DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
デーモンの力を覚醒させた民は、デビットを始めとして日が過ぎるごとに増えていった。
魔王の民となったことが関係しているのか、それとも覚醒したロードスローネの影響なのかは定かじゃない。
日が落ちた八稜郭。
その屋上にあるアイラ・ムーの象の隣に並び立つ、メタリックな翼竜…ロードスローネを見上げる。
「魔王の民となることの意味……それが悪魔への変化なのだとすれば、俺は取り返しのつかないことをしたのかもしれないな」
魔王としての力を覚醒させ、王としての地位を手に入れたことで俺の抱える苦悩は日に日に増えている。
こうして、1人でいると要らない考えに浸るくらいに。
エルドラドとの戦い、外の世界への解放、魔王としての在り方。
考えを巡らせても、答えは見えてこない。
これからの戦いのことを考えれば、民が悪魔の力を手に入れるのは心強いかもしれない。
しかし、それは人ならざる者へと変わることを意味している。
その変身は、彼らにとって幸せであると言えるのだろうか。
身に余る力を手に入れた時、彼らの心はどのように変わっていくのか。
思い出すのは、ヴァラバ軍団の蛮族たち。
今にして思えば、彼らもまた悪魔の力に魅せられた被害者なのかもしれない。
あの遺跡の影響が無ければ、彼らは力に溺れることは無かっただろうから。
もし今後、ヴァラバのように悪魔の力に溺れる者が現れた時、俺は……。
「このような場所に居られましたか、魔王ダンテ」
後ろから声をかけられ、振り向いた先には黒い翼を広げた男が1人。
デビットだ。
「デビット……すまないな。少し、1人になりたかった」
「俺は別に構いませんが、愛羅様が心配されておりました。護衛である俺に、捜してきてほしいと頼むほどに」
彼は今、悪魔の力を手にしたことと、魔王への忠誠心を買われて魔王の護衛として付き従ってくれている。
「愛羅様はもう休まれています。早く行ってあげてください」
「そうした方が良さそうだ。あまり待たせると、愛羅は恐いんだ」
デビットの隣を通りすぎた後、その翼を見て目を細める。
「その翼、仕舞うことはできないのか?」
「あ、これですか?仕舞った方が良いなら、そうしますよ。最近は、これの使い方もわかってきたところです」
そう言って、背中の翼が肩甲骨の方に戻っていく。
「この翼と両手の爪が無ければ、俺もただの人間に見えるんですかね?」
デビットは冗談っぽく言ったつもりだろうが、その言葉で俺の表情は曇ってしまう。
「……すまない。おまえたちの身体が変化したのは、俺の……」
「謝らないでください、ダンテ。俺はこの力を手に入れて、良かったと思っています。これがあれば、俺は大切なものを守ることができる」
彼は自身の胸に拳を当て、戦士の笑みを見せる。
「俺はこの力で、これからもあなたと共に進んでいきたいんです。魔王ダンテの翼として」
「ありがとう、デビット。その言葉に、少し救われた気がする。これからも、おまえの力を貸してほしい」
「喜んで。俺の翼は、あなたと共にあります」
熱い信頼を寄せる部下に礼を告げた後、俺は寝室へと向かった。
ーーーーー
ダンテと離れた後、八稜郭の中を歩いているとデビットは1人の女性とすれ違う。
「あら、デビット。1人で居るってことは、もう護衛の仕事は終わったの?」
「リサ……」
彼女の名前はリサ。
八稜郭の中で、負傷者の力を癒す看護師のような役割をしている。
デビットも彼女の世話になったことがあり、その縁から会話する仲になっている。
「そっちは、今帰りか?」
「ええ。今日は怪我人も少なかったから、早く上がらせてもらったわ」
そう言って、流れで共に歩きながら話を続ける。
「ガラン将軍の特訓が始まってから、怪我する人が増えて困っちゃう。私たちの仕事も増えてくるんだから」
「それだけ、俺たちも強くなることが求められているってことさ。俺も魔王様の護衛役を任された以上、もっと力を求められているんだと思うしな…」
リサはデビットに横目を向ければ、その背中の方に視線が行く。
「魔王の護衛って、そんなに忙しいの?」
「そうでもない。危険が無いように、側で控えているだけだしな。……とは言っても、あの人事態が強いんだから、俺が必要なのか疑問だけどな」
護衛と言っても、相手は魔王と呼ばれる存在だ。
悪魔の力を手に入れたとはいえ、いざ戦闘になれば出る幕は無いと思えてしまう。
「デビットが最近来なくなって、内の女子たちが寂しがってたわよ?」
「それは、俺にもっと怪我しろって言ってるのか?やめてくれよ」
「そう言う意味じゃないわ。顔を出しにきてほしいの。無骨な男たちだけじゃなくて、色男の笑顔を
「色男ねぇ…」
自身の頭の後ろに手を回しながら、デビットは自嘲気味に笑みを浮かべる。
