DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
場所は地獄。
デビルマン軍団のアジトである魔界城の外れで、デビルマン・ダークネスは身を震わせていた。
『わかる……わかるぞ…‼マジンカイザー…兜甲牙‼』
宿敵が新たなる力を手に入れ、さらに強くなったことを感じとる。
場所は現世と地獄と違っていても、戦士としての直感が彼に語り掛ける。
そして、自身の愛刀である冥刀ジレンを抜刀しては上段から振り下ろす。
すると、断ち切られた空気が後から間を埋めるように急速に集まる。
『この一太刀をもってしても、あの男にも、兜甲牙にも届かぬ……か』
ダークネスは今、決断を強いられている。
そして、甲牙が復活したことを感じ取っては、迷いは晴れた。
《ここに居ったか、ダークネスよ‼》
そんな彼に、下半身の虎を走らせて近づくはゴーゴン大公だ。
《デビルマン・ヘルが、マジンカイザーによって討ち取られたぞ‼》
『……知っておるわ。だからこそ、血が湧きたってしょうがない』
ダークネスは歯を見せて笑い、クックックと声を出す。
『もはや、暗黒の中で己に問いかけるのも飽きてきたところよ……。おまえが戦士としての頂に立つのであれば、俺も真の姿を取り戻す時か…カイザ‼』
セイクリッドセイヴァーとの戦いで、己の封じられていた記憶の扉にヒビが入った。
そして、それは時間が経つごとに崩壊しては、数々の記憶が思い起こされた。
だからこそ、ダークネスは考えていた。
このままデビルマン軍団の将軍で居るか、戦いを求める1人の修羅となるか。
そして、修羅となるために彼が取るべき行動は―――。
ジレンを逆手に持っては、刃を握って自身の腹部に突き立てる。
『いざ……
グサッ‼
刃は腹部を刺し、そのまま横に切るダークネス。
それは切腹‼
切られた腹からは、暗黒の瘴気が放たれては鎧が朽ちては灰と化していく。
《な、何をしているダークネス!?貴様、血迷ったか!?》
『否っ…‼これは正気ゆえの自刃なりっ‼俺は今、暗黒の将軍という器から、解放されるのだぁ‼』
暗黒の外装が崩れ去り、下からは別の鎧が姿を現す。
それは漆のような光沢がある漆黒の鎧であり、兜からはクワガタのような2本角が生えている。
『我を縛り付ける
将軍の身を捨て、1人の武人として生きることを決めた姿。
《なんだ、その姿は…‼ダークネス、貴様はぁ!?》
『否‼今の俺はもう、デビルマン・ダークネスなどという仮初の器に非ず。我が真の名は……』
ジレンを両手で握れば、刃から漆黒のオーラを放ってはそれが黒鋼に変化して刀身となる。
身の丈を遥かに超える大剣だ。
新しき我が愛刀。
『我はサーガ……
自らを剣を称するダークネス改め、武神サーガ。
彼の目指す武人の頂は、己が弟…魔神カイザ。
そして、その力を持つ人間…兜甲牙だ。
《神を断つ…だと!?そのようなこと、許されるはずがない‼貴様、我らデビルマン軍団を敵に回すつもりか!?》
サーガの闘争本能は、既に常軌を逸していた。
魔神と呼ばれる戦士の片割れは、既に1つの欲望にのみ目を向けていた。
宿敵…マジンカイザーとの決着。
それだけが、己が生きる理由となるほどに。
『我が剣の道を邪魔するのであれば、貴様とて容赦はせんぞ……ゴーゴン大公』
《それはこちらの台詞‼今ここで、貴様を止めてみせようぞ‼》
しかし、ゴーゴン大公が鞘から剣を抜いた時には遅かった。
スパァ――――――ンっ‼
サーガはジレンを横に振り払い、一閃が黒く
『冥皇刀・一文字切り…‼』
距離はあった。
間合いの外のはずだった。
それでも、ゴーゴン大公の動きは止まった。
《ま、まさか…‼これほど……とは…‼》
バキンっ‼
剣の刃が二つに折れては、キィーっと奴の身体が横に傾く。
《見事…なり…‼》
ボトンっ‼
ゴーゴン大公の上半身と下半身が分かれ、人の身と虎の身体が分断された。
『これは俺からの決別の意だ……。闇の帝王よ』
ジレンを鞘に収め、魔界城から離れて行くサーガ。
暗黒の外装を脱ぎ捨て、自由の身となった武神が地獄を歩み進める。
彼はもう、行く手を阻む者を容赦なく切り捨てることだろう。
ただ、強き者と戦い、斬ることにのみ愉悦を感じる修羅。
それが武神サーガという戦士の歩む道となる。
『待っていろ、マジンカイザー。雌雄を決する時は、そう遠くない…‼』
魔神と武神。
守護神と修羅。
人と魔。
2つの熱き魂がぶつかり合う日が、隠されし神話の決着がつく日となろう。
ーーーーー
人気のない樹海……その奥に広がる洞窟。
そこに雷沼虎之介は、1人で項垂れていた。
「マジンカイザー…兜甲牙ぁ…‼」
恨めし気に、自らに敗北の烙印を押した魔神の名を口にする。
