、白藤の言葉が混じってくる。
俺がこのまま変身を続ければ、自我が悪魔に飲み込まれる。
その先に待つ未来が、あの光景だと言うなら俺は……。
最も辛い決断を強いられるかもしれない。
これがアイラの言っていた試練の本当の始まりなのだと、この時俺は直感した。
ケルベロスとデビルマン・ゴッドへの哀しいリベンジ(『内海明人の崩壊☆』参照)。
デビルマン・ヴァイスゼロの力、恐るべし。
ヴァイスとは『悪』を意味する単語です。
悪のゼロ=ヴァイスゼロになるわけです。
明人が乗り越えなければならない『闇』。
これが試練となります。
聖域編は後少しでエピローグを迎えます。
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