DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
了さんの部屋にて、俺は重苦しい雰囲気を感じていた。
目の前に居る2人は白いソファーに対面するように座り、ずっと黙り合っている。
了さんと不動ジュン。
お互いに敵対しているようには見えないが、この沈黙は何なんだ?
了さんは溜め息をつくと、ソファーの後ろに両腕を回してジュンさんを顎を引いてみる。
「なるほど。この世界の明の穴埋めは、アキトだけでなく君もそうだったということか?」
「それは違うと思うわ。あくまで、あの人の転生者は彼よ。私は……あえて言うとすれば、誰かが予測できなかったイレギュラーの1つなのかもしれないわ。それほどまでに、不動明という存在は大きかった。あくまでも、この世界での『不動』は私のようね」
この世界での……不動?
確かに、不動ジュンは不動明と同じ苗字だ。
それとイレギュラーと、何が関係しているのか。
それに、2人の会話から初対面ではないのがわかる。
この不動ジュンという女は、一体何者なんだ。
2人の話は続く。
「情報を交換しよう、ジュン。今の世界の状況を、君はどこまで把握している?」
「この世界のことは、正直まだよくわかっていないわ。それでも、あなたたちに提供できる重要な情報を持っている」
ジュンは少し間を置き、真剣な表情で事実を伝えた。
「地獄からの脅威が近づいてきているわ。あなたと同等の強大な力を持った者が、この世界に降臨しようとしている」
了さんは目を細め、腕を組んで苦い表情をする。
「地獄からの脅威……か。そして、天使によるデーモンへの洗脳……。今までにない問題が、2つ同時に起きるとはな」
「あなたのサタンの力で対処はできないの?」
「生憎と、今の俺……いや、私では不可能だ」
了さんは目を閉じて念じるように意識を集中させているが、何も起こらない。
「私は今、サタンとしての記憶はあるが能力は使えない。変身することも難しい状況だ」
「それは彼に……転生前の明さんに力を分け与えたことが原因ということかしら?」
不動ジュンは俺の方を一瞬目を向けてから、了さんを見る。
「……私はあの時の自分の判断を後悔していない。今は明人をサポートすることで精一杯だが、いずれは戦いに参戦する。それまではジュン、君に明人を頼みたい」
「それは、私に彼を守れと言っているの?」
了さんは静かに頷く。
それに対して、俺は2人の会話に割って入るように「待てよ」と声を発する。
「俺を……守る?了さん、俺はデビルマンなんだ。俺を守る必要なんてないぜ。そんなのは必要ない。守るのなら、俺じゃなくて美佐紀や孝太郎を――!!」
言葉の途中で、俺はジュンに頬を打たれた。
「自分のことを守れない者が、大切な人を守れるなんて思わないで。不動明の転生者、内海明人、あなたはこの世界で失ってはならない存在なのよ。それを自覚して」
「……何だよ、それ。わけがわかんねぇんだよ!!俺は自分が普通じゃないことは自覚してる。そして、その上で俺はデビルマンになった!!だけど……転生者がどうとか、特異点がナンだとか、そんなことを言われたところで……何も知らない、わからない俺に受け入れられるわけがねぇだろうが!!」
俺は言いたいことだけを言って、2人の「待てっ!!」と静止する声を無視し、窓を押し開けて身を投げ出す。
ただ、その場に居たくないという気持ちだけで。
そして、ベルトに手をかけて変身して黒い翼を広げ、空をかける。
ジュンはそれを見て急いで追おうとするが、了さんに止められる。
「今は、彼の心の平穏を保つことが重要だ。何、明人は冷静になれば戻ってくるさ。……俺たちは今、彼という存在に希望を押し付けている。しかし、その彼の思いを受け入れることができるのは、俺たちじゃない」
「……それは、あなたが人間じゃなくて魔神サタンだから?」
「そうだな。そして、君がサタンの女の部分だったからだ。俺たちは悪魔のように本能のままに動くことはないが、苦しんでいる人の心に寄り添うこともできないのだから」
そう言う了さんの目は、後悔と悲しみが入り交じっているようだった。
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俺は何だ?
デビルマン?
不動明の転生者?
この世界では本来存在しない特異点?
わからない。
空を飛びながら、俺は自我が崩壊しそうになっている。
「俺は誰だ…!?何のために生まれて来たんだ!?」
自分の存在意義がわからなくなりかけていると、誰も居ない樹海の奥入り、地上に降りて変身を解除する。
今の精神状態で美佐紀の元に帰ったとしても、八つ当たりをしそうになるだけだ。
八つ当たりで、何度も彼女を犯し続けるだろう。
1人になりたい。その思いで樹海に入ったんだ。
宛もなく樹海の最奥まで進んでいくと、何かの気配を感じる。
複数か…わかる、これはデーモンだ。
調度良い、ストレス解消に奴らを狩るか。
再度ベルトに手をかけながら、周りを見て声をあげる。
「居るんだろ、デーモンども。俺はデビルマンだ!!戦いたい命知らずから、俺の前に姿を現せ!!」
俺の声に反応するように、森の草木が揺れる音が聞こえてくる。
そして、茂みから4、5体の怪物が現れる。
羊の体に2つの蛇の形をした尾を持つデーモンや、チーターのような見た目をした女のデーモンなどだ。
しかし、様子がおかしい。
奴らは身体を震わせながら怯(おび)えていて、5人で固まってお互いを守ろうとしている。
「おまえら…一体……」
動揺している隙に、上からもう1体降りてきては俺の方に身体を向ける。
そのデーモンはフクロウの頭をしており、両肩からドリル上の甲殻が生えている。
「あなたは誰だ……この子たちを傷つけるつもりならば、息の根を止めます」
フクロウのデーモンから殺意を感じ、俺も臨戦態勢に入り、ベルトのマークに手をかける。
「散々人間を殺してきたデーモンが……同族意識か?ふざけんなよ!!おまえらは全員……俺が倒す!!デビルっ!!」
デビルマンになってデーモンと向かい合う。
そして、拳を握って接近した。