DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
森の中を、馬に乗って駆ける一団あり。
その戦闘を走るのは、深紅の髪をボブカットにしている女戦士ソニア。
「ソニア隊長!前方を!」
「うむ、わかっている」
部下の1人からの進言に頷き、部隊は目的地に近づいて馬を止める。
「ここはヴァラバ軍団の集落であったはずだが……本当に、
そして、建物の中から1人の女性が姿を現した。
白いローブに包んでいる、腰まで長い黒髪をした可憐な女性だ。
「あなたたちは……ムーの民ですね?」
その姿を見ただけで、ソニアは目を見開いた。
「まさか、本当に……この地にいらしていたとは…!?」
互いに自己紹介もしていないにも関わらず、彼女には目の前に居る女が何者なのかを感じ取った。
そして、膝を付いては
「エルドラドの目を
ソニアに続くように、後ろに居る部下20人も同じ体勢を取る。
女王アイラの前に、ムーの血が流れる者は
しかし、彼女たちの態度に愛羅は目を
(仕方のないことだけれど、この人たちはやはり、私のことをアイラ・ムーの転生者としてしか、見ていないのね……)
その事実に悲しさを覚えつつも、彼女はソニアたちの求める振る舞いで応えた。
「エルドラドの目を掻い潜り……と、言いましたね?あなたたちのことを、聞かせてはいただけませんか?」
話を切り出すように促せば、ソニアが口を開いた。
「私の名はソニアと申します。エルドラドに身を移しておりましたが、私の忠誠は幼少の頃より、アイラ様に命を捧げる覚悟。この身に代えても、あなた様をお守りするのが役目……。それは、ここに居る皆が同じ気持ちです」
忠誠心を言葉にすれば、愛羅は「頭を上げてください」と優しく告げる。
「あなたたちは、私の力を求めてここに来た……という理解で良いでしょうか?」
「はい。エルドラドを統べる元老院は、あなた様の到来を民たちにはひた隠しにしておりました。しかし、ムー人としての共鳴が、私たちをここに導いたのです。真の主が現れた今、
ソニアは強い眼差しで女王を見上げる。
その真っ直ぐな視線を、愛羅もまた目を逸らさずに受け止める。
「私も独自の調査で、エルドラドがムー人の末裔を語る組織であることは承知しています。詳しく、話していただけますか?私たちの目的は、同じはずですから」
女騎士をアジトの中に入れ、他は外の警備に当たる。
「アイラ様がヴァラバ軍団を崩壊させたことは、少しずつですがエルドラド内のムーの民にも広まっています。しかし、あの野蛮人どもをアイラ様おひとりで……」
「いいえ、ソニア。私1人ではありません。私には、ずっと共にあり続けた心強いパートナーが居たのです」
アジトの中央に通されれば、そこには石でできた玉座に座る男が居た。
「待たせましたね、ダンテ」
「いや、来訪者の出迎え、ご苦労だった。愛羅」
愛羅が立っており、ダンテが玉座に座っている状況。
アイラを女王と仰《あお》ぐソニアにしてみれば、受け入れがたい光景であった。
「貴様、アイラ様の前で玉座に座るとは何事だ‼その汚いケツを
腰にさしている剣を抜こうとするが、それを愛羅が「ソニア!」と強く名前を呼ぶことで
そして、彼女は膝をついては謝罪する。
「この者の無礼をお許しください、魔王ダンテ。どうか、ご慈悲を」
首《こうべ》を垂れて慈悲を請えば、ダンテは「気にするな」と言って手を軽く上げる。
「アイラ様、お止めください‼このような男に、頭を下げるなど‼」
ソニアが
「この方は、私が生涯をかけてお仕えすると決めたお方です。無礼は許しません」
淡々とした物言いで言えば、戸惑いが隠せないソニアに言葉を続ける。
「あなたは、私がヴァラバ軍団を崩壊させたと聞かされたのでしょうが、真実は違います。ヴァラバ軍団を壊滅させた張本人は、そこに居られる魔王ダンテ様なのです」
聞いていた事実が覆され、彼女は「そんな…‼」と驚愕の声を漏らす。
そして、ソニアが改めてダンテの方に目を向ければ、彼の身体から放たれる
(な、なんという覇気だ…‼これが、魔王と呼ばれる男の力!?)
