DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
彼女は森の中を1人、自身が裸であることも気にせずに歩を進めている。
(油断した…‼見られた、私のこの姿を…‼)
聖域の時は、誰が見ているかもわからない状況の中で、ずっと偽って生活していた。
だからこそ、水浴びの時もウィックを外すことは無かった。
しかし、ここはジャングルの中。
そして、森の中で温泉を見つけ、疲れを取りたい一心で油断してしまった。
白いローブは彼女が持参したものではあるが、それは寒さから身を護るための備えだった。
彼女はダンテよりも速くテントに戻っては、そこに在ったセミロングの緑髪ウィックを手に取ってすぐに着けては、服を着てから「ふぅー」と一息つく。
「よし、これで私は
改めて、彼女の名を語る時が来たようだ。
彼女の本当の名は、宇津木沙織ではない。
その身を偽り、1人の女として生きていくことを望む人間である。
彼女は改めて、1人用の寝袋の中に入っては天井のライトを見つつ、先程のことを思い出す。
「大切な女…ね。私のこと、そんな風に思ってたなんて……」
自身の胸に手を当てれば、ざわつく心に気づく。
ダンテのことをからかったのは、ただの気まぐれでは無かった。
彼は愛羅が、沙織であることに気づかなかった。
それが嬉しくもあり、悲しいと思ったのだ。
だからこそ、嘘偽りのない自分を見てほしいと思った。
正直、沙織として生きている時のストレスは
時々、こうして本当の自分に戻らなければ、自分で自分がわからなくなる。
そんな危険なことをしてまで、彼女が自分を偽らなければいけない理由は1つ。
アイラ・ムーとしての宿命から、逃げるためだ。
「ごめんなさい、ダンテ……。私はあなたに、取り返しの着かないことをしてしまった」
彼と共に居るのは、確かに頼りになる存在として一緒に居る部分も大きい。
しかし、本当の理由は別にあった。
愛羅は……彼女は、ダンテに対して負い目を感じている。
彼と共に居て、支えることは
だからこそ、
「最初から、愛羅のままで居たら……こんな気持ちには、ならなかったんでしょうね」
1度だけ、ダンテに抱かれた時のことを思い出す。
彼に身を預けることで、確かな絆が感じられたような気がした。
あの時、アイラ・ムーを失った時に感じたのは、解放と喪失感。
ずっと、自分を支えてくれていた存在を失ったと同時に、その宿命から逃れられたという想い。
しかし、そんなことは無かった。
彼女は実体が保てなくなりながらも、確かにまだ存在している。
運命に向き合えと、愛羅に迫っている。
それでも、運命に刻まれた記憶が拒絶する。
「私はもう、戦えない……。戦えないのよぉ…‼」
その悲痛な叫びは、誰にも届くことは無かった。
無論、今ここに向かっているダンテにも。
ーーーーー
愛羅のことが頭から離れないまま、俺はテントに戻っては眠っている沙織を起こさないように隣に横になった。
「随分、遅かったわね……」
眠っていると思ったが、そうではなかったらしい。
沙織がこちらに背を向けたまま、言葉をかけてきた。
「何も言わずに、すまなかった。しかし、収穫はあったよ。このバリア内には、俺たち以外にも人間が居たんだ。それも……美しい女性だった」
愛羅のことを思い出し、自然と言葉が出てくると沙織はモゾモゾと動く。
「綺麗な人だったの?」
「ああ。……俺は今まで、あそこまで綺麗だと思った人を見たことがない。まるで……そう、天使や女神のような人だった」
「そう…なのね」
歯切れが悪いながらも、少し声が上ずっているようだった。
「沙織…?どうかしたのか?」
「い、いいえ!今日は疲れがまだ抜けないみたいだから、寝るわね。また明日、調査を再開しましょう」
「そうだな。お互いに、明日に疲れを残さないために休まなければいけないな」
俺と沙織は互いに「おやすみ」と言って、テントの照明を消した。
ーーーーー
黒い空間の中で、俺は立ち尽くしている。
身に着けているものは何もなく、全裸の状態だ。
「ここは……」
その空間の中を進んでいけば、その先に裸の女性の後ろ姿が映る。
