※この作品はR-18です。

DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~   作:カナト

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修正者の執行

 兜博士を失った光子力研究所の権利関係については、結局保留になっている。

 飛鳥代表が雷沼にコンタクトを取ろうとしているが、繋がらないらしい。

 暴走デビルマン事件についての真偽を問いただそうにも、向こうが話の場に出なければ始まらない。

 

 あれから、俺は毎日のように格納庫に足を踏み入れては爺が死んだ場所をじっと眺めている。

 地獄王ゴードンは、三者連合によって回収されては解体作業が進んでいる。

 爺が何を目的に、あんなものを作っていたのかは定かじゃない。

 世界征服なんて言っていたが、それだってどこまで本気だったのか…。

 

「今日で通算10日目ですね、甲牙さん」

 

 後ろから声をかけてきたのは、ミネルバXだ。

 

「その10日目っていうのは、俺がここに来るのがってことか?まさか、数えていたのかよ?」

「はい。私もおそらく、あなたと考えは同じだと思うので。自然と、同じように足がここに向かってしまうのです」

 

 ミネルバは、爺が眠った場所にしゃがんでは人間と同じように目を閉じて悼(いた)む。

 

「甲牙さん、私には心や感情というものはわかりません。人間とは違うことは、重々承知しています。しかし、この私の胸の中にあるざわつく気持ちは……何なんでしょうか?」

 

 彼女は爺の葬式の時も、無表情で居た。

 それが今は、とても辛そうな表情を浮かべている。

 

「それを人は、悲しいって言うんだ。ミネルバ、おまえは悲しんでいるんだよ。爺が死んだことを……」

「これが…悲しいという感情……。それは、甲牙さんからも感じ取れるような気がします。甲牙さんも、悲しい…だから、ここに足を運ばれているのですか?」

「……俺の場合は、少し違う」

 

 旅の中で、多くの人やデーモン、デビルマンと関わってきたからこそわかる。

 爺の進めていた光子力研究は、この世界にとっては諸刃の剣だ。

 人類に叡智を、人外には鉄槌を与えるエネルギー。

 それを扱う者の責任が今、俺の肩に重く圧し掛かっている。

 

「答えを、聞きに来ているんだ。爺なら、光子力をどう扱うのかって……天才科学者と呼ばれた男の出す結論を、俺は聞きそびれてしまったからな」

 

 結局、俺は生前の爺とはそんなに話をすることが無かった。

 マジンカイザーの力を手に入れようとも、その力の行きつく先について、意見を交わすことも無かった。

 俺はただ爺の言う通りに、魔神の力を振るって戦っているだけで精一杯だった。

 

 何も知らない…知ろうとしないガキだったから、意固地になって反発していた。

 見てほしかったんだ、1人の家族として。

 そんな欲望を口にするには、もう遅すぎた。

 

 ミネルバは、自身の胸元に手を当て告げる。

 

「光子力は可能性の光。博士は常日頃から、そんなことを口にしていました」

「……可能性の、光…?」

 

 復唱すれば、彼女は俺の隣に立って言葉を続ける。

 

「博士はいつも、甲牙さんたちのことを気にかけておられました。本当は、愛する孫であるあなたに戦ってほしくなど無かったんです。死なせたくない。その一心で、光子力研究に尽力され……その光が照らす未来に、悪魔と人類が共存し、新たな可能性を開くことを願っておられました」

 

 ミネルバの言葉の1つ1つが、頭の中で爺の声として変換される。

 

『甲牙よ。おまえは神をも越え、悪魔を滅するほどの力を手に入れた。その力が切り開く未来が理想郷か、地獄かは……おまえの意志で決めるのじゃ』

 

 いつか、爺がそんなことを言っていたのを思い出す。

 結局は、この力を持つ俺自身が決めるしかないんだ。

 

「甲牙さん、これからもマジンカイザーとして戦うおつもりですか?」

「……当たり前だ。俺は死んだ爺に誓ったんだ。これからも、この力で未来を切り開くってな」

「しかし、あなたの魔神化はなおも進行しています。これ以上、カイザーに変身しては本当にその身が……」

「そうなる前に、少しでもより良い世界に導いてみせるさ」

 

 戦う意志は変わらず、決意を口にすると格納庫に来場者が現れる。

 

「か、兜、兜、兜ぉ~~‼」

 

 その声はボスであり、あいつはタブレットを持っては必死の形相で俺の方まで走ってくる。

 

