DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
デビルマンとしての任務をこなしながら、俺は今了さんの住んでいるマンションの一室で生活をしている。
両親には何も言っていない。
了さんに相談したら、『ここのマンションを使ってくれ』と言ってくれたのでそれに甘えた。
昼の学校。
教室の窓側の席で外を見ながら、昨日マンションの最上階で了さんと話したことを思い出している。
『当面は人間を無差別に襲うデーモンを狩り続けることが主体となるが、こちらでも裏で操る者の動向は探るつもりだ。君は俺からの指令がないときは、普段通りに学校生活を送ってくれ』
『いつも通りですね。仕掛けられる側じゃなくて、そろそろ仕掛ける側に回った方が良いんじゃないですか?』
『その意見は最もだが、敵の情報が少ない以上は動きようがないからな。ジュンや部下のデーモンたちに情報偵察を頼んでいるが、それの結果が来るまでは耐えてくれ』
『……了解です』
敵の動きがあってから行動に移す。
デーモンの全てが人間に対して害を与えているわけじゃないことは知っているが、それでも何の罪もない人間が奴らに殺され、犯され、食われていることに変わりはない。
今、目の前に広がる平和な風景が、何時血に染まるかわからない。
それなら、人間の姿で紛れているデーモンの存在を知らせた方が良いのか?
いや、そんなことをすれば、本当の地獄になりかねない。
人間同士の疑心暗鬼が広がり、ただ平穏に暮らしたいと思っているデーモンも殺されてしまう。
そして、どこかに居るかもしれない俺やジュンさん、鈴屋冬夜以外のデビルマンも……。
ネガティブ思考になっていると、朝礼のベルが鳴って担任が入ってくる。
その後ろには、白いストレートの髪をした男。
担任が黒板に『白藤隆一』と縦に名前を書く。
「えー、今日から来た転校生を紹介する。ほら、自己紹介を」
促されれば、白髪の男は教室を見渡してその中で俺と視線が合うと一瞬目を細めたが、すぐに笑顔を作る。
「白藤隆一です。みなさん、よろしくお願います」
白藤は廊下側の一番後ろの席に座り、俺に視線を送ってきた。
それに気づいて俺も奴を凝視すると、お互いに同時に視線を逸らす。
何だ、さっきの……。
デーモンが放つ雰囲気は感じない。
それでも、人間と呼ぶにはあまりにも殺伐とした空気を感じさせる男だ。
何も起こらなければ、良いんだけどな……。
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昼休み。
俺は屋上で美佐樹と弁当を食べている。
一応、家以外では恋人として一緒に居ることが、俺たちの暗黙の了解となっているのだ。
「悪いな、美佐樹。いつも弁当持ってきてもらって…」
「良いの、あたしが好きでやってることなんだから。彼女からの好意にくらい、素直に甘えておきなさいな」
「あ、あぁ」
彼女からの好意、それは確かに嬉しい。
素直に感謝はしている。
しかし、このハート型のピンク色の梅ごはんの上に『LOVE』と書くように海苔がはられており、タコさんウインナーやオムレツなどのメニュー。
気合が入り過ぎていて、他の奴に見られたらネタにされること間違いなしの痛い弁当になっているということに気づいてほしかった。
まぁ、美味いんだけどさ。
それと誰にも見られたくないと思うのは別の話だ。
しかし、俺のその小さな願いは、一瞬感じた寒気と共にはかなく崩れ去った。
「愛妻弁当かぁ。羨ましいことで」
後ろから聞き覚えのある男の声が聞こえてこれば、美佐樹を俺の後ろに引き、制服の前を開けてベルトを露わする。
その動きを見て、褐色の肌をした男は両手を上に挙げる。
「おまえ……どうして、ここに?」
「おいおい、いきなりその敵対心むき出しの反応は無しだろ?こっちはただ、挨拶とお詫びに来ただけなんだからさ」
