※この作品はR-18です。

DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~   作:カナト

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代表同士の舌戦

「憂鬱そうな顔をしているわね、了」

 

 不動ジュンが車を運転しながら、隣に座るパートナーに一瞬だけ横目を向けた。

 

「それは憂鬱にもなるさ、駆け引きはそこまで得意じゃないんだ」

 

 頬杖をつきながら外を見ては、小さく溜め息を漏らす。

 今、2人が向かっているのは光子力研究所であり、これから交渉の場に赴くことになる。

 そして、その結果や進行次第では三者連合は世界を敵に回す可能性すらある。

 

「ジュン、事と次第によって戦闘に発展する可能性もある。その時は……」

「私を誰だと思ってるの?三者連合代表の秘書なんて、生半可な覚悟じゃできないわ。大丈夫、任せて」

「……そう言ってくれて、心強いよ」

 

 今、この車の中には明人もダンテも居ない。

 そして、未だ甲牙の行方も分からぬまま。

 しかし、彼に関しては手がかりはある。

 

(彼(・)女(・)の言葉が本当ならば、セイクリッドセイヴァー…雷沼虎之介は俺たちの敵だ。そして、この世界の敵でもある。俺は今、この瞬間も奴らのシナリオの上で踊らされているようにすら感じる。特異点である3人が居ないのは、やはり不安要素にはなるか……)

 

 たった2人で挑んでいるのは、向こうに警戒する隙を与えないためだ。

 本当ならば、了が1人で来るはずだったが、それをジュンが許すはずがなかった。

 

 光子力研究所は、今やホーリースパークの魔の手が着々と広がっている状態。

 言わば、現在進行形で敵のアジトの1つになろうとしているのだ。

 

 それを止めるために、了たちは向かっている。

 

 研究所の前に到着すれば、弓教授と他の三博士が待機していた。

 

「お待ちしていました、飛鳥代表」

「出迎えありがとうございます、弓教授」

 

 三博士の1人、モリモリ博士が中に入るように促してくる。

 

「彼はもう、中で待っております。さぁ、こちらへ」

 

 案内された先は会議室であり、その中には既に今回の交渉相手の姿があった。

 ホーリースパークの首領、雷沼虎之介。

 彼は了が姿を現したにも関わらず、椅子から立ち上がることも、会釈をすることもなくジッと睨みつける。

 

「こうして対面で顔を合わせるのは、初めてですね。雷沼虎之介さん」

 

 敵意を感じながらも、了は挨拶をしては余裕の笑みを見せて席に着いた。

 

「私も忙しい身でね、共存などという戯言(ざれごと)を宣(のたま)う輩と言葉を交わす時間も惜しい」

「お互いに忙しい身の上なのは、承知しているはずです。その時間を割いてでも、我々は話し合わなければいけない。デビルマン軍団との戦争まで、あまり時間は残されていませんので」

 

 長テーブルの交渉の席に、対面する形で座る了と雷沼。

 代表同士の後ろには、それぞれのボディーガードが立っている。

 

 対話を始める際、雷沼は単刀直入に切り出した。

 

「光子力研究所は、人類を進歩させるために必要な場所なのです。それを悪魔の首領が管理するとは、我々としては承服し難い。やはり、我々人類が管するのが相応しいと思うのですがね」

「光子力が人類の進歩に必要なのは、我々としても理解していますし、そのための助力は三者連合としても惜しまないつもりです。しかし、あなたの用意した契約書を拝見させていただきましたが、これは人類のための管理ではなく、私物化しての横領だ」

 

 そう言って、テーブルの上にホッチキス止めされた書類を軽く投げ捨てるように置く。

 

「雷沼虎之介、あなたは光子力をどう利用するおつもりで?」

 

 懐疑的な目を向ければ、雷沼は了の鋭い視線を正面から受け止める。

 

「無論、人類を守護するために。私は真の救世主なのでね」

 

 自身の胸に手を当て、不敵な笑みを浮かべて返す。

 

