DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
意識を取り戻して目を覚ませば、そこは巨大な洞窟の中だった。
地面で寝ていたために肌寒さを覚え、起き上がれば後ろから「起きたか」と聞き覚えのある紅の勇者の声が聞こえた。
「アモン……。俺は、いつまで寝ていたんだ?」
『半日ぐらいだな。その顔つきからして、自分を取り戻したようだな。新しい力も手に入れたと見える』
俺の右手を指させば、無意識に手に何かを握っていたことに気づく。
手を開き確認すると、そこにあったのは精神世界で不動明からもらった鍵だ。
「鍵……あれは、夢じゃなかったのか」
『不動明の意志と会うことはできたのだろ?どうだった、前世の自分に会った気分は』
「どうして、あんたがそれを知っている!?」
アモンに怪訝な目を向ければ、彼はフンっと笑う。
『お膳立てをしたのは俺だからだ。今はそんな形状をしているが、それは元はジャックナイフの姿をしていた。そして、それには不動明の残留思念が宿っていたのさ』
「……そう言う事だったのか」
自分の傍らにあったゼロドライバーのヴァイスロックの鍵穴と合わさる使用になっており、展開しようとすれば回らない。
「何だ、これ…?」
『今は開けるべき時ではない。おまえの覚悟が、まだその領域に達していないのかもしれんな』
「俺はもう悪意を受け入れた。それだけじゃダメだってことかよ?」
『……さぁな。その答えは、自分で探せ。俺はおまえではない』
当たり前のことを言っているにも関わらず、アモンの言葉に引っ掛かりを覚える。
「アモン……あんた、一体何者なんだ?」
アモンは俺に身体を向けず、腕を組んで仁王立ちをして黙る。
答える気は無いと言う事だろう。
しかし、この機会を逃すつもりはない。
「俺の中のアモンの欠片は、あんたとは別の姿をしていた。獣の姿だ。だけど、あんたのその悪魔の鎧は違う‼あんたは……何なんだ?」
アモンを睨みつけながら問えば、勇者は肩を震わせて笑って俺に向かって覇気を放った。
『クックック、言ったはずだぞ、明人。俺はおまえの、始まりの敵だ』
赤い残像が伸び、アモンの手が俺の首を掴んで絞めつける。
「っ!?……何を、する…‼アモン…‼」
『ヴァイスロックの力を手に入れても、この程度‼貴様の力は、こんなものではないだろう!?』
荒く放り投げられ、空中で回転しながら着地する。
『悪意の力を手に入れただけでは、白藤隆一の言う運命を覆すことはできん。神の定めた運命を超えるためには、おまえの力はまだ足りんのだ‼』
アモンは俺に変身する暇を与えずに攻撃を仕掛け、洞窟の外に追い出される。
もう空は黒く染まり、黒から月が顔をのぞかせている。
「目覚めてすぐにこれか!?やっぱり、あんたも闘争本能に飲まれた悪魔だぜ‼」
『何を今更なことを‼俺こそが悪魔、勇者アモンだ‼おまえと俺は、戦う宿命にある‼そのことを忘れるな、デビルマン・ゼロ‼』
ゼロドライバーを腰に巻きながら臨戦態勢に入ろうとしたが、奴の気迫に圧されてしまう。
『今の貴様では、運命の力を手にした白藤隆一には勝てん‼守るために戦うんだろう!?だったら、支配者の運命くらい切り裂いて見せろ‼』
叫びながら腹部を蹴り上げて宙に浮かせ、拳を顔面にめり込ませてくる。
「ぶぐふぁあああああ‼」
あまりの威力に大きく後ろに吹っ飛び、そのまま地面に落下していく。
『その資格を得るかどうかは、おまえの覚悟次第だ。明人』
最後にその声が直接頭に響き、俺の身体は地面ではなく先にある湖にザブーンッと落ちては沈んでいく。
鼻や口から息が漏れながら、身体から力が抜けていく。
ゼロドライバーに手を回して変身しようとするが、意識が…‼
暗い湖の底に落ちていく中で、俺は身体が軽くなるのを感じた。
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気づけば、俺は全裸の状態で白い空間に立っていた。
これは……マテリアに意識が吸い込まれた時と同じだ。
それなら、俺は今、精神体と言う事なのか。
景色はすぐに白い世界から変わり、歪んだ風景に変わる。
荒廃した世界の中で、異形の建造物が存在している。
今まで見てきた、どの幻とも違う。
「ここは……俺の精神世界では、無いのか?」
自分の力に対する折り合いは、ついさっき付けたばかりだ。
これもアモンの狙い通りなのか?
