DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
翌朝、俺は森の中で1人で居る所を三者連合本部に拘束されて集落まで連行された。
すぐに拘束から解放してもらったが、その日の試練はすぐだった。
了さんが集落に足を運んでおり、とても険しい顔を浮かべていた。
着る物を渡されて腕を通し、了さんと向かい合う。
「アキト、昨日は何があった?」
「それを答えるために、聴きます。ガーラさんから、どこまで聞いたんですか?」
了さんはガーラさんの集落が襲撃され、それを俺が暴れて退けたことを伝えられたらしい。
その後でシレーヌと何があったのかは知られていない。
当たり前だ。
美佐樹に合わせられる顔もなく、1人で森の中を歩いていたんだから。
「俺は……デビルマン・シレーヌ、柊木ツバサと戦おうとしていた。だけど、俺の中の悪魔としての本能が、彼女を求めていた。あの時の感覚が……今でも、忘れられない‼」
ゼロドライバーを強く叩きつけるように、地面に捨てた。
「了さん、俺は…‼自分が本当に、内海明人なのかがわからない。アモンの生まれ変わりとして、俺の意識が獣の自分に飲まれた。俺と言う存在が、わからなくなったんだ‼」
情けない顔を浮かべながら了さんに迫れば、彼は目を細めて俺の頬を強く打った。
「んぐぁ‼」
あまりの強さに倒れてしまい、ガーラさんが俺の名前を呼んで駆け寄ろうとするが、それを手を前に出して静止させた。
膝を付いて立ち上がらない俺を見下ろし、了さんは呟いた。
「……先に美佐樹ちゃんを街に返して、本当に良かった。こんな見るに堪えない君を見るのは、俺たちだけで良い」
彼は胸倉を掴んで無理矢理立たせ、視線を合わせる。
「了さん……」
「何て情けない顔をしているんだ、アキト。確かに、君の魂には悪魔の……アモンの因子が刻まれていると言ったのは俺だ。しかし、その心は君自身のものだ」
了さんの言葉も、今の俺には届かない。
それをすぐに察したのだろう、彼は手を離して溜め息を吐く。
「……頭を冷やせ、自分を見失うな。君自身の根源を、思い出すんだ」
俺自身の根源…。
そんな物、今にも手から零れ落ちそうになっている。
<サタン様、今の明人にはあの場所に連れて行く必要があるのかもしれませんな>
ガーラさんが進言すれば、意思の疎通ができているのか了さんは少し考えるような素振りを見せる。
「あの泉を使うには、今の彼では危険すぎる。あれは心の強さを試され、それを乗り越えられるためのものだ」
『だったら、その心を強くすれば良いだけの話だろ?サタン』
その声が聞こえれば、上空から降りてきては俺の前に立つ紅の勇者。
「「アモン!?」」
その場に居たほとんどの者が警戒する中で、俺と了さん、ガーラさんだけが冷静だった。
2人は顔を合わせているにも関わらず、互いに敵意も向けずに言葉を交わす。
「おまえに任せても良いのか?アモン」
『それは、この腑抜け次第だ』
そう言って、アモンは俺の首根っこを掴んで上げる。
思わず「おい‼」と声を荒げてしまうが、それを勇者は意にも返さない。
『勘違いしてもらっては困るが、こいつの強さを試すのは俺ではない。もっと、相応しい相手が居る。そいつの元に、こいつを連れ出すだけの準備はしてやるつもりだがな。そいつも、明人と1度くらいは面と向かって顔を合わせておきたいはずだ』
アモンの提案に、了さんは迷うような反応はしなかった。
代わりに俺を見て問いかける。
「これは君の抱えている問題だ。だから、君が決めるんだ、明人」
アモンと了さん、2人の強者から決断を迫られる。
しかし、すぐには答えが出なかった。
沈黙が答えになってしまえば、アモンは俺を掴んだまま翼を広げてはためかせる。
「アモン‼」
『答えが出ないようだ。気晴らしに連れて行ってやるのも、優しさなんじゃないのか?』
アモンから気晴らしと言う言葉が出たが、それを文字通りに受け止める者はその場に居なかった。
「離せ、アモン‼何をする気だ!?」
『言っただろ、気晴らしだ。おまえと俺の気晴らしと言えば、方法は1つしかあるまい』
そう言って、アモンは下に居る了さんとガーラさんに「借りていく」と言って山まで飛んで行った。
