DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
デーモンが何時から存在し、何時から人間の生活に潜んできたのかはわかっていない。
しかし、デーモンが人間を捕食してきたのならば、全ての者にではないにしろ、存在に気づかれるのは必然だった。
そして、人間は衝動で動くデーモンよりも理性が働き、頭が働く。
ガーラの話を簡潔にまとめるとこうだ。
日本政府は、国民や外国には秘密裏に力の弱いデーモンたちを捕らえ、その肉体や能力について研究をしていた。
非人道的な拷問や、デーモンと罪人を使った人体実験、生殖行為。
聞いただけで想像してしまうと吐きそうになる。
それが全て、未知の生物に対する身勝手な好奇心からくるものなのか、デーモンに対抗するためなのかはわからないが、人間もデーモンに恨まれることをしていたのは確かなようだ。
「人間を殺したデーモンが弄ばれるのならばまだしも、人間を殺さずにただ静かに生活していたあの子たちを捕らえて実験材料とした者たちから、私はあの子たちを奪還した。その時に何人か人間を殺した。……どうする?おまえは私を許さず、殺すか?」
挑発でもなく、ただ単に俺の意思を確認したいだけなのだろう。
このデーモンは守りたいものを守るために、人間を殺した。
俺だって、俺の守りたいものを守るためにデーモンを殺してきた。
ガーラを責める道理はない。
「俺はデビルマンだからな。人間に対して同族愛護の精神は無い。それに……そんな外道を、人間だとは認めない。俺とあんたが戦う理由にはならねぇよ」
「それは何よりだ」
ガーラの話が終わり、俺たちの間に沈黙が流れる。
それなら、今度は俺から聞きたいことを聞くか。
「ガーラ……さん、俺から少し質問したいことがあるんだけど、良いか?」
「私に答えられることならばな」
「あんたは魔将軍。つまり、デーモンの幹部みたいな存在だ。だから、確認させてほしい。……あんたは今、誰の命令で動いている?」
抽象的な問い方になってしまったが、こういう言い方しか思いつかなかった。
ガーラは顎を引いて俺をじっと見る。
「妙な聞き方だな。我々デーモンの長は大魔神サタン様だ。しかし、私は私の意思で行動している。誰の命令でも動いてはいない」
「……そうか。それを聞いて安心したよ」
俺は透視能力を使い、ガーラの頭部を見る。
ニクスの時のように、羽の紋章と鎖は視えない。
本心からの一言のようだ。
このデーモンは、自分の意思で生きている誇り高い戦士だ。
「……決めた。俺はあんたが俺の大事な者に手を出そうとしない限り、あんたとは戦わない。そして、あんたが守ろうとしているデーモンたちも殺さない」
「あの子たちはともかく、私は人間を殺し、その肉を食ったことがある怪物だ。それでも、私を……」
「過去がどうかよりも、俺は今のあんたを見て決めたんだ。例え、あんたが人間を食ったとしても、それは俺には関係ないさ」
俺とガーラは立ち上がり、握手を交わす。
不思議だ。目の前に居るのはデーモンなのに、俺はこの誇り高い戦士に敬意を感じている。
「私からも、1つおまえに問いたいことがる。おまえはこれからも、人間を守るのか?」
ガーラの話を聞いていた時から、この質問はされるものだと思っていた。
俺の中で、答えは既に出ている。
「確かに、人間は残酷な生き物だ。デーモンと引けを取らないだろう。それは理解した。それでも、そんな人だけじゃない。……人間じゃない……自分が何者なのかもわからない俺のことを、受け入れてくれる人間も居る。そういう人だけは……守っていいだろ?」
「……好きにするがいい。おまえには、おまえの考え、価値観がある。それを否定することは私にはできない」
俺とガーラは、お互いに守るべきものがある。
それに踏み込まなければ、もう衝突することはないだろう。
俺は心を落ち着かせることができ、樹海を後にして加藤の自宅に戻った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「もしもし、了さん……。さっきはその……」
『気にしてないよ。すまない、俺が悪かった。君にばかり重圧を与える気はなかったんだがな』
自分の部屋で了さんに電話をかければ、すぐに繋がったので謝ろうとしたら逆に謝られてしまった。
それが、俺の心に暗い影を落とす。
「それでも、俺は戦える。人間を襲うデーモンが居るのなら、俺はそいつらを狩るのをやめるつもりはありません」
『意識の変化がうかがえるな。以前の君なら、デーモンを狩るとだけ言っていた。しかし、人間を襲うデーモンという言葉からは、まるでそうでないデーモンは殺さないという風に受け取れるが?』
「ついでに言うと、俺は守るべき人間を線引きするつもりです」
電話越しに了さんの声が聞こえなくなる。
そして、6秒ほどして笑い声が聞こえてきた。
『アハハハハッ。そうかそうか、全てではなく、守るべき人間を決めるということかな?それは一体どうして?』
「……いろいろあったんで。それは、後で話しますから。それじゃ……ジュンさんにも、俺のことを伝えておいてください」
『ああ、伝えておくよ。……彼女も君のことを心配していたからな』
電話が終わると、俺は空を見て月を見上げる。
人間の中には良い者が居ても、外道のような者も存在する。
それはデーモンも同じだ。
全ての人間が善なわけでも、全てのデーモンが悪なわけじゃない。
だから、俺が戦うのはデーモンだけじゃない。
俺はデビルマンだ。そして、不動明の転生者にして特異点らしい。
後者については自覚はないが、俺の存在が決められた運命を変えることに繋がるのなら、俺の行動1つで繰り返される悲劇を回避することができるかもしれない。
運命を変えることができるかもしれない。
月を見ながら、俺は新しい決意を固める。
この先、どんな脅威が来たとしても戦い続ける。
人間もデーモンも、俺が大切な者は守る。
そして、どちらかが生き残るためにどちらかを滅ぼすという運命を、俺は変えて見せる。