DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
ムーボーダーで包囲された領域の南方。
そこには空から見れば八角形に見えるように配置された壁が、地上から高くそびえ立っている。
その司令塔にて、1人の男が廊下を歩きながら部下からの報告を受ける。
「何?アイラ・ムーの転生者が、この地に?ちっ、また余計な手間をかけさせてくれる。また内部に潜む反乱分子が、調子づかなければ良いが……。いや、無理だな、愚行というものは繰り返されるのが人間の
長く青い髪を、後ろでポニーテールにしてまとめている若い男……アラン。
彼はこの八稜郭の監視兼管理を任されている、エルドラドの幹部の1人。
「アイラ・ムーの信仰も、今では無きも同然になってきている。もしも、奴らがこの事実を知れば、必ずその娘に接触しようとするはず……。そして、狙うとすれば、必ずここであろうな」
アランの中で、これから起こるであろう未来の予測が立つ。
反乱分子がアイラ・ムーという希望を携え、囚人たちを解放しにこの八稜郭に乗り込んでくる。
そして、迎える未来は2つに1つ。
無力に希望を奪われ、さらなる絶望を味合わされるか。
あるいは、この地を奪還し、希望の象徴である女王アイラ・ムーの存在を大大的に宣言するか。
どちらにしろ、この八稜郭での戦いの先に、双方の士気が大きく揺れることに違いはない。
「警戒を強めておけ。ネズミどもの侵入を許せば、ディーン様ではなく、私の刃の
そう言って、鞘に納めたサーベルを抜いては部下の目と鼻の先に突きつける。
「は、はい!至急、全軍に伝えてまいります‼」
部下がそう言って離れて行けば、アランは司令室に向かう道中でフッと不敵に笑う。
(アイラ・ムーの転生者…か。さぞ、美しい女性なのだろう。捕らえ次第、すぐにディーン様に報告すれば、私の評価も上がる…‼)
彼はその才覚ゆえに、上昇志向の高い男だった。
ムー人の中でも、その戦闘力は幹部の中でも飛びぬけている。
それゆえに、実力を評価するディーンへの忠誠も強い。
「噂通りなら、ヴァラバ軍団を崩壊させるほどの力を持つ存在。1度、相まみえたいものだ」
司令室に到着すれば、前方を埋め尽くさんとするほどの多くの監視映像が流れている。
「囚人たちの様子は?」
「はっ、変わりありません。アイラ・ムーの復活の情報は、まだ囚人たちには流れていないのでしょう。精気のない状態が続いています」
「そのまま、牙を抜かれた獣のままで居てほしいものだ。私も忙しい身。雑務に手を焼いているわけにはいかんのでな」
そう言っている内に、彼の隣に映像が映し出される。
別の機関からの通信だ。
『アラン、我が息子よ』
「父上!?」
映像に映るのは、中国風の将軍の衣装に身を纏った、黒く長い髭を伸ばした屈強な男。
名はガランと言い、その実力は他の追随を許さずに将軍と呼ばれる器である。
アランは彼の血を引いており、その力に尊敬と共に畏怖の念を抱いている。
『ディーン殿からの
「ディーン様が!?それは本当なのですか、父上!?」
願ってもいない好機に、興奮が抑えられないアラン。
「うむ、あの男はくだらぬ虚言は口にすまい。おまえに期待してのことであろう。我もまた、おまえの働きには期待しておる」
尊敬する君主と父からの期待の言葉に、彼は敬礼で応える。
「はっ!必ずや、アイラ・ムーの転生者を捕えてお見せいたしましょう!」
ガランは息子の答えに満足したのか、「うむ」と小さく頷いた後に映像を切った。
「ディーン様と父上が、私にこれほどまでの期待を…‼必ず、応えなくては」
失敗が許されない身の上に、君主と将軍からの期待というプレッシャー。
それが後に、彼の運命を大きく狂わせることになることを、まだ知る由も無かった。
ーーーーー
約束の5日後になり、森の中で俺と愛羅は、ソニアの部隊と合流する。
「これが、八稜郭……。ここを占領することができれば、エルドラドとの戦う上で大きな役割を持つことだろう」
「しかし、魔王ダンテ。お言葉ですが、事はそう簡単にはいきません」
ソニアは八稜郭を睨みつけながら、拳を握る。
「今まで、何人もの戦士が囚われの者を解放するためにこの
「その難攻不落の伝説も、今日で終わりだ」
自身を奮い立たせるために、強きな発言をしてしまう。
その俺の態度に愛羅は困ったような笑みを浮かべ、ソニアは戸惑っているようだ。
ちなみに、ここに来て愛羅の衣装も変化している。
白いローブから、背中が出ては胸元が縦にへそまで開いている露出の多い白い巫女服に変わっており、ブーツのような具足を履いている。
頭部には太陽を模したような書き飾りが中央に付いており、それが彼女の女王としての気品を高めている。
流石にそのままでは肌寒いのか、赤いマントを身に
「愛羅、その見た目は……大丈夫なのか?いろいろと」
「ええ、問題ありません。不思議と、身体に馴染んでいるんです。初めて着るはずなのに……」
「それは代々、アイラ様の転生者が身に纏う
俺が聞いているのは、そう言うことではないのだが…。
