DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
自分の中にある獣の部分。
アモンの魂の欠片。
それと戦いを初めて、どれほどの時間が経っただろうか。
翼を広げ、俺は何度も巨大な獣に立ち向かう。
しかし、奴の力は圧倒的だった。
今まで戦った、誰よりも強い。
無数の羽根を回避し、攻撃を仕掛けようとしても羽根の盾で防がれる。
羽根の使い方だけでなく、巨大な身体の割に動きが素早い。
単純な力勝負に持ち込まれれば、俺が負けるのは確実だ。
捕まるわけにはいかないが、今は紙一重で回避している状態だ。
自分で使っていた力だが、その使い方は獣の方が一枚上手かもしれない。
俺だけの力では、全く歯が立たない。
ジャックナイフの刃を一瞥し、再び獣に目を向ける。
「衝動の権化……。本来なら、俺の中にはこれだけの力が眠っていたと言う事だよな。そして、これがそれを解放する鍵なら…」
獣は苦しんでいるように暴れ回っており、横に跳んで回避して半回転しながら立ち上がる。
「おまえは何を……そんなに苦しんでいる!?」
獣に向かって問いかければ、憎しみのこもった目で俺を睨みつける。
『憎いぃ…‼おまえが、憎いのだぁあああ‼』
巨大な手を伸ばし、俺を掴もうとする。
『俺は、おまえよりも強い‼おまえは、俺よりも弱ぁあああい‼』
獣の手を睨みつけ、ジャックナイフで切り付ける。
『ぐるぁああああああああ‼‼』
手を押さえて苦しみだし、身もだえる獣。
切り付けた部分から紫色の光が漏れ、ジャックナイフに吸収されていく。
「……そう言うことか」
ジャックナイフを構え直し、俺は獣に向かって突撃をかける。
「おまえも、俺との戦いを望んでいたはずだ‼これは、俺たちが望んだ戦いだ‼全力で来い、おまえの全てを解放しろ‼」
俺の中にあった確かな怒り、悲しみ、憎しみ。
アモンの欠片から感じる確かな悪意。
それを認めなければ、悪意の力を使いこなせるはずがない‼
「うぉおおおおおお‼‼」
『ぐるぁあああああ‼‼』
獣は羽根を飛ばし、それを全てジャックナイフで切り落とす。
そして、斬った羽根はジャックナイフに吸い込まれていく。
獣と距離を詰めれば、ジャックナイフをしまって両手で拳を握って殴ろうとする。
しかし、奴も同じ動きをし、両方の拳が激突し、互いの額が頭突きで衝突する。
「俺はおまえだ……だけど、おまえの力に飲まれるつもりはない‼」
『ほざけ、弱者が‼おまえを潰して身体を奪い、俺は俺の思うままに戦うだけだ‼』
拳と額を離し、同時にラッシュ攻撃を仕掛ける。
「ゼアゼアゼアゼアゼアゼアゼアゼアゼアゼアゼアゼアゼアゼアゼアァ‼」
『ゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラァ‼』
互いに相手の攻撃を避けない。
相手の拳を受け、自分の拳を叩きこむ。
「ぶぐっ‼あぐっ‼がはっ‼げふっ‼あぐぁ‼」
痛い。
『ばぐっ‼がばっ‼けぶっ‼ぐぶっ‼がぁぐっ‼』
悲しい。
攻撃を受ける度に激痛が走るのは確かだ。
しかし、それだけじゃない。
俺はこいつが、もう1人の自分だと認めている。
だからこそ、自分で自分を傷つけるのが辛いんだ。
「おまえも俺……なんだよな」
獣の怒りのこもった一撃を胴体に受けて貫通し、奴はニヒっと笑う。
『これで……終わりだぁ‼』
俺は無言でそれを掴んで固定し、獣を自身に向かって引き寄せた。
『んなにぃ!?』
奴は拳を警戒して防御の構えを取ろうとするが、それは無意味と化した。
俺は、獣の背中に手を回して抱き止めたんだ。
「……辛かったよな。ずっと、おまえは俺の悪意を受け止めてくれていたんだ」
『んぐっ!?』
受容する言葉を投げかければ、獣から力が抜けていく。
「俺は、自分の中にある悪意に……闇に気づけなかった。それを受け入れてくれていたのは、おまえだ。おまえも俺だというのに、おまえを認めることができなかった俺を……許さなくても良い」
『や、やめろっ…‼言うな‼俺と……戦えぇ‼』
「戦う必要なんてない。俺はおまえを認めている」
思えば、あの時にこいつの感情を理解すれば良かっただけの話だったんだ。
美佐樹を滅茶苦茶に犯した時に、あいつは言った。
俺に欲望のままに行動するように促した。
力を求める俺に、力を手に入れるための道筋を作ろうとしていたんだ。
そして、こいつもまた……。
