DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
八稜郭占領の知らせは、すぐにエルドラド内で知られることになった。
アランの
「アラン殿はガラン殿のご子息であった。息子が死んだとなれば、あの将軍が黙っておるはずがない……」
「八稜郭が奪われたとあっては、王権派の動きも活発になるであろう。最悪の場合、こちらから向こうに流れる可能性もある」
「こうなっては、我々だけで抑えつけるにも限界がある。アイラ・ムーの転生者、やはり侮ってはならぬ存在であったか」
女王アイラの転生者の存在が、彼の中で少しずつ脅威となりつつある。
しかし、その中で沈黙を貫いていた仮面の男…ディーンが口を開く。
「アイラ・ムーの転生者…。それだけではない」
彼の一言に、元老院の幹部たちの視線が集まる。
「あの娘に、八稜郭を占領するほどの力はない。それよりも、他に目を向けるべき者が居る。紺碧の魔王が」
中央にある巨大なスフィアに、愛羅とは違う存在が映し出される。
それは兜に
「これは……一体!?」
「あのような者が、アイラ・ムーの側に居るというのか!?」
「アラン殿も、あの悪魔に…‼」
その魔王の存在に戦慄が走る中で、「面白い!」と野太い声が響き渡る。
そして、元老院の集会の場にガシンッガシンッと音を立てて近づく者あり。
中国風の鎧に身を包んだ、黒く長い
「ディーン殿は、その戦士が我が
「その通りだ、ガラン将軍」
淡々と答えるディーンに、ガランはフッと口角を上げて笑う。
「アランの奴、つまらぬ
彼は鞘から大剣を抜き、スフィアに映る魔王に刃先を向ける。
「ディーン殿。こやつの討伐、この我に任せていただきたい」
それは息子を討たれた父親の仇討ちか?
違う。
ガランはそのようなことを考える男ではない。
この男にとって、戦いこそが全て、強者こそが
今、目の前に映る魔王に、その強者としての素質を見た。
将軍としての器が、好敵手との戦いを望んでいる。
「好きにしろ」
ディーンは小さく、許可を意味する言葉を告げる。
それに満足し、ガランは背中を向けて集会の場から離れて行った。
「ガラン殿が動くのであれば、安心だ」
「あわよくば、アイラ・ムーの転生者も討ち取ってくれることだろう」
「これで我らも
元老院の幹部が話す中で、ディーンは足早にその場を後にする。
「やはり、あの男は常に女王と共に居る運命…か」
その魔王の姿を見た時、彼は小さく口角を上げていた。
ーーーーー
ガラン将軍は自身の根城に戻り、玉座に腰を下ろす。
「
これから起こす戦において、彼が望むのは魔王との戦い。
強者ゆえの孤独。
そして、アイラ・ムーの転生者にも、想う心はあった。
「伝説は伝説のまま、歴史の中に埋もれたままであれば良かったものを……。アイラ・ムー、そなたも哀れな
それは同情のようにも、哀れみのようにも聞こえる物言い。
しかし、この言葉は彼の私情であり、それも1度目を閉じて開けば将軍としての目に変わる。
「ガイストテレスを起動せよ‼」
ガイストテレス。
それは彼の根城の名であり、命令を受けた配下が起動スイッチを作動させれば城が震えだす。
そして、城は地面を離れて飛翔し、宙に浮きながら移動する。
移動要塞ガイストテレス。
ガラン自らが戦場に赴く時、この城は要塞となり火の海を広げる。
「八稜郭に通信を繋げ。
ーーーーー
八稜郭の司令室。
そこには、俺と愛羅、そしてソニアなどの戦士の姿があった。
そして、映像が映し出されてはそこに屈強な体格の将軍が現れる。
『八稜郭を占領し、我が息子アランを討ち取った者たちよ。我が何者であるか、ムーの民ならばわからんはずもあるまい』
映像越しでも、俺たちを見下ろすような視線で問いかける男。
「ガランだ……」
「ガラン将軍だ…‼」
「まさか、あの方が動き出されるというのか!?」
こちらのムーの民の中に動揺が走り、ソニアも声を震わせる。
「まさか、ガラン将軍が……腰をあげたというのか!?」
その反応だけで、目の前の漢がどれほどの脅威なのかがわかる。
そして、ガランの視線は愛羅ではなく、俺の方に向けられる。
『アランを討ったのは、お主だな?』
確信めいた、戦士としての直感だろうか。
奴は俺に強い眼差しを向け、返答を待っている。
「そうだ。目的は、
こちらも下から睨みつけるように目を合わせれば、ガランは口角を上げてフッと笑う。
『そのような
ただ戦いのみを望む男の欲望が、俺たちに牙を
