DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
八稜郭内にある寝室に向かっていた時のことだ。
月明かりが差し込む廊下を歩いていると、俺は背後に不吉な影を感じて振り返る。
「……誰だ?」
問いかければ、その先に現れたのは黒いローブに見包んだ者。
フードで顔を隠していることから、誰なのかはわからない。
「魔王ダンテ」
その声は女性のものであり、フードの下に映る口角が上がっている。
「私はあるお方から、あなたを暗闇の底に突き落とすために|遣〈つか》わされし者」
「あるお方?……何者だ」
敵意を向けて睨みつければ、ローブを脱ぎ捨ててはその姿を
それは蝙蝠の翼を広げた姿であり、両手の羽根を広げるとそこには無数の目が合った。
「何!?」
その目が妖しく光り輝けば、俺を照らすと同時に呑み込まれた。
ーーーーー
気づいた時、俺は燃え盛る砦の中に居た。
そこは八稜郭の中であり、炎に熱さを感じない。
「何だ、これは…!?」
周りに転がるのは、数多の死体。
デーモンと人間のもの、双方の戦士が倒れている。
〈グォオオオオオオオオオオオオオオオ‼〉
耳に届いたのは、大きな雄叫び。
それが近くから聞こえたのがわかる。
声の主を捜しながら、俺は引き寄せられるように走っていた。
そこは王の間。
そして、そこには2人の男女が居た。
1人はアイラ・ムー。
そして、彼女は男を見て身体を震わせる。
「アイラ・ムー」
アイラのことを呼ぶ男は、貴族のような服を着ていて目元をマスクで隠している
「何度繰り返そうとも、何も変わりはしない。おまえは、私の手で殺される運命だ」
その両手にはサーベルが握られており、刃は血で染まっている。
彼女は言葉を返さず、ただジッと強い意志で睨みつける。
「……私がここで死んでも、あなたの想い通りにはなりません」
彼女の覚悟に応えるように、王の間の壁をドガーンっと巨大な拳によって崩された。
その拳を引いた先には、巨大な悪魔……いや、漆黒の翼竜の姿が映る。
あれはまさか……魔王としての姿の俺か!?
〈アイラ……〉
翼竜は彼女の名を呼び、掌に乗せて王の間から引き出す。
「
仮面の男は、その姿を天使態に換えては巨大化する。
「認めよう。おまえは魔王だ、悪魔の王‼その力、我に見せてみろ、
ダンテ…!?
今、奴はあの翼竜をダンテと呼んだのか!?
〈アイラ…必ズ…守ルゥ…‼〉
魔王と呼ばれし翼竜と、白い翼を広げた大天使との戦い。
その2つが衝突しようとした時、視界は強い光に染まっていき、俺の意識も薄れて行った。
ーーーーー
周りが黒い空間に変わる。
「い、今のは…‼」
衝撃的な光景が、頭に刻み込まれる。
あれが……あの姿は、俺が魔王としての力を暴走させた時のものだ。
だけど、あんな記憶はない。
それに、あの仮面の男…いや、天使と戦ったことも。
「ダンテ」
この空間に、もう1人居る。
そして、その声のする方に目を向ければ、そこには全裸の愛羅が立っていた。
「さぁ、いらっしゃい……私のダンテ」
微笑みながら、軽く両手を広げて迎えようとする愛羅。
「愛羅…愛羅ぁ‼」
混乱する頭を振り払い、彼女に向かって一目散に駆け出しては抱きしめる。
「愛羅……良かった。おまえが無事なら、それで良い…‼俺には、おまえが居てくれれば…‼」
しかし、抱きしめた時に違和感に気づく。
彼女の身体は冷たく、生気を感じなかった。
「何とも情けない魔王だ」
自分を侮辱する言葉に、肩をビクッと震わせて反応する。
そして、振り返った先には、先程の仮面の男が立っていた。
「おまえは……誰だ?いや、俺は…知っている。おまえが、何者なのか…‼」
いつだったか、夢の中に出てきた存在だ。
その時、この男は愛羅のことを殺していた。
そして、ズキーンっと頭に強い衝撃が走る。
『おまえが神の使者だと言うのなら、俺は悪魔に……いや、魔王になってでも、おまえを止めてやる‼アイラの運命は、俺が変える‼』
存在しない記憶。
しかし、確かに頭に……いや、魂に刻まれた記憶だった。
俺は1度……いや、何度もこの天使と戦ったことがある。
そして、その結果はいつも……。
「おまえは……マンセマット‼」
何度もアイラ・ムーの命を狙い、奪ってきた存在。
俺はその度に戦いを挑むも、何もできなかった。
だからこそ、求めたんだ。
運命を覆すほどの力を。
神の運命に抗う力を。
「小僧……今度も何も変わらない。神の意志は、特異点などという異物を許さない」
仮面の男…マンセマット。
先導者の特異点を葬るために、何度世界が繰り返されようとも現れる存在。
繰り返される輪廻の中で、俺はこの男とぶつかり合う宿命だった。
「今度こそ、おまえから愛羅を守ってみせる」
「その言葉、何度もおまえは繰り返す。そして、それを成すことなく消滅する。魔王として目覚めようとも、それは変わらない。現実を受け入れろ」
運命を変えるという魔王に、それは不可能だと大天使は指さす。
「守れていないではないか、この世界でも」
マンセマットが指さしたのは、俺がずっと抱きしめていた愛羅だ。
その顔を見れば、目を見開いたまま顔が白くなっていた。
それだけじゃない。
俺の腕の中で、血塗れになっていた。
「これはっ…そんなっ…‼愛羅ぁあああああああ‼」
名を叫ぼうとも、彼女は反応を示さない。
何も変わらないのか?
