DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
明人たちが魔戒島でデビルマン軍団と戦っていた時、本島では別の形で戦いが行われていた。
場所は三者連合のアジト。
その地下には、ある最重要警戒人物が監禁されていた。
何重にもロックのかけられた監禁部屋が開き、その中に了は足を踏み入れる。
彼の目の前に居る男は身体全体を力を封じる特別な鎖で覆われて椅子に座らされており、少しやつれた顔をしている。
了と瓜2つの顔をしながら、顔色は全く違う。
「気分はどうだ?ミカエル」
「……兄上ぇ‼」
今にも噛みつこうとするように威嚇するミカエルを哀れむように見ながら、もう1つ椅子を用意して了は彼の前に座る。
「今日は、おまえといがみ合いに来たわけじゃない。話をしに来たんだ、久しぶりに兄弟水入らずでな」
「話ぃ?私とおまえで話すことなどない‼」
「おまえにとってはそうかもしれない。しかし、この世界を救うためには、おまえは貴重な情報源であることには変わりはない。おまえが俺の問いに答えるまで、ここから一歩も引く気はない」
手と足を組んで顎を引き、弟と視線を合わせる
「おまえは白藤隆一と繋がりを持っていた。あれは何だ?何故、明と似た力を持っている?」
「……白藤隆一か。奴は気づいていないだろうが、あれもまた神の用意した駒だ。不動明がおまえにとってのそうであったように、白藤もまた神の与えた対極の位置に立つ者だ」
「明が神の駒だった……だと?どう言う事だ!?」
自身の知らない真実を聞き、目を細める了。
「神は全知全能。人間も、悪魔も、我ら天使も、等しく神の意志の元に運命というレールの元生きている。誰も彼もが自身で生き方を選択していると思っているが、その選択というレールすらも神の定めたシナリオに執着するようになっている」
ミカエルは薄ら笑みを浮かべる。
「おまえもわかっているはずだ。何度世界を回帰しようとも、滅びの運命は変わらない。神との戦いに決着はつかず、無意味な運命を繰り返す。この世界もまた、アポカリプスへと向かうように修正が加えられる。悪魔も人間も、世界と共に滅びる」
了は1つの疑問にぶち当たる。
それはずっと、何度世界を回帰しても見いだせなかった問いだ。
「何故、神は世界をリセットしようとする?神の目的は一体、何だ?」
不動明と大魔神サタンを利用してアーマゲドンを起こした。
何度回帰しようとも、その世界は崩壊を迎える。
その先にある、神の目的とは一体何なのか。
「全ては神の定めた運命のままに。神は創造主として、人間に知恵を与え、悪魔に力を与えた。しかし、愚かにもその2つの種族は自らが世界の支配者であるとして神の領域に足を踏み入れようとした。神の逆鱗に触れたことにより、人間と悪魔は滅びの運命をたどることになった。要するに、全ては神の意に反した自業自得と言う事だ」
「人間と悪魔を滅ぼした後、神は何を成そうとしている?」
「我らは偉大なる神の意志に従うのみ。それこそが我ら創造物の役割。神の崇高なる思考を計ることなど、誰にもできはしない。そして、勘違いされては困る。神がリセットするのは、悪魔が存在する世界だ」
「……どういうことだ?」
まるで悪魔と人間を対象として別に見ているような物言いに引っ掛かりを覚える。
「悪魔が滅びれば、神に反旗を翻す者は消える。人間は神の管理下に置かれ、我ら天使と同じく神の祝福を受ける駒となるのだ」
「神は悪魔を滅ぼし、人間を手中に収めようとしているというのか!?」
「全ては、デビルマンという存在を生み出さないためだ。あれこそ、神の意志に反する存在としてもっとも不純な存在だからな」
ミカエルの言葉に、了は妙な引っ掛かりを覚える。
(神の目的は悪魔の力を持った人間……デビルマンを生み出さないことだというのか?しかし、人間を支配下に置く理由は一体……)
