DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
ー3日後ー
美佐樹が居ない間、俺は彼女が居ない家にいることが辛くなり、了とジュンの部屋に転がり込んでいた。
2人も俺に気を遣って、快く迎え入れてくれたんだ。
「そろそろ、美佐樹ちゃんも帰ってくる頃だろ。死んだような目をしていたが、少しは生気が戻ってきたかな?」
了さんがからかうように、俺に問いかけてくる。
「無理言って泊めてくれて、助かったぜ。ちょっと、1人で居ると……いろいろと、考えてしまいそうでさ」
十中八九、おじさんたちには美佐樹との関係が大分深いところまで進んでいることはバレてしまった。
あの後、電話が来なかったことが、逆に不安感を
だ、大丈夫だよな……多分。
「自分が寂しい想いをしながらも、彼女に家族と過ごす時間を許すのは良い男の証拠だ」
「そりゃあ、生きてる内に、会える機会があるなら会うに越したことは無いですよ。家族に会えることって、当たり前のことじゃないですから」
俺の心境を察しては、了さんは目を閉じて茶化すのを止めた。
「君の思いやりは、彼女に届いているはずだ。そして、彼女のご家族にもね」
「……そうだと良いんですけど」
フッと笑って返すと、玄関からジュンさんが戻ってきては一通の手紙を持っていた。
「避難区域からの郵送だそうよ。明人、あなた宛てでこっちに届いたみたい」
「えっ……俺ぇ?」
怪訝な顔でジュンから手紙を受け取り、その内容に目を通した。
そこには、筆圧の濃い字で書き殴られた文があった。
ーーーーー
ー時は3日前に戻るー
リビングにて、美佐樹たち加藤家の家族会議が始まった。
「さて……まさかとは思っていたが、美佐樹と明人がその……関係を我々の想っていた以上に進めていたとはな」
「男女が1つ屋根の下に住めば、そうなることはわかっていたことじゃありませんか。むしろ、私はあなたがそこまで想定していなかったことが驚きです」
やはり、そういうことは男よりも女の方が精神的に強いというべきか、父よりも母の方が冷静に未来予想が的確だったようだ。
「何だったら、あなたたち……。明人くんがまだ家に居た時から、そう言う関係だったでしょ?」
「えっ……。お母さん、何で…!?」
「見てたらわかります。鈍感なお父さんの目は誤魔化せても、私の目は誤魔化せないわよ?」
そう言いつつ、母は自身の頬に片手を添えて溜め息をつく。
「まさか、そこまで性的な意味で進んでたなんてねぇ~。明人くんもやっぱり、男の子だったってことよ。逆に母としては、男らしいところがあるってわかって安心だけど」
「父としては、ショックが大きいに決まっているだろ!?おまえたち、まだ高校生だぞ!?」
父は立ち上がり、ビシッと人差し指を刺す。
「健全な付き合いをすると約束したから、同棲を許したんだ!それに、明人がデビルマンだとわかった以上、そちらに居る方がおまえを守ってくれると思って…‼ふたを開けてみたら、おまえが明人に襲われているとは何事だ!?」
「襲われてるって何よ!?明人はあたしを大切にしてくれてるわ!むしろ、あたしから誘わないと1日に1回しか抱いてくれないことだってあるんだから‼」
「1回っ…おまえたち、普段はそんなに盛っているのか!?」
父からの追及に、美佐樹はモジモジしては、目を逸らして答える。
「盛ってるって大袈裟な……昨日だって、合計で50回くらいしか…」
「50っ…‼ああぁ~~~、私の娘が……ケダモノにぃ……」
項垂れて椅子に座り直し、チーンっと意気消沈する父。
母は特に動揺する様子なく「あらあら、若いって凄いわねぇ」と感心するのみだった。
「姉ちゃん……俺、逆に凄いと思うよ。家族って1年も会わないと、こうも成長するんだなぁ…いろんな意味で」
孝太郎に関しては、もはや茶を飲んでは悟りを開いたような顔をしてらっしゃる。
「だから、その……明人とそういう関係になったのだって、ただの若気の至りってわけじゃないから。ちゃんと、あたしも明人も……そういうことになる可能性があることも、わかっててやってる」
遊びで付き合って、同棲しているわけじゃない。
それを伝えるために、美佐樹は心の内を明かした。
「明人にはもう、家族が居ない。だから、あたしが明人の新しい家族を作りたいの。彼の子どもを産んで、彼のお嫁さんになって、居場所を作ってあげたい……。だから、あたしは明人の側で、彼を支えたい」