「飛鳥代表。私とあなたでは、抱く思想は対照的だ。私にとっては悪魔と人間が共存する未来など、地獄絵図以外の何物でもない。生き残るのは人類か、悪魔か。デビルマン軍団が仕掛けてきた戦争が、生存競争を加速させることは間違いない」

「その生存競争で、人類が勝てると?」

「もちろんだ。そのために私が居る」

 

 あくまでも、人類のためと言って憚(はばか)らない姿勢だが、その先には光ではなく闇が映る。

 

「人類には導く存在が必要だ。個々の思考、欲望を捨て去り、たった1つの答えに導かれていけば良いのだ。そうすれば、無益な争いは生まれない」

「しかし、それは生きているとは言わない。考えることを放棄すれば、それは人形と同じだ」

「そうだ。だから、人類は人形になれば良い。私という英雄のための奴隷にね」

 

 とても、人類の守護者としての一言とは思えない物言いに了は表情が険しくなる。

 

「少なくとも、私は君のような男が英雄になるのは御免だがね」

 

 顔の前で手を組み、言葉を続ける。

 

「君の描く英雄像は、独りよがりな子どもの空想だよ。そんな子どもの玩具に、これから人類の未来を切り開く光子力を利用されるのは、こちらとしても承服しかねるね」

「くっ…‼裏切りの堕天使が、人類の未来を語るか…‼」

 

 怒りの形相になり、身体を震わせる雷沼。

 彼は今、感情的になっている。

 

 仕掛けるなら今だと、了は思った。

 

「人類の未来に、悪魔は必要ない……。君の意見を総合的に解釈すれば、こういう理解でよろしいかな?」

「当たり前だ。この世界に悪魔は必要ない…‼」

「そうであるならば、君のしてきたことは無意味と言わざるを得ないな」

 

 背筋を伸ばして足を組み、顎を突き出して言う。

 

「無意味に悪魔と人間を融合させる実験は、楽しかったかい?ドクター・ヘルの息子よ」

 

 その一言は、雷沼の表情を徐々に驚愕のものに変えていく。

 

「おまえっ……何故、そのことを…!?」

「我々の情報網を侮っていたようだ。私は知ってるのだよ、昨今の暴走デビルマン事件の真相をね」

 

 目を細めながら言えば、救世主は立ち上がって了を指さす。

 

「あれは、三者連合の自作自演であろう!?共存を謡(うた)いながら、その力で人類を脅かしている‼あの暴走デビルマンから、人類を守ってきたのは私だ‼」

「そうだな……。しかし、考えても見てほしい。デビルマンは悪魔の力を宿した人間。君は何度もその暴走を止め、悪魔と見なして殺してきたようだが―――」

 

 彼はそこで言葉を区切り、鋭い目付きで雷沼の矛盾を突いた。

 

「君が殺してきたのも、紛れもない人類なんだよ」

 

 人類の希望を謡(うた)いながら、人類を容赦なく殺している。

 そのような英雄に、不信感を抱く者が居ないわけが無い。

 

 それに蓋をしていたのは、修正者としての雷沼の力か、神のシナリオか。

 

「飛鳥了……いや、サタン‼貴様は、私を陥れるつもりか!?許さんっ…許さんぞ‼魔に堕ちた堕天使如きが、神に選ばれし英雄である、この私を虚仮(こけ)にしよってー‼」

 

 雷沼は激昂すると、黄金の鬼面を顔に装着しては「アームド‼」の掛け声とともに神聖なる救世主へと変身する。

 そして、シャドーレイランスの穂先《ほさき》を向けては稲妻を放った。

 

「消えろ、サタン‼」

 

 稲妻が了に直撃する前に、ジュンが前に出ると同時にデビルマンレディーに変身して庇う。

 

「うがぁあああああああああ‼」

「ジュンっ‼」

 

 咄嗟に変身しながらも、その威力は絶大でありジュンの変身は一瞬で解かれてしまう。

 彼女を抱え、動揺する了。

 

