※この作品はR-18です。

DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~   作:カナト

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囚われの女王

 ダンダンダダダンッ、ダンダンダダダンッ、ダンダンダダダンダンっ‼

 

 太鼓の音が響き渡る中で、野蛮人どもが松明(たいまつ)を持って踊り舞う。

 

 ここはヴァラバ軍団のアジトであり、その中央には1人の女性が身体を縛られた状態で捕らえられている。

 着ていた衣服と下着は剥ぎ取られ、全裸のまま縄で木の柱に括りつけられている。

 それも亀甲縛りで、両手は頭上に、両足は後ろに股を開くようにして縛られている。

 

「まさか、ムー人の血族がこのような形で野放しになっているとは思わなかったぞ。俺たちもエルドラドの奴らには、煮え湯を飲まされてばかりなもんだな」

 

 ヴァラバが舐め回すように、愛羅の身体を見てはクックックと笑う。

 

「それしても、良い身体をしてやがるぜ。ダンテへと屈辱を晴らすには、打ってつけの道具だ」

 

 彼女の頭に付いていた緑髪のウィックを持ち、ハンっと笑う。

 

「あの男も間抜けだぜ。髪型が違うだけで、別人だと思うなんてな。それとも、これにもムー人の力が宿っているのかぁ?」

 

 沙織の姿になっている時、確かに愛羅の身体は少し引き締まっている。

 戦士としての自分をイメージし、そのウィックを着けることで愛羅としての自分から変化させているのだ。

 だからこそ、体型と髪の色が変われば、彼女だと気づく者は居ないのも当たり前だった。

 

 蛮族たちが、担いできた男たちの生首を彼女の前に並べる。

 

「それに女よ……おまえの本当の名は、愛羅と言うらしいな?エルドラドの兵であるこいつらが、うわ言(ごと)のように言っていたぞ?女王アイラ様、我らをお救いくださいってなぁ?どうやら、おまえは奴らにとっては重要な存在らしい」

「っ!?」

 

 死んだ者たちの顔の見開いた目が、彼女をすがるように見ている。

 

『アイラ様…』

『救いを…』

『我らが女王、そのお力をぉ…‼』

 

 その思念が、愛羅に伝わってくる。

 それによって、身が震えだす。

 

(違う…やめてっ…‼私はっ……私はアイラじゃない…‼)

 

 ムーの女王。

 それが愛羅の本当の姿。

 ムー人にとって、彼女の存在は希望そのものらしい。

 そして、そんな彼女を手に入れた高揚感から、ヴァラバの目が燃える。

 

「ムー人の女王が、こんな恥ずかしい姿をさらして良いのかな?ウッヒッヒ」

 

 下品な笑い声をあげながら、愉快そうなヴァラバを愛羅はキッと睨みつける。

 

「私は自分を女王などと言ったことはありません。それに恥ずかしくなんかありません。私はもう、男の人に見られることには慣れています!」

 

 自身の裸を見られようとも、彼女は堂々とした態度で語り掛ける。

 

「むしろ、恥ずかしいのはあなた方でしょう。このようなバカげた行為が、恥ずかしくないわけがない!」

「何だと!?」

 

 涙を流しながらも、愛羅は訴えることを止めない。

 

「悪魔と呼ばれる存在が現れ、それによって世界がどれほど荒れ果て、変わろうとも!法が無意味になるほどの、力の時代が訪れようとも!人には人の道があるはず。何故、これほどまでに人の道を踏み外すのですか!?あなたには、人の心が無いのですか!?」

 

 彼女がいかに訴えようとも、ヴァラバやその周りの蛮族どもには届かない。

 

「人ならざる力に呑まれ、心までケダモノになりましたか!?蛮族の格好をした部下に人殺しを命じて、自らの牙や爪も血に染める‼あなたの身も、その心も、あなたが死なせた人の血であふれている!それでも平気なの!?それでも、人として恥ずかしくないと言うの!?」

 

 泣きながら人としての在り方を語ろうとも、彼らの下品な笑みは変わらない。

 

「フフフ、まぁ良い。さすがは女王。弱そうに見えてもシンは強いと言いたいわけだ。しかし、そのぶん、いたぶりがいがあるというものだ。フヒヒヒ」

 

 そう言っては、ヴァラバは愛羅に歩み寄っては手を伸ばし、彼女の柔らかい乳房を掴む。

 

「あぁんっ‼」

 

 むにゅむにゅっと揉み回し、頬を紅潮させる愛羅の顔に涎を垂らす。

 

「それに口では恥ずかしくないと言い張っても、顔は恥ずかしいと言っているぞ!胸を揉まれただけで、生娘(きむすめ)のような反応をしよって‼」

 

 ヴァラバは乳房から手を離せば、彼女の口を強引に開かせては木製の口枷を噛ませて紐(ひも)で固定される。

 

「んぐぶぅ‼」

 

 怒りで叫ぼうとしても、口は開かずに声を発することもできない。

 

「クックック。これからとことん、恥ずかしい想いをしてもらおうではないか、ええ?女王アイラよ‼」

 

 ヴァラバが獣の本性を露わにし、襲いかかろうとしたその時――――。

 

 ズドオオォーンっ‼

 

 地響きが起きては、周囲に居た蛮族たちの動きが止まる。

 

「貴様らぁ……何をしている!?」

 

 上空から飛来したのは、灰色の竜人。

 その身体から発されるオーラは、荒々しくも周囲に放出されていた。

 

 

 ーーーーー

 

 

 空から地上を見た時、その光景を見て俺は思わず地面に衝突する形で着地した。

 

「んぶんっ‼」

 