「アモンとしての記憶を持ちながら、おまえも……美佐樹に惹かれていたんだろ?しかし、シレーヌとの共鳴がおまえを過去の人格に戻そうとした。……辛かったよな、おまえの苦しみを理解できなかった」
『……そうだ。俺は…アモンの転生者としての、おまえだ……』
先程までの怒りのこもった声ではなく、小さく呟くように言う獣…いや、もう1人の俺。
『しかし、俺の心は……シレーヌとの共鳴で、前世界の感情を取り戻してしまった。しかし、俺はアモンではない。本当に愛しているのは……美佐樹なのだぁ‼』
獣の姿が、段々と人間のものに変わっていく。
黒い影の人間態となる。
『俺も同じだ……おまえと同じく、美佐樹を愛しているのだ‼しかし、アモンの運命が……前世界の感情を呼び起こす‼俺は……一体、どうすれば良いのだ!?』
涙を流しながら苦しむ、俺の影。
「おまえの苦しみも、悲しみも、怒りも……全て、俺が受け入れる。おまえの悪意は、俺の悪意」
『そして、俺の強さは……おまえの強さ』
俺は影を抱きしめたままジャックナイフを取り、もう1人の自分に突き立てる。
「俺たちの欲望は1つだ。美佐樹……大切な者を守りたい」
『そのために、力が欲しい』
影の言葉に頷き、背中からジャックナイフを突き刺した。
『「俺たちは、1つだ‼」』
影の身体が光り出し、ジャックナイフにそのエネルギーが吸収されていく。
その光は紫から緑色に変化していき、俺の身体にも流れ込む。
もう1人の俺が消えて変身を解除し、ジャックナイフを見つめる。
「これで俺は……もう1人の自分の力を、ヴァイスゼロの力を使いこなせるようになったのか?」
「それは、これからのおまえの心の持ち方次第だな」
明が姿を現し、称賛の拍手を送る。
「よくやった、明人。おまえが今得た力は、ヴァイスゼロの力だけではない」
ジャックナイフの刃が緑色に輝き、明が手をかざせばそれが鍵の形になった。
「これは……」
「言ったはずだ。これは、闇を解放する鍵。これを使う資格は、俺の転生者であるおまえにある」
自身の転生者だという明の言葉が、俺の表情を曇らせた。
「俺は……アモンの転生者でもあり、あんたの転生者でもある。だけど……」
曇った表情から目に光を取り戻し、決意を眼を通して伝える。
「俺は、おまえとは違うデビルマンだ。あんたやアモンの転生者かどうかなんて関係ない。大切な者を守るために戦い、未来を切り開いて見せる。それが内海明人、デビルマン・ゼロとしての覚悟だ」
その言葉を待っていたというように、明は笑みを浮かべて俺に手を差しだす。
「おまえのその決意を聴きたかった。それでこそ、真に『デビルマン』の意志を受け継ぐ者だ。内海明人……いつか、おまえに言った言葉を、もう1度言わせてもらう」
明は強い眼光で目を合わせてくる。
「今のおまえに、過去の俺の意志を託す。この世界の未来を、運命の支配者から解放してくれ」
「……わかった、不動明。前世の俺の意志、確かに受け取った」
自身の胸を叩いて言い、明は手を離して背中を向けた。
「これで思い残すことはない。俺にできることは、もう無いだろう。……大切な者を見つけたのなら、迷わずに欲望に身を任せろ。そして、衝動に飲み込まれるな、飼いならせ。それが、悪魔の力を使うと言う事だ」
姿を消そうとする明に、俺は「待ってくれ!」と声をかける。
「もう……俺たちは、会えないのか?」
「本来ならば、俺とおまえが会うことはあり得ないことだ。今、目の前に居ることも奇跡だと思った方が良い。しかし、おまえが運命を切り開いた先にある世界で、創造主の脅威が迫ってる時があるとすれば…」
明は1度言葉を区切り、横目を向けてフッと笑う。
「また、会える日が来るかもしれないな」
その言葉を最後に、明の姿は粒子になって消えた。
「明‼」
手を伸ばして粒子を掴むが、手を開けばすぐに消えた。
「……ありがとう、不動明。俺はあんたの分まで、戦い抜くよ。悪魔としてではなく、デビルマンとして」
決意を新たに、俺の意識も現実に戻って行った。
自身を受け入れることで、パワーアップを果たした明人。
形状を変えたジャックナイフ。
前世の不動明の意志を受け継ぎ、彼の心もまた成長する。
感想、評価、お気に入り登録、いつもありがとうございます‼
デビルマンリボーンの外伝で読みたい話
-
白藤隆一の過去
-
魔神カイザの過去
-
別次元での戦い(デビルマンサーガの世界)