「どうしたんだ、ボス?そんな血相を変えて」

「み、見ろよ、これ‼大変なことになってやがるぜ!?」

 

 手渡されたタブレットを見れば、その画面に映る生中継に目を疑った。

 

「これは……何だ!?」

 

 

 ーーーーー

 

 

 数多の記者がフラッシュをたきながら写真を撮り、カメラが向けられている。

 

 その前に立っているのは、雷沼虎之助だ。

 

「みなさん、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。これより、我々ホーリースパークより大切なご報告をさせていただきます」

 

 雷沼はテーブルに両手をついては、前のめりになって高らかに宣言した。

 

「我々、対悪魔対策チーム『ホーリースパーク』は、これより光子力研究所と提携して人類の明日を守るための戦いに勤しみたいと思います」

 

 提携…?

 何を言っているんだ?

 光子力研究所の権利関係は、保留になっていたはずだ。

 

 1人の記者が、手を挙げては質問する。

 

「ホーリースパークと光子力研究所が協力関係になる…。ということは、セイクリッドセイヴァーとマジンカイザーが手を取るということでしょうか?今まで、あなたとマジンカイザー…兜甲牙氏が共に戦った姿を我々は見ていません。一部では敵対関係にあるという噂まで流れていましたが……」

「マジンカイザー……。確かに、私より前の救世主のことは先人として尊敬していますし、これまでの戦果には感服いたします。しかし、セイクリッドセイヴァーはかの古き救世主よりも強く、人類を照らす希望の象徴となると自負しております。それに……」

 

 尊敬していると言いながら、マジンカイザーを卑下する言い方に記者の中でザワザワとざわめき始める。

 そして、その混乱に雷沼は衝撃の一言を告げた。

 

「残念ながら、マジンカイザーは人類の希望ではない」

 

 その言葉と共に、1つの画像が後ろに映し出される。

 

「御覧なさい!この恐ろしき姿を!」

 

 映っているのは、マジンカイザーが悪魔の姿となった兜十蔵博士を斬殺した姿だ。

 

「我々は、兜の血族に騙されていたのです!兜十蔵はデーモンであり、その孫であるマジンカイザーこと、兜甲牙もその血を引いている‼そして、身内であっても邪魔者と見れば排除する‼このような恐ろしい一族が、兜家の正体なのです‼」

 

 甲牙だけでなく、兜家そのものを批判する雷沼。

 

「みなさんは、本当にマジンカイザーのことを人類の希望だと思っていたのですか?ありえない。人類の希望と言われようとも、みなさんはカイザーのことを何も知らないではありませんか」

 

 不安を煽り、徹底的にマジンカイザーへの信頼をそぎ落としていく。

 

「あの強大な力の正体は?本当に兜甲牙は人間なのか?いろいろな疑問が浮かびながらも、それに蓋をしていたのではありませんか!?しかし、もうそんな必要は無いのです」

 

 雷沼は黄金の鬼神の仮面を被り、セイクリッドセイヴァーに変身してみせる。

 

「私こそ、このセイクリッドセイヴァーこそ!人類の、人類による、人類のための救世主の姿なのです!私のこの力は、光子力科学の結晶なのですよ‼」

 

 得体の知れない力よりも、目の前に居る完成された人類の力に周りの者だけでなく、テレビの前の人間たちも圧倒される。

 

「しかし、人類の希望といえど、私には確かにパートナーが必要です。そして、それに相応しいのは……彼女だ」

 

 そう言って、彼の促しによって会見の場に1人の女性が姿を現した。

 弓さやかだ。

 彼女は雷沼の傍らに立った。

 

「か、彼女は弓さやか!?」

「どうして!?」

 

 記者の中で動揺が走る中で、雷沼が話す。

 

「彼女もまた、光子力に愛された存在。そして、それに相応しい姿をお見せしましょう」

 

 そう言っては、さやかに前に出るように促した。

 彼女は右手の親指に着けた両翼を広げたようなアクセサリーがついた指輪を前に向かってかざす。

 

「アルテミスA、ゴー‼」

 

 その掛け声により、姿を変えるさやか。

 

 天使を模したような背部の翼パーツが特徴的な、彼女の素晴らしい身体のラインが再現され女神の鎧。

 

「これが、アルテミスA。真の人類の希望、セイクリッドセイヴァーのパートナーとなる者の姿なのです」

 

 情報過多で、その場に居たものだけでなく、人類全てが混乱している。

 そして、その混乱が強いのは言うまでもなく―――兜甲牙だった。

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