DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
ガラン将軍との決戦から、1週間が経った。
魔王ダンテの勝利に終わったことで、八稜郭にも変化が訪れた。
修練場では、戦士たちの声が響き渡る。
「この程度の鍛錬で
将軍と呼ばれる男の
「性が出るな、ガラン将軍」
声をかけながら隣に立てば、彼は目だけをこちらに向けて見下ろしてくる。
「
両腕を組みながら、さながら鬼教官のように戦士たちを鍛えるガラン。
しかし、それに対して不満を漏らす者は、魔王の民の中には居なかった。
エルドラドの将軍を、魔王の戦士として迎えることに戸惑いを覚えるものは少なくなかった。
しかし、それでも彼を受け入れることができたのは、自分たちの実力不足を痛感しているからだろう。
「して、魔王よ。お主がここに来たのは、ただ我を監視するために来ただけではあるまい?」
「監視のつもりはなかったが……。少し、おまえの意見を聞かせてほしいと思ってな」
1つの戦いが終わり、強力な味方が増えたとしても、俺たちはまだ力不足が
「時間が無いんだ、俺には。あと2週間で、外の世界に戻らなければならない」
「……急を要する事情が、ありそうだな」
ガランは俺の話に、耳を傾ける気になったようだ。
戦士たちには鍛錬を続けるように告げ、俺たちは修練場を
ーーーーー
将軍の部屋に通され、2人で背もたれのある椅子に腰を掛ける。
「デビルマン軍団との戦争…。そのために、このムーボーダーを解除する必要があると」
「そのためには、エルドラドを討つ……あるいは、ムーボーダーの制御装置だけでも破壊したい」
俺たちは今、巨大な
この外の世界では、今も明人や甲牙、サタンたちが来たるべき戦争に向けて準備を進め、水面下での戦いをしているはずだ。
魔王の力を解放することができた今、俺も早く合流しなければならないと、気持ちが焦る。
「悪魔の力を持つ人間との
長く黒い
「できることなら、俺はここに居るみんなをムーの牢獄から解放したい。そして、そのためには早めにエルドラドとの決着をつけなければいけないと思っている」
俺の意思を伝え、その上で将軍に強い眼差しを向ける。
「正直に答えてくれ。ガラン、今の俺たちでエルドラドに勝てるか?」
その問いかけに、ガランは目を閉じて答える。
「不可能よ。いくら魔王の力を手にし、我が力を貸したところで、エルドラドには……その王であるディーンには敵わんだろうな」
ディーン…。
それが、エルドラドの最高権力者。
「あの男は全てを見通す目を持っておる。
そう言って、テーブルの上に置いてある茶に口をつける。
「それなら、今すぐに戦った場合は……」
「我らは全滅であろう」
厳しい現実を突きつけられ、奥歯を噛みしめながら拳を握って震わせる。
「しかし、魔王よ……。それは人間であればの話だ」
「……何?」
ガランの言い方に引っ掛かりを覚え、彼は外に居る戦士たちを見下ろす。
「我には、あやつらにはお主と同じ力を感じるのだ……。人ならざる者の、力がな」
それは将軍と呼ばれる男だからこそ、感じる違和感だったのか。
その答えは、すぐにわかることになる。
ーーーーー
「はぁ…はぁ…んぐぅ‼」
その身に起きる変化に、男は人気のない個室で
彼の名はデビッド、ムーの戦士の1人である。
ただの人間であった彼の身に起きる変化。
それは、背中から黒い翼が生えていること。
そして、その両腕は
「何なんだ、これは…‼俺の身体は、どうなってしまったと言うのだ!?」
人ならざる物に変化する身体から、湧き上がる衝動があった。
求めるものは、闘争。
悪魔のような力が、身体を突き破ろうとしている。
「デビット、おまえいつまで寝てんだぁ?そろそろ出ねぇと、ガラン将軍から喝入れられるぜ?」
ドアが開き、同じムーの戦士が入ってくる。
