DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
聖域から本島に移動した俺と沙織たちは、飛鳥了と言う男から住む場所を提供され、マンションを1つ貸し切る形でそれぞれに個人の部屋が与えられた。
俺も1人の空間ができたが、何分記憶が曖昧なために何をしたらいいのかもわからない。
夜、明かりを付けては机の上に置いてある本を手に取ってページをめくって目を通す。
しかし、集中できない。
時間が経っても思い出す。
俺に向けた、あの雷沼という男の黒い感情を帯びた敵意を。
あれはケイが俺に向けてきた敵意とは違う物だった。
純粋な荒々しい殺意ではなく、静かに存在自体を否定するような目。
あの瞳に睨まれた時、思わず身体が委縮してしまった。
最近読んだ本に書いてあった言葉に、覇気というものがあった。
それを発していたのだろうか。
「あの男……危険な者でなければ良いのだが」
雷沼との接触、そして外の世界でのデーモンとの邂逅。
それが俺に与えた衝撃は余りにも大きいものだった。
本を閉じ、ベランダに出て外の景色を見てみる。
目に映るのは、静寂の街だ。
明かりが至る所でポツポツとついており、地上に広がる星の様だ。
「悪魔は危険な存在……か」
デーモンを目の当たりにし、恐怖で逃げ惑う人々。
そして、戦いながらも気づいていた視線の違い。
マジンカイザーに対して希望にすがる目と、俺に対する得体の知れない者に対する不安の目。
デビルマンとしての力に目覚めながらも、その扱いは魔王の力に目覚めた時と差ほど変わらない。
恐怖の目は、いつまでも付きまとう。
普通の人間からしてみれば、悪魔とは恐怖の対象でしかないのだろう。
それならば、悪魔から人間に対する認識はどうなのだろうか。
俺は知る必要がある。
悪魔と人間の違いを。
容姿の違いだけじゃない、心の在り方を。
魔戒島に居た時だけでも、俺は多くの心を知った。
不審な存在である俺に対して、敵意を向ける者と好意を向ける者。
俺を受け入れ、共に戦ってくれる者。
俺を殺そうとし、戦いを挑んだ者。
俺を恐れて臆し、死を受け入れた者。
心の在り方の違いを知った中で、温かさも知れば冷たさもわかるようになった。
俺は今、温かい心を持つ者たちと居る。
しかし、それだけではいけない気がする。
心の温かさも、冷たさも知ることが、俺の求める王の姿を見つける手がかりになるのではないか。
そして、その答えを探す道は、明人たちの志す道と繋がっているような気がしてならない。
あの時の、飛鳥了……大魔神サタンの言葉を信じるのであれば。
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魔戒島から本島に移った3日後。
俺は明人や甲牙と共に、三者連合の本部に通された。
そして、あの男と顔を合わせた。
いや、ゼノンの感覚からすれば……再会することができたという言葉が正しいのか。
「初めましてかな、ダンテくん。俺は―――」
「サタン……」
勝手に口からその言葉が出てきて、左目から涙がこぼれた。
突然のことに驚いたが、男は困ったような笑みを浮かべてはポケットからハンカチを取り出して渡してきた。
「アキトから話を聴いた時は、まさかと思っていたんだが…。俺も今、君を見て実感したよ。ダンテ、君はゼノンの生まれ変わりなんだね?」
その問いに対して、俺は静かに頷いた。
「……俺の中のゼノンが、あんたにずっと会いたがっていた。そして、こう言っている気がする……」
胸に手を当て、深々と頭を下げる。
「ただいま戻りました。我が主、大魔神サタン」
俺の態度に明人と甲牙は怪訝な顔を浮かべたが、それをサタンは受け止めてくれた。
「では、俺もその言葉に応えよう。……よく戻ってきてくれた、我が古き同胞よ」
ゼノン……聞こえているか?