ただ座しているだけのダンテに、彼女は一歩引いては身体が震える。
「ソニア……と言ったか?」
名前を呼ばれれば、ソニアは背筋に悪寒が走ると同時に姿勢を正す。
「おまえの無礼を許し、話すことを許そう。おまえたちが、ここに来た目的を話せ」
それは促しではなく、命令。
魔王からの勅命に、ソニアは「は、はい…」と返事をするしかなかった。
そして、彼女は話してくれた。
エルドラドの実態を。
エルドラドは、ディーンと呼ばれる男がムーのテクノロジーを発現させたことで発足した国であること。
その目的は定かではないが、今は外と隔絶した世界を敷いているが、いずれは外界に出ることも視野に入れていることが
そして、エルドラドは完全なる実力主義の集団であり、失敗を絶対に許さない。
統治者である元老院と、最高権力者であるディーンの権威は絶大。
アイラ・ムーへの信仰を廃止し、ムーの民とその力を支配している。
「しかし、全てのムーの民がエルドラドの思想に染まったわけではありません。いつか、アイラ様がこの地に引かれることを信じて、じっと耐え忍ぶ者たちも存在します。また、エルドラドに反乱を起こそうとした者たちも……」
アイラを信じて耐え忍ぶ者と、エルドラドに反旗を翻そうとした者。
エルドラドも、一枚岩ではないようだ。
「その者たちは、今はどこに?」
「内乱を起こした者たちは、見せしめとして生かされています。場所はここより南方にある、八稜郭《はちりょうかく》と呼ばれる
女王アイラを信仰する者たちを、囚人として彼女を信仰するために建てられた場所に集め、見せしめとする。
とことんまで、アイラの権威を地に落とすことを目的としているらしい。
「八稜郭に囚われた者たちは、今もアイラ様への忠誠心は変わっていません。今でも、あなたの存在は彼らの……そして、私たちの希望なのです。どうか、エルドラドへの反撃の一歩として、我々と共に八稜郭の解放を…‼」
ソニアは愛羅に、そしてダンテに強力を要請する。
「ダンテ……」
憂うような表情で、愛羅は王に問いかける。
その目を見ただけで、答えは決まった。
「……わかった、協力しよう。俺たちも、エルドラドの真意を確かめたい」
「あ、ありがとうございます!ありがとうございますっ…‼」
彼女は深々と頭を下げ、涙を流す。
憧れの女王アイラと、そのアイラが支持する魔王の力を借りることができるのだ。
この上なく、心強い味方を得た想いだろう。
ソニアたちはその後、少しの作戦会議をした後に去って行った。
作戦決行の日まで、エルドラド内の情報をできる限り集めるのだそうだ。
ーーーーー
ソニアらが集落を去ったのを確認した後、俺は緊張が解けては肩から力が抜けて
「き、緊張した…‼」
「威厳だけは立派でしたよ、ダンテ」
そう言って、愛羅は隣に立っては肩に手を置き、労うように軽く揉んでくれる。
「あのソニアという女……本気で俺と一戦交えるつもりだったぞ。アイラ・ムーへの信仰、あそこまで強いものだったとはな」
「それだけ、彼女たちにとってはアイラ様の存在は希望だったんです。それが目の前に現れれば、過剰に反応するのも仕方がありません」
もはや、諦めのような感情が愛羅の目から伝わってくる。
「それにしても、最初に聞いた時は驚いたぞ。ムー人が近づいてきているから、王として振舞ってくれなんて…」
「あのようにしなければ、彼女たちはダンテのことを受け入れようとはしなかったはずです。無用な
愛羅はソニアたちの来訪に気づき、先程の流れを咄嗟に演技するように俺に指示してきた。
あくまでも、自分は魔王ダンテに仕える者であるというイメージを与えることで、俺の存在を強くムー人たちに植え付け、受け入れさせることが目的だったらしい。
そして、その目的は気づかない内に果たされていた。
最初は敵意を感じたが、最後は愛羅と共に俺に対しても平伏していた。
「それにしても、八稜郭への襲撃……。決行は5日後か」
「目的はアイラ様を信仰する王権派の解放。そこから、あわよくば八稜郭を占領することが理想的ですが……」
愛羅は唇の下に人差し指を当て、表情を険しくさせる。
「この作戦は、ダンテに掛かる負担が大きい。いくら、あなたが強いとは言っても……」
憂うような顔になる彼女の手を握り、反対の手を肩に回して抱き寄せる。
「安心しろ、俺は死なない。愛羅を1人残して、死ねるわけがない」
「ダンテ……」
愛羅は俺の手を握り返し、頬を染める。
「それなら、約束をしましょう」
「約束…?」
約束という言葉に、強い決意を感じる。
「この八稜郭の解放が成功したら、私はあなたの我儘を何でも聞きます。ですから、必ず……生きて、私の下に戻ってください。私も必ず、生きてあなたの下に戻りますから」
「……言われるまでもないことだが、約束する。必ず、愛羅の下に戻る。こうして、もう1度おまえを抱きしめるために」
俺たちは互いに笑みを浮かべ、約束を交わした。