DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
ー時間は決戦の時より大分前に遡るー
光子力空間にて、俺は特訓をしていた。
光子力を、自身の想像を駆使して形にする特訓だ。
さやかと背中合わせに座禅を組み、目を閉じては互いの光子力を共有させる。
そして、俺の前に光が集まっては人型の幻影を成していく。
しかし、それも俺の中で雑念が入ることでブレては消える。
「んぐっ…‼ダメだっ……イメージを形にする、言葉にすると簡単なのに、実際にするとなるとこうも難しいとは」
「甲牙はイメージすることに集中して。私がそのための情報を、光子力の示す可能性の中から結びつけるわ」
俺がイメージし、その行きつく先の可能性をさやかが導き出す。
これはそのための特訓であり、セイクリッドセイヴァーに対抗するために必要な戦い方になる。
「セイクリッドセイヴァーは、マジンカイザーの全てを知っている。そして、甲牙の戦い方も熟知している。そんな相手に勝つためには、今までの甲牙を越える必要があるわ。甲牙の求める、本当の救世主になるために」
「わかっている……。さやか、もう1度だ。俺は今までの俺を越える……そのためには、さやかが必要なんだ」
「もちろんよ。さやかは甲牙のパートナーなんだから」
俺とさやかの身体から放たれる光子力が交わり、膨れ上がっていくのがわかる。
そして、俺の中で燃え上がる灼熱の光子力を、さやかから感じる温かな光子力が包んでいく。
この膨大な光子力を制御するためには、彼女の協力が必要不可欠なんだ。
(わかる、わかるわっ…‼甲牙から感じる、熱い鼓動が…‼とても熱くて、身体が燃えてしまいそう…。でも、それを包むことができるのは、さやかだけ……。あなたから溢れる力を、私が制御してみせる…‼)
マジンカイザーの力は、人の身にはあまりにも強大なものであった。
魔神の力は、自らと適合させるために適合者の身体を人ならざるものへと変えていく。
しかし、それは光子力を持つ者が1つだけだった場合の話だ。
さやかの光子力が、俺の光子力と交わって溶け合っていく……。
不思議だ。
さやかの温もりが、直接俺の身体に入ってくるような感覚。
魔神化の侵食によって変化していた俺の身体が、書き換えられていくような……。
「甲牙、あなたはどんな自分になりたい?強さを求めて、何を成したいの?あなたの求める未来を―――その全てを、今のあなたの身体に落とし込むの。そして、あなたの望む魔神の形に」
俺の望む魔神の形。
それは終焉の魔神じゃない。
俺はもう見つけている、自分がどんな存在になりたいのかを。
そして、さやかはそれに応えてくれる。
俺の望む、マジンカイザーの新たな姿は……。
ーーーーー
ー時は戻り、決戦の時ー
俺は今、リベンジのためにここに立っている。
後ろには、飛鳥了と不動ジュン、ミネルバX。
前にはセイクリッドセイヴァーとホーリースパーク、暴走デビルマンの群れ。
そして、隣には俺と共に戦ってくれるパートナー…弓さやか。
動揺する雷沼に対し、俺はビシッと指をさす。
「セイクリッドセイヴァー。借りを返しに来たぜ‼」
「借り…?まさか、私ともう1度戦うつもりか?愚かな、マジンカイザーはセイクリッドセイヴァーには勝てない。それがおまえの運命だ‼」
セイクリッドセイヴァーの挑発を受けようと、俺は冷静に受け止める。
「甲牙…」
「わかってるぜ、さやか。俺は……あんな未来を越えてみせる」
終焉の魔神になり、神聖なる救世主に討ち取られる未来。
そんなものは御免だ。
左手のブレスレットを高く掲げ、さやかと共に「マジン…ゴー‼」の掛け声と共に変身する。