 木に縛り付けられている愛羅が、口に枷(かせ)を着けられた状態でこちらを見てくる。

 それだけでなく、ヴァラバが俺の到来に対して、クックックと不気味な笑みを浮かべる。

 

「思ったよりも速い登場だったな、ダンテよ?」

「ヴァラバぁ…‼」

 

 周りに沙織の姿は無い。

 しかし、何故、愛羅が奴らに……。

 

「沙織だけでなく、愛羅まで…‼貴様、決して許さんぞ!?沙織はどこだ!?」

 

 探せど見当たらない彼女の名を呼べば、ヴァラバはその手に持つ物を見せてくる。

 

「沙織とは……この緑色の奇妙な鬘(かつら)のことかなぁ?」

 

 緑色の髪をしたウィックを見せてきては、それに俺はマスクの下で怪訝な顔をする。

 

「何だ、それは……確かに、沙織と同じ髪の色をしているが…‼」

 

 ヴァラバはそれを愛羅の頭に近づけては、無理矢理付けようとする。

 

「んんんっ‼んぼぉー‼」

 

 彼女は頭を動かして抵抗するが、それも虚しくウィックは彼女の頭部に装着されてしまった。

 すると、その姿が変化する。

 

 華奢(きゃしゃ)で細身な黒髪の女から、少し筋肉質な緑髪の女へと。

 

「沙織!?これは、一体……何故!?」

 

 愛羅の姿が、沙織へと変化する。

 それが意味することを、ヴァルバは言葉にして説明した。

 

「沙織などという女は、初めから存在しなかったのだ。おまえは、この女に騙されていたのだよ、ダンテ‼」

 

 沙織が……存在しない…?

 それなら、愛羅は……。

 最初から、俺と一緒に居たということなのか?

 

 ウィックは再度外され、姿が愛羅のものに戻る。

 

 彼女は涙を流しながら目を伏せ、俺と目を合わせようとしない。

 

「愛羅……」

 

 今、彼女は拘束されていることで言葉を発することができない。

 そんな中で、答えを知ることなどできなかった。

 

 そして、この一瞬の隙を敵は見逃さなかった。

 

「かかれー‼」

 

 蛮族どもが一斉に獣へと姿を変え、俺へと襲いかかってくる。

 この時、俺はもうゼノンの技を使うほどの余力は残っていなかった。

 朝の戦闘による消耗は、回復していなかったのだ。

 

「うがふっ‼」

 

 熊のような悪魔に、顔面を殴られる。

 

「げぶぐっ‼」

 

 オラウータンのような悪魔のハンマーと化した腕で、腹部を殴られる。

 

 獣と化した蛮族たちの力に、成す術もなく蹂躙(じゅうりん)される。

 

「クックック。やはり、おまえにダメージを与えるべきは、身体よりも心の方が容易かったようだなぁ‼おまえの大切な存在、確かにこのヴァルバが頂いたぞぉ‼」

 

 朝の屈辱を晴らすかのように、ヴァルバは愛羅の後ろに回ってはその左右の乳房を下から鷲掴みにし、揉み回す。

 

「んぶふおぉ‼」

「けっけっけ。こんな良い女、独り占めにするなんてもったいないぜ。俺にも、味見させてもらおうかぁ!?」

 

 そう言っては、彼女の頬をベローンっと舐める。

 

「やめろっ…‼愛羅にっ…触るなぁー‼」

 

 マスクの下で泣けど、叫べど、状況は変わらない。

 俺は無力だ。

 たった1つの真実を知っただけで、成す術も無くやられてしまっている。

 

 明人なら、こんな状況でも打ち破ることができたのだろうか。

 甲牙であれば、真実を知っても割り切り、戦うことができたのだろうか。

 

 しかし、俺は沙織の……愛羅の秘密を知っただけで、動揺を隠すことができずに心が打たれてしまった。

 

「俺は……俺はぁ…‼」

 

 地面に倒れ、巨大な像の悪魔によって背中を踏みつけられる。

 

 こんな無様な姿を晒して、何が王だ…‼

 俺は、何のために戦う?

 何のために、王を目指した!?

 

 その全ての前提が覆されそうになった時、沙織と愛羅の姿が重なった。

 

『「ダンテ、あなたは何のために……どんな王を目指すの?」』

 

 彼女は沙織の時も、愛羅の時も俺の王としての在り方を問いただしてきた。

 その答えが今、見つかりそうな気がした。

 

「沙織…愛羅……お(・)ま(・)え(・)が、どちらであろうとも……俺の答えは、変わらない…‼」

 

 地面に両手を着き、象の足を振り払いながらもう1度立ちあがる。

 

「俺は……おまえと共に、歩んでいきたい‼おまえの生きる理由を捜すと、約束したはずだ‼その約束は、変わらない‼」

 

 全身のオーラの性質が、灰色から紺色のものへと変わっていく。

 

「俺の目指す王……。それは、おまえと共に笑える世界を創る者だ‼俺は忘れない、おまえが俺に向けてくれた笑顔を‼」

 

 今、彼女は悲しみの表情をしている。

 俺の欲望は、1つだけだ。

 

 愛羅の笑顔を、偽りのない彼女を……取り戻す‼

 

「だから……俺に、そのための力を…‼俺の力を、今、ここでぇー‼」

 

 前世の俺(ゼノン)の力は使えない。

 しかし、俺自身の魔王の力が今、内側から解き放たれようとしている。

 

 重装だった竜人の鎧に、ヒビが入る。

 

「俺は……魔王ダンテ‼その真の力をぉー‼‼‼」

 

 俺の意思に呼応するように、背後から紺色に輝く光の柱が空に向かって伸びる。

 それは遺跡から伸びており、その光は真っ直ぐに俺に向かって降りてきた。

 

 そして、その光は俺の身体を照らして包み込んだ。

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