※この作品はR-18です。

DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~   作:カナト

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妖鳥との和解

 最初に知らせを聞いた時は、耳を疑った。

 三者連合の地下牢獄から、シレーヌ…如月ツバサが脱走したと聞いた時は。

 

 牢獄の鉄格子は歪な形で破られており、中にはデビルソルジャー隊の隊員2名の死体が転がっていたらしい。

 三者連合の中ではシレーヌが2人を殺し、見張りの東大寺を人質にして脱走したという見解だ。

 

 しかし、俺はその見解に対して異議を唱える。

 何故なら、他ならぬ東大寺自身から迎えの連絡が来たのだから。

 

 そして今、美佐樹と共に2人が居る森の中を探索しては見つけることができた。

 

「お待ちしていました、明人さん……それに、美佐樹さんも」

 

 再会した東大寺は上半身が裸であり、上着は彼の後ろに居る赤髪の女が着ていた。

 如月ツバサだ。

 

「ツバサ…」

 

 名前を呼べば、彼女はこっちを見ては憂うような表情をする。

 そして、俺の隣に居る美佐樹に視線を向けた。

 

「何をしに来た……加藤美佐樹?」

 

 名前を呼ばれた美佐樹は、前に出てツバサと対面する。

 

「あなたに、会いに来たの。如月ツバサさん」

 

 互いに浮かべる表情は険しく、今にも一触即発しそうな空気が漂っている。

 

「美佐樹さん、ツバサさんは―――」

「良いんだ、東大寺。この女には、私に言いたいことが山ほどあるだろうからな。そして、それは私とて同じだ」

 

 東大寺は嫌な予感がしたのか、美佐樹を諫(いさ)めようとするがそれをツバサ自身が止める。

 

 そして、彼女が目を閉じれば、甲高い音がその場に響いた。

 

 パシ――――――ンッ‼

 

 美佐樹が右手を大きく横に振るい、ツバサの頬を打《ぶ》ったのだ。

 

「いろいろと言いたいことはあるけど、まずは一発打ちたかった。……痛い?それが今まで、あたしと明人を苦しめてきた怒りの分よ」

 

 その威力は相当強いものだったのだろう、彼女の顔が赤く腫れる。

 

「……一発で十分か?」

 

 それは挑発ともとれそうな物言いだったが、美佐樹は険しい顔を解いては笑みを浮かべる。

 

「うん、これで十分。気は済んだわ、ありがとう」

 

 ツバサはそれを聞き、彼女に返すようにフッと同じように笑みを浮かべた。

 それを見ていた俺に、ツバサは声をかける。

 

「確かに、おまえが選んだ女は強いな、明人。今までいろんな奴に殴られてきたが、今の平手打ちが一番効いた」

「そうだろ?俺の女は怒らせたら怖いんだ。俺でも頭が上がらねぇよ」

 

 彼女もやっと、美佐樹のことを認めては対等の相手として見ることができるようになったようだ。

 俺からの一言に、美佐樹は「まぁ、失礼しちゃう」と不服そうな顔をしていた。

 

 しかし、ここから先は真面目な話をしなければいけなくなる。

 

「三者連合の捜索隊が、おまえたちを捜している。監獄にあった死体を理由に、厄介なことにならなきゃ良いけどな」

「私は元から、厄介な存在だ。何かに理由を付けて、処刑しようとする者も居るだろうな」

 

 冗談では済まない最悪の展開を口にするツバサに、東大寺は目を見開く。

 

「そんなっ…‼ツバサさんは、被害者じゃないですか‼僕がツバサさんの無実を、証明してみせます‼」

 

 想いが通じ合った愛する者を失いたくない。

 彼としては、何とかツバサを助けたい一心だった。

 

「動かぬ証拠があるんだ。戦うためとはいえ、変身を封じる鎖も壊れてしまった。弁明のしようが無い」

 

 彼女も覚悟の上で、戦っていたのだ。

 そして、それがわかるからこそ、東大寺は焦っている。

 理不尽に抗う術を、模索する。

 

「明人さん、飛鳥代表には……」

「話はしてある。監視カメラの映像も残っているから、おまえたちの正当防衛は保証されるはずだ。しかし、戦い方が不味かったかもしれないな」

 

 ここは森の中であり、彼女は悪意ある筋書きをされれば『シレーヌの力を取り戻した脱獄犯』ということになる。

 

「理由はどうであれ、私を快く思わない者は悪いように捉える。わかっているさ、私は今まで、そう思われて当然のことをしてきたんだからな」

「ツバサさん……」

 

 状況は芳《かんば》しくない。

 どれだけ仕方がない理由があったとしても、それをどう捉えるかは人の心が決めることだ。

 真実が大事なんじゃない。

 如月ツバサ…今まで自分たちを苦しめてきた、デビルマン・シレーヌを処罰する理由ができてしまったことが問題なんだ。

 

「例え、監獄内で事が終わっていたとしても、ジェイソンたちの死体を理由に処罰の対象になっていただろうしな」

「何にせよ、あいつらに目を付けられた時点で詰んでいたのさ、私は」

 