俺はマジンカイザーへ、さやかはアルテミスAの鎧を纏っては目の前の敵と向かい合う。
「年貢の納め時だぜ、偽救世主‼」
「ほざけ‼哀れなる魔神よぉ‼」
セイクリッドセイヴァーの号令と共に、暴走デビルマンが襲いかかる。
『ぐるぁあああああああああああああ‼‼‼』
もはや理性はなく、セイクリッドセイヴァーに操られるままに俺たちに迫る。
そんな中で、アルテミスAは俺の前に出て両手を広げる。
そして、両肩に着いた翼が取れては合体させて弓矢の形となる。
「アルテミスアロー‼」
光子力の矢を放ち、暴走デビルマンに直撃しては倒れる。
その間に、俺は後ろに居るミネルバに声をかける。
「ミネルバ、飛鳥たちを連れてここから離れろ‼」
「いや、甲牙‼俺も一緒に―――」
「おまえには、守るべき人が居るだろうが‼……ここは俺に任せろよ、仲間だろ?」
カイザーのマスクの下で不敵に笑えば、了は「わかった」と言って光子力研究所から離れて行く。
「おまえたちが邪魔しなければ、ここでサタンを討ち取れたものを…‼」
「そんな未来、クソくらえだ。おまえは倒す‼そして、こんな戦争を終わらせる」
さやかが多数の暴走デビルマンを相手にする中で、俺はセイクリッドセイヴァーと向かい合う。
「戦争を終わらせる?いや、それは不可能だ。私が英雄として有り続けるために、この戦いは継続するのだよ」
雷沼はそう言っては、高らかに両手を広げる。
「君とてわかっているのだろう?英雄とは、戦争があるからこそ求められる。象徴として称えられる。闘争なき世界においては、英雄など必要とされないのだよ」
「だったら、そんな英雄は人類に必要ない‼俺は人々の未来を切り開くために、おまえという象徴を破壊する‼」
英雄となるために世界を弄ぶ者と、世界のために英雄を否定する者。
その主張は、相容れない。
「まるで変わってないな。魔神の力では、真の救世主には勝てないのだよ。それを身をもって教えてやったはずなのだがねぇ‼」
シャドーレイランスから稲妻を発生させ、俺に向かって突きだしてくる。
「視える、視えるぞ…‼おまえの断末魔の叫びが、その先に広がる終焉の魔神の無様な姿がぁ‼」
雷沼虎之介の修正者の能力。
それは自らが敵対するものとの戦いにおいて、勝利する世界を予知すること。
彼が甲牙の戦い方を知っていたという言葉の真意、それは過去ではなく未来の動きを意味していた。
だからこそ、マジンカイザーの動きが手に取るようにわかり、その性能を上回る力を作り出すことができた。
しかし、兜甲牙は……マジンカイザーは、その未来を越える力を手に入れていた。
「見せてやるぜ、セイクリッドセイヴァー…‼これが……俺の望んだ、魔神の姿だぁー‼」
両腕を交差させ、一気に肘を後ろに引けば雄叫びをあげる。
「うぉおおおおおおおおおお‼燃えろ、俺の中の光よぉおお‼」
そして、マジンカイザーの鎧が白く燃え上がる。
「俺は……俺を越える‼絶望の未来を、可能性の光で燃やし尽くす‼」
その己を越えるための魔神の解放の掛け声は――――。
「マジンカイザー……イグニッション‼」
燃え上がる炎の中で、アンダースーツが蒼から紅に染まり、胸部装甲や肩アーマー、両腕、両脚の鎧が純白に染まる。
そして、頭部から黄金の炎が逆立つタテガミのように燃え上がる。
「な、何だ…‼その姿は…‼」
マジンカイザーが神をも越え、悪魔をも滅ぼす力を持っているのであれば、俺のこの姿はそれを越える。
「絶望の未来を燃やし、希望の未来を照らす太陽の魔神‼マジンカイザー・アポロ‼これが、俺の望む魔神の姿だ‼」
