DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
ジャングルの中は、夜になると冷え込んでくる。
結局、遺跡の中をあらかた見て回ったが、わかったことは1つもなかった。
体調の優れない沙織にはテントで休んでもらい、俺は外の風に当たっている。
「あの時の声は、一体……」
ゼノンの声とは違っていた。
しかし、俺のことを魔王の器と言っていたのが気になった。
遺跡の中にあった石像が、頭から離れない。
自分は何かに引き寄せられている。
しかし、それに近づくことができない。
もどかしさの中で、足掻く術すらもわからずに苦悩するしかないんだ。
気晴らしに森の中を進み、再度遺跡の前に足を進めていた。
「俺に何を求める?魔王の器とは、何だ?」
俺の身に宿るゼノンの力は、確かに魔王と呼ぶにふさわしいものだ。
しかし、それとは違う何かが、俺の中から出ようとしているのがわかる。
『来るのです、ダンテ』
頭の中に、再度声が響いた。
しかし、それは遺跡の中で聞いたものとは違うもの。
そして、聞きなじみがあるものだった。
「今の声……まさか‼」
声は確かに、遺跡の中から聞こえてきた。
ありえないと思っていた。
しかし、声に導かれては再度遺跡の中に入る。
夜の遺跡内は、昼の時とは違う。
昼の時は闇が広がっているように見えたが、今はその闇に染まりながら、一筋の光が見えている。
「この声……おまえは、もしかして……」
光は段々と、人の形を成していく。
そして、石像の間の前まで来れば、それははっきりと俺の目の前に現れた。
腰まで長い黒髪をした、白い衣装に身を包んだ女性。
『久しぶりですね、ダンテ』
薄く笑みを浮かべる彼女を、俺はこう呼んだ。
「アイラ!?」
驚きを隠すことができなかった。
彼女は死んだ。
目の前に、生きている彼女が居るはずがないと。
見れば、アイラの身体は微かに透けているように見える。
「アイラ……なのか?」
自分の見ているものが信じられずに問いかければ、彼女は首を横に振る。
『まず最初に、私はあなたに謝らなければなりませんね』
凛とした
『私はあなたに、アイラ・ムーであると名乗りましたね。そして、あの子たちや内海明人、兜甲牙にも……。しかし、それは偽り……私という存在は、本来ならばこの世界に現れるべきではない存在だったのです』
自身の存在を否定するアイラに、俺は怪訝な顔を隠せない。
「それなら、おまえは……アイラじゃない…のか?」
『正しくは、この世界におけるアイラ・ムーではありません。私は言わば、影。本来、その名を継ぐ者が覚醒するまで、先を生きる者として守ることが私の役割でした』
言っていることの意味を理解するまでに、時間が必要だった。
『私はアイラという名の『力』。その『心』が目覚め、1つとなった時に私という存在は完成する。この王の玉座を起動する存在として』
そう言っては、翼竜の石像に目を向けるアイラ。
『あなたもまた、この玉座に引き寄せられた存在。その身に宿る、特異点の力によって……』
彼女の存在が、段々と粒子を放出しては存在が薄れていく。
「待ってくれ、アイラ‼俺は……俺はどうすれば良い!?どうすれば、みんなを……沙織たちを守るための力を、手に入れることができるんだ!?」
力を求め、そのための方法を問いかける。
しかし、アイラは目を閉じたまま答えを示してはくれない。
「私はただの力。答えは、あなたが己の魂の在り方と向き合った時に気づくはず……。彼女はもう、あなたのことに気づいているはずです。だからこそ、あなたはあの子の下に来た。彼女を
彼女は最後に意味深なことを言っては、その身体が完全に光となって消えて行った。
「アイラァ‼」
名前を呼ぼうと、彼女の姿が再度現れることは無かった。
「今度こそ……彼女を…?」
アイラは俺のことを、何か知っている様だった。
俺は悪魔王ゼノンの力を受け継いだ存在。
それ以上の意味が、何かあるというのか…?