俺は何度も、失わなければいけないのか?
嫌だ…。
嫌だ…嫌だ…‼
嫌だ嫌だ嫌だ‼
「うぉおおおおおおおおおおおおおおお‼‼‼」
この現実を変える力が欲しい。
もっと……もっと…‼
俺に力を…‼
魂が漆黒に染まり、覇気が空間を呑み込んでいく。
「魔王ダンテ」
マンセマットの身体にノイズが入っては、俺を仮面越しに睨みつけてくる。
「運命は変わらない。おまえも、愛羅も、必ず私が排除する」
宣戦布告した後、仮面の大天使は姿を消した。
しかし、俺の力は、欲望は、留まることを知らなかった。
ーーーーー
ダンテは廊下にて気を失い、うつ伏せに倒れている。
その前に居る
しかし、悪夢を見ていることだけは理解できる。
キーラの能力はナイトメア。
翼に着いた目を見た者の意識を奪い、悪夢を見せることができる能力だ。
彼女の役割は足止めであり、ガジロウが愛羅を手に入れるまでの時間稼ぎだ。
しかし、彼が目の前で倒れたことで、欲が芽生え始める。
「魔王ダンテ……あなたの力、私がもらい受ける…‼」
魔王と呼ばれる男の力に魅せられた。
だからこそ、その力を求めるのは必然だった。
デーモンの姿から人間に戻れば、全裸のまま彼に歩み寄っては仰向けにさせる。
そして、その服を剥ぎ取ってはダンテを丸裸にしては、その下半身に目が行く。
魔王の男根は、勃起していない状態でも亀頭が露わになっていた。
陰茎の長さも太さも、並みの男の一物を
「フッフッフ。あの時のアイラ様のよがりようも当然ね。こんな立派なもので貫かれたら、理性なんて保てるはずがないわ……」
肉棒を握っては、シコシコと扱いて悦を与えるキーラ。
「彼女だけ、
ダンテの上に跨り、開脚しては膣口に亀頭を擦りつける。
しかし、その時―――。
ピカーンっとダンテの目が開眼した。
そして、その目は赤く光る。
「ぐぅううう…‼るぁあああああああああああああ‼‼‼」
一瞬の出来事だった。
ダンテの身体から漆黒のオーラが放出されては、それが巨大な翼竜へと姿を変える。
「こ、これはっ…‼ぎゃあああああああああ‼」
オーラの翼竜は、その大きな手でキーラを掴んでは締め上げる。
翼竜の姿は、八稜郭内全域から見えるほどの巨体となる。
「こ、これは……魔王!?」
「まさか、あれが…!?」
「本当の、魔王ダンテの姿か…‼」
漆黒の翼竜と
「騒々しい‼一体、何があったと言うのだ!?」
ガラン将軍が現場に現れ、翼竜を見ては額から汗が流れる。
「よもや、このような力を未だに秘めていたとは…‼」
悪魔の力を手に入れた者たちすらも、その姿を見ては恐怖に飲まれていた。
ダンテは立ち上がるが、その挙動は虚ろであった。
腰は丸くなっており、前屈みの姿勢で歩きだす。
オーラの翼竜の手には、未だにキーラが握られている。
「あれは……キーラか!?」
「キーラを離しやがれー‼」
悪魔の力を持つ者たちは、一斉にデーモンの姿へと変えてダンテに襲いかかる。
彼らにとって、これは仲間を危険から救うための免罪符。
このまま、魔王を数の力で倒そうとする算段だった。
しかし、それを翼竜はキーラの足を掴んで振り回しては風圧を発生させて吹き飛ばす。
「ぎぁふぉ‼ぶべっ‼がばぁ‼」
まるでキーラの身体を、棒切れのようにして。
そして、勢い余っては彼女の身体を地面に叩きつけ、砦の壁へと叩きつける。
「無暗に近づくでない‼あの娘が死ぬぞ‼」
ガランが
これが、魔王としての残虐性なのか。
いつもの彼の姿からは想像できないほどに、彼の暴虐な部分が露わになっている。
《グォオオオオオオオオオオオオオオオ‼‼‼》
悪魔の力を持とうと、魔王には勝てないことを見せつける。
そして、吹き飛んだデーモンたちは、敵意を向けて魔王を睨みつける。
「め、迷惑なんだよ、おまえぇ‼」
「突然現れて、勝手に俺たちの身体を変えやがってぇ‼俺たちが手に入れた力を、自分のために使って何が悪い‼」
彼らの化けの皮が剥がれ、反抗的な態度を取る。
翼竜の口からは、「ハアアァ」と吐息が漏れては自身に敵対する意志を見せる者たちを見下ろす。
そして、彼らに手を伸ばしては1体のゴリラのようなデーモンを掴み上げる。
「や、やめろ…‼離せぇー‼離せよぉー‼」
悲鳴をあげるデーモンの身体を口に運んでは、翼竜は―――バキッと噛みくだいた。
バキッバキッバキッバキ。
デーモンの生肉を、
そして、その肉をゴクンっと呑み込んでは喉元を過ぎたところで
魔王は自身に反旗を翻した者を許さない。
悪魔であろうと、その身を喰らって己の血肉へと変える。
その光景を前に、全ての者が
勝てない。
悪魔の力を持とうとも、目の前の巨大な魔王に勝てるはずがない。
地上を歩くダンテは、目を輝かせながら反乱分子に迫る。
彼を止めることができる存在が居るとすれば、1人しか居なかった。
「ダンテ、止まってください‼」
その声が聞こえた瞬間、魔王は足を止めた。
「あ…い…ら…」
彼女の声が耳に届き、横に目を向ける。
そこには、息を切らした全裸の愛羅が立っていた。