DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
精神世界での接触から戻り、地獄では王の間で白藤が不機嫌を露わにしていた。
頭を押さえ、全身から汗が噴き出している。
自身の予想を超えた答えが導き出された。
神の力を得た自分の想定を超えるものだ。
それを安易に受け入れられるほど、白藤隆一は素直な性格をしていなかった。
「ありえない…。運命が、俺の予期しない方に進もうとしている。これも特異点の力だと言うのか…‼」
自分の隣に置いてある神のシナリオを手に取り、ページを開けば手をかざす。
そして、その場に複数の映像が樹形図のようにして浮き出てくる。
それはこれから起きることを記した、神の定めた運命。
基準となっているのは、その本を手にしている白藤自身だ。
「このままでは、俺の計画に支障が出る。加藤美佐樹を手に入れるためには、やはり、明人を……完全なる悪魔に落とすしかないな」
それもまた、彼の計画の一部であった。
そのためのヴァイスロックであり、シレーヌとの共鳴だった。
全ては、彼の野望を成し遂げるための布石。
「あなたの想い通りに、事は進むかしら?」
王の間に足を踏み入れ、ツバサが姿を現す。
その顔は満足げな笑みを浮かべており、苦悩の表情をしている白藤とは対照的だ。
「ツバサか……。おまえ、明人の中のアモンを呼び覚ますのはどうなった?奴はまだ、人間としての意識を保ったままだぞ?」
「急かすな。シレーヌとアモンの共鳴は確かにあった。明人が完全に悪魔として堕ちるのも時間の問題。そして、彼が私のものになれば……おまえの願いも叶えられる」
それはツバサの元に明人が、白藤の元に美佐樹が手に入ることを意味している。
「その本の力を使えば、おまえと私の思い通りに事を運ぶことができるだろう?」
神のシナリオを指さし、提案してくる。
それに対し、白藤は彼女に目を細める。
「当たり前だ。だからこそ、明日もう1度仕掛ける。あの2人の繋がりを断つために……もう1度、内海明人としての心を砕く」
「そうか。それはいい考えなのかもしれないな」
もう1度、明人の力を暴走させるつもりの白藤と、それに賛同するツバサ。
彼は映像を操作し、街外れの廃墟の教会に焦点を当てる。
「愛、絆、繋がり……そんなものは、儚くも崩れていく。運命という絶対の力の前ではな」
悲劇の舞台を見ながら、白藤の頭では確かなイメージが固まった。
今度こそ完全に悪魔として堕ちた明人を見て、美佐樹が自分を求める姿が。
全ては、失われた運命を取り戻すため。
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『反撃の時だ。運命を超える時が来たぞ、了』
どこからか声が聞こえ、了は目を覚まして起き上がる。
その一言が衝撃的だった。
周りを見ても、隣で寝ているジュンしか見当たらない。
「今の声は……明、だったのか?」
ベッドから立ち上がり、カーテンを開ければ朝日が差し込んでくる。
「反撃の時……。一体、俺に何を伝えようとしていたんだ、友よ」
今は亡き親友に問いかけるが、その声に応える者は居ない。
2度寝する気にもなれず、外出用の服に着替えては外に出る。
少し肌寒さを感じたが、コートの両ポケットに手を入れて歩きながら、考えに浸る。
結局、あの後で明人とアモンが戻ってくることは無かった。
ジュンが美佐樹の側に居て、彼女は白藤の中の何かを掴んだことは聴いたが、それも詳しくはわからなかった。
白藤が動き出した以上、このまま静かに暗躍しているとは考えにくい。
神のシナリオを手にしている今、何よりも強大な敵だと思う。
そのシナリオに立ち向かうことができる可能性があるとすれば、特異点の力。
「白藤に対抗できる者は……やはり、明人か」
白藤と明人の関係からして、あの2人は衝突することが宿命のようになっている。
彼を止められるのは、明人が一番最初に頭に浮かんだ。
「同じ魂から生まれた、2人の戦士。真に不動明の転生者として選ばれるのはどちらなのか……。いや、そんなことは、どうでも良いのかもしれないな」
今の自分の言葉を自嘲気味に否定し、朝日に視線を向けて光に照らされ、その背後に伸びる影を交互に見る。
「光と闇……そんなものは関係ない。大切なものは、自分を持っている者の覚悟だ」
小さくそう呟いては、ポケットからスマホを取り出して今までの悪魔の被害状況を確認する。
「暴走するデビルマン事件も、白藤が関係しているのかもしれない。だとすれば、辻褄は合うが……妙に引っ掛かりを覚える」
不完全なデビルマンの暴走事件。
新たなる救世主の誕生。
白藤たちデビルマン軍団の動向。
解決しなければならない問題は山積みであり、大魔神サタンの力を持っても易々とは糸口は見えてこない。
「この世界は今、どこに向かおうとしているのだろうな……」
不意にそんなことを呟けば、頭に声が響く。
『世界の命運を決めるのは、今を生きている者たちの意志です。大魔神サタンよ』
聞いたことがない女の声だった。
しかし、敵意は感じない。
「誰だ!?どこに居る!?」
周りを見渡せど、その姿は見えない。
声はもう1度、了に語り掛ける。
『この世界は今、3つの力を求めています。世界を救う者、世界を導く者、そして……定められた世界の運命を破壊する者。今、運命を変える力が目を覚まそうとしているのです』
「それは……明人!?」
思い浮かぶ名前を口に出せば、声は答える。
『運命の選択者は今日、悪しき魂を持つ者に抗うための試練を受けます。その試練を乗り越えることができなければ、選択者は闇に落ちることになるでしょう』
「明人の試練……。何故、おまえはそれを知っている!?おまえは一体、何者だ!?」
声の主に問いかければ、彼女は少しの沈黙の後に語る。
『私は、世界の声を代弁する者。そして、もはや実体を持たぬ者。私ができるのは、あなたたちに語り掛けることのみ』
女の声は最後に、了に告げる。
『覚えておいてください、サタン。あなたもまた、運命に抗うために必要な存在。世界の均衡を保つために、全ての生きとし生ける者たちの灯なのです』
その言葉を最後に、声は聞こえなくなってしまった。
「灯……俺が?」
了は自身の存在意義に対し、微かな疑問を抱きながらも、不思議とその声に対しては疑念を抱かなかった。
「世界の声の代弁者……か」
その存在に対して疑問は残りながらも、了は頭を切り替えて歩を進めた。
今向き合うべき世界の課題を、解決するために。
焦りを見せる白藤隆一は、ツバサと組んで再度仕掛ける。
了の頭に語り掛けた、世界の代弁者の正体とは……。
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