長い黒髪を腰まで伸ばしている、スラっとした細身の女性だ。
「まさか……愛羅!?」
彼女を見て、俺は思わず駆けだした。
そして、風景が変わる。
場所は先程の森の中。
濃い湯けむりが広がる中で、愛羅と対面しているのは、先程の虎だ。
虎は
「な、何だ……あれは…!?」
そして、虎は舌を出しては、それが伸びて愛羅に迫っていく。
ズズズズズッ。
舌の先端の形が変わっていき、肉棒の亀頭のようになっている。
亀頭は彼女の左胸の乳首に迫り、グニグニッと擦りつけられる。
「はぁ…‼ああぁ~‼」
そして、彼女の身体を巻き付けるかのように回り、亀頭に付いた涎か汁かもわからないものを塗りつける。
「んぁ…‼はっ…むぁんっ‼」
彼女の頬は紅潮しており、虎の舌に性的快楽を得ているのがわかる。
その姿を見て、俺も肉棒が膨張しては反り立ってしまう。
「愛羅っ…」
助けに入らなければいけないことはわかっている。
しかし、身体が動かなかった。
彼女の乱れる姿が、もっと見たいと本能が言っている。
そして、その亀頭の舌は愛羅の股間へと移動し、膣口に擦られている。
ズっズっズっズッ。
「いやっ…はぁんっ…んんっ‼」
声を出して喘ぐ姿に目が離せず、立ち尽くしてしまう。
そして―――。
ズブブブッ‼
「はああぁ~~~~~っ‼」
身体を仰け反らせながら、亀頭の舌は膣内に挿入された。
ズブッズブッズブッズブッ‼
「はぁんっ‼あっ‼あぁんっ‼むぁんっ‼」
虎の舌が、上下に動いては彼女の膣内を犯している。
愛羅は声を漏らしながら、目を閉じて悦を得ているのがわかる。
「愛羅……愛羅ぁー‼」
もはや、見ているだけで満足することはできなかった。
彼女の下に走って向かい、手を伸ばす。
「俺はっ…おまえをっ…‼」
しかし、手を伸ばせど愛羅との距離は縮まらない。
それどころか、近づいているはずなのに彼女は離れて行く。
「待ってくれ、愛羅ぁ‼」
名前を叫べど、彼女の目には俺は映らない。
虎の幻影が消え、地面に倒れる愛羅。
そして、そんな愛羅の前に現れる新たな人影が1つ。
それは顔の口から上を仮面で隠した、背中から白い翼を広げた男だった。
「あなたはっ…‼」
愛羅は、その仮面の男を知っているように驚愕の表情を浮かべている。
そして、男の手には1本の剣が握られていた。
「運命は変わらない……。何度繰り返そうとも、おまえは私の手で……」
グサッ‼
男は愛羅の腹部を刺し、刺された箇所からは血が流れる。
「愛羅ぁー‼」
たった一刺しで彼女の目からは光が消え、身体から力が抜けてはバタンっと事切れた。
愛羅を刺し殺した男は、彼女の亡骸を見ても表情は変わらない。
「おまえは……おまえは一体…!?」
男にその存在を問いかけれど、言葉は返って来なかった。
そして、男は俺を見ることなく、黒い空間の中に消えて行った。
そして、俺は愛羅に駆け寄れば、もう起きることがない彼女の身体を抱えて叫ぶ。
「うぉおおおおおおおおおお‼‼‼」
涙を流しながら、両手を血に染めながら咆哮をあげるしかなかった。
ーーーーー
「うわぁあああああああああああ‼」
目が覚めると同時に、身体が飛び起きてしまった。
「ちょ、ちょっと、何!?」
それによって、隣に居た沙織を起こしてしまったようだ。
「はぁ…はぁ……今のは…夢…?」
しかし、夢だとわかった今でも、身体はあの光景を想いだして震えていた。
沙織は荷物の中から水筒を取り出し、俺に渡してくれる。
「水、飲んだら?凄い汗よ?」
「あ、ああ……すまない」
水筒の水を口に含んで飲み、手の甲で
「見ていたのは、怖い夢?」
「……ああ」
短く言葉にして返しつつ、立ちあがる。
詳しく話したところで、理解できない話だ。
愛羅のことだけでなく、夢の中とはいえ、彼女を殺した翼の男も気になった。
「あの光景……何だったんだ?」
奇妙な感覚だった。
俺があの光景を見るのは、初めてじゃない。
「愛羅……」
不意に言葉にして呟けば、それは沙織に聞こえたようで聞き返される。
「アイラって……アイラ様のこと?いきなり…どうしたの?」
沙織にしてみれば、アイラと言ってしまえば、アイラ・ムーのことを想起させるだろう。
しかし、今俺が思い出していたのは武藤愛羅だった。