しかし、次は一体何を……。
これも試練だと言うのか。
足を進めれば、歪な形をした地面から巨大な目が飛び出しては急速に襲いかかる。
それはすぐに俺に追いついて上下に避けて口を開いて飲み込もうとしてくる。
「何なんだ、これは!?……畜生‼」
その目からは逃げることしかできず、変身しようにもゼロドライバーは手元には来ない。
無我夢中で走り続ければ、頭の中に声が響く。
『逃げることしかできないのか?』
『戦う力が無ければ、おまえは腰抜けか?』
それはいつか聞いた、2つの声だ。
ゼロの力を手に入れた時に、俺の覚悟を試した声。
『逃げるのであれば、待っているのは絶望の未来のみ』
『最も重要なことは、抗おうとする意志』
2つの声は重なり、俺を試す。
『『運命を切り裂く覚悟を示せ』』
その声に応えなければならないと、魂が直感した。
逃げる足を止め、敵に向かって身体を向ける。
変身はできない。
だけど、戦う意志はある。
「うるぉおおおおおおお‼」
拳を握り、迫る巨大な目に向かって振るう。
その瞬間、目は光出し、俺の身体を包み込んだ。
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空間が転移したのか、場所が変わる。
「俺の……家?」
ベッドで寝ていたのか、身体を起こせば辺りを見て自分の部屋だとわかる。
加藤家でも、マンションでもない。
内海の……俺の家族の家だ。
「明人ー、そろそろ起きなさーい」
部屋の外から母さんの声が聞こえ、自室を出て探す。
「母さん!どこなんだ……母さん‼」
家の中を探せど、母さんの姿は見えない。
「どうした、明人。早くしないと、間に合わないぞー?」
父さんの声も聞こえる。
しかし、姿は見えない。
「父さん!母さんも!どこに居るんだよ!?姿を……顔を見せてくれよ!?」
もう2度と聞こえないと思っていた声が聞こえる。
だけど、会いたいのに会うことができない。
「ダメよ、明人。お母さんたちは、もうあなたに会うことはできない」
「父さんたちはもう、おまえの居る未来に居ることはできない」
頭の中に、直接声が響いてくる。
これは、一体……。
「どうして…‼俺は、ただ…‼2人に……会いたい…‼会って、謝りたいんだ‼」
その場に膝を付き、両手を床について項垂れる。
「俺のせいで……母さんたちを、巻き込んでしまった…‼俺のせいで……母さんたちが死んだ‼俺は…‼どうすれば…‼」
許されたいと思っていた自分が表に出る。
マテリアの中で、母さんたちのことを割り切れていたと思っていた。
だけど、それとこれとは話は別だった。
2人にもう1度会えたなら、俺は……謝りたかったんだ。
「許してくれなんて言えない‼でも…‼……どうしたら、俺は……2人の命を奪った罪を…償うことができるんだ…!?」
俯き、涙が零れる。
ずっと、秘めていた想いだった。
それを吐き出した時、両肩に温かい手を置かれた。
「しっかりしろ、明人」
「あなたは今、こんな所で足を止めている場合じゃない」
目の前にある玄関の扉が光り出す。
左右の2人の顔を見ようとすれば、「ダメだ」と止められる。
「過去を振り返るな」
「あなたは前に進むのよ。私たちの分まで」
そして、もっと多くの声が聞こえてくる。
背中に誰かの手が触れる。
「未来は、決まっていない」
ドス六の声が聞こえてくる。
「決まっている運命なんて、覆せば良い」
メリケン錠の声も。
「今なら、まだ間に合う」
「俺たちの分も」
「私たちの分も」
政や、今まで俺が関わっては死んでいった人たちの声が聞こえ、背中を押してくれる。
「「「「「生きて、未来を切り開け‼‼‼」」」」」
過去に失った者たちからの力強い言葉が、俺の身体を震わせる。
立ち上がり、扉に手を伸ばしながら歩みを進める。
悪意を受け入れるだけじゃ、立ち向かえない。
過去に囚われたままでは、運命を変えることはできない。
この声は、俺の願望なのかもしれない。
それでも、前に進むことを決めた。
人々の声を背に、未来に足を運ぶ。
「父さん、母さん……みんな、ごめん。……俺は、行くよ。未来に‼」
未来に進むための力は今、失った者たちからもらった。
その意志を受け継ぎ、未来へ。
扉の前で足を止め、強く押し開ける。
「うぉおおおおおおおおおおおおお‼‼‼」
扉をこじ開けた先に待っていたのは――――運命に抗うための、新しい力だった。
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精神体の状態から身体に魂が戻り、湖から身体が浮上して地上に這い上がる。
「ぶふぁあ‼……はぁ…はぁ……、運命に抗うための力…‼それが、この鍵だったってことか」
手に持っていたジャックナイフが変化した鍵を凝視し、強く握りしめる。
「みんなの意志……確かに受け取った…‼」
地面の上に大の字になって倒れれば、試練に挑んだ反動か疲れに襲われて眠りそうになる。
しかし、その前にスマホの着信が鳴っては画面に美佐樹の名前が映ってすぐに出る。
「美佐樹!?あの、昨日は…その……」
上手いように言葉が出てこない。
何を言っても、言い訳になる気しかしない。
言葉が詰まる俺に、美佐樹は溜め息をついて声をかける。
『何も言わなくても良いよ。今、どこに居るの?』
「まだ……森だ。明日には帰る。その時に……大事な話がある」
俺が話そうとしていることがわかっているかのように、美佐樹は『わかった』と言ってくれた。
『あたしも、明人に話さなきゃいけないことがあったんだけど、それは会った時に話すわ。それで良い?』
「ああ」
互いにその後ですぐに電話を切る気にはなれず、沈黙を貫いてしまう。
その中で、俺は意を決してもう1度言った。
「必ず帰るよ、美佐樹の元に」
『うん……待ってるから』
話すことは何もないわけじゃない。
だけど、それは電話で話すようなことじゃない。
面と向かって話さないと、意味がない。
「じゃあ、お休み」
本当はもっと話をしたいと思うが、電話を切ることにした。
これ以上は空気が重たいからな。
電話を切り、空を見上げれば月を見て小さく息を吐く。
そして、鍵を月にかざして見る。
「運命を切り裂くための力……か」
運命を操る白藤の力。
それに翻弄されていたのは事実だ。
だけど、今度はそうはいかない。
ゼロドライバーを腰に巻き、ヴァイスロックの鍵穴に鍵を差し込む。
そして、鍵を回転させれば、紫と緑のオーラが俺の身体を包んだ。
明人が手にした、ヴァイスロックとは別の大きな力とは一体!?
そして、白藤がこのまま引き下がるはずがない。
運命を巡る波乱は、後半戦へ‼
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