「すまない、ジュン…」

「謝らないで…。言ったでしょ、任せてって?あなたは、私が守る……から」

 

 そう呟くジュンであったが、彼の腕の中で気を失ってしまった。

 

 本性を現した雷沼は、背後に居る部下たちに「やれ」と号令しては腰に巻いているベルトを見せる。

 

「「うぐぉおおおおおおおおおおお‼」」

 

 雄叫びをあげながら、彼らは異形の悪魔へと変化していく。

 

「筋書きとしては、こうだな……。光子力研究所に、突如として暴走デビルマンが発生。その暴走に巻き込まれ、三者連合の飛鳥了代表も死亡。その仇は、神聖なる救世主であるセイクリッドセイヴァー…この雷沼虎之介が討ったのだとなぁ‼」

 

 高らかに自身の思い描く筋書きを話す彼に、了は吐き捨てるように「三流の脚本だな」と返す。

 多勢に無勢の状況の中で、会議室のドアが光の熱線によって破られた。

 

「光子力ビーム‼」

 

 ドアの向こうより現れたのは、ミネルバX。

 

「飛鳥代表、こちらです‼」

「わかった‼」

 

 ジュンを抱え、ミネルバの下に走る了。

 

「ミネルバX!?兜十蔵の残したガラクタがぁ…!!」

 

 セイクリッドセイヴァー、暴走デビルマンからの追跡から逃亡する了、ジュン、ミネルバ。

 

 物陰に隠れ、一先ずは追手を撒(ま)く。

 

「このような事態に巻き込んでしまい、申し訳ありません」

「いや、君の忠告があったおかげで助かったんだ。……これで、俺たちが戦うべき相手は定まった」

 

 了に忠告していた彼(・)女(・)とは、ミネルバXのことだった。

 ミネルバはこの会合の前に、了にこれから先の展開予測を示していたのだ。

 

「私の判断ではありません。兜博士が私を隠し、甲牙さんとさやかさんが使命を与えてくれた。だからこそ、私は今、自分の意志で戦うことができているんです」

 

 ミネルバから、覚悟を宿した瞳を感じとる了。

 

「君も戦士なのだな。……それで、この戦いの行方はどう予測する?」

「セイクリッドセイヴァーは、必ず私たちを消滅させようとします。そして、それを皮切りに悪魔を殲滅する動きを加速させることでしょう。でも、あの人たちはそんな未来を望まない。だから……」

「わかった、俺も彼らを信じよう。真の光子力が紡ぐ、可能性の光を」

 

 周りを警戒しながら、ジュンを抱えたまま研究所の出口まで駆ける了とミネルバ。

 しかし、そこは既に敵によって囲まれていた。

 

「ゲームオーバーだ。飛鳥了……いや、サタンよ」

 

 中央に立つセイクリッドセイヴァーが、勝利宣言をしてはシャドーレイランスを向ける。

 しかし、それに対して了は不敵な笑みで返す。

 

「……いや、違うな。おまえの言い方を真似るなら、ここからがリスタートだ」

「戯言をぉ‼」

 

 シャドーレイランスから、再度稲妻が放たれる。

 

 それが了たちに向かっていく中で、彼は誰にともなく「そうだろ、守護神?」と呟く。

 

 その瞬間――――彼らの間に、空間を切り裂いては黄金の光が広がっては稲妻を弾いた。

 

「そうだな、サタン……いや、飛鳥了。ここから先が、本当の戦い……兜甲牙の再出発だ」

 

 空間の裂け目から現れたのは、兜甲牙と弓さやかだった。

 

「そんな、まさか…!?ありえない、この時、この場所に……おまえたちは、存在しないはずだぁ‼」

 

 現実を受け入れられず、激昂する雷沼。

 そして、そんな彼に甲牙は不敵な笑みを浮かべてこう返した。

 

「悪を滅し、神をも越えるのがマジンカイザーの力だ。神のシナリオなんて、クソくらえだぁ‼」

 

 これより、新たな信念を得た守護者による反撃が始まる。

 

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