「アイラ……そう言えば、昨日……アイラ・ムーと会ったんだ。信じられないと思うが」
「アイラ様に!?どういうこと!?」
沙織には、昨日の遺跡での出来事を全て話した。
アイラから聞いたことを、覚えている限り。
「アイラ様が生きている……って言うのも変だけど、まだこの世界に存在しているなんて……」
「驚きだろうな。俺自身、実際に目にしているはずなのに、未だに現実みが無い……」
そして、アイラの言っていたことを思い出した時、1つの仮説が浮かんだ。
アイラ・ムーと武藤愛羅。
2人の姿は重なり、酷似しているのがわかる。
愛羅は言うなれば、幼さが残るアイラ・ムーという印象だ。
「アイラ・ムーが『力』としての存在なのだとしたら、もしかしたら『心』としての存在は…」
彼女のことを思い出していると、沙織が何かに気づいてはテントの幕を開いて外に出る。
「な、何これ!?」
その声で意識が現実に戻り、俺も外に出る。
見れば、そこには蛮族のような衣装をした褐色の肌をした集団が俺たちのことを囲んでいた。
「な、何なんだ、おまえたちは!?」
警戒心を露わにして問いかければ、中央に居たワニの頭部をした大男が前に出てくる。
「ここは俺たちの縄張りだ。勝手に入ってきておいて、知らぬ存ぜぬは通用せんぞ!」
手に持つ槍の先を向けてきては、敵意を露わにしてくる。
「我が名は野獣王ヴァラバ!ここは俺の国だぁ!余所者が我が物顔で居座るんじゃあねぇぜ‼」
もはや、話は通じないのは明白だ。
沙織はテントより、持参していた刀を取り出しては柄に手をかけようとする。
「ほぉ?女、おまえは勇敢なようだ。この人数を前に、果敢に挑もうとするとは」
「おまえたちなんて、怖くないわ!敵対するなら、この刀の錆《さび》にしてくれる!」
刃を抜いては、闘志を露わにする沙織。
一触即発しそうな空気の中で、俺はヴァラバを睨みつける。
「ん?この王を睨みつけるとは、不届き千万‼許せぬぞ‼」
昨夜の獣たちとは違う。
獣であれば、強者には本能が働いて戦うことを止める。
しかし、こいつらは本能すらも狂気に染まっているように見える。
戦う意志がないことを示そうとも、意味がないことだった。
そうであれば、少しでも情報を得た方が良い。
「おまえたちは、あの遺跡のことを知っているのか?」
遺跡の方を指さして問いかければ、ヴァラバは怪訝な顔を浮かべる。
「あの古びた遺跡が気になるか?全ては、あの遺跡が急に地面から出てきた時に始まったのだ」
どうやら、この男はジャングルに起きている現象のことを知っているようだ。
「あの遺跡が出現してから、その存在を隠すように森の自然が急成長してはこのジャングルを生み出した。それだけではない。おまえたちがどのようにして、この場所に入ったかは知らんが、あの遺跡の影響によって俺たちは力を手に入れたのだぁ‼」
そう言って、蛮族どもの姿が変化する。
それは獣人のような悪魔の姿だ。
「まさか…デーモン!?」
俺の驚愕の声に、ワニのような獣人の姿となったヴァラバはクックックと笑う。
「あの遺跡には、強大なパワーが蓄えられている。そして、その力に当てられた人間は、その力に適応するために人間としての姿と別のものを手に入れるのだぁ‼」
力に適応するための進化。
それによって、デーモンに姿が変わったというのか!?
だからこそ、力に呑まれて狂気に歪んだのだろう。
ヴァラバは俺を、そして沙織を見ては指さしてくる。
「男は殺す!女は犯してから殺す‼おまえたちに、俺の国に侵入したことを後悔させてやろう‼」
ヴァラバからの「かかれー‼」という号令と共に、獣人たちが襲いかかってくる。
しかし、奴らは知らない。
この俺もまた、悪魔の力を持つ存在だということを。
俺は右手に魔王の紋章を浮かばせ、地面に手を付ける。
「デビルっ‼」
地面に魔法陣を展開し、漆黒の翼竜を召喚する。
そして、翼竜と同化しては灰色の竜人の鎧に包まれ、兜からは銀色の長い髪が伸びる。
「俺の名はダンテ……またの名を、デビルマン・ゼノン!おまえたちが悪魔の力を使うなら、こっちもそれに対抗させてもらう」
野獣軍団との戦いの火蓋が、切って落とされる。