あくまでも神の意志に従う姿勢を貫くミカエルに、了は苦汁を舐める表情をする。
「全て神の思い通りにすることしか考えない……。おまえは本当にそれで良いのか?ミカエル」
「おまえこそ、いつまで無意味に神に逆らい続けるつもりだ?ルシファー」
相容れない双子は互いを否定するように睨み合い、ミカエルは不敵な笑みを浮かべる。
「全てが滅びるアーマゲドンへと続く道は1つではない。おまえが特異点たちの力を利用しようとも、運命は神の定めた終点に向かっている。今もなお……な」
「全てが神の思い通りになると思うのならば、それは大間違いだ。例え俺が道半ばで朽ち果てようとも、アキトたちが意志を受け継いでくれる」
「おまえは特異点の力を過大評価しているようだが、1つ真実を教えてやろう」
ミカエルから発せられるオーラが薄暗いものになっていき、不穏な雰囲気を演出する。
「白藤隆一は、特異点を潰すために生まれた神の駒だ。そして、特異点に対抗する力は白藤だけではない。その者たちはもう動き出していることだろう……。デビルマン、人間、デーモン。彼らの意志に関係なく、神の歯車として働く者たちは存在する。特異点同士が引かれ合うように、対極の者たちも出会いを導かれるのだからな」
「神は既に、特異点を抑えるための力を用意していたというのか?」
「つまり、滅びの運命には抗えないということだ。諦めることだな」
了はミカエルからの絶望的な宣告を受けたにも関わらず、フッと笑う。
「それを聞いて安心した」
「……何?」
「おまえの言葉を聞いて希望が確信に変わったのさ。やはり、神は特異点の力を恐れている。だからこそ、特異点に対抗する力を生み出した。それだけ知れれば十分だ」
「気でも狂ったか?おまえの希望など、神の運命の前ではゴミも同然なのだぞ!?」
「確かに俺程度の思惑など神は手に取るようにわかるだろう。しかし、神は自身の領域外のことには手を出せない。運命を決めるのは神の意志じゃない。生きとし生ける者たちの想いと覚悟だ」
真剣な眼差しで了が言えば、ミカエルは奥歯を噛みしめて睨みつける。
「後悔することになるぞ?神はおまえに更なる裁きを下すだろう」
「生憎と後悔ならもう散々している。だからこそ、もう俺に迷いはない」
椅子から立ち上がり、愚弟を冷たい目で見下ろして告げる。
「ここから感じとるが良い。運命になど屈しない者たちの生きざまをな」
その言葉を最後に監禁部屋から出て行く了を、ミカエルは恨めし気な顔で睨んだままだった。
「全ては神の定めし運命のままに」
神の操り人形に準じる弟を哀れに想いながらも、了は先に進み続ける。
特異点と対極の存在。
それは白藤だけではない。
この先の戦いで姿を現すことだろう。
「っ…‼」
ミカエルとの対談を終えた後、急に激しい頭痛に襲われては頭を押さえて壁に身体を預ける。
そして、頭の中にあるヴィジョンが流れ込んできた。
それはどの世界にも存在しない3つの記憶。
1つは、荒廃した街で悪魔が暴れまわる世界。
1つは、晴天の下で巨大な戦士の像を人間たちがそれを崇めて依存する世界。
1つは、悪魔の鎧を装着した者たちが人間と悪魔を虐げる世界。
どれも歪んだ思想が見え隠れしており、希望が見えない。
そして、その先に見えたのは共通の未来。
「今のは、一体……。あれは、あの未来だけは阻止しなければ…‼」
了は妙な胸騒ぎを覚えながら、これから先の戦いに備える決意を固める。
「特異点と対となる存在との戦い……。それがこの先の未来にどのような影響を与えるのか。俺ができることは……」
拳を強く握り、顔を引き締めては代表室に戻る了。
大魔神サタンとして、飛鳥了として、神との戦いにどう向き合うのか。
特異点だけでなく、彼らを支える者たちにも選択は迫られ始めているのだ。
感想、評価、お気に入り登録、いつもありがとうございます。