彼女は頭を下げ、懇願する。
「あたしと明人の関係のこと、黙ってたのは謝る。だけど、許してください。あたしはもう、明人を1人にしたくないの。……お願いします‼」
愛する娘からの覚悟ある頼みに、父は腕を組んで唸る。
「……おまえの覚悟はわかった。私たちも、明人のことは家族同然に思っている。そして、彼になら……おまえを任せられると信じている」
根負けしたように、眉を下げながら口角を上げる。
「良いだろう。このまま、おまえたちが共に過ごすことを認めよう」
父に続き、母も「そうね」と言い、孝太郎も腕を組んでは「うんうん」と頷く。
「ありがとう…みんな」
美佐樹はホッと胸を撫でおろしたが、「さて、そうとなれば…」と父が席を立っては個室に向かう。
「えーっと……お父さん?」
「少し疲れた……。先に休ませてもらうよ。おまえも残り2日間だが、ゆっくりしていきなさい」
そう言って、父は個室に入って行った。
「・・・ねぇ、お母さん」
「何よ、美佐樹?」
彼女は父の入った個室を指さし、顔を引きつらせる。
「若干……怒ってたよね、お父さん」
「そうねぇ…。娘が自分の知らない内に、大人の階段を100段飛ばしで進んでいると知ったら、父親としてはあんな感じになるわよ」
冷静に言っている母は、笑顔が顔に貼りついている。
「お母さんは……怒ってないの?」
「だから、あなたたちが同棲するって聞いた時から、こうなることはわかってたわよ。まぁ、母親として……あの子には、言っておきたいことがあるのは確かね」
そう言って、母も個室の方に向かって行った。
この時、美佐樹は確信した。
これから先、明人と自分は2つの重荷を背負うことになるのだと。
ーーーーー
ー時は現代に戻るー
俺はその手紙の内容に目を通せば、全身から血の気が引いた。
『明人、今まで娘を守ってくれたことに対して、まずは礼を言わせてほしい。私にとって美佐樹は、大切な一人娘であり、いつかは嫁に出さなければならないことはわかっていた。そして、おまえとの仲を知り、遠くない未来におまえと共に新たな家庭を築くのだと思っていた。
今日、美佐樹からおまえとの仲が私たちが考えていたもの以上に進んでいることを知った。正直、すぐにでもおまえの下から引き離さなければならないのではないかと、頭を過ぎったよ。しかし、美佐樹の覚悟が、私たちを思い留まらせてくれた。
私も妻も、将来的におまえの義父、義母となる覚悟が改めて固まったように思う。
おまえと美佐樹の立場のことは、私たちにも少しは理解できるつもりだ。
改めて言うが、明人、おまえに私たちの大切な娘を託す。これは、おまえに対する重荷になるかもしれない。しかし、おまえの繋がりは美佐樹だけじゃないことをわかってほしい。私たち加藤家一同は、おまえが無事に戦いを終わらせる日が来ることを信じている。そして、おまえと美佐樹がいつまでも、共に健やかな時を過ごせることもな。それはつまり――――』
この後の一文で、俺は額から汗が止まらなくなった。
『美佐樹を幸せにしなかったら、いかなる手段を使おうと殺す。妻に至っては、浮気した場合は去勢してやるとも言っている。おまえの覚悟が本当ならば、美佐樹と将来生まれる子どもを、その手で守って見せてほしい』
手紙を読み終え、俺は綺麗に畳んで封筒に仕舞った。
「了さん……俺、この戦いで神に挑んで勝てたとしても、絶対に加藤家の人たちには一生勝てないことが、今わかりました」
半笑いを浮かべ、死んだ目で言えば、了さんはポンッと肩に手を置いて哀れみを込めた目を向けてくる。
「頑張れよ……アキト、いろんな意味で。子どものことで不安を覚えたら、いつでも相談に乗ろう」
その一言に、俺はコクンっと頷いた。
美佐樹が帰省したことで、俺は晴れて加藤家のみんなから彼女との仲を、将来的な意味でも認められたような気がした。
そして、背負うべき責任が世界の命運以上に重く感じた。
この手紙が届いていることを知ってか知らずか、美佐樹からメールが届いた。
『もうそろそろ、家に着くわ。今度は明人も一緒に、みんなに会いに行こうね。その時は妊娠報告できると良いね♡』
俺はこの時、いろんな意味で強く生きようと思った。
明人が背負った責任と恐怖は、しっかりと彼の身体と心に刻まれるのであった。
頑張れよ、明人。いろんな意味で。
次は話より、次の章に「原罪と決意の章」に入ります。
メインはダンテになります。