DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
愛羅に促されるままに、隣に腰を下ろす。
横目を向ければ、彼女の顔から始まって下に視線が移る。
その豊満で形の良い乳房、乳首、へそ、陰毛のない股間へと進んでいると、愛羅はフフっと笑う。
「1回スッキリさせたのに、まだ物足りないの?」
「いや、そうじゃない……。おまえが綺麗で、思わず……見てしまうんだ。不快な思いをさせたなら、すまない」
謝りつつも、彼女に身体を向けてはマジマジとその顔を凝視してしまう。
「愛羅……おまえは綺麗だ。俺がこれまで出会った、誰よりも……そう思える」
頬を染めながら、俺は正直に彼女を褒める。
「ダンテ…」
愛羅は俺の名を呼び、同じように見つめてくる。
「大切な人が居るんでしょ?私にそんなことを言って良いの?」
彼女は試すかのように、そう問いかけてくる。
沙織の顔が頭にチラつき、目を閉じては険しい顔を浮かべてしまう。
「俺にとっては、生きる理由を与えてくれた存在だ。だから、悲しませたくはない……。だが、俺はこの気持ちに嘘はつけない!……ついてはいけないと、何かが訴えているんだ」
彼女の両肩に手を置き、真っすぐに目を見つめる。
「愛羅……改めて言うぞ。おまえは綺麗だ、美しい」
「……ありがとう。あなたからそう言ってもらえて、本当に……嬉しいわ」
はかなげな笑みを浮かべ、感謝を口にする愛羅。
そして、そのまま時が流れていると、彼女は後ろの岩山に背中を預けてはリラックスする。
「私に会いに来たのは、そんなことを伝えるためじゃないでしょ?私に聞きたいこと、あるんじゃない?」
そう言っては、重要な話をする方に誘導してくる。
そうだ。
彼女に会えた嬉しさで、目的を見失うところだった。
俺には、確認すべきことがある。
「愛羅……おまえは、このジャングルに住んでいるのか?だとしたら、詳しい話を聞きたい」
情報収集のために、愛羅に協力してもらいたい。
そう口にすれば、彼女は首を横に振る。
「私もこのジャングルに来たのは、つい最近なの。でも、あなたよりは情報を持っているかもしれないわね」
彼女の表情が、真剣なものに変わっては上に広がるバリアを見る。
「まず、このバリアは私のような特殊な血を引く人間以外は通そうとはしない。その名もムーボーダー。ムーの血を引く者を守るために、発動しているのよ」
「ムーの血?」
怪訝な顔を浮かべて聞き返せば、彼女は説明する。
「大昔に栄えていた島国、ムー大陸。そこには未知のオーバーテクノロジーが存在したと言われているわ。そして、その力を引き出すことができるのはその大陸に居たムー人の子孫だけ。私はその血を継いでいるのよ」
ムー大陸のオーバーテクノロジー。
ムーボーダーがムー人かどうかを選別するものであるのだとしたら、あの時の違和感に説明がつく。
「それだとすれば、沙織は……ムー人の
沙織の名前を出せば、愛羅が問いかけてくる。
「その沙織って人が、あなたの大切な人?」
「ああ、俺が王になると誓った、最初の相手だ。彼女の生きる理由を示すことができるように、俺は王になることを目指している」
抽象的な言い方だが、彼女はそれに対して笑うことはなかった。
「そんなに好き?沙織さんのこと…」
「……わからない。大切な存在だとは思っている、かけがえのない存在だとも。しかし、これが好きという感情なのかと言われれば……形容し難い」
多分、そんな簡単な一言では終わらせられないんだ。
沙織は俺の命の恩人であり、今は共に王の道へと進むことを決めた同士だ。
ただの好意では収まらない感情が、彼女にはある。
「難しく考えなくて良いのに。素直に、あなたの気持ちを伝えれば良いのよ。私のことなんて、気にしないでね?」
そう言ってウインクしてくる愛羅に、俺は表情を曇らせる。
先程、奉仕を受けたことを言っているのだろう。
こんなことを、彼女に言えるはずもない。
「そんなことより!……ムーの力のことを、教えてくれ」
話が脱線したので、元に戻す。
「例えとして、ムーボーダーを出したけど、ムーのテクノロジーはそれだけじゃないわ。他にも多くのテクノロジーがあるけど、そのどれもが現代の科学じゃ説明できないものばかり……。そして、それを今扱っているのは、ムーの後継者を名乗る集団『エルドラド』」
