DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
飛鳥了は今、対面している男に対して警戒心を抱いている。
場所は彼のマンションの最上階の部屋。
両手と両足を手錠で拘束させているが、目の前にいる男には気休め程度だろう。
「初めましてだな、鈴谷冬夜くん。いや、デビルマン・ニクスと呼ぶべきかな?」
褐色の肌をした青年は、フッと笑って了を見る。
それは抵抗心があるというよりは、ただ単に興味を抱いているだけの目だ。
「俺のような者とわざわざ対面して話してくれるとは光栄の至りですね、飛鳥了さん。いや、元デーモンの長だった、大魔神サタン様か」
「それは皮肉と受け取っておこうか。俺はね?君とは仲良くしていきたいと思っているんだ。アキトの他の、予想外に早く現れたデビルマン。興味深いからね」
了は顔の前で手を組み、観察するように冬夜を見る。
「君のその身体の精神は人間のものか?それとも、デーモンなのか?」
「……さぁ、どっちだと思います?」
冬夜がはぐらかすような聞き返せば、彼の後ろに立っている赤毛の女が髪を強く引っ張る。
「調子に乗るな。今の貴様などすぐに殺せることを忘れるな」
「止めろ、サイコジェニー。彼は重要な参考人だ」
サイコジェニー。
大魔神サタンの右腕のデーモンである。
人間の姿をしているときは、考古学者の顔を持つ了の助手でもある。
参考人という言葉に、冬夜は目を細める。
「参考人?まさか、拷問でもするつもりで?」
「そんなことはしない。しかし、質問には答えてもらいたいな」
「俺に答えられることなら、何でも答えましょう?」
了はサイコジェニーに目で合図を送り、冬夜がデビルマンになる時に使っていたベルトを持ってこさせ、それを受け取りじっと見る。
「これはデビルマンになるための重要な品物だ。誰にでも手に入れられるものではない。どこでこれを手に入れた?」
「……ロシアを旅していた時に、大雪の中を遭難したことがありましてね。その時に何かの声がしました。その声に引き付けられるように『どこか』に足を運んだら…俺はニクスという氷のデーモンの力を使う、デビルマン・ニクスになっていた」
「そうか、君の境遇はわかった。では、君とアキトの他に、デビルマンはあと何人存在するのかな?特に、敵となるデビルマンの人数が知りたい」
顔の前で手を組んで聞けば、冬夜も前のめりになって真剣な表情になる。
「デビルマンの話をする前に、もっと重要な話をさせてもらえませんかね?多分、あなたが一番知りたがっている情報を」
「重要な……話?それも、俺が知りたがっていることだと?」
一瞬目を細めて聞き返すと、冬夜は自身の額を右手の親指で指さす。
「気づいていると思いますけど、俺は別に内海明人と敵対する気は毛頭なかった。奴を襲ったのは、俺の意思ではない」
「しかし、結果的に君はアキトを襲撃し、デビルマン・ニクスとして戦った。戦った彼の話では、頭の中を鎖で締め付けられていたそうじゃないか」
「そう、俺の頭は『何かの力』により洗脳されていたんですよ。そして、俺を洗脳して下僕にした者の正体の手がかりを持っている」
「……手がかり?正体を知っているわけではないのか?」
「残念ながら」
冬夜は軽く頭を下げて顔を上げる。
そして、テーブルの上にあった紙とペンを取って抽象的な何かの絵を描き始めた。
それは白い翼を左右に広げており、その後ろに後光がさしている。
これは悪魔ではない。
「これは、一体……」
「今のあなたを支持している者以外のデーモンを操っているのは悪魔ではありません。この天使なんです。俺はこの天使に洗脳された」
「天使がデーモンを操るだと?俺のように堕天使にでもなったのか?」
「わかりません。でも、大きな力を持っていることは事実です。それも相手を従わせる能力を持っている」
「洗脳能力か……厄介だな」
多くのデーモンが天使の意のままに動く。
しかし、そういう能力があるのなら、そこは受け入れよう。
受け入れられない、理解できない事実は生まれてくるが。
「天使が、デーモンに人間を襲うように命令している。しかも、女性を狙って……か」
世界を創造することができる大魔神サタンの理解の範囲を超える出来事が起きている。
これが意味することは、今の状況が彼の領域を超えているということだ。
(一体、この世界で何が起ころうとしているのだ。今までとは違う、とてつもなく大きな何かが起ころうとしている気がする)