そして、彼の変化に目を見開いた。
「で、デビット!?おまえ、その姿は…‼」
「ティム……。ハハッ、面白いだろ?俺の背中から、翼が生えてるんだぜ?」
立ち上がり、苦笑いを浮かべるが動揺は隠せていない。
ティムもまた、つられてアハハっと乾いた笑みを浮かべている。
「確かに、面白いぜ……。だけど、それ……元に戻せるのか?」
「わからない……。どうなっちまったんだろうな、俺は…‼」
この変化を説明できるかはわからないが、真っ先に伝えなければいけない相手は思い浮かんでいた。
「魔王ダンテ…‼あの方なら、何か知っているかもしれねぇな」
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場所は八稜郭の王の間。
玉座に腰を下ろす俺の前には、黒き翼を広げる男。
その名はデビット。
彼は俺の前に膝をつき、
「突然の来訪、お許しください。魔王ダンテ、この私の身に起きた変化を……一刻も早く、ご報告しなければと」
デビットは額から汗を流しながら、俺に告げる。
「それは……デーモン族への変化か?」
ヴァラバ軍団との戦いを思い出し、隣に立つ愛羅の方を見て意見を求める。
「確かに、彼のような変化を私たちは直接目にしています。しかし、これは……」
あの蛮族たちは、遺跡に宿る強大な力を浴びて悪魔に変化したと言っていた。
そうであるならば、ムーの民にも同様の変化があってもおかしくはない。
「このような人ならざる異形となり、
顔を伏せたままの彼に、俺は玉座から立ち上がって歩み寄る。
「デビット、顔を上げてくれ」
その肩に手を置き、彼が顔を上げたところで笑みを向ける。
「おまえは、魔王の戦士として力を手にしたんだ。その翼と力を、俺たちのために役立ててくれないか?」
「魔王様……」
俺の手を取り、涙を流すデビット。
「この俺の翼は、あなたの王の道と共に…‼」
彼は改めて、魔王に対して忠誠を誓ってくれた。
俺はこの時、自身の魔王としての力と、それが与える現実を知った。
魔王の民となる者に、悪魔の力を目覚めさせる。
それは、彼らの運命を変えることに繋がることだろう。
そして、その責任も背負う覚悟が必要なんだ。
このデビットと同じように、悪魔の力を手にする物はこの先も現れるかもしれない。
その時に、彼らの道を切り開くのも魔王である俺の役目となるんだ。
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デビットと同じような変化を迎えた者は、他にも現れていた。
しかし、それを魔王に伝えるほどの忠誠心がある者ばかりではなかったのだ。
「この力…‼凄いぞ、自分が自分じゃないみたいだぁ…‼」
小太りで醜い顔をした男だった。
彼の名はガジロウ。
彼の身体は、巨大なトカゲのように変化していた。
「キヒっ、キヒヒヒヒっ!!この力がありゃ、あのいけすかない魔王に一泡吹かせることができるってもんだ」
「女王の地位を捨てたのなら、あの娘には何の負い目もねぇはずだ。魔王1人が独り占めするたぁ、勿体ねぇぜ」
彼もまた、魔王の魔羅によってよがり狂う愛羅の姿を見ていた者の1人。
あの場では、魔王ダンテの覇気に圧されて跪いたが、本心では屈辱的な想いだった。
「アイラ・ムー…いや、武藤愛羅よ。魔王の手に落ちたおまえなど、もう怖くはない!!この俺が手に入れてやるぜぇ!!」
ガジロウは頭の中で、淫らな妄想を膨らませる。
獣と化した自身によって、犯される愛羅の姿が。
魔王の力は、確かに配下の者たちに人ならざる力を与えた。
そして、それによって魔王に新たに忠誠を誓う者も居れば、新たに自らの欲望を果たそうとする者も現れる。
今、悪魔の力を得た民の魔の手が、ダンテの最も触れてはいけない部分に向かって伸ばされようとしていた。
まぁ、魔王の配下になるってことは、そういうことですよね。