彼女とは、一体…?
わからないことだらけで、前に進めている気がしない。
しかし、それでも何もしないわけにはいかない。
石像と向かい合うように立てば、その口に
そして、それは外に向かって細い光の線を飛ばしていた。
「……何だ、この光は…?」
光は何かを示すように、そのまま外を進み続けている。
『おまえの求める答えは、そこにある』
頭の中に、昼間と同じ声が流れてくる。
「おまえは何なんだ!?どうして、俺に語り掛けてくる!?魔王の器とは、一体…‼」
『我は玉座。王の器が満たされた時、我は目を覚ます。思い出すのだ、王の器よ。おまえはまだ、自らの運命を知らぬ。おまえの運命は、かの者を求めた先にある……』
自らを玉座という存在すらも、俺のことを知っているようなことを言う。
そうであるならば、その導きに従うのも手か……。
俺は遺跡を出ては、光線の後を追った。
ーーーーー
光線は遺跡の外まで続いており、その先まで続いていた。
「どこまで、俺を振り回すつもりだ……」
悪態をつきながらも、森の中を進めば、周りから見られているような感覚に襲われる。
獣の声が響き、鳥のさえずりが耳に届く。
感じるのは、孤独。
それも闇に覆われるような不安感が広がるほどの孤立。
その視界の先に広がる闇の中で、心細さを覚えていると、温かさと共に視界が白くなっていく。
「何だ、これは……」
視界の先に広がるのは、
いや、温泉というものだろう。
そして、光はここで途切れていた。
あの石像は、ここに俺を導いたのか?
「調度良い……。頭を切り替えたかったところだ」
俺は着ている物を全て脱ぎ、湯に浸かっては「ふうぅ~」と息を漏らす。
全身が湯の中に浸り、その温かさに安らぎを覚える。
夜の冷たさによって冷え切った心を、温めてくれるようだった。
そして、その温泉に近づいてくる人影に気づいた。
「あれは…?」
白いローブに身を包み、頭にはフードを被っている女だ。
彼女は温泉の前に着けば、ローブを脱いでは素肌を露わにする。
腰まで長い黒髪をした女性だ。
細身の体形で形の良い豊満な乳房をしており、豆粒のような乳首、陰毛のない陰部が視界に入る。
彼女は月に照らされながら、大自然の中で全裸のまま悠然と
何て、美しいんだろう……。
吸い込まれるように、彼女のことを目で追っている自分が居る。
そして、奇妙な感覚があった。
俺は彼女に目を奪われながら、こう感じていたんだ。
彼女の前に、膝をついて首を
女は足だけ湯に浸かり、「うっ!」と声を漏らしながらも頬を紅潮させて表情を緩ませる。
そして、そのまま前に進んで湯に浸かろうとしたその時だった。
サッサッサ。
草村を分け、出てくる存在があった。
虎や熊、ワニ、サイ、狼。
肉食動物たちが、温泉を囲むように姿を現した。
そして、その獣たちの目線の先は同じだ。
黒髪の女だ。
グゥルルルルッ…ルワァアアアア‼
虎が咆哮をあげ、女に襲いかかろうとした時だった。
「やめろー‼」
俺はバッと女の前に出て、両手を広げては盾になる。
すると、獣は動きを止めて俺と目を合わせては威嚇するように喉を鳴らす。
「やめろ……俺たちは、おまえたちの敵じゃない…‼」
言葉にして虎、そして獣たちに敵意が無いことを伝える。
女は俺の両肩に手を置き、隠れながらも獣たちの様子を見ている。
柔らかい乳房が背中に当たり、緊張感からか硬くなっている乳首の感触まで伝わってくる。
俺自身、こんな状況でそんなことを考えている余裕がないにもかかわらず、心臓の鼓動がドッドッドと速くなると同時に……。
ムクムクムクムクっ。
そして、虎はニカっと笑い、俺の前に
それと同時に、狼を始めとした獣たちも一歩引いては頭を下げた。
「す、凄いわ……。私たちのことを……いいえ、あなたのことを、認めたみたい」
彼女の声は優し気であり、耳に届いただけで安らぎを覚える。
「そうだと、良いんだが……」
獣たちを
それを確認すれば、俺は後ろを振り返って女と向き合った。
「これで大丈夫だ。恐い想いをして、不安だっただろう?獣たちは、もう行ったぞ」
そう言って安心させようとしたが、女はズズズッと下に視線を落としてはプッと手を口に当てて笑う。
「本当に獣は去ったのかしら?あなたの
指差された先にあるのは、自身の膨張した状態の肉棒だった。
亀頭が剥けた状態で、女を見上げるかのように反り立っている。
「これはっ…‼す、すまない‼そんなつもりでは…‼」
見えないように前を隠して後ろを向けば、彼女は「ううん」と言って首を横に振る。
「男らしい人は好きよ?あなたの勇敢なところ、久しぶりに見れて嬉しかったわ……」
……ん?