あんたの想いは今、あんたの主に伝わっているようだ。
「了さん、ダンテを通じて、今のあなたの意志をゼノンに伝える機会じゃないですか?」
明人が提案をすれば、サタンは「それもそうだな」と言って俺に顔を上げさせた。
「改めて、名乗らせてもらおう。今の俺は飛鳥了、この三者連合の理事を務めている。そして、俺たちの目的はただ1つ……悪魔と人間が共存することができる世界を築くことだ」
「大魔神サタンではなく……飛鳥了。わかった、俺もそう呼ぶことにしよう」
俺はゼノンではなく、ダンテだ。
その違いを意識するためにも、俺は人間の彼の名前を呼ぶことにした。
「悪魔と人間の共存と言ったが…。俺は、それに協力することができるのか?」
「俺たちの力は、世界に影響を与えるものだ。特異点……って呼ばれているらしいぜ。俺のマジンカイザーの力も、明人のデビルマン・ゼロの力もな」
「その特異点の力が、俺にもある……ということか」
自覚はない。
しかし、それが王の力と関係しているのであれば、使いこなせるようにならなければならない。
そうでなければ、俺はまた……。
「明人は選択者、甲牙くんは守護者の特異点の力を持っている。そして、君が持つ力は―――先導者だ」
先導者。
それが俺の力と関係している。
「俺は王になることを目標にしている。しかし、どのような王を志せば良いのかはまだわからない……。先導者……それが俺の目指すべき道なのか?」
不安な表情を浮かべる俺の肩に、了は手を置いた。
「ゆっくりと考えれば良い。すぐに答えを出す必要はない。悩むことも、生きていく上では大切なことだ。俺は君の志す道を見つけられるように、手助けするつもりだ」
薄く微笑む彼からは、とても温かい心を感じた。
そして、俺の両隣に立っている信頼できる2人を見る。
「明人と甲牙は、俺の命の恩人だ。2人があんたを信じるなら、俺もあんたを信じるよ」
「ありがとう、ダンテ」
俺と了は互いに手を取り、握手を交わした。
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飛鳥了に協力する意志を示したのは、それが本心だったからだ。
しかし、迷いはある。
本当に、悪魔と人間が共存することができるのだろうか。
あの時の雷沼からの冷たい目を思い出せば、それを実現するのは遠い未来のことのように感じた。
外を見ながら答えの出ない問いに頭を悩ませていると、後ろから声をかけられた。
「何してる?ダンテ」
振り向けば、そこにはラフな格好をしている沙織が立っていた。
合鍵と言う物を作り、彼女は俺の部屋にも出入りができるようになっている。
理由は、世話係だからだということらしい。
「……考え事をしていた。この街に着てから、俺は悩んでばかりだ」
「どういう悩みごと?話くらいだったら聴くわ」
彼女もベランダに出て、隣に立つ。
「悪魔のこと……人間のこと……そして、これからのこと。俺が王を志すには、知らないことが多すぎる」
「そうね。……私も、本当に戻ってから驚かされることが多かった。街はこんなに変わってたんだって気づいてね。……いい意味でも、悪い意味でも」
「沙織が居た時は、どうだったんだ?街の様子とか……いろいろと」
「悪魔の存在が知られてなかった時の話ってこと?」
「ああ。そうなる」
沙織は思い出すように空を見上げては苦い顔をする。
「ごめん。……思い出せない。思い出したくないの」
「えっ……。あぁ~、そうか。すまない。不謹慎なことを…聞いてしまった」
彼女は過去に辛い経験をしている。
聖域に集まった女たちは、そう言う者たちが多いと言っていた。
それなのに、過去のことを思い出せというのは酷な話だ。
気まずい空気が流れそうになると、その前に沙織は身を寄せてくる。
「最近はね、嫌な夢を見なくなってきたの。おかげで朝もスッキリ起きれるようになった。これも……ダンテのおかげ」
「俺の…?」
「そう。……あなたの側に居られるから、私は安心できるの」
そう言って、彼女は肩に頭を預けてくる。
「アイラの代わりを、俺は務められているだろうか?」
「アイラ様の代わりなんて、意識しなくていい。あなたは、あなたのままで良いのよ、ダンテ」
「そうか……。ありがとう、沙織」
俺は、俺のままで良い。
しかし、俺らしさとは何なのだろうか。
俺は、ダンテとは……何を成せる者なのだろうか。
見つけていきたい、俺自身の答えを。
自分が王として、何者になれるのかを。
自身の在り方を見つけ出すための戦い。
それがダンテの試練である。
そして、それは1人では辿りつくことができない。
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