時間が経とうとも、消えることがない屈辱。
自らの英雄としての在り方を否定され、自らの予測を遥かに越えた存在。
決して許すことができないほどの怒りが、未だに彼の中で燃え盛っている。
「必ず殺す…‼私の手でぇ…‼」
怒りのままに恨み言を漏らせば、どこからか「今のままでは無理だな」という声が聞こえた。
その声に反応して振り向いた先には、不敵な笑みを浮かべる男が1人。
白藤隆一だ。
「白藤…隆一…!?」
「久しぶりだな、雷沼虎之介……。相変わらずの英雄思想か」
彼の一言で、2人が知己の間柄なのがわかる。
「人類の救世主から、堕ちたものだな。マジンカイザーに敗北し、身を隠しているのは……あの男に挑まれ、今度は消滅することを恐れたからか?おまえの父、ドクター・ヘルのように」
挑発的な物言いをすれば、白藤は怒りのままに「アームド‼」と掛け声をあげて黄金の鬼神となる。
「おまえをここで殺せば、俺は英雄に返り咲けるだろう…‼」
「不可能だろうな。今のおまえでは、何も成すことはできん」
白藤もまた、仮面を取り出しては顔を隠す。
そして、変身のコードを唱えた。
「デビルっ…アポカリプス‼」
仮面から青黒いオーラが霧のように広がり、それが白藤の全身を覆っては変身を完了する。
黒みがかった青色の重装に身を包んだ、魔人たちの王がそこに立つ。
デビルマン・アポカリプスレクス。
白藤が神によって与えられた、新しき魔人としての姿である。
「俺は闇の帝王としての力だけでなく、神の力をも手に入れた……。おまえが挑んでいるのは、神と言っても過言ではない」
「貴様が神を語るなー‼」
シャドーレイランスを突き出しながら駆ける、セイクリッドセイヴァー。
しかし、それに対して黙示録の王は動揺すら見せない。
手の甲に嵌められた紫のクリスタルを光らせ、手の平から紫のエネルギー球を生成して放つ。
「シャドーレイランス…フルドライブ‼」
黄金の稲妻をまとった突撃と、エネルギー球が衝突する。
そして、それは拮抗することなく爆発し、セイクリッドセイヴァーを後ろに吹き飛ばした。
「これは……神の力…!?貴様はまさか、本当に…‼」
「地獄の神…ハデスの力はもう、俺と一体化している。もはや、俺に勝つ気があるのであれば、神になるしかない」
地獄の力と神の力を掛け合わせた白藤は、もはや最強のデビルマンと呼べる存在となった。
「修正者の役割は、まだ終わっていない……。それどころか、おまえはもうお払い箱かもしれないがな」
「貴様…何を言っている!?」
雷沼には、彼の言葉を理解できなかった。
しかし、その言葉の意味はすぐに分かる事となった。
「特異点に敗北するとは……神から力を授かった身の上で、恥を知れ」
それは雷沼の声ではなかった。
白藤と雷沼の間に、地獄の門とは違う神々しい白い空間が開かれる。
そして、そこから姿を現した者は―――貴族のような衣装に身を包んだ、金色の髪をした仮面の男。
仮面は黒いアイマスクであるが、無表情で感情が見えない。
「まさか、おまえは…‼」
「神の用意した、新しい修正者…だそうだ」
白藤は変身を解き、男に視線を向ける。
「違う。私はおまえたちよりも先に生み出されし神の
無機質な言い方で、使命を口にする男。
その名は―――。
「我が名はマンセマット。私の使命は、先導者の特異点を排除することである」
修正者はそれぞれ、特異点と相反する力をぶつけることで消滅を測る。
そのため、特定の特異点を目標として定めている。
「その特異点……誰なのかはわかっているのか?」
「当然だ。俺は何度も、繰り返される世界にて、その先導者の特異点を葬ってきた」
マンセマットには、繰り返された前世界のデータが残っている。
そして、奴はその名を口にした。
「その特異点の名は、何度世界が変わろうとも同じ名前を授かっていた」
特異点としての運命の力が、そうさせるのかはわからない。
しかし、その先導者の特異点の名を耳にした時、その場に居た白藤は耳を疑った。
「その名は―――アイラ…アイラ・ムー」
それは白藤が殺した、魔戒島の予言者の名であった。
「まさか!?そうであれば、おまえはもうお役御免だろう!?」
「ありえない。神は全てを見通している。だからこそ、私はこの世界に来たのだからな」
マンセマットの否定に、白藤は動揺が隠せなかった。
「アイラ・ムーは生きている。そして、その特異点の力は……2つに分かれているようだな」
魔戒島での戦い。
その結末の意味合いが変わろうとしていた。
マンセマット。
この3人目の修正者が現れたことで、王を志す男の覚悟が試されることになるのだ。
マジンカイザー編が終わり、次のダンテ編への布石。
武神サーガとマジンカイザーの決着や、これからの戦いにご期待ください。