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街に着いて、美佐樹はすぐにマンションに戻っては寝室のベッドに身体を預けた。
両手で手を被い、目を閉じれば昨日の光景がフラッシュバックする。
明人の姿をした獣が、デビルマン・シレーヌと互いを求め合う場面。
それが脳裏に焼き付いて離れない。
「はぁ……あたし、何してるんだろう」
本当は、あの場で2人の間に入って行為を止めるべきだったのかもしれない。
だけど、それができなかった。
一言でも、彼の名前を呼べば戻ってくれたかもしれない。
それができないほどに、心が絶望に染まってしまった。
「こういう気持ちだったのかな……明人も」
白藤に犯された自分を見て、彼はデビルマンの力を暴走させてしまった。
自分が彼以外の誰かに犯されることよりも、愛する人が自分以外の女と愛し合う場面を見た方がずっと苦しい。
その気持ちが、痛いほど感じることができてしまった。
胸が痛いほどに苦しくなる。
もう、全てがどうでも良いと思うほどに。
アモンは、あれを明人とは別人だと思うように言った。
だけど、そんな簡単に割り切れるはずも無かった。
白藤の言葉が、胸に突き刺さる。
運命。
本当にそんなもので、人の気持ちが簡単に変わるのだろうか。
そうだとしたら、アモンとシレーヌの因果が2人を引き寄せているのだとしたら、もしかしたら……。
手を差し伸べた白藤の姿を思い出してしまう。
もしかしたら、自分も白藤に惹かれてしまっているのかもしれない。
それが、運命なのだとしたら……。
『……因果に囚われるな』
頭に声が流れ、跳び起きて周りを見て声の主を探す。
すると、薄っすらと黒い人影が見えた。
「誰!?」
その存在を問いかけるが、彼女の魂に刻まれた記憶は彼の存在を知っていた。
顔は影になって見えないが、黒い服に身を包んだ青年だ。
彼は腕を組み、壁に背中を預けて美佐樹を見つめている。
『君が選んだ選択は、因果による導きではなかった。君は既に、因果に抗う力を持っている。そして、運命はその力を衰退させようとしている。それを受け入れるかどうかは、君の選択次第だ』
美佐樹はその言葉を聞きながら、少しずつ、恐る恐るではあるが彼に近づこうとしている。
「あたしは、あなたのことを……なんとなくだけど、知っている気がする」
彼女の目に、影の青年と明人が重なって見える。
「あなたは、もしかして…‼」
確信を得た一言を言おうとした瞬間、成年は姿を消した。
『因果はただ、過去の世界をなぞっているにすぎない。そして、この世界の運命は……既に失われたものの集合体。それを修復しようとする者の言葉に惑わされるな。それは死人の言い訳だ。決断するのは、君たち今を生きる者たちであり、過去にすがる者たちではないのだ』
彼の意味深な言葉は、美佐樹の胸中に深く刻まれた。
「運命が、失われたものの集合体…?」
彼女の中でその言葉が引っ掛かった。
そして、頭に電気が走ったような衝撃が走る。
「っ‼んぁぁああああああああぁぁ‼」
ジンジンと響くように、頭痛が強くなる。
そして、頭にたくさんの映像が流れ込んでくる。
樹形図のように枝分かれを繰り返していく中で、その全てが1つの結末に導かれようとしている。
それは黙示録の未来。
血で血を洗う、荒廃した世界。
その先にあるのは、世界の終焉。
絶対なる存在の手の平の上で繰り広げる悲劇。
その中で抗い続ける、悪魔の鎧を装着した戦士。
その後ろ姿が映ったところで流れが止まり、机の上に手を置いて身体を支える美佐樹。
「今のは……」
額から汗が床に流れ落ち、全身が汗だくになっているのがわかる。
今の映像は、抑制者の特異点の力で見た未来の危機なのだろうか。
しかし、それは彼女1人の危機だけでは収まらない。
これは確定した未来なのか、それとも変えることができるものなのか。
「失われた運命をなぞろうとしている者……。それに、抗うのは……生きている者の決断」
その言葉を忘れてはいけないと思い、美佐樹は小さく復唱した。
アモンの導き、そして青年の正体。
抗う者たちに指し示す答えは、いかに。
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