 諦めたように呟く彼女に、東大寺は拳を震わせる。

 

 そして、解決策が見えない内に捜索隊が到着してしまった。

 全身武装した機動隊が、俺たちを囲むように展開しては銃を構える。

 

「如月ツバサ!おまえには脱獄の容疑がかけられている‼大人しく投降しろ‼」

 

 銃を向けられれば、彼女は大人しく両手を挙げる。

 

「抵抗はしない。……連れていけ」

 

 ツバサは機動隊によって連行されていく。

 東大寺はそれを追いかけ、共に三者連合の本部に戻って行った。

 

「ツバサさん……これから、どうなるんだろうね」

「了さんのことだ。悪いようにはしないだろう。それに……あいつには、東大寺が居る」

 

 俺はここに来た時から、1つだけわかっていたことがあった。

 2人の心は、やっと通じ合ったのだと。

 

「あたし、さっきは思わず叩いちゃったけど……。今なら、あの人と話せる気がする。知りたいと思ったの。ツバサさんが、どういう人なのか……」

 

 美佐樹はちゃんと、ツバサと向き合おうとしていた。

 敵とか、今まで苦しめてきた相手だとかは関係なく、1人の女として受け入れようとしているんだ。

 

「おまえは凄いよ、本当に」

 

 俺は彼女の肩を抱きながら、帰路に就いた。

 美佐樹、東大寺、ツバサ。

 3人の想いは理解できた。

 

 ここから先は、俺のできることをしていこう。

 

 

 ーーーーー

 

 

 後日、三者連合本部。

 

 代表室に通された俺は、デスクに着いている了さんと顔を合わせる。

 

「昨夜は悪かったな、明人。急に仕事を振るようなことをしてしまって」

「いや、良いですよ。おかげで、美佐樹とツバサのわだかまりも解消されたみたいですから」

 

 昨夜のことを、俺がわかる範囲で彼に改めて説明する。

 そして、今後の彼女の処遇について検討することになる。

 

「あの後、東大寺くんが俺のところに直談判に来てな。彼女の無実と正当防衛を訴えてきたよ。あの気迫は、私と一戦交えることも辞さないほどの覚悟を持っていた。若さとは恐ろしいな」

 

 そう言って、デスクの上に置いてあるコーヒーに口を付ける。

 

「あの監視カメラを見返したところ、幸いにもジェイソン・ゴーダがべらべらと喋っているところが記録されていたよ。彼らはツバサの首を手土産に、デビルマン軍団に寝返ろうとしていたらしい。我々は期せずして、裏切者を処分することができたことになる」

「だったら、それはツバサと東大寺の手柄にならないか?」

「そうだな。情状酌量(じょうじょうしゃくりょう)の余地はあるだろう。あとは、彼女の意志次第だ」

 

 了さんとしても、ツバサを処罰することには反対なようだ。

 それを覆すために、周りを納得させる方法を考えているのだろう。

 そして、その結果は彼女の決断に掛かっている。

 

「彼女が我々に協力するというのなら、これほど周りを納得させられる理由はない。それこそ、ジェイソンが彼女にしようとしたことを、そのまま利用すれば良いだけのことだからな」

「……なるほど、事実を利用することができるのは、悪い意味だけじゃないってことか」

 

 流石は了さんと言うべきか、三者連合の代表は頭が回る。

 

「ジェイソン・ゴーダ以下2名のデーモンソルジャー隊、その裏切り行為を知った彼女が、我々に協力する証明として処分した。こういう筋書きならば、誰も文句は言うまい」

「確かにそれなら、ツバサを自由にする口実にはなりそうだな」

 

 俺の一言に、了さんは怪訝な顔を浮かべる。

 

「アキト、君も不思議な男だ。自分と美佐樹ちゃんを苦しめた相手に、何故そこまでできる?」

 

 確かに、他人から見れば俺のやっていることはおかしく思うかもしれない。

 しかし、これはただの善意でやっていることじゃない。

 俺なりの、ツバサへの償いなんだ。

 

「……言ってみれば、ツバサも神の定めた運命の被害者だ。シレーヌの力を手に入れたことで、アモンとの因縁に巻き込んでしまった。そして、その因縁を一方的に断ち切ったのは俺だ。運命の繋がりだけを頼りにしていたツバサに、別の道があることを示したかった……のかもしれない」

「ふっ、その役割は東大寺くんが果たしたみたいだがな。今は2人で、勉強会を開いているよ。もちろん、残念ながら場所はまだ監獄の中だがね。それでも、彼女は満ち足りた顔をしていたよ」

 

 了さんから今の2人のことを聞けば、俺は安堵の息を着いていた。

 

「これから戦争が始まるって言うのに、俺たち……こんなことで安心してたらわけねぇよな」

「いや、アキト、これで良いんだ。俺たちが守りたい日常は、こんなことで……いや、これ以上に普通のことで、安心を得られる世界じゃないのか?」

「……確かにな」

 

 俺も少し、戦争のことを意識して気を張っていたのかもしれない。

 だが少しだけ、その緊張も解れたような気がしたんだ。

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