DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
ムーの結界の向こうの世界で、デビルマン軍団との戦争が始まるまで残り1週間を切った。
魔王の民たちは、もはや悪魔の身体を手に入れようとも魔王に反旗を翻すことは無くなった。
あの夜、魔王の力を暴走させたことで示してしまったのだ。
悪魔たちにとって、俺は絶対に勝てない存在だということを。
しかし、それは俺が望んでいた形ではない。
今、民たちは俺に恐怖し、その力に
しかし、そんな姿を求めているわけじゃない。
そんな民と共に戦ったところで、これから先の戦いで勝つころはできない。
俺が求める、魔王の民の形とは……。
八稜郭の広間にて、自身との対話を計っているとプルルルルっと電子機器の音がした。
「これは…‼」
その音はスマホから鳴っており、取り出しては怪訝な顔を向ける。
これは緊急時以外、使用しないように言われていたものだ。
しかし、ムーボーダーの内側に入ってから、ずっと使えないものだった。
使用しようとしても、圏外だったからだ。
それが急に電話が鳴れば、不思議に思うのも無理はない。
画面を見れば、非通知と書いてあり、怪しさを感じながらも電話に出る。
「もしもし…」
『あ、やっと出てくれたか。そっちの状況はどうだい、ダンテ?』
その声は三者連合の代表、飛鳥了のものだった。
「飛鳥了!?何故、あなたが……」
『こちらも多忙の身だったからね、君のことを信じて結界内のことは任せていたが……。そちらは、順調かな?』
結界の外での状況はわからない。
しかし、隠しているつもりだろうが、彼の声からは疲労が伝わってくる。
「どこから話せばいいのか、わからないが……。まず、何でこの電話は繋がっているんだ?」
「数日前から、結界の状態が不安定になっているようでね。この機会を利用して、電話をかけてみたというわけだよ」
結界……ムーボーダーが不安定?
それも数日前ということは、おそらくガラン将軍との決戦の日から。
「おそらく、俺の魔王としての力が影響している。了、俺は……ここに来て、進むべき道が見えた気がする」
俺は了に、これまでの敬意を簡潔に話した。
すると、了は声に出して笑う。
『こちらと同じように、そっちも波乱だったようだな。それでも、君が真に魔王としての覚醒をしたのなら、俺としても後任ができて喜ばしい限りだ。この世界で初めて、民を持った気分はどうだい?』
今抱えている悩みを見透かしたかのように、彼は問いかけてくる。
「正直、わからないんだ。俺は彼らを民とし、力を与えている。しかし、俺は……アイラ・ムーのような王にはなれない。俺は先導者としての力を持ちながら、それを活かせている気がしない」
先導者の特異点の力を持ちながら、民の心を1つにすることができていない。
それは王としての素質の問題なのか。
それとも、魔王としての存在が故か。
『確かに君は、女王アイラのように、後ろから民を見守る王にはなれないだろうね。むしろ、君はそれとは対照的な形で、王であることを示す方が向いている』
「対照的…?」
気になった言葉を復唱すれば、了は言葉を続ける。
『そして、悪魔の王とはそういうものでなければ
彼の言葉に、俺は自分のこれまでの行動を思い出す。
俺には、愛羅のように言葉で民を鼓舞する
だからこそ、ひたすらに戦って力を…俺という存在を示す必要があった。
その姿を見て、ついてきてくれる者も増えてきている。
悪魔の王となる者の在り方を示しながら、俺が望む民の姿は、もっと先にある気がした。
俺が先に進んで道を示すだけでなく、もっと先に―――。
「そうか……。わかったぞ、了」
『……その感じからして、視えたようだね。君にとっての、王と民の在り方が』
俺は魔王として、悪魔の民を先導する。
しかし、悪魔とは欲が深い者たちだ。
その欲望が示す先にある可能性を、示すことが王としての役割ではないのか。
「了、もう少しだけ待っていてくれ。そっちに戻る前に、俺は民に示さなければならないようだ。魔王ダンテと、その民が進むべき道を」
『そうか。それでは、楽しみに待っているよ。これから先の戦争まで、時間もあまり残されていない。君の力が、俺たちには必要だ』
「わかっている。明人たちにも、待たせてすまないと伝えておいてくれ」
了は短く「わかった」と言って、電話は終了した。
ムーボーダーが不安定になっている。
その情報に、希望が見えたような気がした。
今、エルドラドとは
ガラン将軍との決戦の後は、こちらの様子を見ているのか、戦闘は仕掛けてはこない。
しかし、この状態も長くは持たないと感じていた。
そして、俺はある決意を固めて、王の間へと向かった。
ーーーーー
民たちを招集し、王の間にて玉座に座る俺に視線が集中する。
皆、俺の言葉を待っている。
エルドラドとの決戦を前に、反乱の種は
しかし、それでも魔王に向けられる想いは統一されていない。
今、それを1つにまとめる。
俺は玉座から立ち上がり、軽く右手を挙げる。
「魔王の民たちよ」
まずは彼らに声をかけ、強い眼差しを向ける。
「俺は魔王ダンテ!おまえたちの王である‼」
自身の名を名乗り、覇気を放つ。
その魔王の覇気に受け、民たちの背筋が伸びる。
それは俺の側に立つ、愛羅も同様だ。
「俺はこれから、エルドラドとの決戦に挑み、おまえたちをこの結界から解放する‼そして、そのためにはおまえたちの力が必要だ。魔王の民として、持てる力を存分に振るうが良い‼しかし―――」
俺はここで言葉を区切り、1度目を閉じてはパッと開眼する。
「おまえたちは、悪魔の身体を手に入れた。それは欲望を糧にする存在であり、突き動かされる。その欲望が悪しきものであったのならば、俺はその望みを
デーモン族は、己の欲望に忠実な者たちだ。
そして、欲望こそが原動力となっている。
だからこそ、俺は王として、己がために悪魔を律する者となる。
悪しき欲望を断ち、善なる欲望を支える者となる。
民の欲望を背負い、先に進んで道を切り開く者。
それが俺の理想とする、魔王の姿だ。
「魔王の民よ!己の望み未来のために、その命を燃やして戦え‼おまえたちは、王の奴隷ではない‼悪魔の力を持った戦士だ‼己が欲に従い、運命に抗え‼それがおまえたちに求める、魔王の民の姿だぁ‼」
俺は己の胸に拳を強く押し当て、叫んだ。
民たちの目の色が変わり、迷いが消えていくのがわかる。
「自分の…ため……」
「欲望に従って…」
「戦う…‼」
今までの、彼らが抱いていた王の象徴とは違う。
1人1人の民が、俺ではなく自分自身と向き合い始めている。
誰かの存在に
その意志が、魔王から民へと伝播していく。
「
民たちから、俺の声に呼応するように「うぉおおおおおおおおお‼‼‼」と雄叫びが上がる。
魔王と民の心は、1つにまとまった。
それも王のためではなく、己のために戦うという意志によって。
1人は王として、1人は民として。
立場は違えど、運命に抗う戦士であることは同じだった。
その意志が重なった時、悪魔たちの心は1つにまとまり、運命に抗う者たちは個から集になる。
そして、俺は王として、運命に抗う姿を見せなければならない。
ここからが、運命への反撃だ…‼
手始めに、エルドラドの作った檻をぶっ壊してやるよ‼
めちゃくちゃ熱い展開になっていますが、次話から結界の外側に物語は戻ります。