「あんまり、人前には出たくない。美女ぞろいの場所に居ると、自分が抑えられなくなりそうだ」
悪魔の身体を手にしてからというもの、あらゆる欲が表面化しようとしているのがわかる。
自分の中で、理性というものが薄れていく感覚だ。
「リサも、俺と一緒に居ると危ないぜ?いつ自分が獣の本性が現すか、わかったもんじゃない」
「あら、私は……デビットなら、いつ獣になったって良いわよ?」
「えっ……」
まさかの返事に、彼は足を止めてリサを見る。
そして、彼女も足を止めては、デビットの手を握った。
「良かったら、このまま……私の部屋、来ない?」
この話の流れで、その誘いがどういう意味なのかがわからない彼ではなかった。
デビットとリサは、自然と顔を互いに近づけては唇が重なりそうになった瞬間―――。
「おーおー、見せつけてくれるじゃないか、デビット?」
しかし、雰囲気などお構い無しに、前からこちらを見て話しかけてくる男が1人。
「ラット……。良い雰囲気だったのに、邪魔しやがって」
細身で腰を丸めている男…ラットは不気味な笑みを浮かべてはデビットを、その隣に居るリサに視線を向ける。
「女とお楽しみの所、申し訳ないけどよ。ちょっと、
「……親睦?」
話しかけているのはデビットに対してだが、ラットの目はリサの方に向いている。
これを彼は、遠回しな脅しと捉えた。
「手短に済ませろよ?こっちはお楽しみが控えてんだ」
リサに先に戻っているように伝え、ラットともに酒場に向かう。
「待たせたな、おまえら。最後の1人を連れてきたぜ?」
そこには、彼以外にも悪魔の身体を手に入れた者たちが席に着いていた。
「何だ、このむさ苦しい集まりは?」
そして、その囲いにラットも混じった。
「俺たちの共通点は、悪魔の身体を手に入れたってことだ。この力があれば、あの魔王に従う必要はねぇ。俺たちだけの国を作ることだってできるはずだ」
ガジロウは自身の野望を口にする。
「魔王ダンテから独立するって言うのか?そんなことしたって、ヴァラバ軍団と同じ末路を辿るだけだぜ」
1人の男が、ヴァラバ軍団のことを口に出す。
あれこそ、ダンテの力で殲滅された悪魔の力に呑まれた者の哀れな末路と言える。
「今回はわけが違う。こっちにアイラ・ムーを引き込むのさ。そうすれば、魔王も手を出すことはできねぇ」
ガジロウは自らの考えを続けて語る。
「おまえらだって、魔王のことが気に入らねぇと思ってるんだろ?俺たちの上に立つのは、アイラ・ムーだけのはずだ。俺たちが、この力でアイラ・ムーを取り返すんだよ‼」
建前上は、自分たちが正義であることを示すように彼はアイラ・ムーの存在を引き合いに出す。
しかし、それにデビットは待ったをかけた。
「その愛羅様が、魔王ダンテの側に居ることを選んだんだ。そして、俺たちはダンテのおかげで、この力を手に入れることができた。俺はあの人に、あの人のおかげで手に入れたこの爪を向けることはしたくない」
そう言って、右手を変化させて
「デビット、おまえは賢い奴だと思ってたんだけどなぁ。可愛いガールフレンドが、どうなっても良いってか?」
ラットが口を挟んでは、リサの存在を引き合いに出す。
「リサに手を出してみろ……。おまえらをひき肉にしてやるぜ…‼」
怒りの感情に露わにし、デビットとラットは一触即発の空気になる。
悪魔の身体を手に入れた者の中でも、その考え方は
魔王に忠誠を誓う者と、反旗を翻そうとする者。
ガジロウたちも、デビットに対して敵意を露わにする。
「デビット、俺たちの邪魔をするなら、ここでおまえとはさよならだぜ」
互いを睨みつけながら、デビットは立ち上がっては酒場の出口に向かう。
「余計なことを考えるのは止めろよ。俺は魔王ダンテの護衛役だ。あの人に命を賭けている。忠告はしたからな」
酒場から出て行く彼を、追跡する者は居なかった。
「やはり、デビットは魔王側に着くか……。予想通りだったな」
ラットは歯を見せて笑い、それに吊られて他2名も悪い笑みを浮かべる。
「だったら、もう遠慮することはねぇぜ。俺の中の悪魔の本能が囁いてるんだ……。デビット・バードを、ぶっ倒せってなぁ…‼」
そのための準備を、ラットたちは既に終わらせている。
「俺たちも、動き出すなら今日と決めていた……。あの魔王の言いなりになるのも、今日で終わりだぁ…‼」
ガジロウが席を立ち、その後ろに同士たちが列を成していく。
「この力を手に入れた時から、己の内側から声が響くんだ…‼己の欲望のままに生きろってなぁ。だから、手に入れてやるぜ、武藤愛羅をなぁ‼」
悪魔の力を手に入れた愚かな民が、
この道の先に待っている結末など、知る由もなく。
ちなみに、デビットのモデルは永井豪先生の作品の1つ「ザ・バード」です。
人外の力を手に入れた者ということで、最近読んでて調度良いと思いました。
そして、今回出てきたリサは、そのヒロインですね。
全2巻と短いので、興味があれば読んでみてください。