「何が挨拶と詫びだ?おまえが操られていたことは理解しているが、俺だけならともかく、美佐樹の前にまで現れやがって……。どういうつもりだ?鈴谷冬夜」
鈴谷は俺の警戒を無視し、後ろに居て少し震えている美佐樹に「こんちわー」と軽く手を振る。
「だから、その謝罪に来たんでしょ?怖い思いをさせてごめんなさいって。サタン様からやっと監視付きの外出許可が出て、真っ先に来たんだかーー」
「おまえ、ちょっと1回黙れ!!」
奴の首の後ろを掴み、1度美佐樹に聞かれない距離まで離れて小声で話す。
「美佐樹の前で了さんのことは話すんじゃねぇよ」
「それは何で?君がデビルマンだってことは知ってるし、俺が君と同じことも彼女は知ってるんでしょ?」
「了さんのことは話してないんだ。話したら……俺が転生者だとか特異点がどうとか、話さざる負えなくなる」
「……あ~、デビルマンってだけでも驚きなのに、文字通り世界規模で大きな話になるからってことね。ますます大切な彼女が心配しちゃうっと」
「わかってるなら、話すなよ?」
「はいはい」
鈴谷に口止めをしておき、改めて美佐樹とこいつを対面させる。
「美佐樹……その、こいつは―――」
「どうも、お久しぶりですぅ。俺、お宅の彼氏さんと同じでデビルマンの鈴谷冬夜って言います。いつぞやはも~う、失礼なことばかりしてしまって……この通り、反省してるので……ね?仲良くしてくれません?」
誰かに操られていた時よりも、こいつノリが軽い。軽すぎる。
こんな奴の言うことを、美佐樹が聞くわけが……。
「この前のことは気にしないで?鈴谷くん、こちらこそ、明人ともども仲良くしてね」
こっちもそう来たかぁー。
どうして、こんなに適応が速いんだよ。
2人は早速会話が弾んでおり、もはや前からの友人のようだ。
いつもとは違う意味で頭が痛い。
「それにしても、鈴谷おまえ……どうやって屋上まで来たんだよ?学校は関係者以外は立ち入りできないんだぞ?」
「あ~、俺も飛行能力があるから。それを使ってちょちょいと」
「デビルマンの能力を人前で使うなよ!?」
「だって、いろいろと便利だし。それに、人前じゃ使ってないし」
さっきの言葉から、了さんからの監視の目はあるらしいから、それは本当だろう。
2人が仲良く会話しているところを眺めながら、俺は空を見上げる。
そういえば、最近はデーモンとの戦い続きで、こんなアホらしいことでって思えることで疲れることはなかった。
いや、もしかしたら人生で初めてのことかもしれない。
誰からも避けられて、こんな誰かを見て、バカらしいとか、理解できないって思いながらも心が安らぐような感覚を覚えることはなかった。
こんな人間じゃない俺のことを受け入れてくれる者が居たから、今はこんなことでも不器用ながら笑うことができる。
こんな日常も悪くないと思える。
そう思っていた時、誰かが階段を上がってくる音が聞こえてくる。
そして、その上がってくる誰かの雰囲気に、朝礼の時間から感じていた危険な感覚を覚えている。
「鈴谷……美佐樹を連れて、ここから離れてくれ」
「……え?」
「急げ。不法侵入で訴えるぞ!!」
俺の必死な態度で通じたのか、美佐樹は戸惑っていたが鈴谷は彼女を背負って宙に浮き、人目がないうちに屋上から降りてくれた。
階段を上りきり、その者は屋上のドアを開けて出てくる。
そして、口を開いての第一声はこうだった。
「まさか、こんな所で自分と同じ者に会えるとは思わなかったよ」
それがどういう意味かは、いや、どっちの意味だったのかは、その時の俺にはわからなかった。
しかし、この目の前に居る男が危険な存在であるという直感はあった。
「白藤……隆一」
「内海明人……くんか」
俺たちは、互いに自分たちが同種だと察した。
それと同時に俺自身は、この白藤という男に自分と似た何かを感じた。
得体のしれない、大きな存在として。
この新キャラの登場によって、運命はかき乱される。
破壊か、修正か。