『紺碧の魔王よ、お主の名を聞かせてもらおうか』
奴は望んでいる。
好敵手として認めた、俺の名を。
「俺の名はダンテ…。魔王ダンテだ」
己の名に魔王と付けたのは、敵の目を俺に集中させるため。
あくまでも、ガランの望みは俺との戦い。
そうであれば、印象付けるためにも調度いい
「お主と相まみえる日を、楽しみにしておるぞ。魔王ダンテよ」
そう言っては、愛羅の方に視線を戻す。
『女王アイラよ。お主もまた、この地に戻ったのであれば、我を越える戦ぶりを期待するぞ』
「ガラン将軍……」
彼の中で、俺たちと戦うことは前提条件だ。
しかし、それでも彼女は訴える。
「私たちは、あなたとの戦いは望みません。話し合いましょう、無駄な血を流さないためにも‼」
『笑止‼』
愛羅の言葉を、一喝することで返すガラン。
『一国を
王を志す。
その一言に、俺と愛羅は違う反応を示した。
彼女は、王という言葉の重荷に目を伏せる。
代わりに俺は、強い眼差しでガランを見据える。
その違いを、将軍の鋭い目は見逃さなかった。
『王を志す者のみが、我が前に姿を現すがよい。さもなければ、我が要塞に潰されて死ねい‼』
ガランはその言葉を最後に、通信を切ったのだった。
ーーーーー
当然というべきか、あの後は八稜郭の中で混乱が起きていた。
エルドラド内で、ガラン将軍の存在がどれだけ大きいのかを思い知らされる。
しかし、それを知れば知るほど、俺は胸の高鳴りを感じている。
偵察部隊からの報告では、ガランの乗る移動要塞ガイストテレスが八稜郭の頭上に迫るまで3日。
その間に、俺たちは戦力を整える必要がある。
王を志すものとして、立ちはだかる壁。
それが将軍と呼ばれる者であるならば、相手にとって不足はない。
俺は八稜郭を離れ、遺跡に向かっては1人で翼竜の
「あのガランという男に……俺は勝てるだろうか」
この場には、明人も甲牙も、サタンも居ない。
頼れるのは、愛羅やムーの民のみ。
俺がもしも敗北すれば、それは愛羅たちの死を意味する。
また1つ、敗けることが許されない戦いに挑むことになる。
これもまた、俺が王へと至るための試練だと言うのか。
「やはり、ここに居ましたか、ダンテ」
後ろから声が聞こえれば、そこには白ローブに身を包んだ愛羅が居た。
首筋を見れば、黒いチョーカーが着けてある。
その姿から、今は女王としての彼女ではないことを示している。
「愛羅……。おまえはいつも、俺のことがわかってしまうな」
「ダンテの行動は、わかりやすいですから」
彼女は俺の隣に移動しては、同じように
「皆、混乱しています。ガラン将軍と戦うことに、恐怖を感じている」
今の八稜郭の状態は、彼女にもわかっているのだろう。
そして、ムーの民はアイラ・ムーという存在に救いを求める。
しかし、愛羅の手を見れば震えているのがわかる。
彼女もまた、女王という象徴ではなく1人の人間だ。
あの将軍の放つ覇気に圧され、戦意が揺らいでいるのがわかる。
「ダンテ、私は……私は恐い。女王と呼ばれる重責にも耐えられず、あの男と戦うことに向き合えず、逃げたいとすら思っています。……アイラ様の転生者と呼ばれているのに、恥ずかしい限りです」
俺の前だからこそ、愛羅は胸の内を吐露してくれたのだろう。
「きっと、3日後の戦いで、また多くの人が死ぬことになるでしょう。もしかしたら、八稜郭での戦い以上の犠牲者が……。その責任を、私は背負えるでしょうか」
弱気になっている彼女に、俺はなんというのが正解なのだろうか。
愛羅は今、ムーの民にとって希望、そして象徴となっている。
そんな彼女の精神状態は、これから戦いに赴く戦士たちの士気にも関わってくるはずだ。
「愛羅……俺は王を志す者として、おまえを背負うと決めた。そんなおまえが、女王としての責務を1人で背負えないというのなら……」
俺は彼女に身体を向け、その頬に触れる。
「俺が魔王として、おまえの女王の責務もろとも背負う。だから、その俺を支えてほしい。俺を王と認めてくれるるならな」
「ダンテ……」
彼女は触れられた頬を染めながら、薄く笑みを浮かべる。
「私の愛する魔王様。愛羅の望みを、口にしてもよろしいでしょうか?」
「今日は愛羅の我儘を聞く日だ。俺にできることなら、何でも言ってくれ…」
愛羅は俺からの促しに、小さく頷く。
「私への信仰も、ムーの民も、あなたの王の道へと捧げます。だから……」
彼女は俺の手を取り、乳房にむにゅっと押し付ける。
「私に……どうか、勇気を。あなたの所有物であるという証を、いただけませんか?」