俺の光子力の形をイメージし、それを具現化した新たな魔神の姿。
「人類の希望、セイクリッドセイヴァー…雷沼虎之介‼おまえは俺が倒す。」
それに対し、セイクリッドセイヴァーは全身を震わせる。
「ありえん……そんな姿の魔神など、神の未来に存在しなかったぁ‼」
「当たり前だ。このマジンカイザー・アポロは、俺の想像によって生まれ変わった魔神。神のシナリオには、特異点である俺の生み出すものが書かれているはずがない‼」
特異点は神のシナリオに記されない存在。
だからこそ、俺から生み出された可能性に神が関与できるはずがないんだ。
「行くぞ、セイクリッドセイヴァー‼」
燃え上がる闘志を胸に、拳を向けて灼熱のオーラを
「喰らえ、鉄拳‼イグナイト・ターボスマッシャー・パーンチ‼」
炎をまといて回転する拳が、セイクリッドセイヴァーに向かって直進する。
「バカなっ―――ぐぶぇえええええ‼」
シャドーレイランスで防御する間もなく、腹部に直撃しては後ろに吹き飛ぶ救世主。
そして、槍剣を下に刺して減速しながらも、膝を付いては腹を押さえる雷沼。
「ば、バカな…‼たった一発の拳で……この超合金ニューZの鎧が…!?」
直撃した部分から、煙が立っては焦げているのがわかる。
灼熱の光子力が、セイクリッドセイヴァーの鎧に傷をつけたのだ。
そして、俺の猛攻は続く。
「これは爺…いや、おじいちゃんの分‼」
奴の目の前に立ち、両手の籠手に炎をまといて回転させながら最初に右拳を突き出す。
「ぐがはぁ‼」
その拳は雷沼の顔面にクリーンヒットする。
「これは、おまえに利用されたさやかの分‼」
次に左拳を突き出し、再度顔面に叩きつける。
「がぶぐぇ‼」
そして、最後に両拳を同時に突き出しては顔面を抉る。
「ぎぶぐへぁ‼」
今の3発で、奴は後方に倒れては背中を付ける。
(う、動きが読めん…‼因果が……結びつかないだと!?)
雷沼が修正者の力で勝利の未来を結びつけようとしても、マジンカイザー・アポロから放たれる灼熱の光子力がその未来を燃やしてしまう。
奴は今、神の力を利用することができず、自らの力のみで戦わなければいけないのだ。
「こんな、ことが…‼許さんっ…許さんぞ、マジンカイザー‼兜甲牙ぁー‼」
怒りのままに、全身から放電してはシャドーレイランスに集中させる。
「消えろ、邪魔な兜の血筋よぉ‼シャドーレイランス…フルドライブー‼」
強力な稲妻を放ち、それが俺に迫る。
それに対して、俺は真っ向から立ち向かう。
目に意識を集中させ、光子力を濃縮させて放つ。
「未来を照らせ‼イグナイト・光子力ビィイイイイム‼」
稲妻と光線がぶつかり合う。
そして、それは拮抗することなく稲妻を押し返してはセイクリッドセイヴァーに直撃した。
「ぎぃぁあああああああああああああああっ‼」
光子力ビームによって、全身が焼かれる感覚に襲われながらも耐えるセイクリッドセイヴァー。
もはや、決着は火を見るよりも明らかだった。
「これで終わりだ、雷沼…‼」
俺は奴の前に立ち、見下ろしながら告げる。
「終わり…?違う、私の……英雄の物語は、まだぁ…‼」
周りを見れば、暴走デビルマンは皆、気を失っていた。
アルテミスAが1人で、全て戦闘不能にしたのだ。
「こんな……こんな、ことがぁ…‼」
現実を受け入れられない雷沼が項垂れる中で、巨大な暗黒のゲートが開いた。
『虎之介ぇええええ‼』
奴の名を呼ぶ声が、ゲートの先から聞こえてくる。
そして、そこから出てきたのは地獄王ゴードン。
爺が開発していた、世界征服用のロボットだった。
そして、その肩に乗っていたのはデビルマン・ヘル。
奴らの最後の悪足掻きが、始まる。