いや、愛羅が納得しているのなら、これ以上は言うまい。
ソニアは俺の方に向き直り、改めて頭を下げる。
「改めてになりますが、ご助力感謝いたします、魔王ダンテ。この作戦が成功した暁には、我々王権派はあなたと共にエルドラドに立ち向かうと約束しましょう」
「そういう話は、成功してからにしよう。俺もおまえたち……そして、愛羅のために、全力を尽くすと約束する」
愛羅の方を見て想いを伝えれば、彼女は静かに頷く。
「それでは、手筈通りに。魔王ダンテ、よろしくお願いいたします」
「わかった」
ソニアと愛羅たちは
「この前はすぐに終わってしまったからな……。改めて、この力を試させてもらおう」
右手に魔王の紋章が浮かび、それを地面に押し付けては紺色の魔法陣を展開する。
「デビルっ‼」
魔法陣からは巨大な人型の魔王の虚像が出現し、俺と同化することで鎧の姿へと変化する。
そして、背中から翼を広げては
すると、警報が鳴っては壁に設置されていた砲台が俺に向かって向けられると同時に一斉射撃が始まった。
「まずは小手調べだな…」
しかし、砲台による射撃は全て、魔王の鎧を貫通することは無かった。
カキンっカキンっカキンっと弾かれるのみで、俺の侵入を阻むほどのものではない。
内部から地上に着地し、周囲を見れば全身に鎧を
『サイコギア迎撃部隊‼侵入者を排除せよ‼』
八稜郭内に響き渡る司令により、
その手には剣や弓などが持たれており、弓兵たちは一斉に
「こちらも暴れなくてはいけない身の上でな。付き合ってもらうぞ、俺の退屈しのぎにっ…‼」
胸部パーツの
ダダダダダダダダッ‼
矢を全て撃ち落とせば、火薬が積まれていたのか爆風が発生して煙が立つ。
そして、煙は右手で一振りしただけで風に流され、フルフェイスの青いツインアイが光る。
「この程度か?」
挑発するように問いかければ、剣を持った戦士たちが迫ってくる。
「嘗めるなぁー‼」
全周囲から一斉に迫ってくるムーの兵士たち。
「楽しませろよ、この俺をぉ‼」
ゼノントリガーを振り回し、全周囲に乱射しながら
ダンッ、ダダダッ、ダダダダダダダッ‼
紺色のビームが飛び、雑兵を
「弾切れを狙え‼あのような連射が、そう長く続くはずがない‼」
ゼノントリガーもまた、俺自身のエネルギーを消費する武器である。
撃ち続けて消耗戦に持ち込まれては、確かに不利になることは必至。
しかし、問題は無い。
胸部にゼノントリガーを戻し、悠然と立ち尽くす。
ここから先は、ステゴロで行く。
「うぉりゃぁあああ‼」
上段から振り下ろされる剣。
その手首を掴んで捻り上げれば、手元から剣が離れる。
それと同時に、俺が剣を逆手で取っては振り上げると同時に目の前の兵の胴体を横に薙ぎ払って斬り伏せる。
「次…‼」
静かに呟けば、命知らずの雑兵どもは自らを顧みずに攻め込んでくる。
「アラン様のために!おまえの首をもらっていくぞぉ‼」
斧を持った戦士は、大振りに横に薙いでくる。
それを手元の剣で受け流しながら、跳躍しては宙に舞う。
そして、落下すると同時に背後から斧の戦士の首筋に突き刺せば、前方に貫通する。
「がはっ‼」
返り血がつきながらも、剣を手放しては次に斧を手にしてはオーラを
ブンブンブンブンっ‼
斧は回転しながらも前方の敵の頭部を、一列に飛ばして宙に舞う。
固有の武装に拘らず、敵の武器をかすめ取って己の力とし、それを最大限に活用する。
そして、倒れた兵士の持つ剣を2本、左右の手に持って構える。
「もっと、俺を楽しませてくれる敵は居ないのか…?」
今の一連の戦いで、群がる雑兵たちを粗方殲滅することができた。
その中で、「待てーい‼」と頭上から声が響いては落下してくる者が1人。
その手にはサーベルを持っており、上段から振り下ろされるそれを2本の剣で受け止めては弾く。
パキーンっ‼
しかし、その時に剣は2本とも折れてしまった。
目の前に着地したのは、紫色の鎧を纏う騎士。
その右手に持つサーベルと、その身体の周囲に展開される3つの円形のシールドが特徴的だ。
「アラン様!?」
雑兵の1人が、奴の名を呼ぶ。
確か、さっきの男もアランと呼んでいたな…。
「私はこの八稜郭の管理を任されている、エルドラドの幹部が1人、アラン。
「……ダンテ」
小さく名乗りながら、ゼノントリガーを胸部から取って構える。
「我が砦を犯し、貴重な兵の命を削ったおまえの罪は重い……。この場にて、我が剣の
そう言って、アランはサーベルを構えて臨戦態勢に入る。
「おまえがここの支配者か。ならば、好都合だ。おまえを倒せば、ここを手に入れたも同然」
「不可能だ。おまえは、この私に討ち取られる運命…‼」
俺とアランは一斉にかけて接近し、ゼノントリガーの銃口の刃とサーベルが激突した。
デビルマン・ダンテのスタイルは、ゼノントリガーを使用して自身の力で戦いつつも、必要とあらば敵の力も奪って活用する。
ゼノンの時は圧倒的な技での攻撃で追い詰めるものであったが、今の彼は無駄のない動きで攻撃・回避と行動で恐怖を与え、戦意を削ぎ落す。
そして、この次のアランとの戦いで、彼の真の恐ろしさが垣間見える。