エルドラド。
ここにきて、先程のヴァラバと別の組織の名前が出てくる。
「そのエルドラドが、このムーボーダーを展開しているのか?何のために?」
「それは私にもわからないわ。でも、平和利用しようとしているとは、私には思えない……」
愛羅もエルドラドには思う所があるのだろう。
表情が険しくなっている。
「つまり、ヴァラバだけではなく、エルドラドという組織もきな臭い相手であるということか……」
ヴァラバ軍団だけでなく、エルドラドにも注意を向けなければならないことを理解した。
「ムー人全てが、悪だとは思わないで。私はあの力を、可能であれば……平和のために使いたいと思っているわ」
「……その言葉、信じよう」
愛羅の覚悟が伝わり、それに不信感は無かった。
「ヴァラバも危険な存在だけど、エルドラドも同じように危険よ。戦うつもりなら、絶対に油断してはダメ。何をしてくるか、わかったものじゃないわ」
「わかっている。俺もこんなところで死ぬつもりはない。俺の目指す王となるまではな」
「王……」
俺の言葉を復唱し、愛羅は聞いてくる。
「あなたの目指す王……その答えは、見つかったの?」
「まだ、わからない。だけど……」
自身の右手を見つめながら拳を握り、目を閉じる。
「人と悪魔が、共に生きられる世界……。俺はそれが実現することを願っている」
それは前世の俺が、認められなかった願いでもある。
ゼノンの力を受け継ぎながら、俺は悪魔だけでなく人間も救いたいと思っている。
「そうなのね……。とても素晴らしい夢だと思うわ」
愛羅は俺の言葉を戯言だと否定せず、受け止めてくれた。
ーーーーー
温泉での入浴を終え、俺は乾燥した衣類を身に着け、愛羅はローブに身を包む。
「じゃあ、またね」
彼女は小さく手を振り、別れの言葉を口にする。
「どうしても、俺たちとは行かないのか?」
「私は……ダメなのよ。1人の方が気楽なの。沙織さんに、よろしく言っておいて?」
そう言って、彼女は森の中に行ってしまう
この時、俺は自分の中から湧き上がる衝動を抑えることができなかった。
彼女を追いかけ、ギュッと後ろから抱きしめてしまう。
「えっ…‼ダンテ!?」
突然のことに、動揺が隠せない愛羅。
「すまない……。しかし、こうせずには、いられなかった」
俺は彼女を強く抱きしめながら、耳元で今の気持ちを口に出す。
「俺はおまえに死んで欲しくない。誰かがおまえを殺そうとするなら、必ず助けたい。だから……危険を感じたら、俺の名を呼んでくれ」
「……ありがとう、ダンテ。とても勇気が出たわ」
その手を離せば、愛羅は今度こそ行ってしまった。
ーーーーー
愛羅の姿から、木陰にて沙織に戻った後のことだった。
「ふうぅ……ダンテったら、あんな大胆なことをしてくるなんて。時々、男らしくなるんだから」
ウィックの位置を正しながら、ダンテの下に戻ろうとすると、その後ろから「クックック」と不気味な笑い声が聞こえてくる。
「おまえの秘密を見たぞ、ムーの血を引く者よ」
その声が聞こえ、振り返れど誰も居ない。
「羨ましいなぁ、羨ましいなぁ~。幸せそうな奴を見ていると、絶望に突き落としたくて仕方がねぇぜ」
森の中に響く声は、段々と沙織に近づいてくる。
「だ、誰!?どこに居るの!?」
額から汗を流しながら問いかければ、背後から間近で声が響く。
「ここだよ、お嬢さん」
真横には、カメレオンのような獣人の顔があった。
「おまえは―――んんっ‼」
大声をあげるまでもなく、口と鼻をその手で防がれては酸素が頭に回らずに気を失ってしまった。
「ヴァラバ様からの命令だ。おまえをあの方の下に連れていく。ダンテに地獄を見せるためになぁ」
沙織がずっとひた隠しにしていた真実。
それが今、敵によって暴かれようとしていた。
ーーーーー
俺がテントに戻った時、布に大きくこう書かれていた。
『おまえの大切なものはもらった。奪い返してみろ。ヴァラバのアジトで待っている』
大切なもの…?
沙織のことか…‼
やはり、共に行くべきだった。
判断が甘かった。
これは俺の失態だ…‼
「今助けに行くぞ、沙織…‼」
俺はデビルマン・ゼノンに変身すると同時に、翼を広げてヴァラバのアジトに向かった。
しかし、この時の俺は気づいていなかった。
本当に大切なものの存在に気づいた時、1つの決断が迫られることになることを。