彼女の物言いに、引っ掛かるところがあった。
「久しぶりに…?前に会ったことがあったか?」
女の言い方は、明らかに俺のことを知っているかのようだった。
そして、彼女も自分の言っていることの違和感に気づいたのか、自身の長い髪を触って見てはハっと肩を震わせる。
「い、いいえ!私とあなたは初めましてよ!私ったら、変なことを言ってごめんなさいね!」
そう言っては、前で両手を振って否定する。
俺に似たような男が、知り合いに居るのだろうか?
しかし、俺にそんな違和感を気にしている余裕はなかった。
この胸の高鳴りを治める術を、どうにかして探さなければならない。
早くここから離れなければ、本当に今後ろに居る裸の女を襲ってしまいそうだ。
そんなことをすれば、共に来ている沙織に向ける顔が無い。
「……それ、苦しそうね?私が1回、スッキリさせてあげましょうか?」
そう言って、身を乗り出して横顔を向けてくる女。
「な、何を言っている!?俺をからかうな」
「からかうつもりなんて無いですよ。これはお礼です。裸の私にできるお礼は、苦しそうなあなたを解放することだと思うんですけど……どうですか?」
そう言って、前に出てきては前を隠さずに自身の裸体を見せつけてくる。
獣欲をそそるような魅力的な身体を前に、肉棒がビクッビクッと反応している。
しかし―――。
「ダメだ。俺には大切な人が居る。会ったばかりの女に手を出すのは、俺の王としての在り方に反する。それでは、本当にケダモノと同じだ」
確固たる覚悟で拒絶しては、女は少し目を見開いた後でフフっと笑って頬を紅潮させる。
そして、俺に歩み寄っては胸板に手を這わせてくる。
「真面目な人ね。増々好きになっちゃいそうだわ」
「わ、悪いが……その気持ちには応えられない」
目を逸らしながら言えば、彼女は身を乗り出しては俺の右頬にチュッとキスをしてきた。
「命の恩人へのお礼よ。これなら、許してくれるでしょ?」
「……」
唐突な行動に面食らっていると、彼女は湯舟を出て背中を向ける。
「じゃあね、勇敢な王様!また…会いましょう?」
「ま、待て!おまえは、一体……名前は、何と言うんだ?」
名を訪ねれば、女は足を止める。
そして、振り向いては長い黒髪をなびかせ、
「
そう言って、彼女は自身が身に着けていたローブを手に持って森の中に消えて行った。
彼女が居なくなった後、俺の中の獣欲は落ち着いていき、肉棒も縮んでいった。
初めての感覚だった。
見ただけで、その存在に自身の欲望をぶつけたいと思えた雌だった。
彼女と交わり、自身の種を残したいと思ってしまった。
俺はしばらく、彼女の姿を忘れることができなかった。
ダンテは遂に、運命の女性と巡り合った。
しかし、読者の皆様はもう気づかれたことでしょう…。
この女の正体に。